第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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いやあ、どんな組み合わせでも出来るわ。ほんとクラバっていい設定。
さすがカラー!!





第25話 連邦の旗のもとに~薔薇の邂逅

なんだ、ここは?

 

ランバ・ラルは居酒屋風の店に一歩踏み込んだところで足を止めた。

荒くれた男ども(なかには女性もいたが)がテーブルを囲んで酒を酌み交わしている。

クランバトルの事務所ときいていたのだが、普通の、いや客層をみればかなり下の方の居酒屋とかわらない。

 

彼は短い期間ではあったが、地上での戦闘にも参加していた。

小隊に数機のザク。

連邦の補給基地を潰して回るのが任務だった。

 

コロニーが落とされてまだ半年。

戦場はほとんどが荒野と化していた。

そのなかにぽつんぽつんと集落があり、中に居酒屋兼集会所兼唯一の宿屋を兼ねた建物が一軒だけある。

 

そんな頃を思い出すような…。

 

 

「場所はここで間違いなさそうね。」

アルテイシア・ソム・ダイクンがフードの中からそう呟いた。

「ほんとにここはコロニーなの?

まるでファンタジーに出てくる冒険者ギルドのようだけど!」

 

「たしかに!」

ランバ・ラルは頷いた。

 

さすがにエルフもドワーフもいなかったが、たむろしているクランバトル選手たちは思い思いの格好をしている。

昔のウエスタンのガンマン風、武侠劇に出てきそうな拳法家、もともとイズマコロニーが東洋系の文化の色濃い場所だからか、マゲにキモノの侍スタイルの者さえいる。

そうなると元ジオンや元連邦の軍服もなんとなくコスプレの一環にしか見えなくなるのが不思議だ。

 

「受付」と書かれた奥のデスクに2人は進む。

本人たちは断固否定したであろうが、口ひげをたくわえいかにも古強者といった風情のランバ・ラルと、全身をフードのついたマントで隠したアルテイシアは、ここの雰囲気にすっかり溶け込んでいた。

 

「わしはバンボラ・バル。こちらの女性はソム・エドワウだ。エントリーをお願いしたい。」

 

「クランバトルは初めてですか?」

 

ファンタジーの「冒険者ギルドの受付」を具現化したような金髪の女性が受付嬢だった。

 

「ああ。だがもともとジオンでの軍歴はある。わしはバンボラ・バル。元キシリア様配下突撃機動軍の大尉だ。こっちは…」

「モビルスーツのテストパイロットをしてるわ。ソム・エドワウ。」

 

「…クランバトルがまったくの初めてだったら誰でもEクラスからスタートしてもらうことになっています。」

 

「まるっきり、冒険者ギルドね。」

アルテイシア――ソム・エドワウは微笑んだ。

「ドラゴンに挑むにはどこまでクラスをあげればいいの? Sクラス?」

 

「クランバトルに参加できるのは、最低でもCクラスからです。」

受付嬢は、愛想良く、しかしその視線の奥に侮蔑の光をたたえて、美しきクランバトル志願者を見つめた。

「まずEクラスはコロニー周りのデブリの回収です。」

 

「わしらは戦いを求めてきたんだが。」

ランバ・ラル――バンボラ・バルが苦笑を浮かべた。

 

「皆さん、そうおっしゃるのですが、わたしたちはモビルスーツを満足に扱えもしない素人を試合に出す訳にはいかないのです。

試合そのものの盛り上がりにも欠けるし、貸与したモビルスーツを発進させるだけで損傷させられてはたまらない。」

 

「――なにより、選手自身が、危険ということね。」

 

ソムの言葉に受付嬢は目を見開いて頷いた。

 

「――お気づきですか。」

 

「だいたいは。ならCクラスにあげればとりあえずクラバには出られる――ということね?」

 

「Cクラスのバトルは武器なしです。」

 

「え?」

 

「つまり、人間でいえば素手の戦いですね。

――言っておきますがこれはこれで人気があります。

直接目視で観戦できますからね。わざとBに上がらずにCクラスで食ってる選手もいるくらいです。」

 

「ならばわしの知っているクランバトルに出場できるのは、Bクラス以上ということか。」

バンボラ・バルが唸った。

随分と面倒なことになっている。

彼の目的はソム・エドワウを守ることであったから、ギリギリの戦い、まして彼女が密かに考えているようなクランバトルを利用してのキャスバルとの決着など絶対に避けて欲しいところではあったが、美しい姫が、コロニー周りのデブリを片付けたり、モビルスーツでプロレスをやっているところはさすがに見たくなかった。

 

クラス分けがなされているくらいならば、昇級には一定の実績と昇級テストでもあるのだろうか。

 

それは時間がかかる。

 

一国の元首が、任務を放り出してクラバに興じていい時間などそう長くは無いのだ。

 

「Bクラスは正直あまり人気がないのです。」

受付嬢はよどみなく続けた。

「クランバトルに出場いただくには、ペアとなって戦ってくれる相手…M.A.V.を組む必要がありますが、BクラスではM.A.V の指名権がありません。

AクラスやSクラスからの指名がなければM.A.V.は組めず従って一対一の特殊マッチくらいしか出場の機会に恵まれないのが現状です。」

 

「わしらは、モビルスーツについては慣れている。」

バンボラ・バルは言い返した。

「わしは実戦経験もある。ひめ…ソムはテストパイロットの実績もある。

モビルスーツも自前を持ち込む予定だ。デブリ回収で時間を費やすつもりはない。」

 

