第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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アムロ大ビンチ!!
いやこいつはたしか輸送機でモビルアーマー撃退してたなあ。
と思うとそんなピンチでもないかもしれない。





第22話 混迷の宇宙~月面の死闘

ヴァルヴァロはその威容を見せつけるかのように、その巨体を浮かせた。

そのまま、ゆっくりとアムロたちの周りを旋回する。

 

「ケリィさん!」

 

呼び掛けにモビルアーマーは答えることはない。

 

「ガトーさん!?」

 

サイサリスは、ゆっくりとクレーターの中に降りてくる。

その特徴となるバズーカと盾は装備していない。

 

「なにをやってるのかと言えばだな。」

カイは皮肉そうに言った。

「予告無しのクラバだからな。視聴者が気がついて賭けのオッズが成立するのを待ってんだよ。」

 

「いったいなんでこんなことを……」

 

「そりゃいくつも理由があるぜ。ひとつには、これが興行としては大成功間違いなしだからだ。衝撃的なデビュー後に行方不明となっていた“ソロモンの悪夢”の復帰。オーナーのケリィ・レズナー自らの参戦。

対するのは、“白い悪魔”アムロ・レイと元連邦のエース、カイ・シデン様だ。

元ジオン対元連邦って図式も、これはなかなか話題には事欠かねえ。」

 

「……いやぼくは連邦軍には行ってないんだけど。」

 

「まあ、もうひとつの理由が、さっき俺が言ったことに関連する。

モビルスーツ乗りを『上がれた』ヤツがひとりでもいるかってことだ。

地上暮らしのやつはいったんおくわ。

だが、少なくとも宇宙でモビルスーツを操ったことのあるもんなら、モビルスーツなしに宇宙にいることがそれだけで不安でどうしょうもなくなっちまう。それ無しの生活なんざ考えられなくなるのさ。」

 

「モビルスーツってそんなに危険な乗り物なのか!」

 

「逆だ。逆だよ、アムロ。

宇宙って言う環境では、ひとはモビルスーツに乗っていることこそが、当たり前なんだ。

寒い日にコートを着るようなものでな。

モビルスーツに乗ったことのある人間はそれを心の奥底でわかっちまってる。だからモビルスーツ乗りをやめられなくなるんだ。

ケリィも自らモビルアーマーを操縦できるチャンスを心のどこかで待っていたんだろう。

そこにいくつか偶然が重なった。

クラバの無敵のチャンプ、アムロ・レイがグラナダにやって来た。おまけに因縁ある俺まで一緒にいる。話題性には事欠かないから、興行的にも成功間違いない。」

 

「でもこんな、騙し討ちのような形で」

 

「ああ、俺たちが、のこのこと連れ立って、現場検証などに出かけなければ、諦めただろうさ。それもまた“偶然”のひとつだ。

――ちなみに、これは賭けてもいいがアンキーは承知してるぜ。」

 

「そんな!」

 

「いや、あるよ。」

アムロの膝の上でマチュが言った。

「お金になることに、アンキーが躊躇するとは思えない。」

 

「ちゃんと、ギャラは出るかなあ……」

ニャアンが不安そうに言った。

 

「もちろん!

そこらへんをケチるひとじゃない。」

 

「じゃあ、これはクラバなんだな。」

アムロは諦めたように言った。

 

「だからそう言ってるじゃん!

モビルアーマーにサイサリス。こっちは武装なしのザクと軽キャノン。ハンディキャップがマッチとしてはアリな組み合わせだよ。」

マチュは、うんうんと頷いた。

「この前、トリントンで演習仕様のドムとゼフィランサスで、サイサリスにゲルググ4機とやりあったことがあったけど、ハンデとしてはこっちのほうがややマシって感じじゃない?」

 

どんな状況だ!

とアムロは呆れたが、たしかにクランバトルのハンデ戦と考えれば戦いかたはなくもない。

 

アムロは……なんとなくだが、輸送機でもモビルアーマー一機くらいなら落とせそうな気がするのだ。

 

いやいや。

アムロは首を振った。

根拠の無い自信は、禁物だ。

「気がする」

というレベルなら、落下途中の小惑星だってガンダムで押し返せそうな気もするのだが、もちろん気のせいにすぎない。

 

 

「クランバトルを開始します。クランバトルを開始します。

今回は特別ルール。M.A.V.のどちらかが頭部破損または戦闘不能で決着とします。開始まで、

5……4……3……」

 

「アムロ! 操縦系を貸して!」

ニャアンが叫んだ。

 

アムロは言われるがままにメインの操縦をニャアンが座る副座(もともと練習用のこのザクでは教官用のシートだ)に繋いだ。

ニャアンは、カイの軽キャノンに突進すると、その手をつかみ。

 

「2……1……試合開始!!」

 

振り回して加速をつけた軽キャノンをガトーのサイサリス目掛けて放りつけた!!

