とある渓谷を眼前にした建物の一室。
後ろの窓から谷を一望できるその部屋で、記者会見は行われていた。
「えー、この度、私共はこちらに見えます谷に、安全面の担保及び誘導用のてすりを取り付けたことをご報告いたします」
フラッシュとシャッター音が重なるようになり響く。
全国誌が載せるまでのものではない報告ではあるのだが、その谷は一部のマニアの間で絶景と呼ばれるようになってから久しい。現状では会見をしているこの建物の辺りまでしか入れないため、谷の中にてすりが取り付けられたというのは、一般開放の準備ではないかと先に情報を掴んだ記者たちは考えていた。
「てすりを取り付けになったとのことですが、一般開放はどのぐらいの時期を考えているのでしょうか?」
「いいえ、一般開放の予定は今のところありません」
質疑応答の時間を待てずに一部の記者が投げた質問に、会見の主である地主は丁寧に回答する。
しかしその回答に、記者たちは頭を悩ませることになった。
一般開放の予定がないのなら、なぜてすりなど取り付けたのだろうか。単純にまだ確定していない情報を教えていないだけならばいいのだが、今まで頑なに一般開放を拒んできた地主のことを考えると本当に予定がないのではないか、とも考えてしまう。
その回答は、続く地主の説明で明らかになった。
「えー、みなさまも疑問に思われているかと思いますが、この谷にてすりを取り付けた理由について、ご説明させていただきます。今回、このてすりを取り付けた理由は、接待及び身内がより楽しめるようにという意図での設置であり、一般の方に開放する予定は現状ございません」
「えーと、であれば会見を開く必要がなかったかと思うのですが、どうして今回会見をお開きになったんでしょうか?」
「皆さんに自分たちは安全に中に入って観光できるようになったという自慢のためです」
その発言に、一部の記者から野次が飛ぶ。
肩を落とす他の記者を尻目に、何人かの記者は素早く手を動かしている。
決まっている。炎上記事は金になるからだ。この地主のふざけた会見を記事にすれば、きっとネットで炎上するはず。そうすればページの表示回数が回って広告収入が増える。
それをわかっている記者たちは我先へと自社の有する媒体へ記事を上げるために手を動かしている。
数日後、地主は謝罪会見を開く。しかしその谷が一般公開されることはなく、その地主は遺言まで残して谷を一般公開させないように躍起になっていた。
簡単プロット
その会見はこの辺りの地主をしている男が自分の持っている谷の登山ルートに手すりを付けたことを報告する会だった。
ついにその谷を一般開放するのかという記者の意見に、地主は自分のためだけに取り付けましたと発言し、方々から突っ込まれるのだった。
プロットから馬鹿。だからこそいい。
タイムはプロット抜いて17分弱。頑張れば4000字/hも目指せるかもなので精進を続けます。
ちなみに土日なのに連載の方は何も進んでいない。