第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ジュドー対ヤザン。
一応、今回で決着します。あんまり引っ張る話でもないので。
そして。


第23話 クランバトルの時代~勝利と敗北

 

ヤザンに貸し出されたのは、軽キャノンだ。

連邦軍唯一のモビルスーツである。もともとは中距離戦闘用のモビルスーツであって主力となるモビルスーツは別にあったのだが、運用テスト直前にジオンに奪取されてしまった。

 

近接戦闘のデータがとれなかった連邦軍は当初補助的な支援モビルスーツだったガンキャノンを一部武装を排除して生産性を高めることで、軽キャノンを作り出した。

 

これはザクに比べれば十分、優れたモビルスーツであり、ソロモン攻略においては数の優位性もあって、ジオンのモビルスーツを圧倒できたのだ。

 

機体にはそれぞれ、クセというものがある。

ヤザンは、慎重に1歩踏み出した。

本来肩にマウントされているキャノン砲は外されている。

代わりに、マシンガンと盾。

 

ジュドーのガンダムもどきはジャンプを繰り返すように、近づいてくる。

 

悪くない動きだ。もしポメラニアンズのパイロットやメカニックが言うように、バランサーや動作のトレースプログラムのない機体なら、ジュドー・アーシタという小僧は天才だ。

いや――

ヤザンの嫌いなニュータイプという奴かもしれない。

 

すでに何度目かのジャンプで、射撃武器の射程にはいっているはずだ。だが、まだジュドーのガンダムもどきは手元のマシンガンも肩のキャノンも発砲しようとはしなかった。

 

そのこともヤザンには好ましく感じられる。射程ギリギリの射撃など当たるわけがないのだ。

“戦争なんて焦ったほうがまけなのよねぇ。”

かつて同じ戦場で戦ったことのあるバイロットの軽口が脳裏に浮かんだ。少年と言ってもよい年齢で従軍した男だったが、腕はよかった。いまはどうしていることやら。

 

 

もし、兵器使用のリミッターも解除されていて実弾系の飛び道具を装備しているなら、ジュドーの機体のほうが有利になる。

 

 

ジュドーのガンダムもどきが近づいてきた。

ザクの胴体を中心に構成されているのは間違いないだろうが、手足はそれぞれ別の機体からもってきたもののようだ。

脚の長さが微妙にあっていない。

 

月の重力下ならば、ザクのスラスターでもホバー移動は可能なはずだが、それを使おうとはしない。そもそも月面でモビルスーツを操縦するのが初めてのはずだ。

 

“もろもろ及第点だぜ、ジュドー。”

ヤザンは心のなかでつぶやいた。

 

「ヤザン・ゲーブル!!」

アンキーの声が入った。

ヤザンの軽キャノンにのみ通じる回線だ。

「なにをモタモタしてるんだ!

試合時間は3分なんだよ!

このまま、時間切れになったら、興行が成立しないんだよっ!」

 

たしかにな。

 

ジュドーがモタモタしているように見えるのは、それも狙っているのかもしれない。

……いや。

違うよなあ。

ヤザンは歯をむきだして笑っている。

 

“おまえはそんなタマじゃねえよなあ、ジュドー!”

 

なぜそう思ったのかは分からない。

だが初めてあったときから、この少年にどこかで遭遇したことのあるような気がしていたのだ。

 

ガンダムもどきは射撃武器は搭載しているが、見たところ近接戦闘の剣や斧は装備していない。

 

ならば!

 

グンっ!

と、軽キャノンが加速した。

 

一気にガンダムもどきとの距離を詰める。

 

慌てて妙な形のマシンガンを構えるが。

 

“遅い!”

ヤザンは自分のマシンガンを投げつけた。

とっさにかわしたのはさすがだが、その刹那の隙に、ヤザンは射撃ではなく斬り合いの間合いに突入している。

 

ガンダムもどきのマシンガンっぽい何かの銃口がこちらを向くが、盾を上げてそのまま飛び込む。

たとえ、数発、銃弾をくらったとしてもヤザンのヒートサーベルのほうが早い。

 

ゴンッ!!

 

衝撃が軽キャノンの前進をストップさせた。

盾にめり込み、制動をかけたのはマシンガンの銃弾ではありえない。

 

ゴン! ゴン! ゴン!

 

音は聞こえぬ月面でも、盾を通じて振動は伝わる。

 

なんだ!

弾丸ではなく、まるで固定用のリベットでも打ち込まれているような衝撃だった。

 

ずるずると、軽キャノンが後退する。

 

ガコンッ!

 

盾に穴が空いた。

 

リベットのような、ではない。

本当にリベットだった。

 

たしかにこれならモビルスーツの装甲を貫通できるだろう。

そのためにつくられた「工具」なのだから。

 

なるほど。

 

ヤザンは理解した。

モビルスーツそのものはジャンク部品から組み立てられても「武器」となるとまた別物だ。

おそらく、こいつはリベットを発射するための工具だ。それを武器に使用している。

 

まともな射撃武器は肩にマウントされたキャノンだけなのだろう。

 

リベットは武器に使えば、貫通力はあるものの、ある程度距離が離れれば狙いは付けにくい。

つまり、このガンダムもどきが備えている接近戦用の武器がこのリベットガンであって、本当の中長距離用の武器が、肩のキャノンなのだ。

 

いっぱい食わされたヤザンは歯噛みした。

 

だが、リベットを銃代わりに使うのは、狙いが付けにくいほかにも弱点がある。

 

それは。

 

ヤザンは、ボロボロになった盾を投げ捨てた。

 

一発一発が、重いリベットではそれほど弾数が稼げない。

 

今度こそ。

近接武器を失ったガンダムもどきは、肩にマウントされたキャノン砲に手をかけた。

 

遅い!

