第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ちょこっとムラサメ研アゲです。べつにアゲてもいなくてクワトロからは「おぞましい」と切り捨てられているのですが。あと何回かペズン反乱に対する各方面の動きを淡々と描写する回になるかと思います。センチネルはエイノー提督の名前を盛大に間違えていたことでもおわかりの通りあんまりストーリーを読み込んでないので、どんな人物たちが、ペズンにいるのかがどうも脳内で具体的に描けていない……前書きが長くなりました。
本編どうぞ!




第25話 連邦の旗のもとに~人類の革新と調和

「やられましたよ!」

開口一番にデニムは、そうぼやいた。

 

「タイミング的には、わたしとハマーンが地球に降りたのと入れ違いだ。」

クワトロは、傍らのショートボブの少女を見やった。

「秘書」という設定のために、カッチリしたスーツ姿であったが、ハマーンにはよく似合っていた。

「つまり、それまではララァはここに滞在していたことに間違いないのか?」

 

「そうです。自分が押しかけた時も、たぶんこの家のどこかにはいたはずでさ。とんだ道化者ですよ、俺は!」

 

クワトロは、周りを見回した。

吹き抜けのエントランスが豪華ではあるが、必要最小限の部屋をそろえたここは、彼とララァの住居ではあった。

 

いや―――。

いまもそのつもりなのだろうか。

 

クワトロの見た限り、衣装の何点か、身の回りのものは持ち出されているが大半は残っている。

三下り半を叩きつけられて、逃げ出されたのではなく、まるでしばらく旅行にでも出かけるような…つまりまたここに帰ってくる気があるかのような家出の仕方だった。

 

宙港から、ムラサメ研究所へ。

そして、ネオ香港へとクワトロの旅は忙しい。

 

「“百式”と“キュベレイ”は?」

 

「第七港湾部の倉庫です。いつでも使えるように整備はしてあります。」

 

「ふむ……大気圏内での動作確認のためにもってきたが、その時間もなさそうだ。

では、ララァはカンチャナとヴァーニを連れて上海宙港からサイド6いきのシャトルに乗ったのだな?」

 

「それは間違いありません。チケットを手配したのは例のハイブランドの親会社のようですが、空港のスタッフへの聞き込みで確認しております。」

 

たしかに。

あの三人ならば目立つだろう。

 

「クラバの運営については報告書に目を通している。」

クワトロは立ち上がった。

これ以上ネオ香港に長居は無用の用だった。

行先はサイド6でも。

 

「独立戦争の真の勝者」とも揶揄されるサイド6は、あらゆる運行便のジャンクションとなっている。

次にララァの目的地がどこなのか。

それはわからない。

 

「それが……ひとつ妙な動きが」

 

クワトロは足をとめた。

 

「パイロットのレンタル依頼です。」

「どこからだ?」

「カネバン有限公司……アンキーのところです。」

「おまえの判断で動いていいぞ。」

 

クワトロは言った。

独立戦争時代からの付き合いである。

デニムのことは信頼していた。

 

「それが……ドゥー・アカツキとトロワ・ムラサメ……」

 

「いまのうちのトップランカーだな。そろって貸し出すのは難しいぞ。」

 

「あとは」

デニムは困ったように続けた。

「あなたです、クワトロ大尉。」

 

デニムは彼の携帯端末を取り上げた。

アンキーの映像が写っている。

ついこの前まで、なんども会った顔だ。

有能には違いないが……なにを考えているのか分からないところがある。

今回の依頼も直接言う機会はあったはずだが……。

 

彼とハマーンがアーガマをたって、おきた大きな事件だとペズンくらいしか思い当たらないがそれがなにか関係するのだろうか。

 

「……というわけで、ここらでクランバトルのトップオブザトップを集めた一大イベントを開催したいのさ。

アムロやマチュにはこっちで話をしておおく。もともとあいつらはわたしんとこのクランだからね。

だから、あんたはなんとか“大佐”をつかまえて説得してほしいんだ。ああ、あとたぶんハマーンって小娘を連れてるからそいつも一緒にね。

もうけのことはあとで相談しよう。たぶん……“大佐”も満足してもらえるはずさ。」

 

「……いつの通信か?」

もう一度、ソファに腰を下ろし、クワトロは額に手を当てた。

 

「二日前です。」

 

「ペズンの反乱の宣言が流れたあとだぞ、我が君。」

ハマーンがクワトロの肩に手を置く。

「いったいあの女狐はなにをたくらんでいる?」

 

