ソード・ワールド2.5 リプレイ 『煌日の姫と冴月の王子』   作:弧埜新月

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後編(文章量三倍)です。
文章が上手く区切れるようになりたいですね(白目)


堰き止めしものとは?(後)

「何なの、あの態度。本ッ当にムカつくんだけど」

「まだ言ってる……急な依頼だったから仕方ありませんよ」

「あれはただ面倒臭いだけよ。嫌っそうな顔しながら勿体ぶった言い方しちゃってさぁ……うるせー仕事しろっての!」

「あはは……」

 

 後ろで文句を垂れ流し続けるシャイレーゼにホリィは苦笑いを浮かべていた。呆れた顔でクルムオンが取り成そうとするがまるで効果がない。余程先程の神殿の対応が気に食わなかったようだった。

 蛮族の骨を回収した一行は神殿にそれらを持ち込んだのだが、交代したのか入り口で出迎えた神官は最初訪れた時に対応した者とは別の者だった。

 そして、神経質そうなその神官は文字通り草の根を掻き分けて少し薄汚れたシャイレーゼとホリィを見て露骨に顔を顰めると、即刻追い払いに掛かったのである。コボルドの骨を見せても、その程度の蛮族なら大したことはないからその辺にでも打ち捨てておけ、神殿は忙しいのだからそんなことで一々煩わせるな、という趣旨のことをこの三倍は持って回った言い回しで嫌みったらしく言ってのけ、取り付く島もなかった。

 勿論激怒したシャイレーゼは持っていた骨で件の神官の顔面を物理的に凹ませた後、身分の証を立てる短刀を振り翳して神殿長を呼び付けると、頭痛を堪えるような顔で神官に癒しの魔法を掛ける彼に骨を押し付けて戻って来たのだった。中々の暴挙である。

 

「姫様、もうその辺りで。そろそろ巣が見えてきてもおかしくありませんから」

 

 追跡している足跡から視線を外さないままホリィが声を潜めて嗜めると、シャイレーゼはようやく口を噤んだ。

 今彼女達がいるのは川から離れて少し山の中へ分け入った辺りだった。鬱蒼と木々の並ぶここは人の手が入った様子はなく、藪や下生えも伸び放題となっている。

 神殿に寄るついでに馬車を村に預け直して戻ってきた一行は、そんな環境の割に順調に追跡を進めていた。それはホリィが優秀であることもそうだが、それ以上に相手が全く通った跡を隠すつもりが無かったことが大きかった。木や藪は力任せに薙ぎ払われた痕が随所に見られ、下生えも無造作に踏み潰されている。これならホリィでなくとも多少心得のある者なら見失ったりはしないだろう。

 

「……何か見つけましたか」

 

 背負っていたクロスボウを下ろす彼女に、クルムオンもまたフリッサに手を掛けながら小声で問い掛ける。ホリィは小さく頷いた。

 

「別の方へ向かう足跡です。枝の斬り口も、追いかけていたものより新しい。この先、そう離れていない所に巣があるのは間違い無さそうです」

「確かに。これは愚痴ってる場合じゃないわね」

 

 ホリィの言う痕跡を認め、シャイレーゼも表情を改める。

 

「敵の数とかは分かりそう?」

「正確にはなんとも。ただ、一体ということはない筈です。足跡から見て大柄な蛮族でしょう。武器種は、藪の払い方を見るに剣持ちがいると思われます」

「そこまで分かるものなんですか」

 

 心得のないクルムオンはその分析に感心した声を上げた。ホリィは大したことじゃありませんよ、と謙遜を入れつつ、推察の続きを口にする。

 

「ただ、恐らくこの先に黒幕はいませんね。いるのは使い捨ての駒に過ぎないでしょう」

「どうしてそう思うの?」

「不自然だからです。壊れた道具や死体を放置したり、こんな無遠慮に動き回ったりで隠蔽することなんて全く頭にないのに堤だけは回収している。何者かの指令を受けて行動しているのでしょう。そして、指示役は側にいない」

「成る程、指示者が側にいれば細かい粗も指摘できますからね。これは、その指示者の上にも更に別の指示役が居そうな雰囲気ですね……」

 

 ホリィの推察を引き継いだクルムオンが、明らかになっていない敵の規模を想定して顔を(しか)めた。元々それなり以上の大きさだろうとは思っていたが、それよりも更に大きそうだと想像出来てしまったからだ。

 それを見て、しかしシャイレーゼは肩を竦めて気楽な調子で言った。

 

「ま、それならそれで、今はその末端の奴しか居ない訳でしょ? とりあえず後のことはその末端をボコしてから考えましょ」

「まぁ、確かにそうかも知れませんね」

 

 姉の言い分に、クルムオンは小さく破顔した。そういうことよ、とシャイレーゼも強気な笑みを見せる。

 

「これから蛮族の巣に突っ込む訳でしょ。最悪長期戦になるかもだし、なるべく消耗は抑えた方がいいと思うのよね」

「それはまぁ、確かに」

「それならこういうのはどうかしら」

 

 言いながら、彼女は二人に考えていたプランを提示する。

 

「二人は防護の魔法が使えたわよね」

 

