ソード・ワールド2.5 リプレイ 『煌日の姫と冴月の王子』   作:弧埜新月

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大変、大変期間が開いてしまいました……


村と神殿(後)

「──ところで、クルムオン」

 

 村が見えなくなった頃、トロンベの手綱を引くシャイレーゼは声を上げた。

 

「さっきの質問、なんだったの?」

「水の話ですか?」

 

 半ば定位置になりつつある御者台で揺られながら、クルムオンは首を傾げる。

 

「そうそう、それ」

「簡単な話ですよ。そして、重要な話でもあります」

 

 クルムオンが何でもないような顔をして言う。

 

「姉さんはこちら側の土地が姉さんの領地になる前提で話を進めていましたが……ならなかった場合。川は、神殿領の中を流れることになります」

「……そういうこと」

 

 話が理解出来たシャイレーゼは難しい顔で唸った。

 神殿があくまで旧来の領地を主張して譲らなかった場合、村人達は境界を侵して水を確保しなければならなくなるのだ。他に水源があれば良いが、無ければそれは村の滅亡を意味する。

 実際はそこまでのことは言わないと思いたいが。少なくとも考えておく必要のある事柄だろう。

 

「ねぇ、クルムオン。あの神殿の神殿長ってどんな人?」

「あれ、会ったことありませんでしたっけ」

「この領地を任された時に一度顔合わせをしたくらいね」

 

 以降の実務は全て部下に丸投げしてきたシャイレーゼである。肩書きの割には若く見える、怜悧な男性だったことは覚えているが、その人となりまで理解できているとは言い難い。

 彼女の発言から事情を読み取ったクルムオンは、神殿との橋渡し役がその体たらくでいいのかとは思ったものの、まぁ姉さんだしな、と思い直して(諦めて)質問に答える。

 

「そうですね。伝統を重んじる方で、融通が効かない訳ではないのですが、頑固な方です」

「……どっちなのよ、それ」

「一度こうと決めたことは曲げない方なんですよ。別の切り口を探さないと」

 

 シャイレーゼは眉間に皺を寄せて額を押さえる。弟の言いたいことが分かったからだ。

 

「……神殿長は畑と土地を譲ってはくれなさそうだってわけね?」

「恐らくは」

 

 だったら村との話し合いの時点で決着が付いている筈だ。

 頭を悩ませるシャイレーゼに、ですが、とクルムオンは続ける。

 

「もしかしたら、姉さんなら説得できるかも知れません」

「……どうして?」

「いえ、根拠はないんですけどね」

 

 何よそれ、とシャイレーゼは口を尖らせているが、全くの勘である。しかし、先程の村長とのやり取りを見ていると、もしかしたら、と思えてならないのだった。

 

「今回の交渉の場には、僕は顔を出さないことにしようと思います」

「そうなの?」

「ええ。神殿長なら、僕が修行を中断して姉さんとここにいる理由に勘付きそうな気がしてならないので」

 

 恐らく、自分が修行の途中で王家に呼び戻されたことは神殿長に伝わっている筈だ。クルムオンの知る神殿長は、頑固ではあるが頑迷ではない、どころか非常に鋭い洞察力を持つ人物である。彼に姉と共に行動していると知れた場合、そこから兄の問題まで辿り着いてしまうのではないか、という懸念が頭から離れないのだ。

 まぁ、もう一つの懸念(多分勝手に修行を中断したことを叱られる)もあるのだが、姉は忘れていそうなので黙っておくことにする。

 

「元々交渉は姉さんがするつもりでしたよね」

「当然よ」

「なら、僕は馬車の中で待つことにします。ホリィ、姉さんのフォローは任せましたよ」

「わ、分かりました」

 

 ちょっと自信が無さそうにホリィは頷く。旅に出てから良いところが全くない──少なくとも本人はそう思っている──彼女は少し自信を無くしているのだった。それを汲んだクルムオンは安心させるように微笑み掛ける。

 

「ホリィなら大丈夫ですよ。姉さんの主張に足りない部分があれば補足してくれればいいので。姉さんの暴走を止めようとかは考えなくて大丈夫です」

「それなら、何とか!」

「ちょっと、それどういうこと!?」

 

 ホリィが少し苦笑しながら奮起するように両手を握って見せ、シャイレーゼがそれに怒った振りをして笑う。

 三人の関係は実に良好だった。

 

   ◇◆◇             ◇◆◇

 

 キルヒア神殿は川縁から少しだけ盛り上がった丘の上に建てられている。大きな石造りの正門があり、人の背丈程の石垣がぐるりと敷地を囲っていた。門は開いており、そこから中央に鐘塔を備えた石造りの巨大な建造物が立っているのが見える。その造りは荘厳なものだが、王都にあるキルヒア神殿と比べればいかにも質素で古臭くシャイレーゼには感じられた。

 それはそうだろう。この地の神殿はサンクネック家がまだ一地方領主であった頃から存在しているのだ。その意味では、この国よりも長い歴史を持つ建造物と言える。所々に見える風化の跡や、補修によって明らかに他と色の違う壁などがその歴史の長さを物語っているようだった。

