ムーバブルフレームについて、すでに軽キャノンやゲルググの最新ロットについては取り入れられていますし、この程度のことで、アルテイシア新政権に恩を売れるなら、ゴップとしては収支の合う話だと判断したのです。
そして、なぜアルテイシアが「クランバトル」という方法を提案したのかは(続く)
ジオン公国と連邦。
スペースノイドとアースノイドの融和と繁栄を寿ぐ、なんとも薄っぺらなパーティは、ジオン公国の国家元首であるアルテイシアの体調不良により一日延期されたが、滞りなく行われた。
美しく気品あるアルテイシアのファンは、連邦にも多い。
連邦に、または連邦寄りのサイドに多大な被害をもたらしたジオンの独立戦争当時、ジオン公国を指導していたザビ家は内紛によって、ほぼ消滅している。
実際にそれは、政治的な目的を暴力で達成するという「戦争」という劇薬すらも越えていた。
ギレン自身が明言したように「増えすぎた人口の間引き」。
ゼノサイド。
そう言われてもしかたのない犯罪行為であった。
しかし、ザビ家なきあととなった今となっては、コロニー落としやコロニーへの毒ガス注入など、ジオン公国にとっては都合の悪いことはすべてザビ家になすりつけることについては、ジオン公国は本当に容赦がなかった。
ギレン。キシリアが「事故」でなくなったあと、アルテイシアが元首についたのは、別にクーデターと呼べるほどのものではない。
グラナダの市民たちは、キシリアを断固支持するというような忠誠心は持ち合わせていなかったし、ギレンと彼を支持するものたちは、イオマグヌッソの暴走事故でア・バオア・クーもろともに消滅してしまったのだ。
まるで、突如うまれた空白にすっぽりとはまり込んだアルテイシアは、優雅であれど脆いガラス細工のように―表舞台に立つ存在として選ばれたのだ。
まるで童話に出てくるガラスの靴に選ばれた灰かぶり姫のように。
「ご気分が悪くなられたとのことで、我々も大変心配しておりましたが」
グラスを片手にそう話しかけてきたのは、連邦政府でも古株の議員たちだった。
連邦議会もいくつかの派閥に割れている。
今回、ジオン公国が招いたのは、そして招きに応じたのは、その党派をこえて宇宙に対して何らかの利権をもつものたち。
「もうすっかり、大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
にこやかにアルテイシアは返したが、ミーアあたりに言わせると「もう少し、媚び、というか隙をみせないと。せっかくのお顔とスタイルが。もったいない。」そうである。
実際には、パーティが一日延びたのは、ご気分が悪くなられたのではなく、ゴップに対する脅しのために、アルテイシア自身がソドンに乗り込んで、サイド3を離れていたからだが、アルテイシアはそれについては特になにも言わずに微笑んでいた。
当たり障りのない社交辞令を交わしつつ、アルテイシアは泡立つ黄金色の液体を飲み干した。
さあ!
これから、楽しいイベントの告知をするように、クランバトルの情報を流すのだ。
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「ケリィ・レズナー!!」
感情的になりやすいアンキーではあるが、本気で怒ることは珍しい。
もともとクランバトルを合法として認めたのがサイド6であり、そこの管理委員会にちゃっかりともぐりこんでいるのが、いまのアンキーの立場だ。
ジオン公国にも太いパイプを持ち(とクラバ関係者には思わせ)、ジオンやサイド6には、クランバトルの世界ではカネバン有限公司の右に出るものはいない、と思われておく。
実際にこの戦略はかなり功を奏していて、アンキーはクランバトルの世界では目下のところかなりの大物である。
「なんだ、いきなり……」
言いかけたケリィの脇腹にアンキーの膝が炸裂した。
筋肉を貫き、内蔵を掻き回すような一撃だった。
たまらず身体をふたつに折って、床に崩れ落ちた。
ガトーが割って入る。
「モビルアーマーまで持ち出すとは聞いてないね。それにアムロたちを武装なしのザクに乗せる話も、ね。」
「わ、悪かった。」
ケリィはなんとか身を起こした。
「もともと俺がやり合いたかったのは、カイのほうなんだよ。俺を撃墜して腕を取られた相手だからな。だからアムロのザクにはジャマを入れられないように武装を解除しておいたんだ。」
アンキーはじろりとガトーを睨んだ。
「本当だ。少なくともケリィはそのつもりだった。
だがアムロが、カイの軽キャノンをこちらに投げつけてきたんで」
そう言いながらガトーは苦笑いを浮かべた。
「本当にアムロを殺すのが目的なら、サイサリスにもビームライフルを用意しただろう。」
「とりあえず迷惑料だね。」
アンキーは、ケリィの目の前で指で複雑なサインを作って見せた。
ケリィは目を丸くした。
「いや、その金額は……そもそもアムロに知らせずにクランバトルを仕掛ける所までは、あんたも納得してくれてたはずだ。」
「アムロの分は、ね。だがあんとき、ザクのコクピットにはマチュとニャアンも居たんだ。二人分の出撃料金がはいってないね。」
「俺はカイとアムロが、現場を見たいと言うからモビルスーツを用意したんだ!
