ゲシュペンストの異世界渡り -Multiverse Crusaders-   作:サツキタロオ

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次元の裂け目――
“DBD”と呼ばれる次元歪曲現象に巻き込まれ、異世界から転移してきた二人の人間。
法のタイタンの神権を継ぐ黄金裔・ケリュドラと、剣を預かる者・ヴァーリ。
二人は共にDBDによりこの世界へ導かれた者たちだった。

言葉を交わし、剣を交えた後、両者は共闘の道を選ぶ。
戦いの中で見えてきたのは、次元歪曲の影に潜むさらなる異変と、背後に渦巻く見えざる陰謀。

シロガネは二人を迎え入れ、新たな同盟関係が結ばれた。


第4話:ブルーホール

 

「ブルーホール、か。」

ケリュドラはモニターに映る蒼い渦――空間に穿たれた巨大な“孔”を静かに見つめ、呟いた。

「最近になって突如出現したんだよ。」

横で響が苦々しく説明する。

「その場に近づくと、特殊な電磁パルスの影響で艦娘たちは接近すらできなくなる。

本来なら私たちが調査に向かうべきなんだがな。」

「……突如現れた次元歪曲ポイントか。」

ヴァーリも資料を手に考え込む。

「“DBD”と何かしらの関係がある可能性は高いな。」

「それが解明できれば、我々の帰還手段も見えるかもしれない」

ケリュドラの声には、冷静な中にもわずかな焦りが滲んでいた。

 

艦長・小野寺は二人に向き直る。

 

「今回、我々はブルーホールの調査に向かう。新たなメンバーの合流も予定されている。」

球磨がスマホを響に手渡す。

『よ、響!元気かー?』

「朝潮ー!」

通話相手は朝潮達だった。

「そっちの調査ってどうなってんだ?てか何の調査してんだよ?」

『東京で馬鹿なヤンキー共の鎮圧だよ。愛美愛主*1って奴らと東京卍會って奴らが戦うのを警察とヒーロー達で鎮圧。』

「相変わらず面倒なことしてんな……」

響がため息をつく。

「不良なんかやってねぇで、普通に勉強でもしてりゃいいのにな」

『言ってもわからねぇよ。あ、そうだ。最近“ヴィラン連合”が動いてるって情報がある。お前らも気をつけろよ』

「ヴィラン連合……?」

『ま、そっちの調査頑張れよ。あ、熊野もいるぞ。響と話すか?』

 

『……「用事があるから無理」だとさ。』

「そっか。」

 

『じゃあな。また戻れたら連絡する。』

通信は切れた。

 

響はため息を吐きつつ呟く。

「ヤンキーは何考えてるかわからんな。」

「でも俺はアレ好きだぜ。防風鈴*2。」

「何が違うんだろう…」

 

………………………………

 

「よっしゃ……!」

艦長服を着た天津風は、ハガネの艦橋でご満悦だった。

「久しぶりのハガネ……乗れるだけでテンション上がるな!」

「張り切りすぎるなよ。運用は慎重にな。」

「調子に乗ってまた壊すなよ。」

村雨と神通が冷めた声を揃える。

「わかってるって!」

そう言いつつ天津風は操舵席で足を揺らし、やや調子に乗っていた。

 

「……アレがハガネか。」

鷹真がゲシュペンストのモニター越しに視線を向ける。

その瞳は自然と見惚れていた。

「超大型回転衝角……あのサイズの衝角、凄い威力をしてそうだ……」

その声に、隣で響が小さく笑う。

「ふふっ……だろ? あの艦には色んな“思い出”が詰まってるんだ!」

響の目はどこか懐かしむような、遠い光を宿していた。

「……その話は後だ。接近する。」

瑞鳳の冷静な声で空気が締まる。

艦隊はブルーホール近海に到達していた。

 

「強行突破は可能か?」

ケリュドラが静かに問いかける。

だが天津風は苦笑を返した。

「いやー……超大型回転衝角でパルスごとぶち壊すってのも考えたんだけどさ……」

「無理だ。」「壊れるのが先だろ。」

神通と村雨の冷静なツッコミが飛ぶ。

「……ですよねー」

天津風は頬を掻いて誤魔化した。

 

その時だった。

「――ッ!?」

突如、艦内に警告アラームが鳴り響く。

神通が緊張した声で叫んだ。

「天津!正体不明のエネルギー反応!高エネルギー確認!」

天津風の顔に戦闘艦長としての本気が戻る。

「いきなりかよ……!これが“DBD”……次元歪曲現象ってやつか!」

モニター越しに、ブルーホールが異常光輝を放ち始めた。

空間が軋み、辺りは白い光に包まれる――!