 

「では、僕は馬車の中にいますので」

 

 荷台の幌の内側から、クルムオンが声を掛けてくる。彼の代わりに御者台に座ったホリィが──旅を始めた頃はシャイレーゼ(王族)が歩いているのに畏れ多いと遠慮していた彼女だったが、その愛馬への溺愛っぷりに付き合い切れなくなったのか今ではすんなりと座るようになっていた──分かりましたと頷く。

 門の横に馬車を停めた後は、中にいる筈の修道士や神官を捕まえて神殿長に取次ぎを頼むことになっていた。

 

「これ、門の外に停めちゃっていいわけ?」

「ええ。横の方に馬留めがある筈なので、そこに停めてください」

「りょーかい」

 

 頷いたシャイレーゼは門の横にあった少し土が露出したスペースへ馬車を誘導していく。馬留めに手早く手綱を固定すると、御者台を降りたホリィを伴って門へ向かった。

 門の外側に門衛のようなものが居ないことに不用心さを感じたシャイレーゼだったが、門を潜るとすぐ裏手に人が一人立っているのが見えた。一目で神官と分かる姿の青年は、腰にメイスをぶら下げている。細身の出立だがこう見えて神官戦士であるらしい。馬車の音で訪問は分かっていたのだろう、彼はすぐに二人の姿を認めると、穏やかな表情で声を掛けてきた。

 

「こんにちは。ここはキルヒア神殿です。どなた様でしょうか?」

 

 来客の予定はないのだろう。友好的な態度ながら、その実いつでもメイスで殴打できるよう素人目には分からない程度に身構えているのが見て取れる。中々やるな、と思いつつ、シャイレーゼは腰に差したままの短剣を鞘ごと引き抜いて突き付けた。

 

「私はハイゼン公シャイレーゼよ。神殿長と話がしたいわ。取り次いで貰えるかしら」

 

 青年は短剣を見て僅かに眉を動かすと、少々お待ち下さい、と頭を下げて丁度近くを通りかかった神官を呼び止めた。幾つか指示を出して再びシャイレーゼに向き直る。

 

「只今神殿長に取り次いでおります。それから、応接室の用意もさせています。しばし時間をいただきたく」

「構わないわ。こちらも急に押し掛けたのだし」

 

 慇懃で落ち着いた態度で対応してくる神官戦士に、短剣を仕舞いながら鷹揚に頷いてみせるシャイレーゼ。すぐに部屋の用意は整ったようで、やってきた別の神官に案内される形で二人はその部屋に入った。

 そこは応接用の机と椅子の他はキャビネットなどの調度品が幾つか並ぶくらいのさして広くはない部屋だった。調度品は質素なようで、その実どれも良く手入れをしたアンティークである。仕事柄高価な物を扱い慣れているホリィはそれ等を揃えるのにどれだけの金貨が必要かを瞬時に見抜いたが、ここにあるものは金を掛けて揃えたアンティーク(高価な古物)というよりは、元からあった物を大切に使い続けていたら自然とアンティークの(歴史と品格を感じさせる)ようになっただけ、という風情があった。

 

「こちらに掛けてお待ちください。まもなく神殿長が参られますので」

 

 案内してきた神官に促され、シャイレーゼはホリィが引いた椅子に座った。ホリィ自身は席に着かず、黙って部屋の隅に移動する。シャイレーゼがハイゼン公としてここにいる以上、ホリィは仲間ではなく従者だ。シャイレーゼも弁えているのか、一瞬その背を見送ったのちに何事もなかったように前を向いた。

 

「──ようこそいらっしゃいました、ハイゼン公。どうやら少しお待たせしてしまったようですね」

 

 神殿長だと名乗るその男が入ってきたのは小半刻程経った頃だった。

 名乗った肩書きの割には若く見えるその長身痩躯の男は、シャイレーゼの記憶に残る姿のまま、落ち着き払った怜悧な目で座る彼女を見下ろした。その少し神経質そうな顔からは何の感情も窺えない。シャイレーゼは座ったまま首を横に振った。

 

「いいえ。こちらも急にお邪魔したので。そちらにも都合があったのでしょう」

「そう言っていただけると助かります」

 

 足早に歩を進めた神殿長はさっさとシャイレーゼの向かいに腰を下ろした。

 

「お話を伺う前に、こちらからもご相談がありまして」

「相談ですか」

「ええ。恐らくそちらのご用件もこれに関することかと思うのですが」

 

 そう前置きをして、少し眉を(しか)めたシャイレーゼに構わず神殿長は話を始める。

 話はまさに葡萄畑のことだった。

 

「近隣に広がる葡萄畑は全て神殿の物です。葡萄畑は領地の境界であった(・・・・)、トリスク川の内側一杯に広がっていました」 

 

 気の所為ではないのだろう、『であった』の部分で僅かに語気を強め、神殿長は話す。

 

「ですが、一月程前に川は流れを変えてしまい、畑を半分に割るような形となってしまった。幸い、葡萄と杭の一部が流された位で人的被害はありませんでしたが、少々困ったことになりまして」

