第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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突如クラバの舞台に現れた謎の機体「ガンダム」。
連邦の元技術士官テム・レイが手がけたというガンダムは、クランバトルで連戦連勝を重ねていく。そのバイロットだという青年アムロ・レイははたしてニュータイプなのか?
かつてイオマグヌッソ事件の現場にいた者たちは、その「ガンダム」に驚愕する。テム・レイがつくりあげた新しい「ガンダム」はかつて謎の少年シュウジ・イトウが、「向こう側」から召喚した機体にそっくりだったのだ。
舞台は宇宙へ。

宇宙のとあるコロニーの。

その。

場末の居酒屋からはじまる。



第14話 白い悪魔

子どもが出来たんだ。

 

付き合いの長い友人にそう言われたら、返す言葉はひとつだろう。

 

「お、おめでとう。」

どこか少年めいた線のやわらかさを頬に残した青年はそう言った。柔らかなパーマの髪は短くしているので不潔感はない。

まだ学生のように見える線の細さだ。

 

彼が半ば公然と行われている違法のクランバトルの凄腕パイロットだと知ったらひとは驚くだろう。

 

向かい座るのは、彼のM.A.V。以前住んでいたサイドのご近所さんだった友人だ。

背は高くないががっちりとした体型である。

 

「じゃあ、今日はぼくがおごるよ。たいしたことはできないけど。その…フラウ•ボウとお幸せに。籍はいれるんだろ?

式はどうする? ああ、クラバのほうは気にしなくてもいい。何回か休んで、ゆっくり新婚旅行にでも」

 

「そのことなんだけど」

 

「あ、もちろん。お金はこのまま折半でいいからね。そうだ、クランからのお祝い金を出してもらうように父さんにかけあってみるよ。」

 

「もう辞めさせてくれないか!」

 

アムロのM.A.V。ハヤトは深々と頭を下げた。

 

「い、いきなりなにを言ってるんだよっ!」

 

「いきなりじゃない。ずっと考えてたんだ。」

ハヤトは意を決したようにしゃべりはじた。

「払い下げのザクを相手にしてるだけならなんとかかったさ。でもホンモノのエースが出てくるようになるとなにもできない。

今日だって…」

 

たしかに。

今日の相手はアムロからみてもかなりの腕前だった。

ザクそのものもブースターを増設して運動性を格段に上げている。

それでもかろうじて勝ったは勝ったのだが、どうもクラバの関係者からの情報では、機体そのものがジオニック社が計画中のザクの改修機らしかった。

 

つまり払い下げなどではない。

改修の効果を実戦にきわめて近い形でテストできる。

開発元が、その場所としてクランバトルを使っているようなのだ。

パイロットも当然それなりの者を用意している。

 

名前まではわからないことが多いが、今日の相手はあきらかにM.A.V戦術に慣れていた。

ハヤトの軽キャノンは完全に置いてきぼりにされ、アムロはひとりで二体のザクを相手にするはめになったのだ。

 

同様なクランは増えている。

かく言うアムロたちもテムが新設計した「ガンダム」の性能テストにクランバトルを利用しているのだから。

 

 

「近々サイド6はクラバを公式の競技として公認するんだろう…」

 

「そうだよ! そうしたらぼくらも日陰の存在じゃなくなる。クランバトルの競技者として堂々と胸をはれるようになるんだ!」

 

「でもビームライフルを装備したモビルスーツも格段に多くなる。」

 

「ルールを改定して一撃で装甲を撃ちぬけないように出力を落とすはずだよ…」

 

「そ、それにしたって、危険度はアガる。コクピットを直撃されて無事でいられるかどうか分からないじゃないか!

