ゲシュペンストの異世界渡り -Multiverse Crusaders-   作:サツキタロオ

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【前回のあらすじ】
青年・霧島鷹真は、軍事企業《マルチワークス・パーソナリティ》の戦艦《シロガネ》に就職し、新型パワードスーツ《ゲシュペンスト》のテストパイロットとして配属される。

だがその矢先、宇宙各地で観測されていた次元歪曲現象《DBD》が発生。
シロガネとゲシュペンストはその歪みに呑まれ、別の世界へと転移してしまう。

目を覚ました先は、青い海に包まれた異世界――
謎の異形「深海棲艦」に襲われる中、鷹真はゲシュペンストで応戦。

そこに現れたのは、艤装を纏う三人の少女たち――艦娘《響》《球磨》《瑞鳳》。
彼女たちは鷹真たちが持ち込んだ“ゲシュペンスト”を知っていた。
そして、その戦艦《シロガネ》も、彼女たちの知るどの艦とも一致しないという。

交差する世界、噛み合わない常識――
シロガネと艦娘たちの出会いは、新たな戦いの幕開けを告げていた。


第3話:迷い込んだ世界

 

――それから間もなく、

シロガネは艦娘たちの案内を受け、横須賀鎮守府へと入港した。

 

青い海に囲まれた静かな湾。そこに並ぶ近代的なドックや艦艇の姿。

軍港でありながら、どこか柔らかな雰囲気が漂っているのは、ここに“彼女たち”が住んでいるからだろう。

 

 

――横須賀鎮守府・工廠前

「響、おかえりーっ!」

声と共に駆け寄ってきたのは、元気いっぱいの黄色い髪の少女――阿武隈だった。

その目はすぐに、響の背後にある巨大な艦影へと吸い寄せられる。

「って、何あれ!? あんなでっかい戦艦、見たことないんだけど!?超カッコいい!!」

「落ち着けって、阿武隈。……提督はどこに?」

「ああ、それなら――伝言だけ残して、またフラッとどっか行っちゃったよ。ほら」

そう言って、阿武隈はポケットから一枚のメモ紙を取り出して渡す。

 

『やあ響。DBDによって異世界から“ゲシュペンスト”と“シロガネ”が来たらしいね。ひとまず彼らと協力関係を結ぶといい。――提督より』

 

「……だってさ!」

阿武隈が満面の笑みで指差す。

鷹真はそのメモをのぞき込んで、目をしばたたいた。

「……え? もう知ってたのか? まだ話してすらいないのに……」

響はどこか納得したように頷いた。

「相変わらず未来読んでる*1のな…」

 

「……?」

不意に鷹真が問いかける。

「さっきから気になってるんだけど、その“提督”って人、何者なんだ?」

響はちらりと鷹真に目を向け、淡々とした口調で言う。

「提督からの伝言――お前らは、ここにいていいってさ」

「え、ああ……ありがたい。助かるよ。でも……なんで、そんなこと知ってるんだ?」

 

響が少しだけ視線を逸らす。

「……う、ウチの提督、占い師だから」

 

(はぐらかしたな…)

(見事に…)

 

………………………………

 

工廠内――

整備員たちがざわめく中、一人の少女がゲシュペンストをじろじろと見つめていた。

 

「ほ〜ん……これがゲシュペンストねぇ……」

腕を組みながら、艤装を肩にかけた阿武隈がゆっくりと機体の前を歩く。

その視線はまるで職人。厳しくもどこか楽しげだった。

「ふむふむ……装甲、良好。運動性も及第点。武装も無駄がない。わりと高水準じゃん?」

そして――視線は、スーツを纏った鷹真本人に移る。

「で、そっちも――君ね。……まあまあ鍛えてるっぽいし、反応も悪くない。まあ、いいと思うよ。うん。」

突然の近距離チェックにやや面食らった鷹真だったが、阿武隈は満足げに頷くと、

整備端末から出力した何枚かの機体データを手渡した。

「はい、これ。ウチの計測器でスキャンしたやつ。参考にして。」

鷹真は目をぱちくりさせながら、手渡されたデータを受け取る。

「……すごいな……。機体構造、外部からここまで把握できるのか……」

響が後ろから笑いながら補足する。

「こいつ、うちのメカニックだからな。変人だけど、腕は確かだよ。」

「変人言うな!」

阿武隈が即座にツッコミを入れた――その時だった。

「……警報!?」

突如として工廠内に警報が鳴り響き、緊張が走る。

端末を確認していた翔子が、顔を強張らせながら報告する。

『鷹真さん! 近海にて新たなDBD反応を確認!座標は本艦より約11キロ先、海上空域です!』

鷹真がすぐさま立ち上がる。

「またDBDか……ということは、異世界から何かが来る可能性がある…。」

瑞鳳が即座に反応する。

「無視できないわ。深海棲艦の転移パターンだったら、こっちに被害が来るかも」

響は短く頷くと、腕を一振りして言い放つ。

「――気になるな。よし、行ってみるか!」

………………

 

