対するゼク・アインは、そこから5年後の機体。変形も合体もありませんが、スベックはガンダムよりも上。
さらにリバースサイコデバイスが……
サイコミュは積んでいないはずだ。
ダリルは舌を巻いている。
シャア大佐が奪取したガンダムを量産化したゲルググ。それをさらに簡略化したような白い悪魔の『ガンダム』。
その動きは、ニュータイプの乗ったサイコミュ搭載機、いや言ってしまえば、リユースサイコデバイスを搭載しているかのように滑らかだったのだ。
ダリルは以前、一度クランバトルで白い悪魔と相まみえている。
そのときは、アムロのM.A.V.のほうを追いかけていたのだ。
そちらをすみやかに戦闘不能にしてから、イオ・フレミングと2人がかりで白い悪魔に挑む。
そういう腹積もりだったのだが、アムロのM.A.V.を落としきれないうちにイオが撃破されてしまった。
だから白い悪魔の機動を目の当たりにするのは初めてだった。
今回の新型機。
リバースサイコデバイスを搭載したゼク・アインは、肩のアタッチメントに様々な武装を追加搭載できる。
今回は、標準的なビームライフル仕様で追加武装は搭載していないが、対要塞仕様ともなれば、多数のミサイルや実弾兵器も搭載可能だ。
“そうすべきだったのか?”
ダリルは自問自答する。
いや、この機動性、この読み、このスピード。
本体重量を重くしてしまうことはかえって致命傷になりかねない。
背後に回った白い悪魔を肩越しに、射撃。
充分意表をつけたはずだが、これもかわされる。
ガッ! ガガガッ!!
ガンダムの頭部バルカンが、ゼク・アインの装甲に弾かれる。
これは「囮」だ。
振り向いてはダメだ。
振り向いた瞬間にメインカメラをやられる。
ダリルはそのまま、ゼク・アインを背面跳びさせた。
後ろ向きのまま、ビームライフルを乱射。
これもかわされる。
抜いたビームサーベルをガンダムのビームサーベルが迎え撃った。
パワーではこちらが勝っているはず。
だが押し込まれた。
体勢を崩しながら着地。
咄嗟に掲げた盾をガンダムのビームライフルが持っていった。
盾の残骸を投げつけながら突進。
互いのサーベルの間合いにはいる直前に、ダリルは身を沈めた。
低く。
さらに低く。
地表から湧き上がるような斬撃に対処出来る剣法はない。
モビルスーツの動きはある程度、実際の人間の動きをトレースしたものが基本となる。
かわせるはずがない。
必殺を確信しての斬撃は空を切った。
ガンダムは。
更に深く身を沈めている。
「うわあああっ!!」
「な、なんだとお!」
上方に振り上げたゼク・アインの両腕。その下からの斬撃は避けようもない。
通常のモビルスーツならば、どんな熟練者でも。
―――つまり、リユースサイコデバイスが無ければ。
ダリルは、そのまま体当たりをするように、白い悪魔に突っ込んだ。
おそらくは。
メインモニターのある頭部を切断する軌道にあった斬撃は、ショルダーアーマーを深く切り裂いただけで終わった。
そのまま、力任せにガンダムを吹っ飛ばす。
装甲、パワーともに勝るゼク・アインだから出来たのだ。
それでもガンダムは大きく体勢を崩している。
ビームサーベルを振りかざして、襲いかかるダリル。
もともと兵士である彼には、クラバのルールには縛られない。
合法化されたときにいくつかルールの追加改訂はあり、「故意」にコクピットを狙うことは反則とされていたが、なにをもって故意と判断されるかは、これからのクラバの歴史が決めるのであろう。
ゼク・アインのビームサーベルは、ガンダムを袈裟懸けに。肩口からコクピット部分までを両断したはずだ。
ガンダムは盾を掲げた。
たんに「盾」として掲げたのではない。
斬撃の方向に対して垂直に。
ビームサーベルは盾に切り込んだが、半ばまででストップした。
“こ、こんな盾の使い方を!”
ダリルの動揺がわずかなスキを生んだのか。
ガンダムは盾から手を離すと、また大きく身を沈めながら、ゼク・アインの脇を駆け抜けた。
ゼク・アインのビームサーベルを握る腕が肘から切断される。
「どうやって……」
ガンダムの斬撃が見えない!!
大きく後方に飛びさがりながら、ダリルは、白い悪魔の不可視の斬撃を理解した。
ガンダムは、その手にビームサーベルを逆手に握っていたのだ。
リーチそのものは短くなるが、通常の斬撃では切りつけにくいような至近距離での攻撃が可能になる。
狼狽しながらもダリルの行動には、一切の遅延がない。
ビームライフルの射撃は、正確に狙いをつけると言うよりも、白い悪魔の次の動きを牽制するためのものだった。
“イオ!!
イオ・フレミング!
どうしてる? そっちはまだ片付かないのかっ!!”
地面に倒れた相手は意外に狙いにくい。
圧倒的有利な立場にありながら、イオは未だに有効打を与えられないでいた。
地面を寝そべったまま、移動するゾックの速度は意外に早く、そして狙いがつけにくい。
もっと上空からなら、狙いやすいのだが、そうするとゾックのメガ粒子砲の射角の範囲にはいってしまう。
ダリルと白い悪魔は、一進一退の攻防を続けている。リユースサイコデバイスの反応速度に、互角。いやそれ以上の動きを白い悪魔は行っている。
機体性能そのものは、ゼク・アインがうえのはずだ。
それでかろうじて両者の戦力は釣り合っている。
弾幕をはれる……実弾兵器があれば。
イオは呻く。
だが彼は、ゾックの動きが自在のように見えて、その実、一定の範囲内に留まっていることに気がついた。
なんだ―――
いや理由はわからないが、まるで重石でもつけられているように左右から引っ張られている?
もちろんそれは、ニャアンが邪魔だから切り離そうとして射出し、実際には切り離せなかったゾックのアームクローに他ならないのだが、イオはそこまでは分からない。
しかし、それなら!
イオのアクト・ザクは加速して大きく回り込んだ。
ゾックの死角はわかった。
動ける範囲も限定できた。
ならば、絶対に安全な角度からじっくり狙えば、嫌でも当たる。
精密な射撃は必要ない!
旧型のゾックの装甲ならば、ビームはどこにあたっても行動不能になるだけの力がある!
ニャアン、ピンチのようですが、ネタばらししますと、ニャアンのゾックはカッパサイコミュ搭載機です。
エスビットも搭載してます。エスビットは月の重力下でも動きます。このクラバはビーム解禁です。
ああ、イオ・フレミングがかわいそう。