「困ったこと?」

 

 白々しくシャイレーゼは問う。彼が何に困っているかなど分かりきっていた。

 

「流れが変わってしまったので、川は境界として用を成さなくなってしまったのですが……以来、トリスク村の方々は、川向こうになってしまった半分を村の物だと言い始めるようになりまして」

 

 ほとほと困っているのだ、とばかりに神殿長は額を押さえ、溜め息を吐いて見せる。

 

「そこで、どうか葡萄畑全てが神殿の物であると、王家の見解として明言し、布告して頂けないかと思いまして」

「……」

 

 それは想定通りの要求だった。

 ここから、この頑固だという彼にこちらの要求を飲ませなければならない。

 シャイレーゼはぎゅっ、と眉根を寄せると、交渉を始めるべく口を開く。

 ──思っていたよりも遥かに低い声が、出た。

 

「……ここに来る前に、件の畑の様子を見てきました」

「そうなのですか」

「神殿側は、随分と荒れた様子でしたが」

「それは、確かに。ここ数年、畑を管理できる者がおらず、荒れるに任せてしまっていますが」

 

 眉一つ動かさずに聞いていた神殿長は、それとこれとは関係がありません、と少し勿体を付けるように首を振った。

 

「あの畑は神殿のもので、神殿の財産です。元々がそうだったのですから、川向うだろうが関係ありません。村の行いは、いわば人が財布の中身をこぼした時、自分の足元に転がってきた金貨をそのまま懐に収めるようなもの。それを、持ち主の前で堂々と行っているのです……道理が通らないと、お思いにはなられませんか」

 

 蒙を啓かんと説法でもするかのように、神殿長は滔々と語った。シャイレーゼは思わず口許を引き結ぶ。

 彼の言うことは、間違いではない。神殿の物を村人が勝手に占有し、管理できていないからと手入れをして権利を主張しているのが現状である。

 だが、ここで正しい見方だからと易々諾々と神殿の主張を受け入れるのでは彼女がここに来た意味がないのだ。

 

「神殿の言い分は理解できます。ですが、古来より神殿との領地の境界は川の流れであったと認識しています。それが、川の流れが変わったことで曖昧になってしまった……曖昧なまま勝手に畑に手を入れたことは、謝りましょう」

 

 そう言って、シャイレーゼは頭を下げた。王族がいきなり頭を下げたことで面喰らったように、神殿長の表情が初めて動く。

 それを気配で察したシャイレーゼは、彼が口を開く前に、ですが、と顔を上げて叩き付けるように強い視線を向けた。

 

「川の流れが変わる事など今までなかった話。未聞の事態なのですから、話し合いをするべきと考えます」

「……」

 

 軽く目を見開き、そのまま数秒。睨むシャイレーゼの視線を受け止めた神殿長は、ややして小さく溜め息を吐き出す。重く、疲労を吐くかのようなそれ。

 

「……村との話し合いならば既にしています。結果は平行線でしたが」

 

 それは、意見を違えるつもりはないという意思表示だった。

 

「王家の布告ならば、彼等も逆らわないでしょう」

 

 ()むような、それでいて刺突剣の如き鋭さを持つ視線。それを正面から圧し除けるように、シャイレーゼは重く言葉を吐いた。

 

「……あの畑が神殿の物だと証明して。それで、あなた方はどうなさるおつもりですか?」

「どう、とは?」

「畑を荒れたままにしておくのですかと訊いているんです。結局、畑に手を入れる余力はおありにならないのでしょう?」

「それは、此度の件とは関係ありません」

 

 表情を取り繕うことを止めたのか、神殿長は何故それが分からないのか、と言わんばかりの顔をする。

 

「己の財産を守ろうとするのは当然のことではありませんか」

「その財産を無駄に持て余しているだけではないのですか」

 

 すぐさまシャイレーゼは切り返す。そのこと自体は否定できないとでも思ったのか、神殿長は僅かに視線を逸らした。

 

「いつまでも放置しているつもりはありません。今は人手が足らないだけです」

「今は、ですか」

 

 ようやく弱味を見せたとばかりに彼女は噛み付いていく。

 

「なら、いつ人手が足りるようになるんですか? 一年後ですか? 五年後ですか? そうこうしている内に畑は荒れ果ててしまいますよ」

 

 シャイレーゼの追求に、神殿長は苦々しい顔をするだけで答えはしなかった。

 彼自身も、この問題を好きで放置している訳ではないのだろう。その解決のための糸口が、おそらく彼の手にはないのだ。

 これを機、と見たシャイレーゼは身を乗り出した。

 

「何も、全て寄越せと言っているわけではありません。川で隔てられた、こちらの領地側の分だけでいいのです。そちらで管理できる見通しが立たないのですから、こちらにある分だけでも村で管理した方が、このまま朽ちさせるより余程マシと言うもの」

「管理出来るか出来ないかで所有権を語るのは間違っています」

 

 対する神殿長は、苦々しいものから呆れたものに表情を変えて首を横に振った。

 

