ゲシュペンストの異世界渡り -Multiverse Crusaders- 作:サツキタロオ
“DBD”と呼ばれる次元歪曲現象に巻き込まれ、異世界から転移してきた二人の人間。
法のタイタンの神権を継ぐ黄金裔・ケリュドラと、剣を預かる者・ヴァーリ。
二人は共にDBDによりこの世界へ導かれた者たちだった。
言葉を交わし、剣を交えた後、両者は共闘の道を選ぶ。
戦いの中で見えてきたのは、次元歪曲の影に潜むさらなる異変と、背後に渦巻く見えざる陰謀。
シロガネは二人を迎え入れ、新たな同盟関係が結ばれた。
「ブルーホール、か。」
ケリュドラはモニターに映る蒼い渦――空間に穿たれた巨大な“孔”を静かに見つめ、呟いた。
「最近になって突如出現したんだよ。」
横で響が苦々しく説明する。
「その場に近づくと、特殊な電磁パルスの影響で艦娘たちは接近すらできなくなる。
本来なら私たちが調査に向かうべきなんだがな。」
「……突如現れた次元歪曲ポイントか。」
ヴァーリも資料を手に考え込む。
「“DBD”と何かしらの関係がある可能性は高いな。」
「それが解明できれば、我々の帰還手段も見えるかもしれない」
ケリュドラの声には、冷静な中にもわずかな焦りが滲んでいた。
艦長・小野寺は二人に向き直る。
「今回、我々はブルーホールの調査に向かう。新たなメンバーの合流も予定されている。」
球磨がスマホを響に手渡す。
『よ、響!元気かー?』
「朝潮ー!」
通話相手は朝潮達だった。
「そっちの調査ってどうなってんだ?てか何の調査してんだよ?」
『東京で馬鹿なヤンキー共の鎮圧だよ。愛美愛主*1って奴らと東京卍會って奴らが戦うのを警察とヒーロー達で鎮圧。』
「相変わらず面倒なことしてんな……」
響がため息をつく。
「不良なんかやってねぇで、普通に勉強でもしてりゃいいのにな」
『言ってもわからねぇよ。あ、そうだ。最近“ヴィラン連合”が動いてるって情報がある。お前らも気をつけろよ』
「ヴィラン連合……?」
『ま、そっちの調査頑張れよ。あ、熊野もいるぞ。響と話すか?』
『……「用事があるから無理」だとさ。』
「そっか。」
『じゃあな。また戻れたら連絡する。』
通信は切れた。
響はため息を吐きつつ呟く。
「ヤンキーは何考えてるかわからんな。」
「でも俺はアレ好きだぜ。防風鈴*2。」
「何が違うんだろう…」
………………………………
「よっしゃ……!」
艦長服を着た天津風は、ハガネの艦橋でご満悦だった。
「久しぶりのハガネ……乗れるだけでテンション上がるな!」
「張り切りすぎるなよ。運用は慎重にな。」
「調子に乗ってまた壊すなよ。」
村雨と神通が冷めた声を揃える。
「わかってるって!」
そう言いつつ天津風は操舵席で足を揺らし、やや調子に乗っていた。
「……アレがハガネか。」
鷹真がゲシュペンストのモニター越しに視線を向ける。
その瞳は自然と見惚れていた。
「超大型回転衝角……あのサイズの衝角、凄い威力をしてそうだ……」
その声に、隣で響が小さく笑う。
「ふふっ……だろ? あの艦には色んな“思い出”が詰まってるんだ!」
響の目はどこか懐かしむような、遠い光を宿していた。
「……その話は後だ。接近する。」
瑞鳳の冷静な声で空気が締まる。
艦隊はブルーホール近海に到達していた。
「強行突破は可能か?」
ケリュドラが静かに問いかける。
だが天津風は苦笑を返した。
「いやー……超大型回転衝角でパルスごとぶち壊すってのも考えたんだけどさ……」
「無理だ。」「壊れるのが先だろ。」
神通と村雨の冷静なツッコミが飛ぶ。
「……ですよねー」
天津風は頬を掻いて誤魔化した。
その時だった。
「――ッ!?」
突如、艦内に警告アラームが鳴り響く。
神通が緊張した声で叫んだ。
「天津!正体不明のエネルギー反応!高エネルギー確認!」
天津風の顔に戦闘艦長としての本気が戻る。
「いきなりかよ……!これが“DBD”……次元歪曲現象ってやつか!」
モニター越しに、ブルーホールが異常光輝を放ち始めた。
空間が軋み、辺りは白い光に包まれる――!