 シャイレーゼの言葉に二人は頷いた。クルムオンはキルヒアの神官(プリースト)として【フィールド・プロテクション】が、ホリィは操霊術師(コンジャラー)として【プロテクション】が使える。基本的に同じ魔法は重ね掛けしても効果が強くなったりはしないものだが、ほぼ同じ効果(受けるダメージを1点軽減する)を持つこの二つの魔法は違う系統の魔法だからか重ね掛け出来ることが知られている。

 

「それをどっちも私に掛けて。私は【ビートルスキン】(防護点+2)だけ使って突撃するから。名付けて『超・硬い姉作戦』!」

 

 ドヤ顔で放たれたダサい作戦名に二人が唖然とする間にシャイレーゼは追加で指示を出していく。

 

「ホリィはその後、射撃で牽制。クルムオンは後ろで待機して魔法で援護して。時折でいいわ。なるべく温存する方向で」

「そんな、姫様お一人でなんて、危険過ぎます!」

「そうですよ。敵の規模もまだ分からないのに。前回以上の数に囲まれたらどうするんですか? 僕も前に出て戦います」

「大丈夫よ。楯と鎧を装備した騎士の防御力を信じなさい。ロクな技術もない蛮族相手なら囲まれたって跳ね除けられるわよ」

 

 難色を示す二人に対し、シャイレーゼは自信満々に楯を掲げてみせた。しっかりと手入れされた騎士楯は己を傷付けるものなどないとばかりに鈍い光を反射している。

 

「その防御力を更に上げるんだもの。攻撃を集中させなきゃ意味がないわ」

 

 むぅ、と頬を膨らませるホリィを横目に、シャイレーゼは弟に目を向けた。

 

「貴方を後ろに残すのだってちゃんと考えがあるのよ?」

「そうですか? 僕にはただ敵中に突っ込んで思う存分剣を振りたいだけに思えますけど」

「こらこら、姉を何だと思ってるのよ……今回、私は他の練気は使わないから、多少囲まれる時間が長くなると思うのよ。そういう時に冷静に戦況を見れるクルムオンが後ろで構えててくれれば安心だし、貴方なら万一後ろに抜けられても対処できるじゃない?」

「それは……はぁ、分かりましたよ。その作戦に乗ってあげます」

 

 諦めたように肩を落とすクルムオンに、ヨシ、と握った拳を軽く突き上げるシャイレーゼ。その視線の先に、ふと森に相応しくない白いものが映った。

 

「っと、噂をすればかしら?」

 

 見れば少し進んだ所の少し盛り上がった地形の上にボルグが一体立っていた。その後ろには地面へ潜るように空いた洞窟の入り口が見える。どうやら目的の巣を発見したようだった。

 ボルグ側も三人に気付いたようで、洞窟の中に向けて何事かを叫んでいる。仲間を呼んでいるのだろうか。

 

「もう猶予は無さそうね。数も少なそう……じゃあ手筈通りに!」

「キルヒアよ、守護を!」

 

 言うなり飛び出すシャイレーゼに、クルムオンの【フィールド・プロテクション】が掛かる。間違いなく突っ込むと分かっていた彼は姉がボルグを発見したと同時に聖印を握り締めていたのだ。

 

「増援には十分気を付けてくださいよ!」

ザス・ヴァスト・レ・アレ……

 

 走る背中にクルムオンが声を投げる一方、まだシャイレーゼの取る行動が身体に染み付いていないホリィが慌てて唱え始めた詠唱を聞きながら、【ビートルスキン】を発動させたシャイレーゼが抜剣する。素早い彼女の接近に気付いて斧を持ち上げたボルグに、全力で剣を叩き付けた。

 

「はぁぁぁぁあッ!」

 

 騎士の剛剣がボルグの斧の柄を両断する。だがそれで剣先が僅かに逸れたか、白い毛が僅かに散ったばかりで肉を断つには至っていない。シャイレーゼは小さく舌打ちすると、素早く後ろへ飛び退いた。狼狽えつつも咄嗟にボルグは反撃したが、間合いの変わってしまった獲物での反射的な攻撃など当たる筈もない。シャイレーゼは一旦そちらからの興味を外し、洞窟へと視線を向けた。そちらから迫る気配を感じたからだ。

 そこにいたのはやはりボルグだった。一体だけだが、歩哨に立っていたボルグよりも一回り身体は大きく、しっかりとした鎧を身に付けている。恐らく統率個体なのだろう。その手には、人間が両手剣として使うような剣がそれぞれ一刀ずつ握られていた。

 

「──【プロテクション】!」

 

 二刀のボルグが武器を振るう寸前で、ホリィの魔法が完成する。シャイレーゼは二人の魔法と自身の防御力を信じて振り下ろされる銀閃に向けて楯を構えた。

 

「ウォォォオオオッ!」

 

 咆哮を上げながらボルグは渾身を持って右手の剣を叩き付ける。シャイレーゼの掲げる楯ごと粉砕せんとした一撃は、しかし硬質な音と共に弾かれた。その手応えに驚きつつもボルグはすかさず左の剣を横薙ぎに振るうが、動揺の所為か初手に比べ些か勢いが足りない。

 

「この程度!」

 