「その理屈で言えば、この世から全ての盗人は存在しないことになります」

 

 盗まれた時点で管理しきれていないわけである。盗品は盗んだ盗人が管理しているので、所有権が盗人に移ってしまうという訳だ。

 

「それでも管理できていないことを根拠に寄越せと言うのであれば、そうですね。ヤルマの北方の森、グロスデンの東にある山地、パルダ沼」

 

 ほんの僅かな時間考えた神殿長が挙げた地名は、どれもハイゼン公領内のもので、どれも地形の問題や単純な人員の不足などで人の手による管理が行き届かず、蛮族や山賊の潜伏先となっている場所だった。

 

「これらの土地はそちらで管理が出来ていないようです。我々キルヒア神殿から神官戦士を出して管理するので、神殿に譲っていただけますか」

「それは……」

 

 出来るわけがない。言葉を詰まらせるシャイレーゼを、神殿長は冷たい視線で見下ろしていた。

 

「同じことですよ。あの土地や畑は代々神殿が守ってきたものです。おいそれと手放していいものではないのですよ」

「むぅ……」

「そもそも、領地の境を川の流れによって決める、という決め方が今の時代にそぐわないとは思いませんか」

「……というと」

 

 完全に失速してしまったシャイレーゼは椅子に座り直すと、伏して獲物の隙を窺う虎のような目で神殿長を見返す。

 

「その取り決めが成立した当時は、その周囲には何もありませんでした。だから、目印として分かりやすい川を使った。ですが、今は川の側に我々の畑があり、こうして川の流れが変わったことで利害について対立が生じています。境としていた川が動かなければ、こうして貴女様がここに来ることは無かったでしょう」

「それは、そうでしょうけど。では、何か代案があると?」

「柵でも立てましょう。前の流れの通りに」

 

 それは、土地も渡すつもりはないということで。

 

「立てる位置は元のこちら側の川岸沿いでいいでしょう。従来通りの土地と畑が維持できればこちらとしては十分なので、元々川だった土地はそちらへ差し上げますよ。我々は強欲ではありませんので」

「……それだと、川はどうなります?」

 

 若干、こめかみを引き攣らせつつ、シャイレーゼは問うた。

 

「こちらの領地内の話になりますから、こちらで責任を持って管理させていただきましょう。また同じようなことが起きては事ですから、治水などもしなければなりませんね。費用は嵩みますが、仕方ありません」

 

 財政に余裕があるわけではないのですが、と頭痛を払うように頭を振って見せると、ああ、そうだ、と一つ付け加える。

 

「今後は河川と柵の確認と監視のために神官戦士を巡視させることにします。周辺で不審人物を見掛けたら捕えるようにもさせますので、間違われたくなければ不用意に柵を越えないよう、村にお伝えください」

「ちょっと、それって!」

 

 これまで頑張って繕って来た余所行きの態度をかなぐり捨てて、シャイレーゼは弾かれたように立ち上がる。弾かれた椅子がけたたましい音を立てて横転するが、神殿長は気にした風もなく、らしくない仕草で肩を竦めた。

 

「境に川が無くなりましたので、害意あるものの侵入が容易くなりましたから。自衛策を講じるのは当然です」

「水は!? 村人達は川の水を利用しているのよ!?」

「上流か下流に向かえば宜しいのでは? 流れが変わっていない場所もありますから。上流は私も把握していませんが、下流であれば、石橋の近辺などは元の流れのままです」

 

 それはつまり、水場までの距離が十倍以上伸びるということだ。

 

「そんなの、村人達が納得するわけないじゃない!」

「そう言われましても。そこを納得させるのが領主の責務なのではありませんか?」

「ふざけたこと言わないで! 絶対暴動が起きるわ!」

「それも、治めるのは領主の責務でしょう……私達としても大変遺憾ですが、これも神殿の土地と財産を守るためです。致し方ありません」

「土地と財産って……これまで放置してきたようなものがそんなに大事なわけ!? せめて畑を畑らしくしてから言いなさいよ!」

「畑の経営状態は関係ないと申し上げました。更に言えば、既に実例があり、相手が対策をしないと言うのですから、こちらも何か対応せざるを得ないというもの」

「だからって──」

 

 すげなく淡々と応える神殿長に、シャイレーゼが更に激発し掛けたところだった。

 

「──姫様、失礼します」

「へっ……ひゃわぁ!?」

 

 音も無くシャイレーゼの後ろに近づいたホリィが、拾い上げた椅子の座面で彼女の膝裏を突いた。

 膝かっくんである。

 バランスを崩したシャイレーゼの尻を戻した椅子で受け止めると、ホリィは静かに頭を下げた。

 

「気をお鎮めください。あまり感情的になられては、御目も曇ろうというもの。纏まる交渉も纏まらなくなりましょう」

「……」

 

