金色?
ジュドーは一瞬、自分の目を疑った。
兵器の塗装としてはあまりにも相応しくないと感じたのだ。
ミノフスキー粒子による戦闘は有視界、実際に光学的に相手を捉えることが重要である。
そのために目立たない塗装をすることは当たり前である。
確かに独立戦争時代のジオンのエースたちには、わざと目立つようにパーソナルカラーで塗装した機体もあった、とは彼の知識の中にもあった。
典型が“赤い彗星”シャア・アズナブルである。
それは真紅というよりはピンクに近い明るい赤であり、強奪したガンダムまで、わざわざその色に塗り直したのだとか。
(もっとも試作機として作られたガンダムは、白を基調にしたトリコロールカラーという、これもとんでもない色使いであったので、どっちもどっちと言えないこともないのだが)
金色の重戦闘機は、クラバの会場であるクレーターの上空で翼を畳み、瞬時に人型に変形し月面に降り立つ。
「ジュドー・アーシタ。こいつが可変モビルスーツ試作機“百式”だ。
乗っているのは……」
誰でもいい。
ジュドーは思った。
誰であろうとそいつは頭がおかしい。
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百式のコクピットで、クワトロは唸った。
彼が奪取したガンダム、またトリントン基地を中心に開発された試作ガンダムシリーズ。あるいはグリーンノアで作られたガンダムマークⅡ。
あらためて、稼働しているところを目の当たりにした『Zガンダム』は、それらと比べても抜き身の刃物を思わせる鋭角さを感じさせた。
そして
そのパイロットから伝わる負の感情は
「わたしにプレッシャーをかけるパイロットだと!?」
白い翅を広げたモビルスーツがその隣に降り立った。
「我が君。あれが百式の改良型か。」
ハマーンの声は落ち着いていた。
グリーン・ノア滞在中に何度かテスト飛行を行っていて、その操縦にはだいぶ慣れたようだった。
いや、それだけではない何かが、この少女とキュベレイにはある。
クワトロはそんな気がしていた。
確かにそのデザインは、幼少期のハマーンが起こしている。
エネルギーCAP式にしてビットを小型化し、モビルスーツの本体内部に内蔵するという発想も非凡なものだった。
だが、そこから具体的にモビルスーツとして設計図をひき、組み上げたのはジオンの技術者のはずだ。
アルテイシアが自身の専用モビルスーツとして作り上げたという経緯から、ジオニックやアナハイムの最新技術は組み込まれていない。
エネルギーCAP式の小型ビット以外は、ジェネレーター出力も装甲も平凡なものである。
ゲルググの改良計画に取り入れられた肩部のバインダーにより、やたらと機動性だけは良いがあまりにもピーキーで、本当にこんなものを元首の専用モビルスーツとしてよくぞ世に出したものだと、クワトロは密かに冷や汗を流したものだった。
それをハマーンは楽々と乗りこなしている。
初回の出撃こそ小型ビットの誤作動があったものの、それをアストナージが改修してからは、同様の事故は(少なくとも模擬演習中は)まったく起きていなかった。
まるで、
自分用に開発された機体を操るがごとく。
「妙なプレッシャーを感じるな。だが、不快なものではない。
どこか。
懐かしい。」
あるいは。
ハマーンは“向こう側”で、この“キュベレイ”を操ったことがあるのだろうか。
「ヤザン!」
「お説教はあとで聞くぜ、“大佐”殿。」
ヤザンの声は楽しそうだった。
「すげえパイロット候補生をスカウト出来そうなんだ。ついでにZガンダムのテストも行える。まともな申請を出してたらグラナダからNGを食らうのは目に見えている。」
「駄犬には少し躾けが必要なようだな、ヤザン・ゲーブル。」
ハマーンの口調は一気に氷点下に下がった。
「やってみるかい? アクシズのお姫さん。」
ヤザン・ゲーブルとハマーン・カーン。
二人の卓越したパイロットの間に、凄まじい気が膨れ上がっていく。
これはとめてもとまるまい。
ならば。
私、クワトロ・バジーナの相手は、ヤザン・ゲーブルが連れてきたパイロットと、その彼が操縦するZガンダムということになる。
機体の仕様についてはもちろん目を通していた。
ジェネレーター出力、装甲材も私の“百式”よりも勝っている。
ミサイルポッドは空だろうが、脅威とすべきはその両手で抱えているビームライフルだ。
“百式”のビームコーティングは、専用の盾を装備しないことを十分に補えるはずであったが、とてもその性能を試す気にはならなかった。
あれは確か、銃口からビームの刃を発生させて、長大なビームサーベルとしても使用できる。
おそらくは、変形機構が“百式”と比較してもさらに複雑になっている以外は、あらゆる性能で百式を凌駕している。
「クランバトル、クランバトル、開始します。
カウント10秒前。」
一撃当てればいいのだ。
クワトロは忙しく頭を働かせた。
いや、かすらせるだけでもいい。
通常ではビーム兵器をオミットするクランバトルが、ビーム兵器の使用を許可した代わりに付けた条件がそれだった。
ならばビームの威力は関係ない。
「9、8、7」
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カウチに身を沈めた褐色の肌の少女は、嫣然と微笑んだ。
「白いモビルスーツが勝つわ。」
金褐色の髪をあげた少女が、自身の女主をジト目で睨む。
「参加してるモビルスーツは、“百式”を除いて概ね、連邦の試作機がよく採用する白を基調にしたトリコロールカラーですけど?