 冷静に剣を合わせたシャイレーゼは、衝撃の瞬間に引きながら捻りを入れて受け流す。自分の連撃が相手に然程の痛痒も与えられなかった二刀持ちは悔し気に唸ると一歩距離を取った。

 

「ふふん。全然大したことないわ。この作戦は悪くないわね」

 

 剣を構え直し、シャイレーゼは不敵に嗤う。言葉は分からずとも馬鹿にされたのは理解したのか、二刀のボルグは犬歯を剥き出しにした。

 

「でも、アンタはちょっとばかり頑丈そうね」

 

 シャイレーゼがそう呟くと、後ろで微かに意味の取れない(魔動機文明語の)声がする。そのことに笑みを深めると、シャイレーゼは剣を振り被って一歩踏み出した。

 横に。

 

「先ずは数を減らすッ!」

 

 面喰らったのはそろそろとシャイレーゼの横に回ろうとしていた歩哨のボルグだった。すっかり意識は二刀持ちに向いたと油断していたのだろう。彼女の視線はずっと二刀持ちに固定されていたから。

 視野の広さは戦士の必須条件である。じっとして隠れ潜むならまだしも、忍び歩き程度で逃れられると思うとは。騎士を馬鹿にするにも程がある。

 

「ッ!? グァッ!?」

 

 せめて相打ちとばかりに短くなった斧を振り上げたボルグの膝を、狙い澄ましたボルトが撃ち抜いた。さっきの一言で、ちゃんと彼女には伝わったらしい。もんどり打って倒れ掛かるボルグの背に、シャイレーゼは容赦なく剣を叩き込む。

 

「グォオオオオッ!!」

 

 仲間の敵討ちのつもりか、それともその隙を好機と見たか。憤怒を浮かべた二刀持ちがシャイレーゼに斬り掛かった。振り切った体勢では流石に躱わせない。一刀に振り回した楯を打ち付けて逸らし、もう一刀には一歩飛び込むように前に出ながら鎧の肩をぶつける。激しい火花が散ったが、重ね掛けされた防護魔法に護られた鎧は刃を通さなかった。流石に打撲ぐらいはしただろうが、そんなもの戦闘中なら怪我にも入らない。

 

「甘いってのよッ!」

 

 更に一歩、力強く踏み込んだシャイレーゼが剣を逆袈裟に振り上げる。後先考えないような力任せでありながら、目に焼き付く程鮮烈な一撃が二刀持ちボルグの鎧に護られていない喉を削ぎ斬った。

 

「ガ……ボ……!?」

 

 剣を取り落とし、ゴボゴボと鳴る喉を抑えながら後退さるボルグ。驚愕に目を見開く彼の前で、シャイレーゼはもう終わったとばかりに血払いをする。その姿を見て、ボルグの血の失われゆく頭は一瞬で沸騰した。

 まだ死んでいない。その油断、貴様の命で取り立ててやる。

 傷口から血を噴出させながら、ボルグは残る右手の剣を砕けよとばかりに強く握り締める。その一撃の為に残る命を捧げんと、剣を大上段に振り上げた蛮族は、直後に血走った目の中心から一本のボルトを生やして終わった。

 

「ホリィ、お見事」

 

 崩れ落ちる蛮族に背を向けて、シャイレーゼは矢を放った従者を褒める。

 

「お褒めに預かり光栄です、姫様」

 

 ホリィは少しくすぐったそうな顔をした後、綺麗なカーテシーを返した。

 

「今度はきっちり当てたわね」

「はい、前回のような無様を晒さず済んで良かったです」

 

 胸を撫で下ろすホリィ。先程の彼女の射撃はタイミングも狙いも完璧だったと言える。思い返してみれば、前回の矢はそもそも飛ぶ以前だったので彼女の言っていた通り本当に不良品だったのかもしれない。

 

「殿下もお見事でした」

「僕は今回大したことをしてないですよ。大体姉さんとホリィが片付けてしまいましたから」

 

 そうクルムオンは謙遜する。しかしシャイレーゼは気付いていた。最初に倒したボルグが少し離れた所へ吹き飛んでいる。二刀持ちのボルグを斬っている隙に、死力を尽くして立ちあがろうとした斧持ちを魔法で吹き飛ばしたのだろう。彼は姉の出したオーダーをきっちりとこなしていたようだった。

 

「さて、残るは奥だけど……あら?」

 

 洞窟の奥に目を向けたシャイレーゼは、倒れた拍子に飛び出したのか、二刀持ちの懐から覗く金色の物体に気付いた。

 

「これは……」

「矢……でしょうか?」

 

 それは不思議な矢だった。後端部には金色に輝く矢羽が付いている一方で、鏃は表面に赤錆が浮き、先端が欠けている。なんともちぐはぐな一品だ。

 

「クルムオン、分かる?」

「いえ……皆目見当もつきません。彼が弓を使うようには見えませんし、そもそも鏃がこれでは実用に耐えないでしょう」

「うーん……なんかの儀式の道具とか?」

「儀式……それなら尚更、もっと状態のいい物を使いそうな物ですが」

 

 クルムオンはシャイレーゼから受け取ったそれを検分し、首を傾げている。だがすぐに諦めたのか小さく溜め息を吐いた。

 

