ゲシュペンストの異世界渡り -Multiverse Crusaders- 作:サツキタロオ
青年・霧島鷹真は、軍事企業《マルチワークス・パーソナリティ》の戦艦《シロガネ》に就職し、新型パワードスーツ《ゲシュペンスト》のテストパイロットとして配属される。
だがその矢先、宇宙各地で観測されていた次元歪曲現象《DBD》が発生。
シロガネとゲシュペンストはその歪みに呑まれ、別の世界へと転移してしまう。
目を覚ました先は、青い海に包まれた異世界――
謎の異形「深海棲艦」に襲われる中、鷹真はゲシュペンストで応戦。
そこに現れたのは、艤装を纏う三人の少女たち――艦娘《響》《球磨》《瑞鳳》。
彼女たちは鷹真たちが持ち込んだ“ゲシュペンスト”を知っていた。
そして、その戦艦《シロガネ》も、彼女たちの知るどの艦とも一致しないという。
交差する世界、噛み合わない常識――
シロガネと艦娘たちの出会いは、新たな戦いの幕開けを告げていた。
――それから間もなく、
シロガネは艦娘たちの案内を受け、横須賀鎮守府へと入港した。
青い海に囲まれた静かな湾。そこに並ぶ近代的なドックや艦艇の姿。
軍港でありながら、どこか柔らかな雰囲気が漂っているのは、ここに“彼女たち”が住んでいるからだろう。
◆
――横須賀鎮守府・工廠前
「響、おかえりーっ!」
声と共に駆け寄ってきたのは、元気いっぱいの黄色い髪の少女――阿武隈だった。
その目はすぐに、響の背後にある巨大な艦影へと吸い寄せられる。
「って、何あれ!? あんなでっかい戦艦、見たことないんだけど!?超カッコいい!!」
「落ち着けって、阿武隈。……提督はどこに?」
「ああ、それなら――伝言だけ残して、またフラッとどっか行っちゃったよ。ほら」
そう言って、阿武隈はポケットから一枚のメモ紙を取り出して渡す。
『やあ響。DBDによって異世界から“ゲシュペンスト”と“シロガネ”が来たらしいね。ひとまず彼らと協力関係を結ぶといい。――提督より』
「……だってさ!」
阿武隈が満面の笑みで指差す。
鷹真はそのメモをのぞき込んで、目をしばたたいた。
「……え? もう知ってたのか? まだ話してすらいないのに……」
響はどこか納得したように頷いた。
「相変わらず未来読んでる*1のな…」
「……?」
不意に鷹真が問いかける。
「さっきから気になってるんだけど、その“提督”って人、何者なんだ?」
響はちらりと鷹真に目を向け、淡々とした口調で言う。
「提督からの伝言――お前らは、ここにいていいってさ」
「え、ああ……ありがたい。助かるよ。でも……なんで、そんなこと知ってるんだ?」
響が少しだけ視線を逸らす。
「……う、ウチの提督、占い師だから」
(はぐらかしたな…)
(見事に…)
………………………………
工廠内――
整備員たちがざわめく中、一人の少女がゲシュペンストをじろじろと見つめていた。
「ほ〜ん……これがゲシュペンストねぇ……」
腕を組みながら、艤装を肩にかけた阿武隈がゆっくりと機体の前を歩く。
その視線はまるで職人。厳しくもどこか楽しげだった。
「ふむふむ……装甲、良好。運動性も及第点。武装も無駄がない。わりと高水準じゃん?」
そして――視線は、スーツを纏った鷹真本人に移る。
「で、そっちも――君ね。……まあまあ鍛えてるっぽいし、反応も悪くない。まあ、いいと思うよ。うん。」
突然の近距離チェックにやや面食らった鷹真だったが、阿武隈は満足げに頷くと、
整備端末から出力した何枚かの機体データを手渡した。
「はい、これ。ウチの計測器でスキャンしたやつ。参考にして。」
鷹真は目をぱちくりさせながら、手渡されたデータを受け取る。
「……すごいな……。機体構造、外部からここまで把握できるのか……」