 

「軽キャノンハンマー!!」

 

投擲のフォームとしてはたしかにハンマー投げに近い。

軽キャノンは、まるで投げ槍のように虚空を切り裂き、サイサリスを目指して飛んだ。ガトーは機敏に身を翻し、脚部のスラスターを噴射して横に逸れる。だが、カイは放物線を描く軽キャノンのブースターを吹かして軌道を修正した。

 

――サイサリスは頭部バルカン以外の飛び道具を持たない。

一方で盾を失っているとはいえ、その重装甲は健在で、軽キャノンの小型の機銃では有効打を与えにくい。

無理やりに接近戦に持ち込んだ――持ち込ませたニャアンの行動は意味がないようでそれなりに有効ではあったのだ。

抜きはなったカイの軽キャノンのヒートサーベルがサイサリスのヒートサーベルと噛み合った。

 

出力ではサイサリスが勝る。

押し込まれるままにカイは、しかし軽キャノンのバランスを崩すことはなく、剣を噛み合わせたまま、サイサリスの足元をさらった。

 

サイサリスはバランスをくずし

――だが転倒することなく、そのまま軽キャノンを搗ちあげるように体当たりをする。

その勢いを利用するように、軽キャノンはサイサリスを引き込んだ。

重力の井戸と表される地上でも、宇宙空間でもない「月面」というバトルステージ。

2機のモビルスーツは、もつれあって倒れ込み土煙を巻き上げた。

 

「くそっ! アムロ!何しやがる!」

 

いや、それはニャアンが。

言い訳をしようとしたアムロだったが

 

「アムロ! ヴァルヴァロが来るよ! 操縦任せる!」

 

そんな好き勝手がありかっ!!

 

アムロは副座から操縦桿を握り直し、ザクの脚部スラスターを全開にした。ザクは古い機体だが、この練習用仕様は意外に機動性が高い。地上の6分の1の重力下では、跳躍したあとにある程度自在に軌道を変えられる。

 

上昇する。ヴァルヴァロの巨体が、ゆっくりと旋回を終え、こちらに向き直っていた。ケリィ・レズナーの操るモビルアーマーは、まるで古代の巨獣のように威圧的だ。主砲の砲門が開く。

 

本来ならばメガ粒子砲を装備しているのだろうが、今回は実体弾だ。

 

「ケリィさん! 本気でいきますよ!」

 

アムロの叫びが虚空に響くが、ヴァルヴァロからの応答はなかった。

発射された砲弾をアムロのザクがかわす。

かわした先に機銃の弾幕。

 

数発が、ザクをかすめた。

 

「武器はないのか!武器は!」

 

せめてマニュアルでもあれば!

ザクの操縦系はガンダム以降のモビルスーツとは異なる。

払い下げが数多出回っているので、アムロもテム・レイのガンダム完成前には練習でなんども乗っている。だがそれらは武装をオミットされた正規品だ。

 

マニュアルは――あった。

 

ページをめくるアムロ。

 

乗ってからマニュアルを読み込むなんて、まともなモビルスーツ乗りのやる事ではないが。

 

「こ、これか!」

 

アムロはヒートホークを引き抜いた。

 

正確には「ヒート」ではなかった。

練習用のザクのヒートホークの刃は別に高熱を発したりはしない。

つまりはこれで叩いても、単に「叩いた」程度の威力しかないということだ。

 

「天パ、いっつもと同じだよ!

完全に破壊しなくっても首を落とせば勝ちだからね!」

マチュは励ましてくれたつもりなのだが。

アムロはまた別の困難に直面した。

 

――ヴァルヴァロの首ってどこだ!?

 

 

 

 




首のないモビルスーツならクラバはかなり有利……まあ、メインセンサー周りを潰せばいいのですが人型ではないモビルアーマーは困りますよねえ。
さてどうしよう?

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