ティターンズの真の目的が明らかになったとき、宇宙は震撼する。
一方、グラナダではあらたなクランバトルがスタートしようとしていた。
リビングデット師団ダリル。その恐るべき能力とは!
トロイホースは、連邦式に言えばペガサス級、ジオン式に言えばソドン級の戦艦である。
用途としては強襲上陸艦となる。
モビルスーツカタパルトを備え、その運用に特化した艦船だ。独特な形状以外には、ミノフスキークラフトを搭載しており、大気圏突入後再度宇宙空間への離脱を行うことができるばかりか、大気圏内での飛行も行える。
独立戦争の終結の際に、連邦軍の宇宙戦闘艦はことごとく破壊されたが、ペガサス級のみは「大気圏内」での運用が可能だという理由で残された。
だがもともとが高コストの艦艇なので数はない。
いま、トロイホースは小惑星ペズンへの航路にあった。
航路も時間も、秒のタイミングで事前申告されている。
現在、連邦の戦艦が大気圏を出るというのは、そういうことであり、トロイホースが出動することはあまりない。
「シナプス艦長。」
バスクは、トロイホースの艦長に話しかけた。
先だっては、このトロイホースで、グリーンノアにガンダムマークⅡの受領に出かけてえらい目にあっている………いやシナプスの立場にとってはえらい目に合わされているのだが、このバスク・オムという男には反省という言葉はないようだった。
「予定通りの運行です、バスク少佐。」
短く、簡潔にシナプスは答えた。
「ペズンとの通信を開け。」
シナプスは、黙って上官の顔を見やった。
バスクの額に青筋がたった。もともと感情的になりやすい人物であるが、このところの失策続きでかなり、気が短くなっている。
「待ちたまえ、バスク・オム。」
シナプス艦長の上官、ブライアン・エイノーが提督が静かに言った。
「君たち、ティターンズは客人としてトロイホースに乗り込んでいる。実際の指揮はシナプス艦長のものだ。」
「我々、ティターンズの作戦行動であります、提督。」
ティターンズは連邦内でもエリート部隊である。その権限はときとして階級をも凌駕するのだ。
平常時ならともかく、いまは作戦行動中だ。
エイノーは肩を竦めて、シナプスに目配せした。
「通信回路開け。」
ややあって、正面のスクリーンに女性士官の顔が映った。目元をバイザーで隠している。
「ティターンズのバスク・オム少佐。
ペズンへの来訪を歓迎する。」
「ふん。
挨拶するのに顔を隠したままか。」
呼び出しおいてのこの態度はあまりにもだと、エイノーとシナプスには思われたが、相手の女性士官は気にはしなかった。
「失礼。視力を少々悪くしていてね。
迎えのザクを出しているから、誘導に従ってくれたまえ。」
「シナプス、こちらもモビルスーツを出せるか? ガンダムマークⅤが使えるはずだ。」
「あれは、ペズンでインコムユニットを搭載して完成する代物です。出撃準備はとってはいません。」
「使えんな!」
吐き捨てて、バスクはスクリーンに向き直った。
「ゆっくりしている暇はないのだ。至急、そちらの新型を受領したい。
動作確認のための技術者、テストパイロットの準備は出来ているな。」
女性士官の口元に笑みが浮かんだ。
「クランバトルまでにはまだ日にちはあるはずです。わたしたちもお渡しする以上は最高のものを一番よい形でお渡ししたい。このまま、ペズンへお立ち寄りください。」
「もともとはキシリア閣下の構想から立ち上がったペズンが、我々に協力いただけることを感謝したい。」
ブライアン・エイノーが立ち上がって礼をした。
「当初の予定通り、いったん、ペズンヘ入港。しかるのち、新機体についてのブリーフィング、ならびに操作習熟のためのパイロットの訓練計画についての計画を相談したい。」
「ありがとうございます。エイノー提督。」
女性士官の微笑みが柔和なものに変わった。
「お待ちしておりますわ。」
「おい、待て! なにを勝手に…」
スクリーンから女性士官の姿が消えると、バスクはエイノーに食ってかかった。
「提督! 勝手なことをされては困る。
私としては一刻も早く、新型を受領してテストを行いたいのだ!
悠長な説明会などは不要!
