艦娘の咆哮   作:Bu3og

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※戦闘描写が入る話はゲーム風の任務説明を前置きに記載していきます。

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あらすじ
 状況不明の我々であるが、解放軍を名乗る不明艦隊に付いて行くしかないようだ。敵はこちらの針路上に封鎖線を敷いている。解放軍とやらに合流するため、我々は敵の封鎖線を突破する。

海域
 北大西洋
目的
 不明艦隊(解放軍)と共に不明艦隊(帝国軍)の封鎖線を突破せよ。

主目標1
 特定海域まで移動せよ
主目標2
 
副目標1
 
副目標2
 
副目標3

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プロローグ

-不明海域-

 

 夕焼けが艦橋内を照らし、遥か先の水平線に黒点がいくつも浮かんでいるのが目に入った。

 

「正面っ!! 不明艦多数っ!!」

 

 電測士の悲鳴とも言える報告に私は意識を向けることができなかった。

 何故なら、我々は闇夜が支配する太平洋上を進んでいた筈だったのだからーーーー……

 

 

……ーー5分前。

 

 太平洋中部海域。私こと東 麗次(あずま れいじ)率いる日本皇国第40任務戦隊は深海棲艦に対して機動遊撃戦をするため、艦娘母艦兼巡洋艦『双六』と護衛の駆逐艦2隻を引き連れとある海域へと進んでいた。

 

 航海自体は順調だった。しかし、妙な胸騒ぎで一向に眠る気になれなかった私は灯火管制が敷かれた艦橋に詰めていた。

ーーといっても、戦闘もなければ特段重要な報告も入らないので、ただ司令官席を温める状態になったが……。

 

「お疲れ様です。提tー……皆さんに夜食をお持ちしました」

 

 今艦橋に上がってきたのは古鷹という艦娘の1人だ。見た目こそ幼いが、10年以上私の元で働いている。

 

 艦長をはじめ、艦橋に詰めている乗員が古鷹に感謝を伝えながら夜食を受け取っていく。

 運搬箱に残ったのは2人分のカップと夜食だった。

 

「どうぞ。提督」

「ありがとう」

 

 古鷹が差し出した湯呑を受け取り、一口飲んだ後。カップを台の上に置いた瞬間。それ(・・)は起きた。

 

 艦橋に据え付けられている時計や気圧計をはじめとする各計器がパリンパリンと音を立てて弾け飛んだ。

 

 私を含め艦橋にいた者はとっさに顔や頭を覆った。

 

 艦首を見ていた乗員の一人が声を挙げた。

 

「前方。強く光っていますっ!!」

「操舵手。取り舵いっぱいっ!!」

「だめですっ!! 舵利きませんっ!!」

「えぇいっ!! 総員。衝撃に備えっ!!」

 

 私たちは何もできず、目の前の眩い閃光に包まれていった。

 

 

ーーーー閃光が収まり、私たちは辺りを見回した。

 

「艦内の状況を確認。急がせ」

「了解しました」

「『東雲』と『紅雲』の状態は?」

「ここから見た限り、異状は見られません」

「艦内に異状がないか報告させろ」

「わかりました」

 

 私は艦橋内を一望すると違和感に襲われ、そしてすぐに分かった。

 ほんの数分前まで、艦橋から見える景色は一面の漆黒だった覚えがある。それが、いまでは紅い陽光が差し込んでいる。

 さらに、水平線の向こうに薄っすらと何十もの影が私の視界に入った。

 より事態を鮮明にしたのは双眼鏡で外を見張る艦橋要員の報告だった。

 

「正面っ!! 不明艦多数っ!!」

 

 艦橋にいた者のほとんどが正面に視線を移した。

 

「通信士。国際救難周波数でこちらの所属と艦名を伝えて相手の所属を確認しろ」

「わかりました」

 

 通信士は無線の周波数を調整し、相手との交信を試みた。

 

「こちらは日本皇国海軍所属。巡洋艦『双六』である。そちらの国籍と艦名を教えられたし」

 

 通信士の質問が艦橋全体に響き渡った。しかし、その返答は残酷なものだった。

 