海上空域。空が歪み、再びDBDが発生する。

空間の裂け目から、一人の少年が姿を現した。

「ここは……」

風に吹かれながら、少年は周囲を見渡す。どこまでも広がる蒼の世界――海。

だが、その景色に心安らぐ暇はない。

 

オンパロス*2なさそうだな。どこだ、ここは……?」

 

少年の名は――ヴァーリ。

戦場に身を置く者としての直感が、静かな海に潜む異様な気配を告げていた。

(この空気……悪意が混じってやがる)

その瞬間、海面を割って駆逐イ級たちが群れをなして姿を現した。

「っ……敵、か!」

 

彼は決意を固める。

腰に手をかざし、黒銀の剣を具現化すると、気合と共に大地を蹴った。

「なら、やるしかねえだろ!」

イ級が放った砲撃を滑るようにかわし、距離を詰めた一撃で一体を蹴り砕く。

舞う飛沫と爆炎――続けざまに別の個体へと切り込む。

だが、その戦いの最中――再び、DBDが起きる。

眩い光とともに現れたのは、一人の少女だった。

「……!」

剣を構えたまま振り返るヴァーリ。すぐにその姿を見て声を上げた。

「ケリュドラ!」

「ヴァーリ……! 無事か?」

海面に静かに降り立った少女――ケリュドラは警戒を解かず、辺りを睨みつける。

「ここは……オンパロスの外界なのか…?」

「どうかな。でも見ろよ、あれを。」

ヴァーリが指差した先――戦艦ル級とその取り巻きが姿を現す。

圧倒的な砲撃力を誇る“深海棲艦”の強個体。その艤装が鈍く光を放っていた。

ケリュドラの瞳が、すっと細くなる。

「やれやれ……呼ばれてもいないのに、随分と歓迎してくれるではないか。」

「ケリュドラ、いけるか?」

「ふん……誰に向かって言っている?」

ケリュドラが杖、ヴァーリが再び剣を握り直す。

しかし――次の瞬間、思いもよらぬ方向から砲撃が飛来する。

「……!?」「新手か!?」

爆炎が海面を裂き、イ級たちを吹き飛ばす。

ヴァーリとケリュドラがその砲撃の出所を目で追うと…

そこには、巨大な銀色の戦艦――シロガネの姿があった。

艦首砲門が熱を帯び、煙を上げている。

格納庫から出撃する響達。

「――おっ、あれが今回の“異世界ゲスト”ってわけか。」

響もスコープ越しに、ヴァーリたちの戦いぶりを見つめる。

「二人だけで、あれだけの数を捌くか……。面白い奴らだな。」

球磨もノリノリでそう答え、鷹真と瑞鳳は通信をしてみる事にした。

 

鷹真と瑞鳳は顔を見合わせると、すぐに通信ラインを開いた。

「……こちら《ゲシュペンスト》。聞こえるか? 援護に入る」

通信に、ケリュドラが僅かに目を見開いた。

「……通信だと?」

続けてヴァーリが頷く。

「すまない。助かる。援護を頼む!」

ケリュドラは一瞬だけ視線を向けると、小さく問いかける。

「……信用できるのか?」

「今は敵を片付けることが先だ。交渉は後でいい」

短く言い放つと、ヴァーリは再び戦線に突撃。

その背中を見送るケリュドラは、ため息を吐きながら、杖を構える。

「……まったく。いつも順番が逆だ。」

 

