第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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シャアを戦場でも追いかけたいララァ。
ララァを守りたいシャア。
でもときとしてジャマなシャア。
ふたりの思いは少しづつ、すれ違っていく。
オフザケパートが止まらない。機動戦士Gundam GQuuuuuuX第22話「薔薇の行方」。

おまえはもう死んでいる。






第22話 混迷の宇宙~薔薇の行方

クワトロから連絡を受けたデニムは、急ぎララァの住むコンドミニアムに向かった。

 

 

クワトロという男は、あまり自分を飾らない。

だが、自分の身内に対してはまた違うらしく、ララァを連れ帰ってから間もなく、ここに居を構えた。

間取りは、二人の小間使いにそれぞれの寝室まで、備えたかなり立派なもので当然、ジオン下士官の給与が価値判断の基準になっているデニムなどは、目眩がしそうな金額なのだが、そう言った部分に吝嗇なところのまったくないクワトロである。

 

前もって訪ねるとの予告はしていない。

合鍵はクワトロから預かってはいたが、ドアフォンで小間使いたちを呼び出す。

 

すぐにドアが開き、カンチャナが顔を出した。

 

「グラナダの試合の中継は見たな?」

 

カンチャナは無言で頷いた。

 

「ララァはどこだ?」

 

カンチャナは答えない。

 

デニムはカンチャナを突き飛ばすようにして、中に入った。

本当に突き飛ばした訳では無いのだが、彼にもそこまでの気遣いをする心の余裕はなかった。

 

不覚にも、デニムは、グラナダ郊外であったアナベル・ガトーのクラバデビュー戦を見損なっている。

 

興味はあったのだが、アムロ、マチュ、ニャアンが宇宙へ上がってしまうと、急にネオ香港のクラバシーンがいささか寂しいものになったのだ。

 

代わりのスター候補として、ドゥー・ムラサメとトロワ・ムラサメがいたが、こちらはなかなか扱いにくかった。体が弱く入退院を繰り返すドゥーはもちろん、トロワはクラバでも実弾の使用に拘っている。

事実、彼の搭乗するガンダムヘビーアームズは、重火器の塊であり、それ以外にはナイフ程度しか武装をもたない。

 

ビーム兵器はオミットされているので、クラバ向きではあるのだが、彼の好きなように搭載兵器をつかってもらうには、会場を孤島にでも設定するしかない。

 

あれやこれやで駆け回っているうちにガトーの試合を見逃してしまってデニムは大いに悔やんだ。

 

結果はニュースで知った。

 

ガトーのデビュー戦の相手が、あのハイブランドがVIP仕様にデザインしたモビルスーツと、ハイブランド側の要請でこちらから送り出したフォウ・ムラサメのサイコガンダムリファインであることは知っていたが、さすがはガトー。

 

もともとジオンのモビルスーツ乗りであったデニムは、ガトーの勝利は嬉しかったが、そこまでだった。

 

いや時間があれば、観戦したのではあるが、彼は忙しかったのである。

 

試合後、クラバの選手をグラナダの警察機構が逮捕しようとした話も、そのハイブランドのモビルスーツに乗ったパイロットがその手を逃れて行方不明なことも。

 

クワトロからの連絡で初めて知ったのだ。

そして、フォウのM.A.V.ココ・シャロンがララァであることも。

 

 

“まんまとやられたよ、デニム。”

昔の妙な仮面ではなく、だがモニターのなかの“大佐”殿の皮肉な笑みは昔のままだ。

“どうもこれはカンチャナやヴァーニも一枚噛んでいるようだな。

我々のような凡俗はしてやられるまま、という事だ。”

 

 

実際にクワトロから連絡がきたのもついさっき。

 

クランバトルから1週間は過ぎている。

 

クワトロにしてみれば、ララァの監視などもともとデニムの仕事ではなく、彼を責める気など毛頭なかったため、ネオ香港のクラバの様子を確認がてら、話題に出したに過ぎない。

だが、デニムにとっては驚天動地の出来事だった。

彼はその足で、こうしてクワトロのコンドミニアムを訪れ。

 

「ララァはどこだっ!」

 

勝手は知っているクワトロの自宅ではあるが、女性が暮らしている以上、ずかずか歩き回るのは控えていた。

 

「お姉様は…」

 

「誤魔化すな!

グラナダのクランバトルの話は聞いている。俺を騙したのか!」

 

カンチャナは、デニムの前に回り込んだ。

押しのけるようにして、デニムは2階に向かう。

 

「そちらは!」

カンチャナが背後から叫んだ。

「お姉様の寝室です!」

 

どうせ!お姉様はいないのだろう!?