当たる確率四分の三ですね。」
「そんな夢のない言い方はダメよ、カンチャナ。」
ララァは悪戯っぽい笑いを浮かべた。
「夢を忘れた古いアースノイドみたい。」
モニターの中で試合開始のカウントが続く。
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「6」
ジャミトフは目の前の男を睨んだ。
サングラスの奥の表情は伺いしれない。
ジオンに捕らえられた際に受けた暴行で視力を悪くした───そんなふうに聞いていた。
前線指揮官としてはそれなりに有能──だと判断して使っていたのだが、ここのところ首を傾げることばかりだ。
ひとがついてこない。
自身から見ても有能であり、アースノイドファースト思想に共感してくれていたはずの人材が、軒並みジャミトフの元を離れていく。
それがこの男、バスク・オムのせいであることはいい加減に気づいていた。
そろそろ、切り時か。
とも思うジャミトフであったが、そのときにこの男がどんな暴挙にでるか。
それが恐ろしくもある。
2人がいる部屋のモニターは月面のクラバの中継をしている。
「はい、もともとジオンに属してはいましたが、独立戦争後は独自の道を歩んでおります小惑星ペズンの研究所。
私から最新のムーバブルフレームやマグネットコーティングの技術を流しております。
ジオンからはウィングバインダーやインコムの技術を手に入れ、これも渡しました。」
貴様はいったい誰の味方だ!
ジャミトフは思わず口走りそうになった悪態を飲みこんだ。
ちらりとモニターに表示される可変モビルスーツに目をやる。
「あれらに匹敵するモビルスーツが手に入る……というのか?」
「それ以上のものを、です!」
バスク・オムは胸をはった。
「すでに、ガンダムマークⅡにインコムユニットを装着した機体が完成しております。ガンダムマークⅤと名付けました。」
いや、別におまえはなにもしてないだろう。それにⅢとⅣをスキップして何故いきなりⅤなんだ。
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「5」
「いいか! 間違ってもコックピットに直撃させるなよ! 人死にが出る。あと、出来れば大破もさけるんだ。最新鋭機なんだぞ!
修理にどのくらい手間がかかるか!!」
ブライトは懸命に一般回線でクワトロたちに呼びかけている。
“ねえ、天パ”
マチュがアムロに擦り寄って囁いた。
“どうせ誰も聞いてないよ?”
「ああ。でも一応、口に出しとかないといけないのさ。軍隊ってそういうもんだ。」
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「4」
ハマーンはマークⅡから距離をとった。
ヤザンは笑う。
なるほど。それなりに戦い慣れはしてるのか。
だが、距離をはかることで、おまえがなんの武器を使おうとしているのか、わかってしまうなあっ!!
「3」
「ZETAのパイロット!」
クワトロは呼びかけた。
「妙な動きをしなければ安全に終わらせてやれるぞ?」
「おなじ言葉を返してやるよ、金ピカ!」
ZETAが構えたロングビームライフルの先にビームの刃が宿った。
「2」
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「頑張れ! アーガマの新型! コクピットを撃ち抜いてもいいんだぞ!」
「姫さま……」
ランバ・ラルがため息混じりにつぶやいた。
「1……クランバトル、スタートです!!」
うーん、ひっぱってしまいました。次話こそ間違いなくバトル!!