いまだって、クラバのパイロットの死亡率は高いんだ。」

ハヤトは視線をそらして、ぼそっと言った。

「とても家庭をもてるような仕事じゃないよ。」

 

そう言われては、アムロも返す言葉がない。

彼の事情からハヤトをクラバに誘ったのは、アムロ自身だったから。

 

戦うことが楽しい、と思ったことは一度もない。

けれども(もしくはそれに類する接続助詞)、攻撃してくる相手を排除しているうちに勝ち星はつみあがっていった。

 

 

最近では自分の乗るガンダム(もどき)を「白い悪魔」と呼ぶものまでいる。

こんなに戦いが苦手な悪魔がいてたまるか、とアムロは思うのだ。

 

「いつ、辞める?」

 

これはとても止められない、と思ったアムロはそう尋ねた。

あのフラウ・ボウがハヤトの奥さんに。

胸中にざわめく物がたしかにあった。

たしか父がモビルスーツ開発で忙しく、ろくに家に帰って来れなかったころ、いろいろと世話をしてくれたのがフラウだった。

 

たぶんあのころ彼女は自分のことが好きだったのだろう、とアムロは思う。だが、それにどう答えたらよいのかわからぬうちに、友人であったハヤトとフラウ・ボウは付き合うことになっていた。

 

ハヤトは少しためらったあときっぱりと言った。

 

「さっきのクラバで最後にしてくれ。」

 

 

 

あの日、「赤い彗星」の奇襲によりモビルスーツ開発計画は頓挫し、敗戦とともにアムロの父親であるテム・レイは技術士官の職を追われた。

技術者としてまたは研究者として名声高いテム・レイである。教員または指導者としての働き口はないわけではなかった。

だが、彼の望んだモビルスーツの開発に直接携われる仕事はジオンにしかなかった。

 

テム・レイは連邦という組織を必ずしも全肯定しているわけではない。

だがジオンという国はあまりにも仕えるのにリスクの大きな国だった。

 

公王デギンの派閥、総帥たるギレン、月のグラナダを中心とするキシリアの派閥、それにザビ家の強権を前になりをひそめてはいるが、共和派、そしてダイクン派。それぞれの力関係が渦を巻き、血で血を洗う抗争を続けている。

次世代のモビルスーツとしてはゲルググと呼ばれるガンダムの簡易バージョンが決定している。そのガンダム開発の主任がテム・レイだったのだから、ジオンは三顧の礼もって、テム・レイを迎えても良かったのだが、そうはならなかった。

 

ギレン・ザビはモビルアーマーに傾注し、キシリアはサイコミュとそれを操るニュータイプという存在に資金と人材を注ぎ込んでいる。

 

連邦への忠誠心、というよりもコロニー落としやコロニーへの毒ガス注入を行うザビ家というものをテム・レイは好まなかった。

 

工科大学への進学をやめて、仕事を手伝うことになったアムロからこの件についてきかれたテムはこう答えている。

 

「いいか。わたしがジオンに行ってモビルスーツ開発をやるなどと言い出したら、酸素欠乏症を疑うんだ。」

 

 

それから何年かの日々がすぎた。

ついに完成した新しいガンダムは、かつてジオンの赤い彗星が分取っていったガンダムを簡易に構築しなおしたような代物で、あまりよい出来ではなかった。

資金を提供してくれた企業の担当者は顔をしかめた。

 

「テム・レイ博士。たしかにこれは…ザク以上の性能はありますが…かつてのガンダムをスペックダウンさせただけの代物ですな。」

 

つまりはこの程度のモビルスーツでは受領できない、ということだった。

 

「そんなことはない。バーニヤやスラスターは減っているが運動性は確保している。

これがわたしの『ガンダム』だ。」

 

「いや、途中で開発費を削ってもらったのはこちらも責任は感じております。

しかし、なにぶんにも」

資金提供者の某企業の担当者はちらりと手元のタブレットに視線を落とした。

 

同席していたアムロがちらりと覗き込むとそこには、鎧騎士のようなモビルスーツの映像が映っていた。

 

「先日の某所でのコンペでも我社は敗北しておりまして…なかなか資金繰りも。

こちらはスペック上は、終戦時のゲルググと同等、というところでしょうか。いえ、カタログ上の数値が全てでないことは我々も承知しております。あとは実戦で有用性を証明していただくしか。」

 

「無茶を言う。軍警のザクでも破壊して回ればよいのかね?」

 

もちろんそんなことをすれば大犯罪である。

 

「まさか!