響が後ろから笑いながら補足する。
「こいつ、うちのメカニックだからな。変人だけど、腕は確かだよ。」
「変人言うな!」
阿武隈が即座にツッコミを入れた――その時だった。
「……警報!?」
突如として工廠内に警報が鳴り響き、緊張が走る。
端末を確認していた翔子が、顔を強張らせながら報告する。
『鷹真さん! 近海にて新たなDBD反応を確認!座標は本艦より約11キロ先、海上空域です!』
鷹真がすぐさま立ち上がる。
「またDBDか……ということは、異世界から何かが来る可能性がある…。」
瑞鳳が即座に反応する。
「無視できないわ。深海棲艦の転移パターンだったら、こっちに被害が来るかも」
響は短く頷くと、腕を一振りして言い放つ。
「――気になるな。よし、行ってみるか!」
………………
海上空域。空が歪み、再びDBDが発生する。
空間の裂け目から、一人の少年が姿を現した。
「ここは……」
風に吹かれながら、少年は周囲を見渡す。どこまでも広がる蒼の世界――海。
だが、その景色に心安らぐ暇はない。
「オンパロス*2なさそうだな。どこだ、ここは……?」
少年の名は――ヴァーリ。
戦場に身を置く者としての直感が、静かな海に潜む異様な気配を告げていた。
(この空気……悪意が混じってやがる)
その瞬間、海面を割って駆逐イ級たちが群れをなして姿を現した。
「っ……敵、か!」
彼は決意を固める。
腰に手をかざし、黒銀の剣を具現化すると、気合と共に大地を蹴った。
「なら、やるしかねえだろ!」
イ級が放った砲撃を滑るようにかわし、距離を詰めた一撃で一体を蹴り砕く。
舞う飛沫と爆炎――続けざまに別の個体へと切り込む。
だが、その戦いの最中――再び、DBDが起きる。
眩い光とともに現れたのは、一人の少女だった。
「……!」
剣を構えたまま振り返るヴァーリ。すぐにその姿を見て声を上げた。
「ケリュドラ!」
「ヴァーリ……! 無事か?」
海面に静かに降り立った少女――ケリュドラは警戒を解かず、辺りを睨みつける。
「ここは……オンパロスの外界なのか…?」
「どうかな。でも見ろよ、あれを。」
ヴァーリが指差した先――戦艦ル級とその取り巻きが姿を現す。
圧倒的な砲撃力を誇る“深海棲艦”の強個体。その艤装が鈍く光を放っていた。
ケリュドラの瞳が、すっと細くなる。
「やれやれ……呼ばれてもいないのに、随分と歓迎してくれるではないか。」
「ケリュドラ、いけるか?」
「ふん……誰に向かって言っている?」
ケリュドラが杖、ヴァーリが再び剣を握り直す。
しかし――次の瞬間、思いもよらぬ方向から砲撃が飛来する。
「……!?」「新手か!?」
爆炎が海面を裂き、イ級たちを吹き飛ばす。
ヴァーリとケリュドラがその砲撃の出所を目で追うと…
そこには、巨大な銀色の戦艦――シロガネの姿があった。
艦首砲門が熱を帯び、煙を上げている。
格納庫から出撃する響達。
「――おっ、あれが今回の“異世界ゲスト”ってわけか。」
響もスコープ越しに、ヴァーリたちの戦いぶりを見つめる。
「二人だけで、あれだけの数を捌くか……。面白い奴らだな。」
球磨もノリノリでそう答え、鷹真と瑞鳳は通信をしてみる事にした。
鷹真と瑞鳳は顔を見合わせると、すぐに通信ラインを開いた。
「……こちら《ゲシュペンスト》。聞こえるか? 援護に入る」
通信に、ケリュドラが僅かに目を見開いた。
「……通信だと?」
続けてヴァーリが頷く。
「すまない。助かる。援護を頼む!」
ケリュドラは一瞬だけ視線を向けると、小さく問いかける。
「……信用できるのか?」
「今は敵を片付けることが先だ。交渉は後でいい」
短く言い放つと、ヴァーリは再び戦線に突撃。