あの女の子たちが乗ってくることなんか俺は知らんっ!」
「あの二人はあのシャリア・ブルの秘蔵っ子でねえ。わたしが預かってるんだよ。あの子たちにもし怪我でもさせたら……」
「だからと言って勝手にザクに乗り込んで」
クラバの細々したところはわからないガトーではあるが、ケリィの血相をかえた顔から見て法外な金額だったのだろう。
「あー? あーぁー? ああっ!
おまえは、うちのエースを騙し討ちでやっちまうとこだったんだがなあ。」
よろよろと立ち上がったケリィの腹めがけて、アンキーはまたも膝をぶちこもうとしたが、今度はガトーが止めた。
「ガトーさん。二つ名持ちのパイロットか知らんが、これはクラン同士の落とし前の話だ。ひっこんでな!」
「ポメラニアンズのアンキー……か。海兵隊上がりか?」
嫌そうな顔でアンキーは、膝を引っ込めた。
「海兵隊流の格闘術だ。シーマのところにいたのか?」
この話題は愉快ではなかったらしく、アンキーはそっぽをむいた。
ふん、と不満そうに鼻を鳴らしてから、アンキーはあらためてケリィを振り向いた。
「アムロから頼まれた。おまえにダリルを紹介してやってくれと。」
「だ、ダリ…?」
「ソロモン陥落後に、サンダーボルト宙域で活躍したリビング・デッド師団のパイロットだ。以前、アムロとの試合をセッティングしたことがある。」
「リユース・P・デバイス…か。」
ケリィは呻いた。
「実際に使い物になるのか、それは?」
「試合そのものはアムロたちが勝ったよ。でもそれはアムロがダリルのM.A.V.を落としてしまったからだ。
ダリルは“白い悪魔”に落とされなかった数少ないパイロットの一人になった。リユース・P・デバイスは有効ではある。
――使うものを選ぶがな。」
それはその通りだ。
リユース・P・デバイスは、脳の思考によるモビルスーツの操作を可能にした技術である。脳が本来の手足を動かそうとする信号を、そのままモビルスーツの動作に変換できるため、人間のようななめらかな動きを実現する事が出来る。
だが、難点がある。
それはパイロットの義手や義足を通して行われるのだ。
つまりパイロットは四肢のいずれか、あるいはその全てを欠損していることが前提となるのだ。
もともと熟練パイロットが足りなくなりつつあったジオンで、本来なら前線から下げなければならない負傷兵をなんとか有効に活用できないか、という試みから始まった計画だった。
これは、ダリル・ローレンツにおいて完成する。
彼は――リユース・P・デバイスを使った機体とのシンクロ率を上げるために、
健常だった腕をわざわざ義手に変更した、というのだ。
結果……戦勝とスペースノイドの自主独立という美酒に酔ったジオン公国には、これはあまりにも非人道的。唾棄すべき汚点と見なされた。
リビングデット師団は解散。ダリルたちパイロットは除隊させられた。
とはいえ、必ずしも酷いものではない。
ダリルたちは傷病兵であり、社会復帰のためのプログラムや義手義足のメンテ費用はもちろん、年金までも受給があった。
だが、残念なことに、モビルスーツのパイロットを「上がる」ことは非常に難しい。
まして、己の体の一部としてモビルスーツを操ったことのある者についてはどうだったろう。
うーん、サンダーボルト世界はGQuuuuuuX世界にも合うなあ……