とは言え、まったくのハズレというわけでもありません。」

 

テム・レイは黙り込んだ。

 

悪い人間ではないものの、その道の1人者だ。プライドは高い。からかわれたと感じたのだがそうではなかった。

 

「クラバ。クランバトルというのはご存知ですか?」

 

「聞いたことはある。」

不機嫌そうにテムは言った。

「払い下げのモビルスーツを戦わせて、金を賭ける。非合法の見世物だ。」

 

「実際にはサイド6のお偉いさんが暗黙で承認していましてね。」

担当者はずるそうな笑みを浮かべた。

「流石に記録映像はないんですが、ソロモン落とし以降行方不明だったあのガンダムがいたとかいないとか、“ユニカム”シイコ・スガイが参戦してたとか。ジオンが新型のテストに使っていたという噂もあります。」

 

「そこに出場しろ、と。」

 

「そうです。そして勝っていただきたい。」

 

そこに含んだものに気がついたのはテムではなく、アムロのほうだった。

 

「そちらの会社の利益のために賭けの対象になれ、と。」

 

「そうですよ。八百長をするわけではない。あなた方は勝てばいい。こっちは勝手に賭けるだけだ。さんざん、投資したあげくこんな旧式を押し付けられたんだ。少しは投資額を回収させてもらわないと。ね。」

 

「しかしパイロットが。」

 

モビルスーツの性能が全てではない。

そう出なければ撃墜数百機ごえのユニカムの存在などありえないのだ。

 

「ぼくが、やります!」

アムロは反射的に立ち上がっていた。

父が…父の作り上げた「ガンダム」がバカにされるのに耐えられなかったのだ。

 

テムは厳しい目でアムロを睨んだ。

 

「無茶をいうな。これは遊びではないんだぞ?」

「でもあくまで試合でしょう? 殺し合いじゃない。」

 

「実にけっこうです。」

担当者はパチパチと手を叩いた。

「ですがクランバトルは基本二対二のM.A.V戦です。もうひとりパイロットを用意いだだきたい。

機体のほうはこちらでなんとかいたしましょう。」

 

 

 

かつてサイド7を蹂躙したシャアの奇襲は未だに賛美されることが多い。

その攻撃目標を徹底的に兵器と軍事施設に絞り、民間にはほとんど被害を出さなかったのだ。

 

信じられるだろうか。シャアは、対峙したモビルスーツガンキャノンを爆発させてコロニー自体に被害が及ぶことを恐れ、そのコクピットだけをビームサーベルで穿くという離れ業を行ったのだ。

 

このためサイド7の民間人から、かの赤い彗星への人気は非常に高い。

 

毎年恒例の「コロニー建設祭」では、サイド7の住人は赤い法被を着て踊る。みんな仮面をつけているので、ちょっとした男女の出会いの場になっているのだ。

 

それはさておき。

連邦がモビルスーツ開発を停止し、宇宙から撤退してしまうと、サイド7は本当に僻地の。なんの産業もないコロニーになってしまった。

 

ちょうど仕事にあぶれていたハヤト・コバヤシはアムロの誘いにのってきた。

そこから数ヶ月。

 

アムロとハヤトは勝ち続け、ついに「白い悪魔」と呼ばれるまでになったのだ。

 

 

 

話は現在へと戻る。

クラバの勝利の祝杯は、そういったわけで、アムロにとっては苦いものとなった。

ハヤトは食事もそこそこに席をたってしまった。

 

クランバトルの関係者だからといって、逮捕される時代は半年かそこらまえに終わっているが、サイド間のシャトルの乗船には制限がかかる。クラバを辞めれることになったのなら早々にそちらの手配をしたいハズだった。

 

アムロは暗い気分で店を出た。

 

父になんと話そうか。

 

クランバトルに参加できなくなれば開発費どころではない。生活費にも困るのだ。

 

 

 

 

 




という訳で、第二部的な始まりです。
ニュータイプだって食わなきゃ死ぬんだ!
這い上がれ!這い上がるんだ、アムロ。
というかカミーユと会うとこまでも話すすまない。
そのうち同じサイドに住んでた美人の医学生のお姉さんとの再会とロマンスも用意してるから!
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