本日のお題は「船室」「花束」「つつく」でお送りします。
胸糞というテーマを要求されたので、胸糞注意です。
ミアネにとってワートは、理想とする船長だった。
普段は朗らかで親しみやすく、肝心な時の決断力と真剣さは頼もしい。
そんな人間が齢四十八にして早々に引退するというのだから、惜しむ声はあったものの快く次の人生へと送り出してやろうと盛大な引退式とお別れ会が開かれていたのがつい先刻の事。
自分の片付けの作業を早々に終わらせたミアネはワートに個人的な感謝を伝えるため、この日のために用意した花束を持ってワートの船室へと向かう。船を下りるワートとは違ってミアネはこの先もこの船で仕事を続けるが故について行かせてほしいなどとは言うつもりはなかったが、その胸の内にある感情を預けてしまおうという魂胆は少なからずあった。
もう少しでワートの船室に到着するというとき、自分の目的地の方から声が聞こえていることに気が付く。一つは訪問先の主であるワートの声であることはすぐにわかった。
自分より先に抜け駆けをしたやつがいたのかとミアネは焦って歩を早めるが、よく聞けば話し相手も男性のようで、ミアネは一つ安堵の息を漏らす。次の船長になることが決まっている副船長と引継ぎの話でもしているのだろうかと耳を澄ましてみるが、どうやら船長が話している相手は副船長ではないようである。
「いやしかし、オマエがあんな猫被ってるとはな」
「そうだろ? あいつら、俺のことを善人だと信じてやがる」
話の雰囲気が気心の知れた友人との会話のように思えて、邪魔するのも悪いかと扉のすぐ近くの壁に体を預けながら、ミアネは船室内から聞こえる会話に耳を傾ける。
船員と話すときとはまた違ったぶっきらぼうな話し方をするワートの声は、ミアネにはすごく楽しげに聞こえていた。
「ハッ! 上手く隠したもんだな! 学院を三バツで退学したやつだとは思えねえ!」
「俺も学んだんだよ! やることやるときはちゃんと人を選ぶべきだってな」
「ほう! あのワート君がねぇ! 聞かせてくれよ!」
ミアネは室内から聞こえてくる話と普段のワートの姿が一致せず困惑する。学院を退学になった? あの誰にでも優しくて悪いことなんて全然しない、あの船長が?
自分の脳が理解を拒んでいることを理解して、ミアネはその場を離れようと思った。
一回ちゃんと整理して、飲み込んで、それからもう一度ここに来ようと考えたのである。そうすれば、ちゃんと船長を信じられるはずだから。
「簡単だ。孤立している奴を狙うんだよ。同性から嫌われているやつとか、コミュニケーションが苦手なやつとか。そういうやつらはこっちが優しくするとすぐ懐に入れやがる。そうなったらとことん絞り尽くすのさ」
これ以上聞いたらマズい。ミアネは自分がこのままここにいたら、自分が船長の格好のターゲットになると気付いてしまったからである。
急いでその場を離れようとしたミネアが顔を上げると、
「お前みたいな自分の仕事だけやって協調性のない女の言うことなんて、誰も信じないだろ?」
彼女の知らない顔をする、船長の姿がそこにあった。
いやだ、やめて、怖い、自分はどうなってしまうんだろう。ミアネの心境を知るものは誰もいない。
藪蛇をつついてしまったのだと気が付いた時には、既に蛇に絡め取られていた。いや、そうなるように悪い大人に誘導されていたのかもしれない。
扉が閉まる音がする。花束が床に触れて、廊下には誰もいなくなった。
所要時間25分。プロット通りではあるがクソ。
三題噺ってすごい絶妙ですよね。二つは関連付けれても、あと一つが余りがちです。
それもうまく組み込めるようになれば一つ壁を越えれる気がします。継続は力なり。ぱわー。