「駄目ですね。後で調べることにして、これは一旦持っておくことにしましょう」

「それがいいかしらね」

 

 ホリィがすかさず布を取り出したので、クルムオンは彼女に矢を預けることにした。ホリィは丁寧に矢を布で包むと、荷物の中に仕舞い込む。

 

「さて、じゃあ改めて奥に進む訳だけど……何も見えないわね」

 

 洞窟の中は光源がないようで真っ暗闇であった。ボルグは暗闇でも昼と同じように目が見えるため灯りを必要としないのだろう。

 

「……一応、目視できる範囲では、敵はいないようです」

 

 ホリィが洞窟の奥へ目を凝らしながらそう報告した。シャイレーゼは一瞬首を傾げたか、すぐに合点がいく。

 

「あぁ、そっか。ホリィはルーンフォークだから暗くても見えるのね」

「はい。ですので、私一人であれば問題なく偵察出来ると思いますが」

「それは危険だから駄目」

 

 ホリィの提案をシャイレーゼは即座に却下する。

 

「何か灯りになるものはないのかしら?」

「でしたら、お渡ししている冒険者セットの中に松明がございますが」

「そうだっけ?」

「物資の確認位ちゃんとしてくださいよ……」

 

 既に松明を取り出しているクルムオンの呆れ声に、シャイレーゼはバツが悪そうに唇を歪めた。

 

「他の光源としては、私が使える魔動機術に【フラッシュライト】がありますが……」

「へぇ? それはどういう魔法なの?」

「【フラッシュライト】を使用すると、マギスフィアが投光器に変形して前方を照らします。効果時間は訳六時間ですね」

 

 ホリィは自分の右耳に付けたマギスフィアに触れながらそう説明する。

 

「松明に対するメリットは手が開くことです。デメリットは私の前方しか照らせないことですね。魔力消費は大して大きくありません」

「成る程。そういうことなら、ホリィにお願いしようかしら。松明を持つと手が塞がっちゃうし」

「承りました」

 

 ホリィは頷くと、小さな声で魔動機文明語のキーワードを呟く。

 

「【フラッシュライト】」

 

 彼女の声に反応したマギスフィアの前面が変形し、漏斗状の穴が開くとその中心から眩い光が溢れ出した。シャイレーゼの想定よりも拡がりのある白い光が洞窟内の暗闇を追い払う。突然の光に驚いた蟲達が、慌てたように暗闇の残る奥へと逃げて行く様が克明に見えた。

 

「うん、これなら大丈夫そうね。ホリィ、最後尾からついてきて。クロスボウはいつでも撃てるようにね。クルムオンは真ん中。念の為松明をすぐに出せるようにしておいて」

「承りました」

「了解です」

 

 頷く二人を引き連れて、シャイレーゼは抜き身の剣を携えて洞窟の奥へと足を踏み入れる。ここは敵の本拠地なのだ。何が出るか分かったものではない。三人は警戒と緊張を滲ませながらゆっくりと進んで行った。

 

 の、だが。

 

「──ぼっ……ぼくたちは、悪いコボルドじゃないワン!」

 

 予想よりも単純で底の浅い洞窟の最奥にいたのは、ぷるぷると身を寄せ合いながら震えるもふもふとした犬頭の集団だった。全部で六体だろうか。一様に薄汚れて見窄らしい見た目をしている。

 武器どころか何一つ身に付けたものはなく、酷く怯えた様子をしていた。中には三人を見るなり土下座して器用に白旗を振っている者もいる。今し方声を張り上げたのもコイツだった。

 

「審議!」

 

 一旦コボルド達を捨て置いて、シャイレーゼは二人を振り返る。

 

「……どう思う?」

「少なくとも、敵意は感じられません……武器の類もないようですし」

「恐らくは、ボルグ達に使われていた奴隷階級の蛮族達ではないかと」

「まぁ、多分そうよね……この子達があの現場で作業させられてたのかしら」

「か、川のことは好きでやったんじゃないワン!」

 

 現場ということに反応したコボルドの一匹が金切り声を上げる。それを皮切りに彼等は口々にボルグ達の非道を訴え始めた。

 

「アイツらに命じられて、仕方なかったんだワン!」

「お休み貰えなくて辛かったワン!」

「お肉食べたかったワン!」

「アイツら、ぼくたちを殴る以外何もしなかったんだワン!」

「無茶苦茶危険な作業だったワン! コボ一とコボ助が崩落に巻き込まれてぺしゃんこになっちゃったんだワン!」

「堤切らされたコボ治郎も押し流されて行方不明になったワン!」

 

「そ、そう……」

 

 あまりの勢いについ引き気味になるシャイレーゼだったが、コボルド達は止まらなかった。先頭にいる彼女をリーダーと思ったのか一切に彼女に纏わり付く。蛮族に囲まれる形になってしまったが、流石に自分の胸程の身長で短くふさふさした尾を目一杯振りながら円な瞳で自分に縋ってくる無手の相手に剣を振れる程、シャイレーゼは冷酷では無かった。

 