 咄嗟に文句を言い散らそうとしたシャイレーゼは、その言葉にむっすりと頬を膨らませて口を噤んだ。熱くなっていた自覚はあったのだろう。

 ホリィは神殿長にも深々と頭を下げる。その丁寧で落ち着いた所作は何処か風格を感じさせるもので、普段の何処か小動物じみていて親しみのある仕草はすっかりと形を潜めていた。

 

「差し出口を致しました。大変申し訳ございません」

「いえ。私も正直埒が明かないと思っていたところなので、助かりました。貴女は……」

「姫様の従者をしております、ホリィと申します」

「ホリィ?」

 

 その名に覚えがあったのか、神殿長が片眉を上げた。

 

「ホリィ……トゥエーデでしょうか?」

「はい。ホリィ・トゥエーデでございます」

「……成る程」

 

 首肯いたホリィに何かを察した様子の神殿長は、掌でシャイレーゼの隣の椅子を指し示す。

 

「どうぞ、お掛けください」

「そんな、私如きが御同席するなど、とても……」

「ちょっと」

 

 固辞するホリィを視線から庇うように立ち上がったシャイレーゼが神殿長を睨み付ける。

 

「彼女は私の従者よ。話は私がするわ」

 

 神殿長は睨め付けてくるシャイレーゼと、少し困った風な顔をしたホリィの顔を交互に見比べると、そうですか、と頭を下げた。

 

「どうやら早合点が過ぎたようです。謝罪しましょう」

「え、ええ。分かってくれたなら、それでいいわ」

 

 あんなにも畑に関しては頑なだった神殿長があっさりと頭を下げたことに拍子抜けしたシャイレーゼは、振り損なった矛先を納めて大人しく椅子に座り直した。

 釈然としない様子の彼女を置いて、神殿長は所在無さげな顔で佇んでいるホリィに再び顔を向ける。

 

「先程の諫言は見事でした。主人、それも王族に対して、あのように振る舞える者はそうはいないでしょう」

「そんな、滅相もありません。私は従者として当然のことをしたまででございます」

「いやちょっと待ちなさい。主人諌めるためにその膝の裏に椅子ぶつける従者が何処にいるっていうのよ。もし転んで頭でも打ったらどうするつもり?」

 

 文句が自分に向いたホリィは、それまでの凛然とした雰囲気を崩すと地の覗く顔で苦笑いを浮かべて頬を掻く。

 

「いえ、姫様なら大丈夫かな、と……」

「ど・う・い・う・意味よそれは……ッ?」

「ひぇ!?」

 

 練気(【マッスルベアー】)まで発現させて怒気を向けてくるシャイレーゼに、ホリィは冬眠明けの熊と鉢合わせした子栗鼠のように身を竦ませた。

 神殿長は小さく咳払いして二人の注意を自分に向ける。

 

「結構。聞いていた噂以上の方々のようですね」

「どんな噂よ」

「答えて差し上げても構いませんが、時間は有限です。優先することがあるのではありませんか、ハイゼン公」

 

 神殿長の言葉にシャイレーゼは面白く無さそうに唇を引き結ぶと、諦めて姿勢を正した。会談が再開する気配を感じ取ったホリィは黙って一礼し壁際へ退がろうとするが、その背を神殿長が呼び止める。

 

「待ちなさい」

 

 肩を小さく震わせたホリィは困惑した表情で振り返る。

 

「ええと……私は……」

「今の貴女がハイゼン公の従者であるのは理解しました。しかし、ハイゼン公はとても民草想いで意志の固いお方ですが、少々熱くなり過ぎるところがあるようです。貴女のような従者が補佐をした方が話が円滑に進むと思うのですが」

 

 言われたホリィはそっとシャイレーゼの顔を伺った。それに、シャイレーゼは小さく頷きを返す。彼女はここに来る前、クルムオンがホリィに自分のフォローを頼んでいたことを思い出していた。

 言われたのは癪だが、話が平行線のまま進む気配がなかった自覚は彼女にもある。このまま議論を再開すればまた同じ轍を踏むだろうことも。

 シャイレーゼは自分の横を手で示しながら言った。

 

「私が許可するわ。それと、何か思ったことがあれば今言ってちょうだい」

「わ、分かりました」

 

 ホリィはおずおずとシャイレーゼの示した場所から一歩引いた位置に立ち、小さく息を吐くと神殿長を向く。面を上げた彼女の立ち振る舞いに、もう隙は見えなかった。

 

「──では、僭越ながら。幾つかお伺いしとうことがございます」

「どうぞ」

 

 神殿長は変わらぬ表情で、だが何処か穏やかにホリィの言葉を受ける。

 

「神殿長が守りたいとお考えなのは、土地と畑の所有権……ということで、相違ないでしょうか」

「ええ」

「そして、畑を荒れたままにしておきたくはないものの、人手が足りず今は出来ない、と」

「その通りです。巡視位はできますが、畑の整備までは手が回りません。ましてや運営など……。可能になる目処も今の所は立っていないのが現状です」

 

 質問を予期していたように澱み無く答える神殿長に、ありがとうございます、と頭を下げたホリィはシャイレーゼに向き直った。

 

「私からは以上でございます、ハイゼン公」

「え、もういいの?」

「はい。十分かと」

 

