残酷描写というか、スプラッタというか、とりあえず注意を。
高原で羊たちが思い思いに草を食んでいる。
本来であればそこから目を離してはならないはずの少女は、岩の上に座り込んで読書に耽っていた。
これは好機だ、と荒くれ者たちは近くの岩陰から機会を伺っていた。
「良いか、羊は売れる。羊毛を作れるし、味はそれ用に育ててねえと保証できねえがそれでもまあ食える」
三人組のまとめ役である男がそう言うと、他の二人は目をぎらぎらとさせて羊に目を向け始めた。
男たちの作戦はこうだ。
羊飼いの少女が見ていないうちに、番犬から一番遠い羊をターゲットにして袋に詰め込む。番犬に気付かれた場合は一番下っ端の男が囮となってその場に残り、他の二人で羊を遠くまで運ぶ。
もし少女に気付かれた場合でも番犬を引き寄せることを優先していい。どうせ少女に戦闘能力はないだろうから。
「気付かれなかったら明日も来るぞ。ガキがやってる羊飼いなんざ、鉱脈みたいなもんだからな」
「なるほど。だから皆さんに見たいな方がこぞってやってくるんですね」
岩陰で隠れていた三人の予期しない場所から声が聞こえて、男たちは肩を跳ねさせる。
声のした方を見れば、先程まで遠くの岩に腰かけていた少女が面白いものを見つけたと言わんばかりの表情でこちらを見ていた。
その自信ありげな表情に少しだけ気圧されたが、しかし相手は女。しかも年端も行かぬ子供である。多少頭が切れるのかもしれないが、三人がかりで掛かればすぐに始末できる。
そんなことを考える彼らは、少女が先程言っていた言葉の意味を深く考えることはない。
三人の男が少女の方に向き直って行動を開始しようとした瞬間、小さな影が一番後ろにいたまとめ役の男にとびかかった。
「がッ」
呻き声が聞こえて、二人の男はそちらに目を向ける。
自分たちをまとめていた男が、首から血を流して倒れていた。そしてそちらを向けば、すぐにその下手人は判明する。
「クソッ番犬か!」
「余所見、しましたね?」
ずぶり、と肉を裂く嫌な感触が男を襲う。
何が起こったか理解しないままそちらを向けば、いつの間にかこちらに近付いて来ていた少女が、男の脇腹に深々と刃物を突き刺していた。
それに気が付いて、ようやく激痛が男を支配し始める。
濁点が付いているような醜い叫び声をあげて腕を振り回す男の暴走をナイフを手放すことで回避していた少女は、残る一人の男が自分に近付いてきていたことに気付かず、その体当たりを諸に食らってしまう。
地面に転がった少女に覆いかぶさるように押さえつけ、最後に残った男は感情を隠すことなく少女にぶつける。
首を絞めて自身を殺しにくる男にありったけの力で抵抗しつつ、彼女は愛犬の名を呼んだ!
「クリフ!」
「アオンッ!」
男の目が見開かれ、そして少女を苦しめていた力が緩まる。
その隙に少女は男の鼠径部へ膝を叩き込んで、悶絶している間に男の下から抜け出した。
番犬の体当たりを食らい、少女に逃げられた男はひどく歪んだ眼を彼女に向ける。
しかしそんなことをしていたから、自分たちを散々苦しめた動物の存在を忘れてしまう。
男の身体が崩れ落ちて赤色が地面に染み込んでいくのを見て、そろそろ場所を変えなければ羊たちの成長に悪影響かもしれないと少女を考える。
「金の生る木なのはわかるけど、なんで皆退治されてるのにウチの羊を盗もうとするんだろう。……あ、来た人は全員殺してるからか」
今度からは一人ぐらいは逃がすようにしないと、と考えて、少女は自分がナイフで刺した男の息がまだあることに気が付いた。
少女は笑みを浮かべる。ちょうどいいと、男に近付いていく。
「逃げていいですよ。そして、ちゃんと同業者の方に伝えてください。来たら殺すって、ちゃんとその実体験で証明してきてあげてください」
既にこと切れた男たちを食み始めた愛犬にあの人だけは食べないでと言いつけて、少女は栞の挟まれた本が置いてある岩場に戻る。
明日からはこの場が少し穏やかになればいいなと思いながら、少女は読書を再開した。
簡単プロット
羊飼いの少女は呼んでいた本に栞を挟んで立ちあがった。不届きものが羊を盗みにやってきたからである。番犬と共に追い払ったが、金の生る鉱脈と思われているのかと首を傾げた。
若干プロットと違いますが、及第点でしょう。最初に視点をずらすのはいつもの癖。というかそっちの方がきれいに書けることが多いんですよね。
タイムは30分強。プロット含めての時間なので、実際は30分ちょうどぐらいだと思います。
昨日から形式を変えていますが、時間を守れないとあんまり意味ないのでどうするか考えものですね。やっぱりプロット5分執筆25分の30分制限とかの方がいいかもしれません。試行錯誤して適当なところを探してみましょう。