「もうアイツ等の下で働くのは嫌だワン!」

「もし良かったら雇ってくれないワン?」

「三食昼寝付きを希望するワン!」

「ぼく、料理だったら得意ワン!」

「ぼくはつまみ食いが得意ワン!」

「マンドレイクでもタビットでも料理するワン!」

 

「三食昼寝付きなんて温い仕事があるか! アンタは仕事しなさい! アンタも変なもん料理しようとすんな!」

「た!?」

「わ!?」

「ば!?」

 

 アホなことを言い出した三匹の頭に、シャイレーゼは脊髄反射で拳を叩き込む。剣は振れなくても鉄拳──手甲を嵌めているので文字通りの──は振り下ろせたようだ。

 

「特にタビット*1なんか絶対ダメよ! ミートパイなんか作ったら流石に庇えないからね!?」

 

 デカいタンコブを作って撃沈したコボルドにそう喚くが、白眼を剥いた彼等には多分届いていないだろう。愛くるしい犬相手でもツッコミの為なら容赦なく暴力を振るうのが彼女である。残りのコボルド達は素早く部屋の隅に寄ると縮こまって震え始めた。

 シャイレーゼは彼等が離れたのを幸いとばかりに大きく息を吐き出す。

 

「……どうする? 討伐する必要まではないと思うんだけど」

「既に半分討伐してませんか?」

「茶化さないの。ちゃんと加減くらいはしてるわよ」

 

 シャイレーゼは小さく咳払いする。舌をだらんと垂らしてひっくり返っているコボルド達からは故意に視線を逸らすことにしたようだ。

 

「現実的なのは、トリスク村で雇ってもらうことでしょうか……?」

「まぁ、これから葡萄畑の世話とか、やることは増えるだろうし人手は幾らあっても足りないでしょうけど」

「葡萄ワン?」

 

 シャイレーゼの言葉に、縮こまっていたコボルドが反応する。彼は満面の笑み──犬面だが愛嬌のある顔立ちなのでよく分かった──を浮かべて言った。

 

「ぼくたち、葡萄を食べるのは得意だワン!」

「食べるな」

「えっ」

 

 シャイレーゼが一睨みすると、コボルド達は再び震え上がった。仲間の二の舞になることを恐れているのだろう。だがそれでも彼等の純朴な顔には疑問の色が強い。

 

「ぶ、葡萄って、食べるものじゃないのかワン……?」

「いや、食べるものではあるのだけど」

「村の葡萄は醸造用です。食べてもあまり美味しくはないですし、食べられても困ります」

 

 クルムオンが笑いを噛み殺しながらそう言う。しかしコボルド達は目をぱちくりとさせるばかりだった。その内の一匹が意を決したように言う。

 

「ちょっとくらい美味しくなくても大丈夫だワン! 食べられないよりはずっとずっといいワン!」

 

 余程悲惨な生活を送っていたのだろう。どのコボルドも毛皮の上から肋骨が浮き出るほどにがりがりに痩せている。食べられるものはすぐ食べる、という思考に寄るのは仕方ないことかも知れなかった。

 だが、そうではない。そうではないのである。

 

「うーん……醸造って分かります? お酒を作ることなんですが」

「お酒ワン? お酒も飲むのは得意ワン!」

「飲むのではなくてですね……いいですか。山を下って川沿いに進んだところに村があります。そこは、これから葡萄を育ててお酒を作り始めようとしていまして。仕事が増えるので、今までより人手が必要になるんですよ。そこへ君達を連れて行こうかと考えてます」

 

 柔らかい口調で、しかし真っ直ぐ彼等を向いて伝えられるクルムオンの言葉に、コボルド達も真剣に聞き入っているようだった。

 

「見たところ、あの村には君達のような蛮族はいなかった。僕達が口添えすれば、君達を置いてはくれると思います。ですが、その先君達には強い不信感を向けられるでしょう。長い間真面目に働いて、彼等の信頼を勝ち取らなければなりません。それが出来なければ、君達は早晩放逐。最悪殺されてしまうこともあるでしょう。そのハードルは、きっとあのボルグ達よりも低い」

 

 君達に出来ますか。そう問い掛けるクルムオンの目をじっと見返したコボルド達は、互いに視線を交わし、そして大きく頷きあった。

 

「大丈夫だワン! この生活から逃れられるならなんでも耐えるワン! もう、蛮族の下にはいたくない!」

「そうですか」

 

 決意に満ちた声を聞き、にこりと微笑んだクルムオンは姉を見る。

 

「だ、そうですよ」

「え、どうしてそこで私を見るのよ」

「村に住まうとなれば、それは新しい領民になるということです。領主(姉さん)裁可(お墨付き)が必要でしょう。今回のように特殊な事情のある(蛮族が初めて村民になる)場合は、特に」

「それを言われちゃあ、ねぇ……」

 

 シャイレーゼは億劫そうに頭を掻くと、小さく咳払いして表情を改め、コボルド達の前に立った。徐にバスタードソードを引き抜くと、どずンッ! と音を立てて地面に突き刺し、その柄に手を置く。コボルド達は尻尾を股に挟んで涙目になった。

 

「我! ハイゼン公シャイレーゼの名の元に宣言する!」

 

 構わず、シャイレーゼは声を発した。

 

「汝等を奴隷身分から解放する!」

「!?」

 