我がティターンズのエリートパイロットならば、機体への習熟訓練などは必要ない。」
「焦るな、少佐殿。」
エイノーは穏やかな態度を崩さない。
「はっきり言うが、私が自身で出向いているのは、きみたちへのお目付け役の意味もあるのだ。」
「な!」
バスクの顔が朱に染まる。
「なんだとっ?」
「まさか、とは思うが、マークⅤの換装と、新型を受領次第、訓練と称してアーガマへ意趣返しなどをたくらんでもらうと困るのでな。」
バスクは口をパクパクさせた。
それはまさに彼が考えていたことだった。
連邦を代表するのは、ティターンズである。
エゥーゴの息のかかったアーガマなどに先を越されるなどあってはならない。
確かに手練れのパイロットやグリーンノアからの新鋭機(その中にはいまいましいことにあのガンダムマークⅡも含まれていた)も搭載している。
だが、奇襲をかければ。
アーガマそのものに大した固定武装がないことは確認している。
モビルスーツやパイロットがいかに優秀であろうが、発進前に叩いてしまえばいかほどのものがあろうか。
そして、連邦の代表は、ティターンズに決定せざるを得ない。
いくら卑怯だとか文句を出そうが、ジオンとのクランバトルに勝つためにはティターンズとその最新鋭の力を借りるしかない。
そうだ、クランバトルの会場には、アルテイシアをはじめとするジオンの重鎮たちも顔を見せる可能性もある。
ならばその場で一気に全員を討ち取ってしまうのはどうだろう。
求心力を失ったコロニー国家は一気にバラバラになるだろう。
混乱に乗じて、ジャブロー地下で秘密裏に建造していたマゼラン、サラミスを打ち上げる。
半ば独立を気取ってはいるが月面のフォン・ブラウン市なら、駐留の名目はたつ。あそこをあらたな拠点として………。
膨らむ妄想に静かになったバスクをブリッジの全員が冷ややかな目で見つめた。
それはバスクがこの作戦のために連れてきたカクリコンたちティターンズパイロットたちも一緒だったのである。
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クラバだよ、クラバ!!
アンキーは明らかに調子に乗りすぎている。
前から彼女を知るアムロやマチュ、ニャアン。それにケリィなども同意見だった。
「一通り、ビッグネームは出し尽くしてしまっていたからね。あとは行方不明のジョニー・ライデンやシン・マツナガくらいか。
ここでリビングデット師団のダリル・ローレンツをスカウトできるのは大きいよ!」
ケリィがダリルを連れて、ペズンの新型のテストの話を持ち込んだとたん、アンキーは小躍りせんばかりだった。
「ここんとこは予告ができないクラバが多かったからね。今回はたっぷり時間をかけて………」
「アンキーさん! ぼくは一応、あなたのクランの所属ですけどね。アーガマそのものも搭載のモビルスーツも連邦に所属しているんですよ。勝手にクランバトルに出場させるなんて………」
「正確には、連邦軍所属はマークⅡだけだぞ、」
アンキーはうきうきと言った。
「おまえの『ガンダム』は持ち込みだが、ニャアンのゾックはうちの所有だ。
百式はテム先生がテストのために貸し出したものなので、所有権はグリーンノアだし、キュベレイに至っては完全にジオン製だぞ―――まあ、クワトロ大尉とハマーンは、モビルスーツももって地球に降りるそうだから、こいつらは自動的に除外となるが。」
「………わかりました。ですがM.A.V.はどうします?」
「それは心配ない!
ダリルはそのつもりで相方を連れてきている。イオ・フレミング…とかいったな。
元連邦だが腕は確かだ。モビルスーツはペズンが大戦末期にロールアウトさせた機体に改修を施したものらしい。」
「………話の流れだと、ぼくとニャアンが出撃することになりそうですが。」
「それはそうだろう!」
なぜか、アンキーは胸を張った。
「ヤザンあたりに頼んでもいいが、マークⅡやZETAは貸して貰えないだろうから、ゾックで出撃することになる。
ニャアンのほうが機体になれている。」
「5年以上前の旧型機でもともとは、水陸両用型のモビルスーツですよ!?」
「大戦中の機体なのは、むこうの一機も同じだ…アクト・ザク、というらしい。」
「もう一機はむこうの新型なんでしょう?」
「おまえの『ガンダム』だって、完成して1年もたっていない。充分新型だよ。」
アンキーの上機嫌は止まらない。
「ああ! こりゃ、独立戦争時代の兵器マニアにもウケるかもね!
なぞに包まれたペズン工廠のモビルスーツ!
ガンダムを越えるザク、アクト・ザクとザクの後継機として開発されながらも日の目を見なかったゼク・アイン。
パイロットはリビングデット師団のダリル・ローレンツ!!
対するは、現代クランバトルの覇者『白い悪魔』だ!!」
少しひっかかるものかあって、アムロは眉をひそめた。
“ゼク………アイン?
わざわざアインと呼称するならばその次………ゼク・ツヴァイも存在してるってことか?”
「そうだ、こうしてはいられん!
ケーン! 撮影の準備だ!! ニャアンの写真集をだすぞ!」
「やめろ!!」
次のクラバ。
ニャアン+アムロ vs ダリル・ローレンツ+イオ・フレミング
そのまえにペズンのゴタゴタをちょっと挟みます。