駄菓子屋「みちびき」は康太が昔から足繁く通った場所であった。周囲の人間が学年が上がるにつれて近づかなくなっていったその場所に、康太は一人ずっと通い続けていたのである。それは康太が最近のスナック菓子のようなものより駄菓子を好むという嗜好の部分は少なからずあるが、一番は店主兼店番のおばあさんと仲が良かったという点に尽きるだろう。
高校生になって学校からバイトの許可が出た康太におばあさんから声がかかるまで、そう時間はかからなかった。
「こーた、今日はそっちなのかー?」
「おう、俺は今日からばあちゃんと交代で店番をすることになったんだ。悪さしたらオシオキだからな」
「こわーい! あははは!」
康太にバイトをしないかと声を掛けられたのは、何も常連だからという単純な理由ではない。それならば大人になっても足を運んでくれる物好きもいるし、親子二代で贔屓にしてもらっている家族もある。彼を自分の次代として選んだのは、康太が子供たちと触れ合うことを苦としないその性格の面が大きいと言えよう。
そうして子供達と軽口を交わしたり、一緒にヨーヨーやコマで遊んだり、駄菓子屋の領分を超えているようなことまでやった気もするが、特別なことは何もなく康太のバイト初日は終了した。
「お疲れ様、康太。久しぶりに家の掃除が捗ったよ」
「そりゃ良かったばあちゃん。重いもの持ったりするときは言ってくれよ?」
「ふふ、ありがとうね」
シャッターを閉め、電気を付けて最後の仕事である在庫チェックを行う。
賞味期限切れの商品を選り分けたり、なくなりそうな商品を起票したり、店番をするだけが仕事じゃないんだなと康太は自分の思っていた以上に多いタスクに驚きつつも、お婆さんを助けるためだと気合を入れて作業を進めていく。
ーーカタン。
ふと、何かが音を立てていることに気がついた康太は手元に落としていた目線を上げ、店内を見回す。
ーーカタン、カタカタ、タン、コタン。
それがビンのような固いものが揺れている音だと気付いた康太は立ち上がってレジの近くに置いてある飲み物コーナーを確認する。
「うわぁ!」
思わず悲鳴を上げた康太の声を聞いて、奥からおばあさんが様子を見にくる。
そして腰が抜けている康太の視線の先にあるものを見て、
「なんだい、それに驚いたのかい。ただの栄養ドリンクだよ、それは」
「いや、動いてただろ?!」
「んまあ最初に仕入れた時に夜になるとちょっと動くけど気にするなって言われてるからねぇ」
「絶対おかしいだろそんなの!」
さも当然のことだと言わんばかりにおばあさんは落ち着いている。
しかし康太にとっては生まれて初めて遭遇する怪奇現象である。それが栄養ドリンクのビンがまるで踊っているかのように動いている奇妙な光景だったなら、腰を抜かしても仕方がないのではないだろうか。
「絶対変だって! これ、いつ仕入れたんだ?」
「もう二年ぐらい前かねぇ。何人か買っていったけど、別に特に異常はなかったみたいだよ。綾くんは一ヶ月後には大人顔負けのムキムキぼでぃに、明美ちゃんふくよかだったところからスレンダーな体型になっててびっくりしたねぇ。栄養ドリンクみたいなものは信用してなかったんだけど、本当に効果があるものもあるんだねぇ」
「いや、それ絶対おかしいっって!」
その後、康太はおばあさんと栄養ドリンクの販売をやめるよう交渉したのだが、おばあさんが「せっかくうちのような小さいお店に卸してくれてるのに断るのもねぇ」と頑なに拒んだことで流れてしまった。
まあ夜になると栄養ドリンクが踊るぐらいで実害はないのだからいいのかと康太は気持ちを切り替える。
その後、おばあさんがいろんな人から怪しい商品を仕入れていたことが発覚するのは、また別のお話である。
引っ越しの関係でパソコンがネットに繋がらないので書き始める前に2分で作ったプロットも載せておきます。
昔から通っていた駄菓子屋でバイトを始めた康太。
しかし栄養ドリンクが動いているのを発見するのを皮切りに、駄菓子屋が普通の駄菓子屋でないことに気づいてしまう。やめようとするが、店主のおばあちゃんに捕まる。
うん、ガン無視ですね。いつもと違ってiPadなのでスピードが足りず、30分を過ぎてしまったのでオレタタエンドです。iPadに慣れれば旅先とかでもできるようになるのでたまにはいいかもしれませんね。引き続き頑張りましょう。ぱわー。