 

「っ……!」

 

ゲシュペンストやケリュドラたちは、思わず目を覆った。

次元の壁が、音もなく崩れ去っていった。

 

………………‥……………

 

 

――DBDの波動が収束し、

艦隊が光の渦から抜け出た先に広がっていたのは……密林と岩場の広がる“森”だった。

「ここは……?」

ゲシュペンストのモニター越しに鷹真が呟く。

「異世界、だろうな。」

ヴァーリが地形を確認しながら短く答えた。

艦長・天津風は即座に指示を出す。

「この戦艦、下手に目撃されたら厄介だ。隠す。」

「だな……ああ、近くに岩場がある。そこに停泊させよう。

瑞鳳の冷静な判断により、シロガネとハガネは森の奥、岩場の影にひっそりと停泊されることとなった。

「……隠れられてるのか?」

「気にしたら負けだ」

 

響と球磨が軽い冗談を交わしながらも、警戒は緩めない。

 

「……街が見えるな。」

 

鷹真が遠方の灯りに気付き、指をさす。

 

「偵察するか?」

「当然だ」

 

だが、ケリュドラはそこで仲間たちの装備に視線を向けた。

「貴殿らの服装では目立ちすぎる。ボクとヴァーリが行く。」

「……まあ、そうだな。」

響たちも納得せざるを得なかった。

「異世界適応は俺たちの方が向いてる。任せろ」

 

ケリュドラとヴァーリは夜の森へと向かう。

闇夜の先、灯りが揺れるその街へ…

 

数十分後、二人は街へと到着した。

「……衛兵だらけ、か。」

ヴァーリは警戒を強める。

「何かを守っているというより……監視、か?」

「……嫌な空気だ。」

ケリュドラの冷たい視線が路地裏を走る。

圧迫されたこの街には、見えない“支配”が漂っていた。

「……あの屋敷。」

「……豪邸か。」

夕陽に照らされる大きな邸宅――そこに目をつけた二人は、互いに頷く。

「行ってみる価値はある。」

「連絡は?」

「……今送る。」

仲間への通信を送りつつ、二人は夜闇に紛れて邸宅への潜入を開始した。

 

――だが、その様子を、影から一人の魔族がじっと見つめていた。

気配を殺したその存在は、何も言わずに二人の背後を追い始めた。

 

………………

 

「……戦闘の匂いがするな。」

響が静かに呟く。

 

「なんだそりゃ。」

鷹真が呆れる間もなく――

 

ドゴォン、と外から振動。

 

「な?」

響はニヤリと笑った。

 

「……」

呆れた球磨は無言で響の頭を軽く叩いた。

 

「とにかく行こう」

瑞鳳の一言で部隊は屋敷内部へと突入していった。

 

 

邸宅の奥――ケリュドラとヴァーリも戦闘音に反応して、それぞれ別行動を選ぶ。

そしてヴァーリは、一人の少年と遭遇した。

「……くっ……」

赤髪の少年――シュタルクは、額に傷を負いながらも立ち上がろうとしていた。

その前に現れたのは、ヴァーリ。

「おい、小僧。大丈夫か。」

「……あんた、誰……?」

ヴァーリは無言で手を差し出し、倒れた少年を引き起こす。

「小僧……あんなの相手に何してんだ?」

「見りゃわかるだろ……戦ってんだよ。」

「……だろうな。援護する。」

そう告げ、ヴァーリはゆっくりと前に出た。

敵は――ゴスロリドレスの魔族少女、リーニエ。

バトルアックスを構えた彼女は、目の前のヴァーリを見つめる。

(……こいつ、強い。)

(力が違いすぎる……リュグナー様以上……いや、アウラ様ですら勝てるか怪しい)

 

喉が鳴った。

本能が警鐘を鳴らしている。

(――勝てるビジョンが見えない)

リーニエは、ジリ……と後ずさった。

 

次の瞬間だった。

「……ッ!」

鋭い気配とともに、何かが高速で迫ってくる。

ヴァーリは即座に反応した。

帯刀のまま、剣で防御態勢を取る。

「……!」

衝撃音。

吹き飛ばされる砂塵。

だがヴァーリは一歩も退かなかった。

「ほう……ただの剣士じゃないようだな」

 

月光に照らされ、目の前に現れたのは魔族の青年・エルガー。

屈強な肉体と鋭い眼光を持つその魔族は、僅かに口角を上げていた。

 

その様子を遠くから見下ろす者たちがいた。

「……アレも、魔族……?」

城壁の上。

魔法使いのフェルンが静かに呟く。

隣では、首切り役人の一人・リュグナーが鋭い視線を向けていた。

(間違いない……奴は……)

(魔族の間で噂されていた、“境界無き殺戮者”――)

(人間も、魔族も……区別無く、ただ殺す存在……)

リュグナーの額に僅かな汗が滲んだ。

 

「さあ――」

エルガーは、己の拳を固く握った。

その気配は、戦闘本能そのもの。

「この俺の力……その身で味わってみろ!」

吠えるように叫ぶと同時に、魔族の拳闘士はヴァーリへと突撃を開始する。

 

「……来るッ!」

 

ヴァーリは短く呟き、抜刀して剣を構え、無駄なく刃を前へと向けた。

 

激突は、刹那。 

 

月光の下、人と魔族が激突した。

*1
新宿に拠点を置く不良集団。一般人を巻き込むことも厭わない悪辣なチーム。

*2
かつてはケンカが絶えない不良の吹き溜まりで、派閥争いや下剋上、チームやギャングとの抗争が常の混沌とした場所。しかし2年前にとある男によって統一され、街を守る存在へと変わった彼らは、街の人々から防風鈴と呼ばれるようになった。





ドラートどこ…

別の分岐ルートも…

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