 そう言ってホリィは引き下がる。これ以上は余分であると、そう言わんばかりのあっさりとした態度に、シャイレーゼは意図が読めずに思い切り眉根を寄せた。

 だってそうである。ホリィの質問は神殿長の主張を再確認しただけだ。何か新しい情報が得られたわけではない。意見主張を述べたわけでもないので、何一つ状況は変わっていないと言えた。

 

 ──神殿は畑と土地の所有権を手放すつもりはない。それは分かっていたことよ。だと言うのにホリィはどうして……畑のことにしたって、荒れたままにしたくないのは当然……手が足りないってのも神殿長が元々言っていたことだし……。

 

 そこまで思考を回した所で、はたとシャイレーゼは顔を上げた。神殿長が相変わらずの表情で彼女を見ている──待っていることに気付いたシャイレーゼは居住いを正す。

 そうだ。神殿長が繰り返し主張しているのは畑と土地の所有権だけだった。村人が畑を耕す行為自体には一切言及していない。柵を作る案を出してはいたが、それも畑は自分達の物だと言い張る村人達を物理的に近づけないようにするためだ。巡視の話は微妙であるが、不法侵入を防ぐ目的であればそうおかしな話でもない。

 つまり、ひょっとすると。神殿長は、土地と畑が神殿の物であれば、村人が耕しても文句は言わないのではないか?

 

「提案があります」

 

 素早く考えを組み立てたシャイレーゼは、再び余所行きの声に戻すと毅然と言った。

 

「聞きましょう」

 

 空気が変わったことを察した神殿長がそう鷹揚に返す。先程までのギスギスとしたやり取りはなんだったのかと言いたくなるような態度だが、その様子も自分の考えが間違っていないことの証明であるようにシャイレーゼには思えた。

 

「取引をしませんか」

「……取引ですか」

「はい。あの畑を我々に、あの村に預けてはくれませんか」

 

 その言葉に、神殿長は目を細める。

 

「……預けるとは?」

「村の人間で畑を手入れし、収穫する。醸造も村で行う。その利益を神殿にも還元する。畑は神殿の持ち物とし、村で委託を受けて手入れを行う形です」

「それを村が納得しますか? 村は、川のあちら側の所有権を主張していましたが」

 

 神殿長は予め用意していたように質問を投げ掛けて来た。いや、実際用意していたのだろう。恐らく彼は、このテーブルに着く前から畑の半分を村に貸すことを解決策の一つとして考えていたようにシャイレーゼは感じていた。その上でこちらを試しているのだとも。シャイレーゼは無意識に膝の上に置いた拳を強く握り締めた。

 

「畑の所有権が神殿のままであれば、畑への地税はなくなります。その上で、収穫出来る畑も増えるのであれば文句は出ないでしょう」

「増える? それはつまり……」

「はい。私は、神殿の所有する葡萄畑全ての借用権をいただきたいと考えています」

「畑全ての借用権、ですか」

 

 シャイレーゼの言葉に、神殿長は吟味するように顎に手を添える。畑全てを要求してくるとまでは思っていなかったのか、それすらも想定内だったのかはその仕草からは判然としない。構わず続けた。

 

「神殿側としても、所有権はそのまま、荒れた葡萄畑が元に戻り、収入もできるのですからいいことではないでしょうか。双方に利益のある話だと思いますが」

「ふむ……確かに、神殿と村双方に利益のある話でしょう。しかし、ハイゼン公の利益が薄いように思われますが?」

「そうでもありませんよ。幸い、作物は葡萄ですから。葡萄酒の方から税は取れます。転作*1は許可しないでしょう?」

「当然でしょう」

 

 きっぱりと言い切った神殿長に、シャイレーゼは笑顔を見せて頷く。

 

「その点は村人にも徹底させます。もし不安であれば神殿側から定期的に巡視を出していただいても構いませんよ。頻度は高くなくても良いので。相手は畑ですから、それでも十分抑止力になると思いますが」

「いえ……そこまでは不要でしょう。借用条件を纏めた証文に転作を認めない一文があれば、それで十分です」

「……と、言うことは」

 

 借用条件を纏めた証文、という言葉に反応したシャイレーゼを見て、神殿長は初めて小さく笑った。

 

「ええ。葡萄畑の所有権全てが神殿に帰属するのであれば、こちらからは他に何も言うことはありません。その話を受けましょう」

「ありがとうございます!」

 

 神殿長が提案を呑んだ。話を望む方向に持って来れたことを安堵しつつ、シャイレーゼは頭を下げて礼を述べる。それに神殿長はやんわりと首を振った。

 

「礼は不要ですよ。これは双方に益のある話なのですから」

 

 言いながら、彼はテーブルの隅に置いてあった呼び鈴に手を伸ばす。

 

「では、早速証文を作りましょうか。条件はもう少し詰める必要がありますが──」

「お待ちください」

 