 黒い点がチカっと光ると私は一瞬錯覚を感じた。そして、轟音と共に生まれた水柱で相手の意図を把握した。

ーー不明艦隊。いや、敵艦隊(・・・)はこちらを沈めに来たのだ。

 

 私と艦長はそれぞれ指示を飛ばした。

 

「機関最大戦速っ!! 操舵手。緊急回頭っ!!」

「通信士。『東雲』と『紅雲』にも回避運動を伝達。戦闘用意」

 

 私は通信機に提督専用のインカムを繋げた。このインカムで洋上に展開している艦娘達と常時連絡を取るためだ。

 繋いだ瞬間。今洋上に展開している艦娘から通信が入った。

 

≪あぁ相棒か? やっと繋がった。一先ず飛ばせるだけの偵察機を飛ばしたが、どうする? このまま攻撃せず距離を取るか?≫

「いや、相手はこちらを敵と定めている。攻撃を許可する」

≪了解だ相棒ーー攻撃の許可が下りた。各艦準備でき次第攻撃開始。母艦をやらせるなっ!!≫

 

 敵艦隊からさらに砲弾が『双六』の周りに降り注いだ。

 私は揺れ動く艦橋で転倒しないよう何かにつかまった。揺れが収まるまで艦橋を眺めると、古鷹が居なくなっていた。多分。出撃できるよう後部の格納庫に向かったのだろう。

 

「報告。各科総員配置よし」

「司令。砲撃準備完了しました。どうしますか?」

「最も近い敵艦に砲撃だ」

「了解ーー砲術長。目標。最も近い敵艦。弾種徹甲」

≪目標。最も近い敵艦。弾種徹甲。宜候(ヨーソロ)っ!!≫

 

 『双六』の前部に装備している15.5cm三連装砲三基が動いた。

 砲身が仰角を上げ、止まるとけたたましいブザーが耳に入ってきた。

 ブザーが止むと、鼓膜を引き裂くような轟音が響いた。

 

 砲弾の飛翔音が聞こえてきた。数えるのが嫌になる。

 

 私は“当たらないでくれ”と祈りった。だが、それも艦橋が大きく揺れたことで転倒してしまった。そして、敵弾が『双六』を捉えたことを痛感した。

 

「被害報告っ!!」

「艦中央部に被弾。対空砲の一部が損傷」

 

 報告を聞いてホッとした。少なくとも、沈むような危険がないからだ。だが、凶報は続く。

 

「本艦に急速に接近する機影在り。方位300度。距離080(8000m)。高度300。速度……約500ノット(約940km/h)

「500っ!? 正確に伝えろっ!!」

「しかし、電探が誤作動しているとは考えられません」

「不毛な話し合いは止せ。戦闘中だぞっ!!」

 

 艦長が電測士と航海士に怒鳴りつけた。

 

「対空戦闘用意っ!!」

「だめです。敵機高速のため間に合いませんっ!!」

 

 敵艦隊と敵機軍に挟み撃ちに遭う我々は絶望した。

 『双六』の艦橋から対空機関砲の曳光弾が空に上がっているのが視界の隅に映った。

 叫ぶ者がいないとはいえ、艦隊は一種の恐慌状態に陥っているのだ。悠長に発砲許可を待つ余裕がなかったのだろう。

 

 数十秒が経過すると、電測士が引き攣った声で報告してきた。

 

「敵航空機。こちらを攻撃せず敵艦隊に向かっていますっ!!」

 

 私は電測士の報告を耳に入れると、双眼鏡で敵艦隊を観察した。

 

 そこには、敵艦隊が朱い空に向かって対空砲を横を通過した航空機相手に撃ち上げている光景だった。

 

「……航空機群は敵ではないか……だが、ではあれはどこの所属なんだ?」

 

 誰ともなく発した言葉に応えたのは、通信士だった。

 

「東司令。“解放軍”を名乗る人物から通信が届いています」

 

 私は数秒考えたが、自体が絶望から混迷になりつつある現状に何かしらの回答を得れると判断した。

 

