ジャンルを曇らせにするか迷った。ミステリーでもないしホラーとも言えないし、ジャンル分けって案外難しいですよね。
眩しくて目が覚めると、冬だというのにもうすっかりと日が昇っていて、学校に行かなければと判断した脳が渡葉の意識の覚醒を促す。
ベッドから飛び降りた渡葉は今日の時間割は何だったかと曜日を確認しようとして、今日が土曜日であることに思い至り、ふぅっと大きく安堵の息をする。そして土曜日ならばともう一度ベッドに戻ろうかと体の向きを変えたところで、ベッドの横のサイドテーブルに絵本が置いてあることに気が付いた。
その本のタイトルは覚えている。渡葉が自分で選んだものだからだ。その内容については途中で眠ってしまったためおぼろげではあるものの、脳裏に微かに残っている記憶が訴えるにはとても面白い話だったようだ。
これは続きを読んでもらわなければと絵本を拾い上げ、渡葉は自室を出て階段を駆け下りる。
「お母さん!」
意気揚々と渡葉はリビングに飛び込んだが、そこはもぬけの殻だった。キッチンを見ても、お風呂場の方を覗いても、渡葉の探し人の姿はどこにもない。ゴミでも捨てに行ったのだろうかと窓の外を見て、渡葉はようやく昨夜に雪が降っていたことに気が付いた。
雪遊びをしたい気持ちもある。しかし絵本を読んでもらうのも捨てがたい。
他の人にとってはどうでもいいような選択であったものの、渡葉にとってはこの先の人生のことと同じぐらい大事な選択の場であった。
「よし、ご飯を食べよう!」
渡葉は一旦決断を保留し、第三の選択肢である朝食を摂ることを優先した。
折角の銀世界なので大きな窓の近くに陣取ってトーストを頬張ることにした渡葉の視界は、向かいの一つ年下の子が雪だるまを作っているのを認める。その男の子が歩き回ったであろうところには家の前の道を含めて足跡が付いており、元気だなあと渡葉は子供ながらにその快活さを羨んでみる。
母親の言いつけを守ってトーストを飲み込んでからそんな感想をこぼした渡葉は、あることに気が付いて窓に張り付く。
「足跡がない」
母親が戻ってこないのはゴミ捨てや買い物などの用事で外に出られないのだと解釈していた渡葉にとっては、それは青天の霹靂だった。
そしてまた自分が大切なことを忘れていたことを思い出す。
「ごちそうさまでした」
トーストを乗せていた皿を自分で洗い、乾燥用の場所に置いておく。
そして彼女はリビングの隣にある応接間に足を踏み入れて、いつものように手を合わせる。
「お母さん、お父さん、私馬鹿で、またお母さんとお父さんがいなくなっちゃったこと忘れてた」
渡葉はそれが精神的ショック故なのか、自分が子供で頭が悪いだけなのか分からない。分からないけれど、彼女はわからないなりにそれを飲み込んで、今日も一人しかいない家で過ごし続ける。
買い物に行こう。帰ってきたら、絵本の続きを読もう。
渡葉は白い息を吐きながら、冬の寒空の下、確実にその道を歩んでいく。
22分クオリティ。ちょっと物足りない。というかお題が難しい。「歩く」ならまだしも、「歩む」はちょっと無理がある。はい、言い訳です。頑張りましょう。ぱわー。