そして、彼女の得意の武器といえば……
夜明けのガンダム劇場。公開です。
「おねえさま!」
コクピットでフォウは泣きじゃくっている。
サイサリスの盾にたたきつけられてた機体は半ば地面に埋め込まれるようにして倒れている。
育てるのに十把一絡げのパイロットどもとは、フォウは違うのだ。
少なくとも、設計者のゼロ・ムラサメはそう思っていた。
だから、普通ならばパイロットも単なる打撲・骨折程度では済まないような衝撃を受けたにも関わらず、フォウ・ムラサメは無傷だった。
センサー類も生きている。
だが、もはやサイコガンダムリファインは操縦を受け付けない。
だが、どこかのフレームが歪んだのだろうコクピットも開かない。
「おねえさまあぁぁぁ!!」
これはクラバだ。
ココ・シャロンは自分に言い聞かせた。
必要なのは勝つことであって、それは相手を殺すことでも完全に破壊することでもない。
戦争ではない。
だから、こっちも攻撃していいのだ。
これは競技なのだから。
夢の記憶が彼女を侵食する。
いつだってこうだ。
何度やり直しても、彼女はモビルスーツなりモビルアーマーのコクピットにおさまってから、気がつくのだ。
いかに自分自身が戦うことを忌避していたのかを。
いつだって、どの世界だって。
コクピットに座ってから、気がつく。
あの人を。
赤い制服の士官を守るため。彼と一緒の時間を過ごすため。
そのためだけに、彼女は剣をふるってきた。
それがいくら辛いものであっても。
ああ、いやだ。
微かな頭痛は、サイコミュが彼女向きの調整が不十分だからか。
助けを求めるフォウ・ムラサメの声が聞こえる。
夢をいくら辿っても、現れない少女だ。
ムラサメ研究所。サイコガンダム。
それは彼女は肉体を失ってから起きた歴史に登場する。
ならば、これまでの繰り返しのなかで彼女はいちばん、長生きをしたことになるのだろう。
それは成功なのか。
まだわからない。
彼と過ごした日々は、どの夢の記憶よりもまだ短いのだ。
ガトーのサイサリスが攻撃目標をこちらに変えた。
ガトー少佐の狙いが、自分にあることはとっくに理解していた。
もし、わずかでも隙を見せれば、対戦中のサイコガンダムリファインを放り出して、ガトーは彼女を襲っただろう。
たとえ、サイコガンダムリファインの機銃弾を何発か食らっても関係ない。
無理やり二対一の構図を作り上げ、彼女を葬ってしまえば、残ったサイコガンダムリファインはどうにでもなる。
それがガンダムリファインを先に行動不能にするという理想的な展開を行えたのだ。
「コウ!!」
ガトーはすべてのバーニヤを全開にした。
「ありったけばらまけ!!」
コウのフルバーニアンは、最大加速で、ココ・シャロンの死角へと移動しながら、マシンガンを構えた。
ガトーが要求するように「ありったけばらま」いたなら、残弾はものの数秒で枯渇する。だがそれでいいのだ。
弾幕を避けたところに、サイサリスが突っ込む。
コウの攻撃はサイサリスをも傷つけるだろうが、耐久力はサイサリスが上だ。
回避力に特化したとんがり帽子だが、この方法なら捉えられる。
スコープにはとんがり帽子をすでにとらえている。
狙いすぎるな。
範囲を制圧する射撃を……。
ガクン!
フルバーニアンの背中のスラスターが切断された。
制御を失ったフルバーニアンは、キリモミ状態になる。
そのから機体を立て直すのは、どんなベテランバイロットでも至難の業だったが、コウはやってのけた。
とんがり帽子を――。
その機銃を握った腕も切断された。
ば、ばかな!
とんがり帽子は、銃をだらりと下げたままだった。
いやたとえ銃を撃ったとしても、腕を切断するような効果はないはずだ。
「よけろ!! コウ・ウラキ!!」
ガトーの叫びはわずかに遅かった。
フルバーニアンの頭部は、飛来したソードビットに切断されていた。
ば、か、な。
ガトーはコントロールを失ったフルバーニアンが倒れるのを見守った。
サイコガンダムリファインのソードビット。
それはガトーが緒戦で撃墜したはずだった。
いや仮に、撃墜されたフリをしていたのたとしても、それを操るサイコガンダムリファインそのものが機能停止している。
ならば。
操っているのは、とんがり帽子のほうなのか!!