「……繋いでくれ」

「どうぞ」

「……こちらは日本皇国。第40任務戦隊司令。東 麗次海軍大佐である。そちらの所属と艦名を教えて頂きたい」

≪ーー我々は解放軍。第零遊撃艦隊所属のスペンサー・ヴァウワース少将である≫

「我々に通信を繋ぐ理由は何でしょうか?」

≪……つい先ほど航空機が通過したと思いますが、それは我が艦隊所属の航空機です。我々はあなた方を仲間として迎え入れる用意があります≫

 

 ヴァウワースの言葉に私の頭は数秒止まってしまった。

 会ったこともない相手にいきなり“仲間になれ”と言われて受け入れる相手がいるだろうか? 普通に考えてあり得ない。

 だが、発砲音が轟くと私は現実に引き戻された。

 我々を攻撃する敵艦隊は話し合いの余地はない。

 対して“解放軍”を名乗る勢力は、その敵艦隊を攻撃している。

 

 本来。艦長達と話をすべきことなのだろが、戦闘中の現状では迷い続ける方が危険と判断した私は“解放軍”に返答した。

 

「こちら日本皇国艦隊。我々は直ちに解放軍に合流する」

 

 艦長はじめ、艦橋にいた要員は“得体の知れない相手に付いて行くのか?”と言いたそうな表情を私に向けた。だからと言って、口に出すものはいなかった。今の我々に私の決定を覆すような意見や参考を促す時間がないことを察しているからだ。

 

「通信士。全艦に通達。針路300度に変針」

「針路300度に変針。伝えます」

「操舵手。取り舵。針路300度っ!!」

「針路300度。ヨーソロー」

 

 回避運動を続ける『双六』が大きく右へと傾いた。

 

 敵に背を向ける形となり、艦橋の後ろから何発もの炸裂音が耳に届いた。

 

「東司令。針路300度定針」

「全艦第3戦速(約24kt)。戦域から離脱する」

 

 私は全ての艦橋要員に指示を出すと、艦長たちは行動し始めた。

 

 後ろから響く爆音は未だあったが、数は明らかに減っていた。

 

「東司令。方位300度より新たな航空機群を探知。速度。高度共に先ほどと同じです」

「解放軍の増援と判断する。他に反応は?」

「ありません」

「わかった」

 

 私が予測した通り、艦首からすっ飛んでくる航空機は解放軍の第2次攻撃隊だった。

 私は運よくその航空機を艦橋からちらっと見ることができた。

 今まで我々が使っているようなレシプロエンジンの航空機ではなく、より速度が出る機体構造を有し、機体後部から噴炎(ジェット炎)を吐き出す噴進エンジン機であることが分かった。

 

 敵艦隊に解放軍航空隊が迫ると、もはやこちらに対応する余力はなくなり、砲弾が落下する音は知らないうちに止んでいた。

 

ーーそのまま我々は周囲を警戒しつつ、数時間ほど北東へ進むと、針路上に複数の軍艦を探知した。

 それとほぼ同時に、先ほど通信を繋げた相手から無線が届いた。

 

≪こちら解放軍第零遊撃艦隊のスペンサー・ヴァウワースである。そちらの艦隊司令と会談を求む≫

 

 私は一瞬迷った。しかし、頼る相手がいないということもあり、会談に応じることにした。

 

「こちら日本皇国。東麗次である。そちらとの会談。了解した」

 

 こちらの返答を聞いた相手の行動は速かった。

 『双六』艦上に巨大なオートジャイロ(ヘリコプター)を派遣し、私と古鷹。大淀の3人を乗せ、見た事もないような巨大な航空母艦に降り立った。

 

 艦に降り立った私たち3人は副長の後を付いて行き、『双六』より立派な司令官室に案内された。

 

「よく来てくれた。コマンダー・アズマ。私がスペンサー・ヴァウワース。お互い話したいことがたくさんある。座ってくれ」

 

 私たち3人は促されるまま横長ソファーに腰を降ろした。

 スペンサーが対面に座ると、まず私の口が開いた。

 

「危険な状況を救っていただき、艦隊を代表して感謝いたします」

 

 初老の皺が目立つスペンサーの顔が、まるで生まれたての雛鳥みたいな目を向けながら固まっていた。

 

