というわけで、今回のお題は「火山」「王女」「気球」の三つです。ファンタジー以外思いつきませんでした。なお、またまたバッドエンド。
それは、単なる遠征のはずだった。
火山で悪さをしている者たちがいるということで、アルマリスの名声を高めるために彼女自らが出向いて討伐に乗り出したのだ。
無論、アルマリスは王女であるが故に実際に戦うのはそのお抱えの騎士であるが、彼女がその危険な場所にその身を晒すということに意味があるのである。暴君であった祖父から代替わりして自分たちは違うのだということを示し、民衆の支持を集めるために、彼女は多少の危険を飲み込む必要があったのだ。
「グレイス、アルラン、オイトース……」
そんな彼女は今、気球に乗って空にいる。本来は凱旋用に持ってきていたそれを、彼女は避難用具として使用する羽目になった。
陸路では逃げられないと悟った彼女の部下たちが、王女をお守りしなければとその侍従と彼女を押し込んで空へ送り出したのだ。
彼女はもう引き返せない距離に達してしまったことを悟って、ただ自分を送り出した忠臣たちの名前を並べることしかできなくなってしまう。気球から顔を出して火山の方を見下ろせば、自分の見知った者たちが声を掛け合って下山を急いでいる。
「姫様、貴女のせいではございません。まさかあのような者が根城にしていたなど、誰も予想していなかったのですから」
「予想できなかったのが問題なのよ! 私たちの管理が行き届いていなかったってことなの! あのような力を持つ者を我が国の懐に入り込ませてしまった! それが私たち王族の力の無さを示してしまっているの!」
慰めようとした侍従の言葉は、火に油を注ぐだけだったようだ。
彼女は深い後悔と、自責の念に囚われてしまっている。この結末に至ってしまったことは悲劇ではあるが、彼の者を討伐したことは紛れもなく彼女の功だというのに。
火山に居たのは、なんてことない賊だった。彼女の抱えている騎士は一人も欠けることなくその拠点を制圧し、生き残った者たちを縄に繋いだ。
予想外だったのは、彼らをそそのかした者がいたことである。賊よりももっと深い場所に拠点を構えていた魔人が住処を荒らされたことに気が付き、交戦することになってしまった。
「くそ、私がこんなところでッ! かくなる上は!」
アルマリス王女の側付きたちは、見事その魔人を討ち取った。こちらの被害も少なくはない状況ではあったが、遥か強大な力を持つ魔人を初邂逅にして討伐したのだ。
それは間違いなく王国史に残る偉業であったが、その魔人が残した置き土産が問題だった。その魔人はマグマの中に身を投げ、火山の噴火を引き起こしたのである。
咄嗟に魔術師たちが沈静化を図ろうとしたが、既にて遅れな状況だと気が付くのに時間はかからなかった。そして、王女だけでも逃がさなければならないと考え、気球の操縦ができる侍従と共に彼女を逃がしたのである。
「お願い、もう少し待ってちょうだい。今噴火してしまったら――」
彼女の願いは、届かない。
轟音と共に、眼前の火山が唸り声を上げた。
アルマリスが呆然としている横で、彼女の侍従は気球を操作し、火山弾や火の粉から守るように気球を火山から遠ざける。直撃が避けられないものについては防御魔法で防ぎながら、王女を安全な場所に運ばんとその腕を振るう。
王女はただ、自分の部下が逃げ惑うのを見ていることしかできない。
彼女の部下たちは魔法を以て溶岩流を防ごうとしていた。山の中腹の少し他より高いところに陣取り、溶岩が脇に逃げていくよう試みていたが、溶岩の量が多すぎた。その少しの膨らみでは溶岩の勢いは止まらない。
防御魔法、土魔法による土壁、全員が必死に生き残ろうと奮闘している。王女の視点は、そこにはなかった。
「あ」
理解して、彼女の心は決壊した。
その頬を流れていく滴よりも早く、それは騎士たちのところに到達した。
火砕流。人の脚では逃げられない速度になることもある、万死の流。
防御魔法にひびが入る。土壁が悲鳴を上げる。
彼女が最後に見たのは、悲痛そうに顔を歪めた自身の部下たちが灰色の波に飲み込まれる姿だった。
簡単プロット
アルマリス王女は、気球から火山を見下ろす。そこに置いてきてしまった騎士のことを案じて。しかし無情にも火山は噴火を始め、零れだす溶岩によってすべてを飲み込んでいった。
思ったよりも時間が掛かりました。35分。火砕流とかについて調べていた時間も含めているので、それを考えるとまだいい方なのかも。とはいえあまりにも普通のお話になってしまったので、明日は一つ二つ捻りを入れたいところです。気張っていきましょう。ぱわー。