「手を回しているですが、ほかのクラバオーナーにも同様の要請が届いているそうです。」

デニムは言った。

「グラナダでは、アナベル・ガトー、コウ・ウラキ。元黒い三連星のマッシュも自ら名乗りをあげたようです。」

 

「自分の選挙に集中しておればいいものを……」

 

「まあ、たしかにここでランキングを決めて、きちんとチャンピオンを認定しておいたほうがあとあと興行的にもプラスなのはわかるんですけどね……」

デニムはぼやいた。

「“大佐”やそちらのハマーンさんの出場はお断りしておきますが、ドゥーやトロワはどうします?」

 

「昨日、ムラサメ研究所に寄ってきた。」

 

「それは……また、なんと!」

 

「ムラサメ博士……ゼロ・ムラサメからドゥー用のサイコガンダムリファインと、トロワのガンダムヘビーアームズを宇宙戦仕様に改装するように指示を受けたらしい。

サイコガンダムリファインはすでに用意が出来ていたし、ヘビーアームズは宇宙戦用の追加パックを準備するらしい。だからドゥーとトロワの出場をこっちで止めるのは難しいだろう。」

 

「あ、あそこはいったいどうなっているのです。」

 

一度だけ邂逅したあのマッドサイエンティストのことを思い出し、デニムの体は悪寒に震えた。

 

「噂の人体実験についての責任はすべて、ムラサメ博士……あのゼロ・ムラサメに押し付けている。反面、一切の功績やら寄付や資金の流れる先はムラサメ研究所だ。互いに持ちつ持たれつ、というところらしいな。

少なくとも現時点で監禁ないし生体実験の対象になっている者はいなかった。」

 

クワトロは心の中でため息をついた。

こんな表情は部下の前では見せられない。だからあくまで心の中で、だ。

ムラサメ研究所の研究員と、ゼロ・ムラサメの話を総合すると……

 

宇宙世紀を生きる人間は、すべからくモビルスーツを体の一部のごとく使いこなせなければならない。

それこそがニュータイプだ。

ならばオールドタイプの人類は地表に縛られたまま、地球環境の悪化とともに死を待つのみなのだろうか。

 

“そのための強化人間の研究だ!”

 

と、やつらは胸を張るのだ。

“進化できなかったものにも最小限の変更で宇宙世紀に生き残る権利を与えるための研究なのだ。”

と。

 

ジオン・ズム・ダイクンの提唱した人の革新とも違う。

その空間認識能力を軍事利用しようとしたジオンとも違う。

 

一定の理屈が着くだけに、おぞましい。

 

「すでにアンキーのメッセージは受け取っている。そしてムラサメ研究所はそのメッセージ通りに動くつもりだ。」

 

「いったい何が始まるんです!?」

デニムは叫んだあと慌てて言い直した。

「いや、クランバトルのトップを決める戦いですよね。そりゃわかります。でも最新の機体にこれだけのパイロットが集まったら」

 

集まったら?

クワトロはその言葉にひっかかるものを感じた。

 

 

-------------

 

 

「露払いは任せといておくれよっ!」

メインモニターに映る女傑は豪快に笑った。相変わらず“悪い”笑顔ではあるがすこぶる明るい。

 

ラシットは怖い顔でシーマ・ガラハウを睨んだ。

「露払いもなにも……出撃するのはソドンだけだぞ?」

 

「お堅いことを言うもんじゃないよっ!」

ザンジバル級巡洋艦リリーマルレーンの艦長席に座るシーマの衣装は、深紅の軍服だ。羽織ったマントをバサリと振って、シーマは続けた。

「たまたま、訓練のための出撃がソドンと同じ方角、同じタイミングだっただけのことだろう?」

 

階級に限ればシーマはラシットよりも上だ。

ムサイや海兵隊仕様のゲルググといった精鋭はシーマの命令でしか動かない。

リリーマルレーンやムサイを含む艦隊は「シーマ艦隊」と呼称され、まともな軍事系統からは一歩はずれたところにあるのだ。

これが「公王府直属艦隊」の実態なのだから、まともなキャリア軍人であるラシットには頭の痛くなることばかりだ。

 

「シーマ大佐。」

シャリア・ブルはシーマの性格が分かっているのか、落ち着いている。

「少なくとも同一艦隊とは思われぬ程度の距離はとるように。

ソドンの行先はサイド6、イズマコロニーだ。」

 

「あいよ。お姫さんを収容するんだね?」

 

 

---------------

 

 

豪華な調度品というものは、カンチャナとヴァーニにはなにも響かない。

ただ、余計な飾りやわざとらしい間接照明による薄暗がりが“舘”を思い出させて不愉快になるだけだ。

 