ヒートサーベルで切りかかったヤザンの軽キャノン。その一撃をガンダムもどきのキャノン砲が受け止めた。

 

え?

 

それはキャノン砲ではなく。

 

“た、ただの棍棒だとおっ!”

 

単純に質量ではヒートサーベルよりも棍棒が勝る。

ビームサーベルなら両断出来たのだろうが、ここはクランバトルの会場だ。

 

不味いことに、ヒートサーベルは棍棒に半ばまでくい込んでストップした。

ガンダムもどきが、蹴りを繰り出す。

 

後方に飛ばされながら、ヤザンは追撃に備える。

 

ガンダムもどきは踏み込みながらキャノン砲もどきの棍棒を振るう。

 

クソがっ!

ヤザンは悪態をつきながら、振り下ろされる棍棒を避けて、地面を転がった。

考えてみればそうだった。

 

たかがガキどもが集まったジャンク屋に射撃武器が流れてくることなどありえない。

 

だから、リベット撃ちの工具に棍棒か。

 

大きくジャンプするが、その動きにガンダムもどきはラクラクとついてくる。

ジェネレーター出力やスラスター性能はかなりまともだ。

 

ポメラニアンズのメカニックの見立てではジェネレーターは初期型のゲルググから引き上げたものではないかとの事だったが、選択は悪くない。

ゲルググだって改修は続いているのだがそれはコストを引き下げる方向であって、むしろ出力そのものは抑え気味になっている。

 

ガンダムもどきは戸惑ったように、棍棒を振りかざしたまま、動きを止めた。

 

「どうした、ジュドー?」

一般回線でヤザンはそう言って笑った。

 

「どう……って。降参しないの。もう勝負はついてるでしょう?」

 

たしかに軽キャノンはマシンガンと盾を失い、ヒートサーベルもガンダムもどきの棍棒にくい込んだまま。

つまり空手である。

 

「大人を甘く見るんじゃねえ。

それに勝負事もだ。きっちりと頭を潰してから勝ち名乗りを上げるんな!」

 

じゃあ遠慮なく。

 

とジュドーは棍棒を振り上げた。

すこしは遠慮しろよ、とヤザンは心中でつぶやいた。まったく育ちの悪い連中はこれだから!!

 

ジュドーの一撃は、軽キャノンの肩を砕いた。ヤザンがかわしたのでそうなったのだ。

ヤザンは、残った腕で、棍棒にくい込んだままのヒートサーベルの柄を掴んだ。

ヒートサーベルが再び赤熱する。

 

そのまま、押し込むように力を込める。鍔迫り合いのような形になったが、両腕で棍棒を支えているガンダムもどきと片腕の軽キャノンでは、圧倒的に差があった。

のしかかるように。

 

軽キャノンは押し込まれたが、その力も利用して、ヒートサーベルはさらに棍棒に深く食い込む。

 

「このおっっ!!」

「もらったぜ!」

 

棍棒は、ついに両断された。

そのままの勢いで、ヒートサーベルはガンダムもどきの首から胸にかけて深々と切り込む。

だが、半分に両断された棍棒の残りが、軽キャノンの頭部を同時に破砕していた。

 

 

 

-----------------

 

 

 

「いい勝負だったぜ!」

ヤザンは意気揚々とグラナダのクラバの本部に戻ってきた。

クラバはクラバであり。

ヤザンとしては、試合の勝ち負けで一喜一憂するほうでもない。

 

破損した軽キャノンとガンダムもどきの回収は係にまかせて、ヤザンとジュドーは一足先に戻ってきたのだ。

 

「判定は、頭部破損により、ジュドーたちの勝ちだ。いいね。」

アンキーが物憂げに言った。

ジュドーは浮かない顔で頷いた。

 

「なんだ!? しけたツラすんな。おまえは連邦軍の元エースに勝ったんだぞ?

もっと胸を張れ!

たしかに、俺はたかがメインカメラをやられても動けるし、おまえのガンダムは俺の一撃でもう動けないだろう。だから純粋に勝負から言ったら俺の勝ちなんだが……」

 

「それはいいんだけど。」

 

「ならもっと喜べ! アンキー。これであんたのところのクランでジュドーたちを雇ってくれるだよな?」

 

「雇うのは雇ってもいいんだけど……」

アンキーも困った顔である。

 

「あのなあ……」

 

 

「あのね、ヤザンの旦那!」

エル・ビアンノが、険しい表情で割って入った。

「あんた、わたしたちの唯一のモビルスーツをぶっ壊してくれたんだけど!?

これじゃあ、アンキーさんに雇ってもらってもクラバに参加できないわ!どうしてくれるの!?」

 

 

 

 

 




なるほど……
ヤザンは改めて気がついた。ジュドーたちのモビルスーツは手作りに近いもので、あそこまで損傷してしまうと修理も難しい。かと言って、モビルスーツをクランから借り受けてクランバトルに出るのはこれはまったく金にならない。
そうだな……空いてるモビルスーツがあるにはあるんだが……

「なあ、ジュドー。おまえ最新型の可変機を動かしてみる気は無いか?」



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