 

ズンズンと大股で歩くデニムの後ろを追いかけるカンチャナが冷笑を浮かべた。

 

「デニムさん! どうしたのです?」

寝室のドアの前に仁王立ちしたデニムに、中から声がかかった。

 

ララァの声だ。

 

「いま…その体調が優れなくて、寝込んでいるのです。なにかご用ならばあらためてください。」

 

「開けるぞ!」

デニムは宣言した。

カンチャナが横から入り込んで、寝室のドアを開けた。

 

「カンチャナ! ほんとに調子が悪いのだって!!」

 

デニムに先立って、寝室に入ったカンチャナがベッドの布団を半ばまくりあげる。

 

黒い巻き毛の少女は、エプロンドレスのままだ。

 

カンチャナの同僚、ヴァーニであった。

 

「は、は、は。」

 

デニムと顔を付き合わせて、ヴァーニは引きつった笑いを浮かべた。

 

「ララァ・スンがここを出たのは?」

「…まえに新型のテストパイロットの依頼を受けて、デニムさんが断ってからすぐ…です。」

「よくも、俺を。いや俺はどうでもいい。よくも大佐を謀ってくれたな!」

「いやあ。そんなに褒められても。」

「褒めてはおらん!!」

 

デニムはくるりと背を向けた。

 

ここにはもう用がない。

 

ララァ・スン。

 

大佐がいくら惚れ込んでいたといたとしても、やはり。

やはり、娼館あがりの女は大佐にはふさわしくない。

 

 

 

デニムはそのまま帰っていった。

 

玄関が閉まる音を聞いてから、カンチャナは布団をぜんぶはいだ。

 

「後ろ姿が悲しそうだったわ…」

 

ヴァーニの後ろに隠れていた額にビンディーのある褐色肌の美少女は、濃紺のおさげの2つのお団子ヘアだ。ハイライトのない緑の瞳は時として謎めいた輝きを宿す。

 

なにげに自宅での普段着に愛用している黄色のワンピースのまま、もぞもぞとベッドから這い下りる。

 

帰ってきたのは一昨日だ。

別にゼクノヴァ現象とかそんなものではない。

彼女の試作用モビルスーツ“とんがり帽子”を開発した某ハイブランドの自家用シャトルである。

 

 

「お姉様!」

カンチャナは腰に手を当てて仁王立ちである。

 

「まあどうしたの、カンチャナ。家に火でもつけそうな勢いよ?」

 

「なんで、こんなことをしたんです!!」

 

「ああ。それは話したわよね?

わたしは大佐の傍にいたいのよ。でもあの人はモビルスーツ乗りだから、いつもは一緒にいられない。

だから、いつも一緒にいるためには、わたしもモビルスーツに乗れるようにならないと…」

 

ハッと気がついたように、ララァは頬に手を当てた。

 

「…そうか! 最初から複座のモビルスーツを開発すればいいのね!

素晴らしいアイデアだわ、さすがはカンチャナ!」

 

「んなことは言ってません!」

カンチャナは、美しい主を睨みつけた。こどもながら中々迫力がある。

オールバックに三白眼が似合うのだ。

「モビルスーツが動かせるようになりたいっていうのは聞きました!

けど、なんです、これは!」

 

ララァの目の前に突き出したスマホの画面にはアラレもない姿の女主の姿が写っている。

 

「カンチャナってば。だめよ、あなたはまだこれを買っていい年齢じゃないのよ?」

あれ?

と、ララァは唇に指をあてて、考えこんだ。

「…でもカンチャナはわたしのことをもっとぜんぶ見てるわけだから、そんなに刺激的ではない?」

 

「うっさいなあっ!!

グラビアはモビルスーツの操縦とは関係ないでしょ!

単なる脱ぎたがりだって思われてますよ、きっと!」

 

あのお。

と、ヴァーニが口をはさんだ。

 

「ほんとは思ってないと思うんですけど、たぶんこれだと、館にいたときと同じようなファンがついてしまうんじゃないかって、言いたいだけだと思います。」

 

 

 

 

 

 

 




はい、あんまり切れ味よくないですが、鬼越トマホークでした。
なんで、とっさにこんな芝居をうったかといえば、これでデニムは「ララァはネオ香港の自宅にはいなかった」と証言してくれるからです。
もう少し時間をかせいで、ララァは自分のビットを操る能力を試してみるつもりでいます。


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