第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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更新遅くなりました。
今回のクラバは今回で決着です。





第24話 暗雲~白い悪魔とリビングデッド4

「罠だ! イオ!!」

 

ダリルの叫び。

一般回線を通じてのメッセージであったが、それよりもほんの一瞬早く、イオ・フレミングはそのメッセージを受け取っていた。

反射的に機体を横滑りさせる。

 

なにもないはずの地表から発射されたビームが、その左半身を削り取っていった。

 

“クッ! まだ、だ。”

刹那の回避行動は間に合っていた。

 

左脚のバーニヤ。左腕。左肩のショルダーガードを破壊して、ビームは宇宙へと駆け抜ける。

 

おそらくは。

試合開始直後に、ゾックは、そのアームクローを射出していた。

本体重量を少しでも減らして機動性を確保するためだろう。

ビームはそのクローアームから発射されたのだ。

 

-------------

 

ニャアンは唇をかんだ。

 

クローについているバーニヤは、宇宙空間での姿勢制御と射角の調整につかえる程度のもので、月の重力下では自在にクローアームを動かすことはできない。

 

なので、ニャアンはわざとゾックの動きを制限した。

 

この位置からなら、一方的にゾックを攻撃出来る―――そう思わせて、クローアームの射角の範囲内にアクト・ザクを誘い込んだのだ。

だが、結果は失敗。

 

アクト・ザクはかなりのダメージを負ったものの、まだ動ける。

 

クローアームのメガ粒子砲が追い打ちをかけたが、これは悪手だったかもしれない。

クローアームの場所を正確に知られてしまったからだ。

 

バーニヤの一部を欠損してしまったことで、機動力が大幅に落ちている。だがそれでもアクト・ザクのパイロットは、二回のビーム発射で両方のクローアームを破壊した。

止まった的である。

難しい技術ではない。

 

--------------

 

 

イオ・フレミングは、荒い息をついた。

 

ダリルの声がなければ―――やられていた。

しかし、あの声はビームよりも早かったような。

彼の気の合わない(特に音楽の趣味の合わない) M.A.V.はニュータイプに目覚めつつあるのだろうか。

 

 

アクト・ザクのダメージはでかい。

戦場ならば、イオは撤退を判断したはずだ。だが、ここはクランバトルの会場であり、彼のM.A.V.は白い悪魔を相手に接戦を続けている。

 

一刻も早く、ゾックを戦闘不能に追い込んで、ダリルを助けなければ。

 

 

イオは一般回線に彼のすきなメロディをのせた。

 

「覚えとけ!」

イオは叫んだ。

「戦場でジャズが聴こえたら、俺が来た合図だ!」

 

寝そべった姿勢のゾックはたしかに動きにくい。

だが、イオはその利点にも気がついていた。

宇宙空間なら常に360度、全方向から攻撃を受ける可能性があるが、地面を盾にすることで、攻撃は前面からに限られる。

 

たしか昔、暇つぶしに読んだコミックスにそんな拳法があった。

 

その弱点は。

 

その姿勢のまま、浮き上がってしまうと背面が完全にがら空きになってしまうことだ!

イオはビームを立て続けに打ち込んだ。

 

寝そべった相手に直撃は難しい。

だが、周りの地面が抉れ、溶解し、飛び散るのに、耐えられなくなったのだろう。

 

 

背面のバーニヤをふかして、ゾックが飛び上がった。

 

よし!

いまだ!

 

全力でゾックの下方、つまり背中に回り込む。

 

「ダメだ! イオ!」

 

ダリルの叫びが届いた。

え?

 

え。

 

ぇぇっ!!!

 

ゾックは。

その背面にもメガ粒子砲を装備していたのだ。

 

「うおおおおおっ!!」

 

アクト・ザクはそのまま加速して、ゾックの背後を駆け抜ける。

メガ粒子砲の一撃が左の足首を吹っ飛ばしたが、それでもイオ・フレミングは生き残った。

 

構えたビームライフルの標準は、ゾックの土手っ腹にむいている。

この距離ならはずさない。

はずせない。

 

「これまでだ! 蟹野郎!」

 

イオが叫んだとき。

 

ビームライフルを握る右手が吹き飛んだ。

なにが。

 

どこから?