「っ……!」
ゲシュペンストやケリュドラたちは、思わず目を覆った。
次元の壁が、音もなく崩れ去っていった。
………………‥……………
――DBDの波動が収束し、
艦隊が光の渦から抜け出た先に広がっていたのは……密林と岩場の広がる“森”だった。
「ここは……?」
ゲシュペンストのモニター越しに鷹真が呟く。
「異世界、だろうな。」
ヴァーリが地形を確認しながら短く答えた。
艦長・天津風は即座に指示を出す。
「この戦艦、下手に目撃されたら厄介だ。隠す。」
「だな……ああ、近くに岩場がある。そこに停泊させよう。
瑞鳳の冷静な判断により、シロガネとハガネは森の奥、岩場の影にひっそりと停泊されることとなった。
「……隠れられてるのか?」
「気にしたら負けだ」
響と球磨が軽い冗談を交わしながらも、警戒は緩めない。
「……街が見えるな。」
鷹真が遠方の灯りに気付き、指をさす。
「偵察するか?」
「当然だ」
だが、ケリュドラはそこで仲間たちの装備に視線を向けた。
「貴殿らの服装では目立ちすぎる。ボクとヴァーリが行く。」
「……まあ、そうだな。」
響たちも納得せざるを得なかった。
「異世界適応は俺たちの方が向いてる。任せろ」
ケリュドラとヴァーリは夜の森へと向かう。
闇夜の先、灯りが揺れるその街へ…
数十分後、二人は街へと到着した。
「……衛兵だらけ、か。」
ヴァーリは警戒を強める。
「何かを守っているというより……監視、か?」
「……嫌な空気だ。」
ケリュドラの冷たい視線が路地裏を走る。
圧迫されたこの街には、見えない“支配”が漂っていた。
「……あの屋敷。」
「……豪邸か。」
夕陽に照らされる大きな邸宅――そこに目をつけた二人は、互いに頷く。
「行ってみる価値はある。」
「連絡は?」
「……今送る。」
仲間への通信を送りつつ、二人は夜闇に紛れて邸宅への潜入を開始した。
――だが、その様子を、影から一人の魔族がじっと見つめていた。
気配を殺したその存在は、何も言わずに二人の背後を追い始めた。
………………
「……戦闘の匂いがするな。」
響が静かに呟く。
「なんだそりゃ。」
鷹真が呆れる間もなく――
ドゴォン、と外から振動。
「な?」
響はニヤリと笑った。
「……」
呆れた球磨は無言で響の頭を軽く叩いた。
「とにかく行こう」
瑞鳳の一言で部隊は屋敷内部へと突入していった。
邸宅の奥――ケリュドラとヴァーリも戦闘音に反応して、それぞれ別行動を選ぶ。
そしてヴァーリは、一人の少年と遭遇した。
「……くっ……」
赤髪の少年――シュタルクは、額に傷を負いながらも立ち上がろうとしていた。
その前に現れたのは、ヴァーリ。
「おい、小僧。大丈夫か。」
「……あんた、誰……?」
ヴァーリは無言で手を差し出し、倒れた少年を引き起こす。
「小僧……あんなの相手に何してんだ?」
「見りゃわかるだろ……戦ってんだよ。」
「……だろうな。援護する。」
そう告げ、ヴァーリはゆっくりと前に出た。
敵は――ゴスロリドレスの魔族少女、リーニエ。
バトルアックスを構えた彼女は、目の前のヴァーリを見つめる。
(……こいつ、強い。)
(力が違いすぎる……リュグナー様以上……いや、アウラ様ですら勝てるか怪しい)
喉が鳴った。
本能が警鐘を鳴らしている。
(――勝てるビジョンが見えない)
リーニエは、ジリ……と後ずさった。
次の瞬間だった。
「……ッ!」
鋭い気配とともに、何かが高速で迫ってくる。
ヴァーリは即座に反応した。
帯刀のまま、剣で防御態勢を取る。
「……!」
衝撃音。
吹き飛ばされる砂塵。
だがヴァーリは一歩も退かなかった。
「ほう……ただの剣士じゃないようだな」
月光に照らされ、目の前に現れたのは魔族の青年・エルガー。
屈強な肉体と鋭い眼光を持つその魔族は、僅かに口角を上げていた。
その様子を遠くから見下ろす者たちがいた。
「……アレも、魔族……?」
城壁の上。
魔法使いのフェルンが静かに呟く。
隣では、首切り役人の一人・リュグナーが鋭い視線を向けていた。
(間違いない……奴は……)
(魔族の間で噂されていた、“境界無き殺戮者”――)
(人間も、魔族も……区別無く、ただ殺す存在……)
リュグナーの額に僅かな汗が滲んだ。
「さあ――」
エルガーは、己の拳を固く握った。
その気配は、戦闘本能そのもの。
「この俺の力……その身で味わってみろ!」
吠えるように叫ぶと同時に、魔族の拳闘士はヴァーリへと突撃を開始する。
「……来るッ!」
ヴァーリは短く呟き、抜刀して剣を構え、無駄なく刃を前へと向けた。
激突は、刹那。
月光の下、人と魔族が激突した。
ドラートどこ…
別の分岐ルートも…
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