光が迸る。ケリュドラの杖が光刃を纏い、巨大な大剣のように変形する。

「――沈め!」

イ級の群れを、まるで風を断つかのように一閃。蒼い残光が敵を薙ぎ払う。

ヴァーリも剣を逆手に構え、爪を展開。

戦艦ル級へと一気に飛び込む。

「――させるか!」

高速の斬撃。だが、ル級も黙ってはいない。主砲が火を噴こうとした瞬間――

「ヴァーリ! その位置、動くなよ!」

ケリュドラが瞬時に光刃を斧状に変化させ、跳躍。

そのままル級の頭部を上から叩き潰すように斬り裂く。

「……っ、よし……!」

二人の連携が完全に噛み合い、残敵も響たちによって掃討された。

一帯に静寂が戻る。

海上に浮かぶヴァーリとケリュドラ。彼らの視線は自然とシロガネへ向けられていた。

「……ヴァーリ」

「とりあえず、あの船と話してみよう。敵意はないようだ。」

 

 

 

その頃――シロガネ艦橋

 

「艦長。正体不明の二人が接近中。武装解除の意思ありと見られます」

「ふむ……交戦後の接近か。よし、こちらからも応じよう」

艦長・小野寺は頷き、命じる。

「格納庫を開け。迎え入れるんだ」

………………………………

 

――格納庫。

機体整備のざわめきが静まり、空気が張り詰める中、

ゆっくりとハッチが開き、二人の異世界の来訪者が姿を現す。

少女は、凛とした瞳で艦長たちを見据え、一歩前に進み出ると、静かに名乗った。

 

「……出迎えに感謝する。ボクはケリュドラ。法のタイタン・タレンタムの神権を受け継いだ黄金裔だ。――よろしく頼む。」

彼女の所作は、神話の儀式めいてすらあった。

その横に立つ青年が続く。

「俺はヴァーリ。ケリュドラの付き添い……いや、剣を預かる者だ。よろしく」

 

オペレーターの藍沢翔子が手渡した資料に目を通したケリュドラは、小さく頷いた。

「……なるほど。DBD――次元歪曲によって、我々はこの世界に招かれたというわけか。」

「道理で……聞いたことのない言語、見たことのない海……だったわけだ。」

とヴァーリも納得したように言う。

 

 

艦長が一歩前に出て、静かに語りかけた。

「……我々も、同じだ。DBDに巻き込まれ、この世界に転移した。現在は横須賀鎮守府に拠点を置き、この次元の理を探っています。」

 

「……ふむ。状況は理解した。」

「これから我々は、各地を巡り、DBDの発生源とその背後にある因果を調査していく予定です。ケリュドラさんたちがよければ――我々と共に行動しませんか?もちろん、強制はしません。」

短い沈黙の後――ケリュドラは静かに、だが確かに頷いた。

「……分かった。我々も同行しよう。今の我々には情報も手段もない。まずは事実を知るべきだと判断する。」

「ありがとうございます。衣食住はこちらで確保します。ごゆっくりお休みください。」

艦長は一礼し、丁重に迎え入れた。

 

――だがその時。

ヴァーリの表情に、わずかな翳りが浮かぶ。

目は静かに、だが鋭く遠くを見つめていた。

(……嫌な感じがする)

 

(この世界の戦い……これはただの次元事故なんかじゃない。もっと――)

(もっと、根深い何かが渦巻いている気がする……)

 

鋭い第六感が、胸奥に警鐘を鳴らす。

ヴァーリの直感は、これから訪れる運命の奔流を、確かに感じ取っていた。

*1
その姿を人に見せることはほとんどない提督。指示は常に的確、100%の成功率を誇り、イレギュラーさえ計算済み。そのあまりの精度から“神”とさえ呼ばれる存在。実際、その正体はこの世界の創造主であり、全ての判断は“自然に知っていた”という領域に達していた。だが、あまりに人外じみた采配が災いし、響との運命のじゃんけん勝負で敗北。以後は少しだけ大人しくなったが、まったく反省していない。

*2
「知恵」「記憶」「壊滅」という3つの運命に統べられた未知の惑星で、∞の字のように中心部分から捻じれたメビウスの輪のような外見を持つ。外界からの観測は不可能とされていたが、律者たちの戦いで観測が可能になった。外界に認知されていない謎多き地であり、現在でも解明されていない。

その正体は一機の超演算コンピュータ『δ-me13』により構築されたデータ世界であり、無限ループによって絶滅大君『鉄墓』を復活させる為の装置だった。最終的に鉄墓は死亡し、荒霜たち律者の力によって一つの惑星として顕現した。





ケリュドラまだ情報何も無いからこんな感じになってしまった…

別の分岐ルートも…

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