館の外に霧が出ているのを見て、画家はその日調達しに行こうとしていた画材を諦めた。流石に霧が深すぎて車で道に出たら事故が起こりそうだし、安全運転をしていたら日が暮れてしまいそうだ。
今日の内に買ってきて絵に手を加えようと店に連絡も入れていたのだが、寝坊して太陽が上がりきった上でのこの霧の深さだったので、今日はもう無理だろうと諦めるしかない。画家の住む地域ではたまに濃霧で外出が難しくなることは起こり得るため、運悪く外に出る予定と重なってしまったことはさておき濃霧自体はそれほど問題視していなかった。
昼食を摂った画家は、未練がましく玄関から少し顔を出して霧の晴れ具合を確認する。
案の定と言うべきか広がった霧はその勢いを弱めることなくその勢力を維持したままで、普段なら見える向かいの通りの家すらも屋根の色が辛うじて見えるぐらいなほどに元気なようだった。
これでは今日中に進めるのは無理だなと悟った画家は肩を落として館に戻ろうとして、玄関扉の横に覚えのない箱が置いてあるのを発見する。
宛名の書いていない箱で、特に置き配を頼んだ覚えもなかったが、しかしその包装についてはよく記憶にある。箱自体は馴染みのある店のもので、画家が今日向かおうとしていた店のものである。状況を考えると濃霧で画家が館を出られないと察した店の人たちが、連絡を入れていた画材を画家が起きるよりも早い時間に届けてくれたのだと予想できる。
支払いは霧が晴れたら向かえばいいかと割り切って、届いた画材を確認すれば欲しかったものが一通り揃っている。気を効かせてくれたのか自分が頼んでいなかったものの欲していたものも添えられていて、画家の気分がぐんと向上する。
そしてその日はあたりが暗くなるまでインスピレーションに身を任せるまま筆を走らせ、後日締め切りギリギリで応募したその絵はいくつかの賞を独占した。
表彰式の日、画材を買う予定だった店の主人と再会して、画家はそういえばあの時の支払いがまだだったと声を掛ける。
あの霧の中届けてくれて助かったと画家が言えば、店の主人は何とも不思議そうな顔で画家の方を見る。聞けば、あの日は濃霧だから来ないだろうと早く店じまいはしたものの、画家の館には行かずに大人しく家に戻ったらしい。
じゃあ誰が画材を届けたのかと戦慄する周囲を他所に、画家は名も知らぬ親切な人に感謝する。
あの幽霊屋敷にわざわざ足を運んでくれるような熱心なファンなら断られてしまうかもしれないが、いつかちゃんとお金を返さなければと画家は思うのだった。
簡単プロット
霧が出ていたため、画家は画材を買いに行く予定だったが明日にしようと考える。
しかし玄関を見てみれば、この霧の中来てくれたのか画材の入った箱が置かれていた。その画材があったおかげで少し手を入れたかった作品を進めることができ、結果その絵が賞を取る。
あの日画材を届けてくれたお店に礼を言おうとしたが、自分たちではないと首を振られる。画家は名も知らぬ恩人に感謝することしかできなかった。
ほぼノータイムで思いついたプロットです。
そのまま書き始めて普通にサッと書き終わりました。タイムは18分弱。クオリティは上々。
ちょっと地の文の書き方が不安になってきたので、またちゃんとしたインプットをしないといけないなと思います(ずっと言ってる気がする)。三人称一元視点だと少しカメラの位置が難しいんでしょうね。一人称に特化するのもありな気はしますが、三人称視点も手札として持っておきたいところです。まあ精進あるのみですね。