 それを、シャイレーゼが止めた。今度こそ完全に想定外だったのだろう、神殿長は中途半端な姿勢のまま目を丸くして彼女を見ている。

 だが、ここで交渉を終わらせて細かい条件の擦り合わせに移るのは困る。

 まだ、勝ち取るべき内容があるのだ。

 

「もう二、三提案があるのですが」

「まだ、何か?」

 

 少し困惑した様子の神殿長に、シャイレーゼは自信に満ちた顔で頷きを返す。

 

「まず、そちらの領内を流れる川の治水についてですが──」

 

 彼女は、勝利を確信していた。

 

 

   ◇◆◇             ◇◆◇

 

「──それで、川の治水工事と境界を示す柵の設置、村から神殿までの道の整備と途中に必要な橋の設置まで、全部姉さんが請け負ったんですか?」

 

 村へ戻る道すがら、馬車が橋を渡るのを見計らって幌から顔を出したクルムオンは、変わらず愛馬の手綱を引いている姉にそう問い掛けた。

 

「ええ、そうよ」

 

 あからさまな呆れ声を出した筈なのだが、帰って来たのはやり切ったぜ、とでも言いたげな誇らしげな返事だった。自分がおかしいのかと横を見れば、御者台に座るホリィが諦めたような、申し訳ないような何とも言い難い顔で見返してくる。どうやら自分の感覚は間違っていないらしい。

 仕方ないので、ホリィから受け取った証文を見てすぐ思ったことを言ってやる。

 

「これ、財源はどうするんです?」

「うぐっ」

 

 言われたシャイレーゼの足が止まる。あれは痛い所を突かれたというよりはそもそも考えて無かった顔だ。視線を目まぐるしく右往左往させながら愛馬に引かれるまま歩く──トロンベは急に立ち止まった主人を一瞥するなり、無視して主人を引き摺るように道を歩き始めていた。賢い馬だ──姉を見てそう判断する。

 しかしすぐに何か思い付いたのか、彼が何か言う前に視線を定めたシャイレーゼは取り繕うように振り返った。

 

「そこはほら、これから葡萄酒の分税収が増える訳じゃない? それで賄えば……」

「へーぇ?」

 

 随分と面白いことを言う。隣で身を震わせるホリィを無視してクルムオンは問い返した。

 

「葡萄畑は借地となりましたから地税は取れませんよね。得られるのは酒税だけだと思いますが、どれくらい課すつもりですか?」

「それは……相場くらいで」

 

 目を逸らしつつ、シャイレーゼはか細く答えた。そういう反応をする辺り、一応相場位は知っているらしい。そしてそれが財源として当てにするには心許ないことも。

 相場は地税で収量の四割から六割。酒税は販売益の一割位が普通である。収穫量と販売益なので一概に比べられないが、当初の彼女の算盤では両方が収入として計上されていた筈だ。

 クルムオンは態とらしく溜め息を吐いた。

 

「姉さんのことです。どうせ向こう二年は酒税を取らないつもりでしょう?」

「当然じゃない。村にもそう約束しちゃったし」

「畑に掛かる税を免除する、という話でしたから、酒税は別だと言うことはできると思いますけどね」

「そんな騙し討ちみたいなこと出来るわけないじゃないの。あの話はそう言うのも全部含めてのつもりで言ったし、向こうだってそう受け取った筈よ」

 

 つい先程の狼狽えようが嘘のように胸を張り、きっぱりとシャイレーゼは言い切った。

 

「こういうのは理屈じゃないのよ。そういう狡っからいことをすると信頼なんて簡単に崩れていくんだから」

「まぁ、それは分かりますけどね。領地の財政と経理を担当している役人からの信頼は崩れ去りそうですが」

「むぐっ……」

 

 今度こそ痛い所を突かれた顔をしてシャイレーゼは押し黙った。痛い所も何も先程から同じ話しかしていないが。

 だがこれ以上この話を続けても財政に明るくない姉が頭を抱えるばかりであまり意味はない。なのでクルムオンは話を切り上げて訊きたかったことを訊くことにした。

 

「一旦財政の話は置いておくとして。どうして自分でやるなんて言ったんです?」

「それも村長と約束したからだけど? 一緒にいたんだから聞いてたでしょ」

「治水と橋のことなら確かに言っていましたね。でもそれは葡萄畑を領地にできたら、という話でしたよね?」

「いや、まぁ……そうなんだけど」

 

 向けられる冷たい視線から逃れるように顔を背けつつ、彼女は唇を尖らせた。

 

「治水をうちでやれば、神殿長も村人が川の水を使うことに口出しし難いかと思ったのよ」

 

 ──やはり、姉は残念な人のようだ。

 クルムオンは頭痛を堪えるように眉間を指で押す。

 

「……話を聞く限り、神殿長に村人の川の利用を制限する気は無かったと思いますよ」

「はぁ? 村人は上流か下流に行けって言ってたのは神殿長なんだけど?」

 

 その時のことを思い出して腹が立って来たのか、シャイレーゼの声のトーンが上がった。民想いなことは結構だが、容赦はしない。

 

「それは畑に手を出されないよう、神殿領への立ち入りを禁止する措置を講じた場合の話です。畑の使用許可があるなら関係ありませんね」

 