 その声量にか、それともその言葉の中身にか。コボルド達は驚いたように目を見開いて、まじまじとシャイレーゼを見た。

 

「汝等を搾取していた蛮族どもは滅んだ。汝等は自由の身なれど、我に臣従せんと言うならば、我は庇護を与えよう」

 

 そこにいるのは感情豊かな冒険者でもなければ、ボケ倒すコボルド達に愛の鉄拳を落とす暴力女でも無かった。

 冷徹且つ凛然と彼等を見下ろす、一人の若き統治者がそこにいた。

 

「問おう。汝等は我に臣従を誓うか?」

 

 その声は、自由だと宣わったその舌の根も乾かぬ内に、再び彼等を支配せんとするものだ。

 その目は、己が絶対の存在だと、お前達よりも遥か上の存在だと無言で突き付けてくるものだ。

 それは、かつての支配者によく似たものだった。

 けれど、何処かが違うと。そう確かに感じさせるものであった。

 

「……誓います」

 

 気付けば、コボルド達はそうシャイレーゼに頭を垂れていた。怖くはある、だが身体に震えはない。彼女に従うことこそが自分の為になると、彼等は不思議とそう確信していた。

 

「宜しい」

 

 シャイレーゼは、にこりともせずに頷いた。

 

「汝等に我が庇護を与え、汝等が民として我が領地に住まうことを許す」

 

 一匹一匹の顔を覚えるかのようにゆっくりと見回し、最後に一言付け足す。

 

「──励めよ」

『ははぁー……!』

 

 何を励めば良いのか分からないまま、コボルド達は平伏した。それを見、シャイレーゼは小さく息を吐くと、よっ、と声を上げてバスタードソードを引っこ抜く。

 

「こんな感じでいいかしら?」

「え、ええ……良いですけど」

 

 姉の二回の豹変っぷりに毒気を抜かれたクルムオンは、二度三度と瞬きしてその顔を見返した。だが、弟の反応にきょとん、としてみせるその顔はいつもの姉のものである。クルムオンは恐る恐る言った。

 

「……何か変なものでも食べましたか?」

「ちょっと、どういう意味よそれは!?」

「いえ、普段とのギャップがありすぎてちょっと……」

「何よ、少し格好をつけてみただけでしょうが」

 

 あまりの言いように、シャイレーゼはぷんすこと怒る。そこに先程までの厳然とした雰囲気は欠片も無い。

 

「姫様、略式ではありますが、こちらを」

「流石ホリィ、準備がいいわね」

 

 ホリィがそっと差し出したそれは、コボルド達がシャイレーゼの臣下であることを証明する文を(したた)めた羊皮紙だった。内容を確認し、一文を書き足してから彼等全員分の枚数があるそれら全てに署名する。

 

「これを持っていれば、最低限無下にはされないでしょう。無くしちゃダメよ?」

 

 まだ事の成り行きについていけていないのか、呆然としているコボルド達に一枚ずつ羊皮紙を手渡し──気絶している者の分は腹の上に置いておいた──する。

 受け取ったコボルドは羊皮紙に目を落とす。そこには、これを持つコボルドをハイゼン公領民として認めること、これを持つコボルドをハイゼン公シャイレーゼの名の元に庇護すること、そして何か悪事を働いた際にはシャイレーゼ直々に討伐しに来ることが書かれていた。

 

「ひぇ」

 

 最後の一文の筆跡が違うことを鑑みなくても、目の前の領主が何を書き足したのかは一目瞭然であった。

 

「それ位書いといた方が村人も安心して受け入れてくれるでしょ。私の庇護を理由に好き勝手することは許さんってことだからね」

 

 領主は悪戯っぽく片目を瞑って笑う。

 

「大丈夫よ。貴方達が悪事を働いたって報告を受けてもいきなり討伐とかはしないから。まずはちゃんと調査からするわ」

 

 コボルド達はもう一度顔を見合わせると、腰につけたよれよれのポーチに大切そうに羊皮紙を仕舞い込んだ。それが今後の自分達の生命線であると理解出来たからだ。

 

「よし、これで貴方達は正式に私の領民ね。領民になったからにはきっちり税を納めて貰うから」

「ワン!?」

 

 驚愕の表情を浮かべるコボルド達に、庇護だってタダじゃないのよ、とシャイレーゼは返す。

 

「その反応だったら税の説明はしなくて良さそうね? 流石に可哀想だから次の人頭税位は待ってあげるけど……大丈夫。うちの領は今まで反乱とか起こしたことないから」

「うぅ……」

 

 がくりと肩を落とすコボルド達に、クルムオンが笑い掛けた。

 

「まぁ、大丈夫ですよ。姉さんの領地は悪い噂を聞かないですし、真面目に働けば払える額の筈です。変に特別扱いされない方が村人との軋轢も生まれにくいでしょうし」

「うぅ……分かったワン」

「頑張ってみるワン……」

「……何でクルムオンの時の方が素直なのよ」

「それは単純に、姫様の方が殿下より怖いからでは?」

「ホリィ?」

「ぴぇ!?」

 

 青筋を浮かべたシャイレーゼに、ホリィがコミカルに声を出して身体を震わせた。その姿を見てコボルド達は僅かに気を緩ませる。

 