その背中を見送るケリュドラは、ため息を吐きながら、杖を構える。
「……まったく。いつも順番が逆だ。」
光が迸る。ケリュドラの杖が光刃を纏い、巨大な大剣のように変形する。
「――沈め!」
イ級の群れを、まるで風を断つかのように一閃。蒼い残光が敵を薙ぎ払う。
ヴァーリも剣を逆手に構え、爪を展開。
戦艦ル級へと一気に飛び込む。
「――させるか!」
高速の斬撃。だが、ル級も黙ってはいない。主砲が火を噴こうとした瞬間――
「ヴァーリ! その位置、動くなよ!」
ケリュドラが瞬時に光刃を斧状に変化させ、跳躍。
そのままル級の頭部を上から叩き潰すように斬り裂く。
「……っ、よし……!」
二人の連携が完全に噛み合い、残敵も響たちによって掃討された。
一帯に静寂が戻る。
海上に浮かぶヴァーリとケリュドラ。彼らの視線は自然とシロガネへ向けられていた。
「……ヴァーリ」
「とりあえず、あの船と話してみよう。敵意はないようだ。」
◆
その頃――シロガネ艦橋
「艦長。正体不明の二人が接近中。武装解除の意思ありと見られます」
「ふむ……交戦後の接近か。よし、こちらからも応じよう」
艦長・小野寺は頷き、命じる。
「格納庫を開け。迎え入れるんだ」
………………………………
――格納庫。
機体整備のざわめきが静まり、空気が張り詰める中、
ゆっくりとハッチが開き、二人の異世界の来訪者が姿を現す。
少女は、凛とした瞳で艦長たちを見据え、一歩前に進み出ると、静かに名乗った。
「……出迎えに感謝する。ボクはケリュドラ。法のタイタン・タレンタムの神権を受け継いだ黄金裔だ。――よろしく頼む。」
彼女の所作は、神話の儀式めいてすらあった。
その横に立つ青年が続く。
「俺はヴァーリ。ケリュドラの付き添い……いや、剣を預かる者だ。よろしく」
オペレーターの藍沢翔子が手渡した資料に目を通したケリュドラは、小さく頷いた。
「……なるほど。DBD――次元歪曲によって、我々はこの世界に招かれたというわけか。」
「道理で……聞いたことのない言語、見たことのない海……だったわけだ。」
とヴァーリも納得したように言う。
艦長が一歩前に出て、静かに語りかけた。
「……我々も、同じだ。DBDに巻き込まれ、この世界に転移した。現在は横須賀鎮守府に拠点を置き、この次元の理を探っています。」
「……ふむ。状況は理解した。」
「これから我々は、各地を巡り、DBDの発生源とその背後にある因果を調査していく予定です。ケリュドラさんたちがよければ――我々と共に行動しませんか?もちろん、強制はしません。」
短い沈黙の後――ケリュドラは静かに、だが確かに頷いた。
「……分かった。我々も同行しよう。今の我々には情報も手段もない。まずは事実を知るべきだと判断する。」
「ありがとうございます。衣食住はこちらで確保します。ごゆっくりお休みください。」
艦長は一礼し、丁重に迎え入れた。
――だがその時。
ヴァーリの表情に、わずかな翳りが浮かぶ。
目は静かに、だが鋭く遠くを見つめていた。
(……嫌な感じがする)
(この世界の戦い……これはただの次元事故なんかじゃない。もっと――)
(もっと、根深い何かが渦巻いている気がする……)
鋭い第六感が、胸奥に警鐘を鳴らす。
ヴァーリの直感は、これから訪れる運命の奔流を、確かに感じ取っていた。
その正体は一機の超演算コンピュータ『δ-me13』により構築されたデータ世界であり、無限ループによって絶滅大君『鉄墓』を復活させる為の装置だった。最終的に鉄墓は死亡し、荒霜たち律者の力によって一つの惑星として顕現した。
ケリュドラまだ情報何も無いからこんな感じになってしまった…
別の分岐ルートも…
-
見たい
-
見なくていい