「あの、何か失礼でもありましたか?」

「いや。何度か君たちみたいな者と会ってきたが、最初の言葉が感謝の言葉なのは予想外でね」

「そうなのですか?」

「まぁ。軍人というのは礼節より必要と合理が先に来る性質だと思っている」

「……我が国ではあまりない考えです」

「何を重んじるかについては国が違えば価値観も違うだろう。さて、無駄話はこれくらいにして、まず君たちに伝えることがある。今我々がいる世界は君たちがいた世界とは違う世界であり、いきなり攻撃してきた敵艦隊は『帝国』という勢力だ」

「「「……っ!?」」」

 

 スペンサーの言葉に、私を含め3人は言葉が出なかった。

 

「君たちの反応は普通だよ。私も最初はその内容に疑ったものだ」

 

 スペンサーの言葉に大淀が反応した。

 

「失礼ですが、それを証明できるものはありますか?」

「そうだな。今我々がいるのは北大西洋なのだが、“あの閃光に”飲まれる前。君たちは別のところを進んでいたのではないか?」

「……太平洋中部海域辺りを進んでいました」

「だろうな。あの閃光の原因は不明だが、我々は暫定的に“次元跳躍ホール”と呼んでいる」

「重ねて質問しますが、その次元跳躍ホールに入ったら元の場所に戻れますか?」

「あっちから来れたということはこっちからでも戻れる……理論上は可能だろうが、時間と場所まですべて同じか保証できない」

「では、我々は一生元の国に戻ることができないという事でしょうか?」

「君たちの気持ちは我々も理解しているつもりだ。そこでだ。もし『解放軍』の戦いに参加してくれるなら。君たちが帰れるように手を貸そう。どうだろうか?」

 

 スペンサーの言葉に私は迷った。

 確証がないことに「手を貸せ」と言われて、どれだけの人間が手を貸すだろうか?

 しかし、一言も言葉を発さずに鉄拳を振り下ろしてきた敵に比べれば、『解放軍』は誠意も道理も通しているのだ。

 

 今どちらを頼るべきか……私の中で答え自体は決まっていた。

 

「ヴァウワース提督。我々は『解放軍』に参加します」

 

 横に並んでいた古鷹と大淀が驚いた顔で私を見つめてくるが、私は気にせずスペンサーの言葉を待った。

 

「そうか。ありがとう……このまま我が艦隊に続いてくれ。『解放軍』の秘密ドックに案内する」

「わかりました」

 

 その後、私たち3人は『双六』へと戻った。

 

 艦橋に上がると、早速艦長が私に質問した。

 

「東司令。『解放軍』との話はどうでしたか?」

「それに関して総員に伝えることがある。艦内と僚艦に通信を繋いでくれ」

「わかりました。通信士。『東雲』と『紅雲』の通信開け」

 

 通信士は艦長の指示に従い通信回線を開いいた。

 

「ーー総員傾注。艦隊司令から通達である」

 

 通信士が私にマイクを渡した。

 

「艦隊司令の東だ。謎の閃光に飲まれ、得体のしれない相手から何も知らぬまま攻撃を受け、これまた得体のしれない相手に助けられた。諸君らも承知の通り、私は我々を助けた者たちと話し合った。彼らの話曰く、今我々がいるこの世界は元居た世界とは別の世界らしい。彼らは『解放軍』と自らを名乗り、いきなり攻撃してきた野蛮な奴らは『帝国軍』と名乗っているそうだ。

 本来なら、よりじっくりと諸君らと話し合うべきところだったと思う。しかし、我々は既に『帝国軍』と交戦してしまっており、頼るべき相手は『解放軍』しか残っていない状況である。よって、我々は『解放軍』の要請に基づき、これに合流する。

言いたいこと、不満がある者が多いだろう。しかし、この決断は諸君らの生存のためであるという事を理解してもらいたい。艦隊司令からは以上である」

 

 私の言葉が終わると、通信士は艦内マイクを切った。

 

「東司令。艦隊の針路は如何いたしますか?」

彼ら(解放軍)に続いてくれ。秘密ドックに案内してくれるそうだ」

「わかりました」

 

 少し不満顔を向ける艦長を横目に、私は艦橋から先で航行する超巨大な空母に視線を移した。

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