 

 

白い悪魔の狙撃……

いや、白い悪魔はダリルが引き付けている。

ならば。

 

呆然とするイオの目の前を三角形の物体が駆け抜けた。

 

“なんだ、アレは……ビット?

いやそれにしては小型すぎる……”

 

次の瞬間、モニターがブラックアウトした。

メインカメラが撃ち抜かれたのだ。

 

アクト・ザクは。戦闘力を失った。

 

--------------

 

 

“とんでもない熟練バイロットだな……”

痺れるような恐怖と戦いながら、ダリルは思った。

 

事前にクローアームを射出。

自在には動かないクローアームのメガ粒子砲の射線軸にアクト・ザクを誘導。

さらに寝そべった体勢への攻撃が困難なことを十分に印象付けてから、わざに相手を背後に回らせてのメガ粒子砲攻撃。

なにより、恐ろしいのは小型のビットを最後まで温存していたことだった。

 

最初に手の内をみせていれば、機動性に優れたアクト・ザクなら、対処できたかもしれない。だが切り札はぎりぎりまで隠していた。

これほどの駆け引きのできるパイロットはいったい何者なのか。

 

 

「ニャアン! 無事か?」

 

白い悪魔の声はまだ若い。

 

ガンダム開発者テム・レイの息子アムロ・レイ。

まだ年齢は二十歳そこそこのはずだ。

 

そうか。ニャアン。あのパイロットは、ニャアンというのか。おそらくは偽名だろう。

操縦技術もさることながらこれだけの駆け引きをやってのけるパイロット……。

 

駆け引きの巧みだけなら、“青い巨星”ランバ・ラルを思わせるが、彼はいまズムシテイで公王府の警護隊長という重職についている。

あるいは、かの“赤い彗星”シャア・アズナブルか。

いやそれもありえない。

シャア大佐なら絶対にゾックを赤く塗るはずだ。

 

「ニャアンはそのまま待機してくれ。こっちはぼくだけで、ケリをつける。」

「わかった。」

 

そうか。

ビームサーベルを握る腕は落とされた。 反対の手にビームライフルを、ダリルは構え直した。

なら。

とことん、やらせてもらう……。

 

 

その瞬間。

ビームライフルごと左手が撃ち抜かれた。

続いてメインカメラも。

 

な!?

 

なんの攻撃かは、ダリルには理解できた。

イオのアクト・ザクにトドメをさしたあの飛翔する小型ビットだ。

 

しかし。

白い悪魔のみに意識を集中させておいて、その隙をつくとは……!!

 

「ニャアン……」

「いえ、でもほら、隙だらけだったものですから。それは相手が悪いと思います。」

 

アムロはため息をついて、ニャアンのゾックが起き上がるのに手を貸してやった。

 

ゾックはそのまま、体を揺らすように奇怪な“舞い”をはじめる。

ニャアンにしてみれば、それは機体の不稼動部分をチェックするためのルーティーンの行動に過ぎないが、観戦していたものたちには、邪神に供物を捧げた狂信者の儀式のように映った。

 

 

-----------

 

 

“なんだ、あれは?”

“知らんのか、ニワカ。あれは『病み猫』ニャアンの勝利の舞いだぞ。ネオ香港のクラバでワイはなんども見た。”

“事情通オツ。てもなんか宗教の儀式っぼいな”

“そうだ。一説には彼女が信じる外宇宙からの飛来神に捧げる舞いだとも……”

“なんの神だ!それりゃ?”

“ニャアン……ニャ……ニャルラトホテプっ!!”

“這いよる混沌!!”

“無貌の神!”

 

 

 

 

 




次章よりいよいよアーガマによるペズン討伐編となります。
宇宙での戦力の展開は、休戦条約違反ですがニューディサイズの掲げるところが連邦軍内部で政治的圧力にその戦力を傾けている反乱分子(ティターンズとエゥーゴ)を叩き、連邦軍を正しいシビリアンコントロール下に戻す、というものなので、ジオンはあんまり積極的には手を出したくないのですね……


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