 

ララァはそんな二人の感情がわかったのか、早々に接待の席を立とうとした。

 

「料理がお口にあいませんでしたでしょうか。」

ララァたちを接待していたハイブランドの幹部のひとりが困ったように、両手を広げた。

「フォン・ブラウンでも最高のレストランなのですが。」

 

「そうですね。」

別に彼を困らせるつもりはララァにはなかった。

「料理はとても美味しいのですが……カンチャとヴァーニは初めての長旅で疲れています。」

 

「こ、これは失礼を!」

 

当然の指摘であった。

 

「今夜はごゆっくりおやすみください。のちほどお夜食を届けさせましょう。」

 

「それは困ります。」

ララァは薄く笑った。

「わたしはわたしの新しい帽子が早くみたいのです。」

 

「すっかり『とんがり帽子』が愛称になってしまいましな。」

男は憮然とした顔で言った。

「我々としては本意ではありません。」

 

「でもよろしいではないですか。

ジオン公国からオーダーが入ったのでしょう?」

 

「そ、それは、たしかに!

ララァ様の活躍のお陰かと!」

 

ララァの舌先三寸で男の感情はいいように弄ばれる。

なぜ、とは言うなかれ。ララァ・スンはそんなことに馴れきっていたのだ。

 

「ですが評価としてはコクピット周りの安全性のみです。わたしたちの提案したギミックは尽く却下されました。ほとんど素体のままの機体です。」

 

「飾りのないお帽子はあんまり魅力的に感じられません。

いったいどなたが装飾を担当されたのでしょう?」

 

「我々も情報を集めていますが、“グリーンノア”の可能性が高いと思われます。

あそこには、ガンダムのもともとの設計者であるテム・レイ博士がいらっしゃいます。移動速度に圧倒的なパフォーマンスをたたき出す『可変機』を作り上げたのも彼です。」

 

「まあ。テム・レイ博士が、強化パーツを?」

 

「まあいろいろと改良はしておりますが、もともとはジオンのゲルググがもとになっておりますから」

男の属するのはあくまでも「ハイブランド」のメーカーである。

ドレスだけではない。ジュエリーやバッグ、時計などにも手を広げているが、基本的なモビルスーツの設計や生産技術はなかった。

今回、モビルスーツ製造に乗り出すに当たって、彼らはその技術面を主にジオンニック社に丸投げしていた。

外側のデザインを変えれば自社製品となる。これは時計などの精密な機械技術が必要な分野に乗り出す際に、これまでもなんどかやってきたことであった。

 

組む相手をジオニックにしたことは、このブランドの意図が透けて見える。

彼らはアナハイム・エレクトロニクスになりたいのだ。

 

ジオニックとならびモビルスーツ製造の中核ともいえるアナハイムにおいてモビルスーツの開発などはその企業活動のごく一部を占めるに過ぎない。

アナハイムは人類が宇宙に進出するにあたってのかなりの部分を、コロニーの建設やその維持に必要な設備においてかなりのシェアをもっている。

 

“嫌いでは無いけどここのブランドロゴのついたコロニーにはあんまり住みたくないわよねえ。”

ララァは心のなかで思った。

 

「……“シルエット”と呼ばれる強化パーツを背面に背負うことによって、機動力、攻撃力を大幅に底上げできる、というのがそのコンセプトです。

細かな性能は不明ですが『レイダーシルエット』と呼称される強化パーツがジオン公王府に納品されたそうです。」

 

ララァは立ち上がった。

 

「では、そろそろ新しい帽子をみせていただけないでしょうか?」

 

「は、こ、これはつい話が長くなりました。さっそくに……」

 

ララァは先ほど、自分の携帯端末に入ったアンキーからのメッセージを思い出した。

 

内容は写真集の第二弾の撮影の件が大半で、それは主にララァがどこまで脱げるかという条件に終始していたのだが、最後に気になる一文があった。

 

“近々でかい舞台を用意する。おまえも出場できるようにねじ込んでやるから、新しいモビルスーツの準備をおこたるんじゃないよ!”

 

 

 

 




さて、あと触れてないのは……

そうだ!
ジャミトフ閣下はどうしてますかね。ペズン反乱は一部の連邦軍兵士や連邦政府からの支持はうけてますが、当然反発するものもいます。ジャミトフをここで逮捕とかしたらそれは連邦がペズンの脅迫に屈したことになるので、当面、次の手番はジャミトフが握ってます。
ここで起死回生の一発……となるとティターンズ的発想からはアルテイシア謀殺とか、が出てくるのですがはたして。

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