「──でも、本当に頑張った方がいいですよ」

 

 そこへ、静かに歩み寄ったクルムオンがこそりと言う。

 

「悪意を持った人間は、姉さんよりも怖いですから」

「……」

 

 その、目の笑わない笑顔に、コボルド達は生唾を飲み込んで一斉に頷いた。

 

「ちょっとー? うちの領民虐めないで欲しいんだけど?」

「一番虐めたのは姉さんだと思いますよ?」

「何ですって?」

「まぁまぁ姫様、落ち着いてください。殿下もその辺りで……」

 

 苦笑いを浮かべるホリィに、シャイレーゼは鼻を鳴らした。そうして、今のやり取りを見て程よく空気の弛緩したコボルドに目をやる。

 

「そういえばなんだけど。貴方達をこき使ってた連中ってどんな奴? さっきボルグは倒したけど、それで全部なのかしら」

「倒したボルグは二匹ワン? だったら、ここにいたボルグはそれで全部だワン。他の所は知らないワンけど……」

「他の所?」

 

 シャイレーゼは眉を(ひそ)める。

 

「他にも同じように蛮族が居座ってる所があるの?」

「らしいワン」

「詳しくは知らないワンよ。ぼくたち、したっぱすぎて教えてもらえないワン」

「そう……」

 

 予め予想はしていたとはいえ、大した情報を持っていないことに少し肩を落とす。改めて周囲を見てみるも、隅に食い掛けと思われる猪らしき残骸があり、寝床のつもりか血がべっとりと付いた熊の毛皮が敷いてある以外はものの見事に何も無かった。野蛮で知性の欠片も感じられない。そこに何かの情報が隠れているとはとてもではないが思えなかった。

 そこで、一匹のコボルドが思い出したように言う。

 

「でも、そうだワン。どこかにボルグがもう三匹はいる筈だワン」

「ボルグが?」

 

 それはこの間襲撃してきたボルグの数と符合する。

 

「元々、ここにはボルグが五匹いたワンよ。でも、何日か前に三匹出て行ったワン。あのデッカい奴、手下が減ったってもの凄く怒ってたワン」

「コボ衛門……ちょっと煩いけどいい奴だったワン……」

 

 コボルド達がしんみりと肩を落とす。どうやらその時の癇癪で仲間が一匹犠牲になったようだった。

 可哀想だとは思いつつも、シャイレーゼは情報を得ようと口を開く。

 

「そのボルグ達、何で出て行ったかは分かる?」

「うーん……呼ばれたとか言っていたような気がするワン」

「呼ばれた? 誰に?」

「そこまでは分からないワン。アイツが怒鳴ってたから、ぼくたち怖くて隅っこで震えてたワンよ」

 

 コボルド達は互いに視線を交わして他に何か覚えてないかと問い掛け合っているようだったが、それ以上口を開く者はいない。シャイレーゼはそう……と腕を組んで隣で考え込んでいるクルムオンに問い掛けた。

 

「どう思う?」

「……流石に、蛮族を使う組織がこの辺りで幾つも動いているとは考えたくはありませんが……これだけで断定はできません」

 

 そう、クルムオンは首を横に振る。慎重な彼は情報が殆ど歯抜けな現状で下手に推論を付けてしまうことで、判断の幅を狭めてしまうのを懸念しているようだった。

 一方でとっととケリを付けたいシャイレーゼは少し焦れているようで、膝で軽く弟をつつく。

 

「何か現状を打開するいい手は無いかしら。他にここと同じような拠点があるなら対処しないとじゃない? でも虱潰しってわけにもいかないし」

「現状ではなんともですね。他の場所を見ればもう少し対処法も分かるかもですが……今は代官に連絡してそれらしい所を捜索させるしかないんじゃないでしょうか」

 

 結局情報が無さすぎて無難な解決策しか出せないのだろう。ホリィの方も見てみるが、彼女も首を静かに横に振った。

 

「手詰まりかぁ……」

「役立たずでごめんワン……」

「あぁ、良いのよ。貴方達が知らないのはしょうがないことだし……そうだ、ちなみになんで川の流れを変えたとかは」

「それも、知らないワン」

「まぁ、そうよね……」

 

 シャイレーゼはがりがりと頭を掻いて溜め息を吐いた。

 

「気は進まないけど、今は保留にするしかないかしら」

「では、しばらくはこのまま旅を?」

「そうなるわね……でもその前にこの子達を村に連れて行ってあげないと。トロンベも迎えに行かないとだし」

 

 ほら、寝てる子達を起こしなさい、とシャイレーゼが声を掛けるが、気絶したコボルド達は他のコボルドが幾ら揺すっても目を覚まさない。

 

「……おやぁ?」

「姉さん、強く殴りすぎたのでは?」

「姫様……」

「ちゃんと手加減位してるから! ホリィもそんな目で見ない!」

 

 胡乱な目を向けてくる二人に怒鳴り散らすと、シャイレーゼは手近なコボルドの側に片膝を付くとその両肩をがっしと掴む。

 

「こう、気合いが足んないのよ、気合いが。もっと腰を入れて強く揺さ振れば……」

「姉さんの馬鹿力でやったら今度こそ死んじゃいますって。全く……ここは僕に任せてください」

 

