そろそろお題が被ってきたので、別のツールに切り替えますかね。
電灯が一つ、まばたきをする。
悲鳴が上がる。何かがまき散らされた音が響く。
そこはもう誰もいないはずの廃病院。打ち捨てられて資材が運び出されたはずのその場所に、誰が運び込んだか、かつてのように手術台が置かれている。
手術台の上には、憔悴した表情の男がいた。腕を、足を手術台に付属する拘束具に繋がれていて動くことができない彼の瞳孔は、その主張を限りなく小さくさせることに必死になっている。
「いやだ、もうやめてくれ」
縋るように吐き出した言葉は、許しを請うような声色を多分に含んでいる。
しかし彼が言葉を投げた先にいる人物はその聞く耳を持たなかったのか、機械音が鳴り響いた。
調子を崩している電灯がまた、自身の存在価値を揺るがす。
女の悲鳴が響き、何かが滴る音がその部屋の中に響き渡った。そして、赤が手術台に括りつけられた男に届く。
「何で、どうしてこんなことをするんだ! 妻は関係ないだろう!」
「お前が俺の娘を殺した時も、そんな言葉は聞かなかっただろう?」
電灯の光の届かないところから、男の声が聞こえてきた。
その手からぶら下がっているものが何か理解して、手術台にいた男はぐしゃりとその相貌を歪める。
「俺にはお前に復讐する理由がある。お前には俺の娘を殺す理由はあったか?」
手術台に拘束された男からは、今まさに復讐を遂げんとしている男の姿が分からない。姿は見えているのだが、まるで手術中の意思のようにメガネとマスク、そして作業着のようなものを着用しており、その特徴と呼べるものはメガネから覗く復讐の炎を滾らせた眼差しだけである。
男は手術台にいる男の上に手に持っていた荷物を置く。べちょりと気持ちの悪い感覚がしたが、手術台の男が顔をひきつらせた原因はそこではなかった。
「ふざけるな、なぜ妻に手を出した! お前の目的は私だったはずだろう!」
「お前は俺の娘を痛めつけたいという欲望のためだけに殺した。ならば、俺もお前を苦しめたいという理由でお前の妻を殺してもいいだろう?」
「馬鹿を言うな! 私は罪を償った! 二十年、二十年だぞ! 私は模範囚としてちゃんと刑罰を受けたんだ!」
「知るか、それは法律が勝手に決めたことだろう。二十年国に守られて手を出せなかった私の怒りが分かるか? お前は罪を償ったという認識なのかもしれないが、俺は今でもあの子を奪われた恨みを忘れていない。お前がしたのは、そういうことだ」
「そんなものが許されるわけがないだろう! こんな私刑なんて……」
「俺が求めていたのは死刑だった。なのにそうならなかった。早い段階で見つかったせいで、殺した人数が足りないんだとよ。だったら俺がやるしかないじゃねえかよ」
ごとり、と何かが落ちる音がして、手術台の男がハッと息を呑んだ。
自分が感情を荒らげて叫んだことで、自分の最愛の人が転げ落ちてしまったから。
「お前、一切俺に謝ってないよな。言うのはやめてくれ、何でこんなことをする、それだけだ。俺の気持ちが分かったか? いや、答えなくていい。もう何もかも、手遅れだからな」
手術台の男は次は自分の番だと察した。もう時間はないと分かってしまった。ガシャガシャと拘束具を揺らす。だが頑丈に作られたそれは、男の力では壊せそうにない。
電灯が、終わりを告げる。
機械音が耳に届いた。
簡単プロット
廃病院の手術室、電灯が切れかけたその場所で、一人の男が
プロットは途中で終わっている。2分間で考えるようにしているんですが、今日は全然思いつきませんでした。方向性は決まっていたのでそのまま書き始めました。
意識したのは、お題から少し意外性のあるものを書こうとしていたことが多かったので逆に順当に行ってみようということですね。まあ案の定こういう仕上がりになりました。
ちなみにタイムは27分です。文字数にしては時間が掛かりましたかね。ちょっと調べ物したものを原因です。しかし少しずつ書くペースが上がっているのはいいことです。そろそろ連載の更新も進めなければ。三題噺は続けますよ。日課ですからね。上達のためには継続あるのみ。ぱわー。