前半、やりたい放題のヤザンさんの言い訳。
後半、アルテイシア専用機モビルスーツについての考察です。
「いやあなにもかも上手くいったよな!」
と、ヤザン・ゲーブルは主張したが、アーガマの者たちは概ね相手にしなかった。
確かに、新型機Zガンダムのデータは、極めて実戦に近い形でとることができた。
連邦軍の最新兵器テストをグラナダ近郊で、しかもクランバトルの同時配信付きで晒してしまうことについては、情報の伝わり方が早いか遅いかの違いだけである。
どこかでZガンダムを動かせば、それはアーガマ僚艦であるアレキサンドリアを通じて、ただちにジオンに流れるであろう。
そして実戦形式のテストがしたければ、目下クランバトルという形式が極めて一般的であったのだから。
そして、ヤザンがしきりに強調するところ。ニュータイプの素質をもつ少年ジュドー・アーシタをスカウトできたこと。
これは大きい。
クワトロもこれには一応、同意した。
天然モノのニュータイプなど、ジオンにとっても連邦軍にとっても、そしてアナハイム・エレクトロニクスのように保安部隊を備えた大企業からは垂涎の的である。
アムロだけは「ニュータイプ=パイロット」と見なされることには、やや不満げではあったのだが。
懸念されていたカミーユは、クラバの翌日、フォウに連れられて帰ってきた。
迎えに出たのは、アムロと……マチュ、ニャアン、それにゼロ・ムラサメである。
ゼロ・ムラサメは満面の笑みで、フォウを迎えたが、当のフォウはそうでもなかった。
科学者と被験体。
フランケンシュタインとその怪物。
ゼロがフォウたちに愛情に近い感情を抱いていたとしても結局のところ、両者の関係は家族でも友人でもないのだ。
ゼロはフォウに、ココ・シャロンの居場所を尋ねたが、彼女はあっさり「知らない」と返した。
「ぼくもなんども聞いて見たんですが、ホントに知らないみたいです。」
カミーユは元気そうだった。
見たところ外傷もないしちゃんと食事もとっているようだ。
「そうすると、ココ・シャロンの狙いはなんだったんだろうね?」
マチュが首を傾げだ。
「ああ、たぶん時間稼ぎ、だ。」
ゼロ・ムラサメはあっさりと答えた。
「時間稼ぎ? なんの?」
「ココ・シャロン用のモビルスーツ…クラバで損傷した部分を修理し、改修を加えてまた送り出せるようにするための時間だよ。そのために必要な時間は予め、メーカーから提示されていたんだろう。」
「まだ…ララァさんはクラバを続けるつもりなのか。」
アムロは顔をしかめた。ココ・シャロン…ララァ・スンはクワトロ大尉の恋人、でしかなかったが、それでもララァが戦いに身を投じることになんとなく不快感を覚えたのだ。
「ニュータイプがニュータイプらしくあるのは、モビルスーツに乗ってこそだよ! アムロくん。」
ゼロ・ムラサメは声高らかに宣言した。「だから、擬似ニュータイプである強化人間は、モビルスーツパイロットとして作られるんだ。」
「でもあのひとは戦いをするひとではない。」
「ニュータイプがその能力を開花させるにもモビルスーツの操縦が一番なんだ。」
ゼロは、なおも言った。
「幸いにもいまは戦争中ではなく、ココ・シャロンさんの行き場所は戦場ではなく、クランバトルという試合の会場だ。
幸運に感謝したまえ。もし、彼女がもう5年早く見出されていたら、きみと彼女は戦場で相まみえていたかもしれないんだよ!」
そんな馬鹿な。
万が一、ララァがニュータイプの素養を見出されて、パイロットになっていたとしても、アムロが戦場に引っ張り出される可能性はさらに低いと思われた。
いや。
マチュやララァ自身の話では、アムロは向こう側で、“大佐”の機体を落としているのだ。
なんどもなんども。
だからそれはありえないと笑い飛ばせる話ではない。
「ジークアクスは、もうガンダムがララァを殺すところを見たくないって言ってたよ。」
マチュが、言った。
「『もう』って言ってるからにはそういう世界もあったんだろうね。
天パ。あなたはいまでもけっこう苦労してるのはわかるんだけど、それでもマシな世界にいるんだよ、きっと。」
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アルテイシアは、デスクの上にうかぶ立体映像を見ながら、眉間に皺を寄せていた。
ゲルググを基準に、ジオニックが作り上げた新型機である。外装は中世から歴史をもつハイブランドのデザインで、ブレードアンテナを兼ねた頭部の意匠がとんがり帽子を被っているようにも見えて、あまりアルテイシアには好ましく思えなかった。
なんとなく―――ではあるが「とんがり帽子」は敵のような気がするのである。
「カラーリングや細部のデザインは、こちらの希望で変えられるそうですぞ。」
ランバ・ラルの考えはわかる。
可変機や内部にファンネルを内蔵したキュベレイのような実験機は、安定性に問題があるのだ。
サイコミュを操縦の補助と割り切り、ある程度実績のある技術で作りあげればこうなるのであろう。
特筆すべき改修点があるとすれば、コクピット周りの安全性の確保だろう。
かつてのガンダムのようなコアブロックシステムこそ採用されてはいないものの、機体が試算するようダメージのなかでも、コクピット部分は破壊されない。
「わたしにニュータイプの素質があるのでしょうか?」
「姫様のニュータイプ能力はテストしたモノではありませんから、未知数ですな。」
「インコム―――ワイヤー誘導のオールレンジ攻撃兵器の搭載は?」
ランバ・ラルは首を振った。
「シャリア・ブルがインコムユニット搭載のゲルググで実戦にでましたが―――ワイヤーが絡まって使い物になりませんでした。」
それは、アルテイシアも目の前で見ている。
「その欠点は克服されたはずです。」
「実戦または実戦に近い形でテストされていない兵器の搭載は却下させていただきます。」
アルテイシアはランバ・ラルを睨んだ。
「今回のクランバトルは、ジオンの次世代機としてガンダムマークⅡを採用できるかどうかの重要な一戦となるはずです。」
「これは然り! クランバトルを本当の戦争にかわる外交手段のひとつとして採用するための茶番かと考えておりましたが。」
そこまで読んでいたか。
アルテイシアはある意味、満足した。
配下に優秀な人材がいることは、組織の運営として悪いことでは無い。
「それでも勝つためには最善を尽くすべきです。」
「失礼ながらわたしがM.A.V.としてご一緒いたします。実際の戦闘はわたしにお任せいただいて、姫様は後方にて待機を。」
ダメだ。
ランバ・ラルは確かにパイロットとしても優秀だがそれ以上にいま現在は、ジオン公国にとって無くてはならない存在となっている。
そんな戦い方で万が一、ラルを失ってはあまりにも痛手が大きすぎる。
アルテイシアだって死にたくはなかったが、単に跡を継ぐだけなら、アレもいる。
いや―――アレを形だけでも元首に迎えるならば、ミネバ・ザビのほうがマシか。
「あなたが、わたしのM.A.V.だというのなら、あなた一人を危険にさらすことで、勝つ可能性を狭めることは出来ません。」
自分のことばにランバ・ラルが目頭を押えるのを困ったものだと思いつつ、アルテイシアは続けた。
「グリーンノアのテム・レイ先生に連絡を。強化バックアップシステムで使えるものがないか確認してください。」
「とんがり帽子」と呼ばれてる例のハイブランド製のモビルスーツの名前が決まりません!!