 そう言いながら肩を竦める横でホリィが小さく頷く気配がする。

 彼の知る神殿長であれば、畑の所有権が脅かされない限り、村人に余計な苦労を負わせてまで川の使用を禁じたいとは考えない筈だ。実際その場でやり取りを見ていたホリィにもそう感じられたのだろう。彼女から報告してもらった、畑の借用権の話が決まった後の川の使用について神殿長が何ら意見を出すことはなかったという事実がその考えを裏付けている。

 言われてみればそうかも……? と気勢を萎ませて頭を抱えている姉にクルムオンはもう一度溜め息を吐く。それは昔からよく見てきた光景だった。どうにもこの姉は一度こう、と認識してしまったら自力でその思い込みを修正出来ないところがあるように思う。

 

「まぁ、川と橋の方はいいでしょう。確かに村人との約束もありましたし。次は柵と道の方を訊きましょうか」

「そっちは……その、柵の方は、境界線をちゃんとした形で引き直すのは私も賛成だったし……」

 

 シャイレーゼは指先を突き合わせながらもごもごと弁明する。

 

「だったらこっちでやっちゃった方が村人が使いやすいような出入り口とかも作りやすいかな、と……で、出入り口と橋を作るんなら道も合わせて作った方がいいなと思って……」

「まぁ分からないでも無いですけど。神殿は丸儲けですね。神殿長も今頃上機嫌で葡萄酒の瓶でも開けてるんじゃないでしょうか」

「え、あの人、そういうことするようには見えなかったんだけど」

「ああ見えて、そういうところのある人なんですよ」

 

 目を見開いて顎でも落としそうな姉の様子に、クルムオンはおかしそうに苦笑する。

 

「もう決まってしまったので今更変えることはできないでしょう。後で代官なり財務担当の文官なりにこってり絞られてください」

「うぇー……」

 

 シャイレーゼは絞められる鶏のような声を上げた。早くも頭に浮かんだ部下の顔に文句を言われているのだろう。その心底嫌そうな顔を見るに、日頃から小言を言われ続けているに違いない。

 そして部下達は散々に文句を言いながらも忠実に振られた仕事(無茶振り)を熟すのだろう。

 

「全く。姉さんは全然経営者には向いてないですね」

「そんなの今更じゃないの。だからクルムオンが継いだ方がいいって」

「ひーめーさーまー?」

「ちょっ……これくらいはいいじゃないの別に!」

 

 確かに、今の彼女は財政を見る気がなく経営する知識も全く足りていない。彼女に国の舵取りをさせたら早晩国庫は崩壊するだろう。

 だが、人はついてくる。

 今回の一件で、間違いなく村人はシャイレーゼを支持する。当初望んだ形では無いものの、同等以上の成果を持って帰ってきたからだ。

 もう一方の神殿長も、話を聞く限り最低限の合格判定は出したように思う。支持とまではいかないが、思ったよりも気に入られたのではなかろうか。シャイレーゼの出した道を作る案を受け入れたのがその証左だろう。道を通す為には一部とはいえ畑を潰す必要がある。彼の知る神殿長であれば、それを容認などしない筈だったから。

 経営手腕は後で幾らでも磨けるし、知識も学べば良い。だが、人を惹きつけ動かす力は生来なもの。努力だけでは如何ともし難いものだ。

 姉にはそれがある。

 

「これはフォローが大変そうだ」

 

 しかし楽しそうではある。

 クルムオンは苦言を呈しつつも口許に笑みが垣間見えるホリィと、頬を膨らませて子供のように不貞腐れるシャイレーゼを眺めながら忍び笑いを漏らすのだった。

 

*1
葡萄ではなく違う作物を作ること




プレイしている時は気づかなかったんですが、ログを見返すと話が途中で戻ってしまってよくわからない会話になっている部分とかあったりしたんですね。
途中まで書いて、それに気付いて全消しして整理して……としている間に仕事が修羅場を迎えたりコロナに罹ったりで、気付けばこんなに期間が空いてしまいました。以上言い訳でした。

プレイヤーが選んだのは村人、神殿双方に損のない選択肢でした。
他の方がどのようにプレイしているかは分かりませんが、我々は基本、選択肢を挙げる前にこうしたいんだけど、という話が出てそれに近い選択肢の結果に進み、ロールプレイをする、という形で進んでいます。
結果としてシャイレーゼが村、神殿双方でしっかりロールプレイしてくれたので、本来この選択肢は結末を左右する支持ポイントの増減がないんですが、私はシャイレーゼにボーナスを付けました。
プレイヤーがやりたいことは可能な限り許可するべきですし、結果いいロールプレイにはそれなりの報酬(もしくは罰則)があって然るべきですよね、と思ってます。それが今後どう影響するかは知りませんが。
ちなみに、私はそれでシナリオを崩壊させたことが少なくとも3回あります。いくらネタとして面白くてロールプレイがよくても、デュエリストと陰陽士は存在を赦してはいけないと思います。
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