肯定するように、フルバーニアンを屠ったソードビットは、とんがり帽子の肩の辺りに浮遊している。
ここは月面だ。
地球より弱いとはいえ重力はある。
浮遊するように一箇所にとどまらせるのは、至難の業なのだ。
コウの射撃をここまで回避したなめらかな動きはサイコミュを搭載しているのだろう。
そしてソードビットを操って見せたその業前。
おそらくは
「――そうか!ココ・シャロン。おまえも強化人間なんだな!!」
「正確には違います。」
ココ・シャロンは鈴を転がすような声で答えた。
「――ならばニュータイプか。わたしの嫌いな。」
「わたしはガトー少佐のことを嫌いではなくってよ?」
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「すごい! すごいな!!」
月面でのクランバトルで起きていることを、正確に、あるいはやや正確にとらえているものは、ほとんどいなかった。
その数少ない例外が、ズムシティで安酒をかっくらっているこの女である。
「なんで!? ビットならわたしだって
使えるよ!」
傍らの少女は不満そうに、唇を尖らせた。
「違うぞ、プル。」
悪戯っぽく笑いながら、ゼロ・ムラサメはまたオカワリを頼む。
「あのとんがり帽子は、わたしのサイコガンダムリファインのソードビットを乗っ取って使ってみせたんだ。
あれもサイコミュ搭載機で、そのパイロットもニュータイプってことなんだろうが」
バリン。
口元に運んだ酒のグラスを、ゼロの白い歯がかみ砕いていた。
破片で切ったのだろう。
唇から滴る血が、あごまで濡らしていく。
「ち、ちょっとなにやってんの!!」
慌てるエルピー・プルにゼロ・ムラサメは笑った。
ああ。
エルピー・プルは思った。
マッドサイエンティストも怖がることがあるんだ。
「あのとんがり帽子のパイロットは化け物だぞ。」
怖がりながらもうれしそうに、ゼロ・ムラサメは震える。
「とんでもないひろいモノだ。ネオホンコンでサイコガンダムリファインが不自然な動作不良に陥ったが。
そうか、
アレなんだな。サイコミュをもってサイコミュに干渉する。」
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「とんがり帽子が。ココ・シャロンが勝つぞ。」
ハマーンはきっぱりと言った。鍛えた身体が震えている。
マチュは頭を振った
「まだ、わからないよ。」
「わからないか。あれは、ココ・シャロンが。
サイコガンダムの誘導兵器を乗っ取ってみせたんだぞ。」
「それはすごいんだろうけど、クラバの勝敗は別だよ。」
マチュは、そう言った。
「勝とうっていう意志の強さは、盗っ人の方がうえだよ。」
クワトロとアムロは顔を見合わせた。
確かにトリントンからサイサリスを強奪したアナベル・ガトーは、マチュにとっては盗っ人なのだろうが。
なんとも不名誉な渾名をつけられたものだ。
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ビット。
その誘導兵器がたんなる推進剤がなせる技とは思えない変幻自在な動きを行うことは、ジオンのパイロットの間でも、知られていた。
サイコミュは、脳波を増幅してミノフスキー粒子下での無線誘導を可能にする兵器?
そんなものでは――ない。
サイコミュそのものがビットを動かしているのではないのか。
ソードビットを傍らに浮遊させたとんがり帽子のモビルスーツ。
対峙するガトーのサイサリスは、装甲こそ厚いが、すでにバズーカもバルカンもうち尽くしている。
フルバーニアンの装甲を易々と切り裂いたソードビットが自在な遠隔攻撃を可能とする以上、ガトーに勝ち目はない。
だが。
漢は吠えた。
「いくぞ! とんがり帽子!!」
「そんな名前で呼ばないでください!!」
歴戦の勇士と戦いを知らぬ少女。
オールドタイプとニュータイプ。
正反対のふたりが激突する!!
なんと決着しなかった!!!!
えーと、モビルスーツ戦のはすですが、書いてる感じはケンガンアシュラ。