 呆れた顔で姉を嗜めたクルムオンは、聖印を握り締めると、反対の手を前に翳して厳かに言葉を紡ぐ。

 

「キルヒアよ……この者達に正しき目覚めを」

 

 その目覚めの神聖魔法(【アウェイクン】)の効果は絶大だった。あれ程揺さぶってもだるーん、と舌を出したまま白目を剥いていたコボルド達が一斉に目を覚ましたのだ。ぴょこり、と上体を起こすとぱちくり、と目を瞬かせて辺りを見回している。

 

「お見事。それも魔法ね?」

「えぇ。邪悪な眠りから解放したり、起き上がる力すら尽きた者に再び立ち上がる為の活力を与えたりもできますよ。少々魔力を使いますが……」

 

 拡大*2して使ったので、今日の魔法は打ち止めですね、と肩を竦めるクルムオン。

 

「ですが、どうやら僕達が思っている以上に彼等は弱っているみたいですね……それこそ、姉さんが小突いただけで昏倒する位に」

「そう……村に着いたらまずは休ませないとかしらね」

 

 頭の中で村に着いてからの動きを修正しながら、シャイレーゼはコボルド達を振り返った。

 

「ほら、村へ向かうわよ。しんどいかもしんないけど、もう少しだけ我慢して」

「分かったワン……!」

「頑張るワン……!」

 

 彼女の言葉を聞いて動き出したのは起きて話を聞いていたコボルド達だ。彼等は口々にそう言うと、ボロボロの身体を引き摺るように歩き出す。確かに、度重なる虐待と栄養失調は彼女の想像を超えて彼等の身体を蝕んでいるようであった。

 一方、話について行けていないのはさっきまで気絶していた(アホ言って張り倒された)コボルド達だ。その内の一匹が、急にやる気──もしかしたら染み付いた奴隷根性の発露かもしれないが──を出した同胞に話し掛ける。

 

「どういうことワン?」

「ぼくたち、人間の村に住めることになったワン」

「ほんとかワン?」

「ほんとだワン。その村は、これから葡萄を育てるみたいだワン」

 

 仲間の言葉を聞いて、何も知らないコボルドは顔を綻ばせた。そのコボルドはつまみ食いが得意だと宣わった者で、

 

「じゃあこれからは、毎日葡萄を食べて食っちゃ寝できるワン!?」

 

 キラキラと顔を期待で喜色満面に輝かせ、そう言った。

 シャイレーゼはずんばらりん、と剣を抜く。

 

「処す? 処す?」

「と、突然どうしたんだワン!? ぼく、なんか悪いことしちゃったかワン!? 勘弁して欲しいワン!」

 

 青筋だけ浮かべた無表情で迫るシャイレーゼの前で即土下座するぐうたらコボルド。

 彼女達から戦々恐々とした表情でじりじり離れる残りのコボルド達を見ながら、クルムオンとホリィはどうしたものかと肩を竦めあったのだった。

*1
二足歩行の兎。デカい◯ーターラビットみたいな見た目した歴とした人族である

*2
通常の数倍の魔力を消費することで効果範囲や時間などを数倍する技能を指している。クルムオンの場合は対象を増やす【魔法拡大/数】が使える




これでブロック1が終了になります
我々のレギュレーションではこのタイミングで成長や買い物を行いますので、その結果をここで書いておきます。
まぁ、誰も記録残してないので私の記憶とログ中の判定頼りになりますが……

◯シャイレーゼ
ファイター:4、エンハンサー:3、ライダー3、アルケミスト:1(New)
新規賦術*1:【バークメイル】*2
◯クルムオン
フェンサー:4、プリースト(キルヒア):3、セージ:3
◯ホリィ
スカウト:4、シューター:3、コンジャラー:2、マギテック:1、ウォーリーダー1(New)、レンジャー:1
新規鼓咆*3:【鉄壁の防陣I】*4

今回の硬くしたシャイレーゼを単騎突入させる戦法が思ったより良かったので更に防護点を盛れるようにシャイレーゼとホリィは技能を取っています。
シャイレーゼのプレイヤーは特化型のPCの方が好きなので(私の書いてる別作品(アリアンロッド)の火力全振りメイジ見てもらえたら分かると思いますが)……どちらかと言うと防御投げ捨てて回避と火力をガン盛りするキャラの方が多いですが、シャイレーゼはそういう方向には振れないので防御を伸ばすことにしたんですね。
ちなみに私は割と万能型が好きです。(別作品(アリアンロッド)の残念猫メイジを見れば分かってくれることでしょう。)
ただ、ちょっとやりたいことをやるために必須ではない部分を極限まで切り捨てることがあるだけです。防護点と生命力と知力と精神力は飾りです。
クルムオンのプレイヤーは今回は経験点を貯めることにしたようですね。変化がないです。

*1
アルケミスト技能で使える。素材を消費して攻撃の前に使って味方にバフ掛けたり敵にデバフ掛けたりができる便利技能

*2
防護点強化

*3
ウォーリーダー技能で使える。自分を除いた味方全体に1ラウンド間バフを掛ける

*4
味方全体の防護点+1

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