「それを証明できるものがないのが実情なのです。」

受付嬢は本気で気の毒そうに言った。

「元ジオン軍や連邦軍のIDなんかものすごく扱いが軽いのです。正直、いまここにいる選手の3割は元ジオンの大尉でエースパイロットだって名乗ってますよ。ナントカの稲妻だの、なんとか色の彗星だの、ドドメ色の巨星だの。」

 

 

バンボラ・バルはソムを振り返った。

美姫はフードの下で苦笑をもらした。

 

クランバトルの中心であるサイド6ならば簡単にエントリーできるだろうと踏んでの行動だったがどうやら大きく当てが外れてしまった。

 

 

「少し相談してからエントリーをお願いしようと思う。」

バンボラ・バルがそう言うと、受付嬢は頷いた。

実際、後ろには次のエントリーを待ち望む者が並んでいたので、そうそうここで時間を費やすわけにはいかなかったのである。

 

「すまない。またせた。」

バンボラ・バルは如才なく、後ろに並んでいた女性に声をかけた。

美しい女性だった。

良くも悪くもここでは浮いている。

インド系と思しき濃い色の肌。髪をお団子に結んで、カラーのついた黒い紗のドレスを着ている。

どこからどう見てもモビルスーツパイロットには見えなかった。

 

肌の露出はほとんどない清楚な佇まいだったにも関わらず、彼女は恐ろしく魅力的だった。

まるで、ある種の食虫植物が昆虫を引き寄せる芳香を放つかのような、危険な、蠱惑的な香り。

 

同じ肌の色の十代前半の少女をふたり連れている。

姉妹かとも思ったが、髪の質はそれぞれに異なっていた。

 

「ヴィトー・ディオールと申します。」

 

そう言ってソムたちに頭を下げた。

 

「ああ、わしはバンボラ・バル。元ジオンのパイロットだ。こっちはわしの連れで」

「ソム・エドワウです。テストパイロットをしております。」

 

ソムはヴィトー・ディオールと名乗った女性を見つめた。

おそらくは自分と同じくらい。

黒い瞳は深い深い宇宙の闇を写しこんでいるようだった。

 

そこから。

ふいに極彩色の光の破片が飛び出した。

 

それがソムの視界をいっぱいに埋め尽くすと同時に音が聞こえた。

 

ラ。

 

ラ。

 

ララ。

 

「姫さま!」

 

よろけたのかもしれない。

バンボラのガッチリとした腕がソムの肩を抱きとめた。

 

「おまえ…なにを」

 

バンボラが女を睨むと、さっと2人の童女がその前に立ち塞がった。

2人合わせてもバンボラ・バルの体格には届かない。

武器をもっているわけでもなにか特別な武術を修めているわけでも無さそうだ。だが、少女たちは一歩も引く様子はない。

 

バンボラ・バルを見上げながら、両手を広げている。

 

「まあ、ヴァーニ、カンチャナ。

このひとたちは敵ではないのよ。」

「…でもお姉さま…」

 

「大丈夫です、バンボラ・バン。」

ソムは身体を起こした。

「目眩がしただけです。」

 

「しかし…」

 

「ヴィトー・ディオール。あなたはニュータイプなのですね?」

 

「…あなたも。ソム・エドワウ。」

 

ヴィトーはソムたちに背を向けると、受付嬢に話しかけた。

 

「ポメラニアンズのアンキーから連絡は来ていますか?

ヘルムコングロマリットの新型機のテストをこちらで行うように、と。」

 

受付嬢は明らかに顔色をかえた。

 

「あ、あなたが…」

 

「パイロットが誰であろうと試合をセッティングするようにと、言われていると思うのだけれど?」

 

「わ、分かりました。」

受付嬢は手元に視線を落とした。

羊用紙の帳簿だったらどうしようかと、ソムは心配したのだが、ここは普通に携帯端末だった。

なんどか指を走らせてから、受付嬢は困ったように言った。

 

「ヴィトーさん。いまイズマコロニーでは通常のクラバは、2対2のM.A.V.戦ばかりなのです。

単騎での試合は不可能ではないですが…かなりの待ち時間がかかります。」

 

「別に今日明日に、ということもないのだけれど…」

ヴィトーは首を傾げた。

「あまりゆっくりもしてられない…とアンキーが言っていたわ。

なにか大きな試合が近々あって、そこにわたしもエントリーしたいらしいので。」

 

「M.A.V.を」

受付嬢は真剣な眼差しで言った。

「M.A.V.を見つけていただければすぐにでも試合を組めるのですが…」

 

「それはわたしが決めてよろしいの?」

 

「アンキー社長直々の案件ですので。」

 

「それなら。」

ヴィトーはソムを振り返った。

 

「ソム・エドワウさん。あなたはクランバトルに出たいのでしょう?」

 

「それはそう。でも…」

 

「機体の用意は出来ていますか?」

 

「数日中には。」

 

「なら、わたしとM.A.V.を組んでいただけますか?」

 

まだジオンが把握していないニュータイプ。

ソム・エドワウとしては断る理由はなかった。

 

差し出された細い手を、ソムはしっかりと握り返した。

 

 

 

 




いつまでも「某ブランド」も書きにくいので、モビルスーツ、兵器開発部門をヘルマコングロマリットと呼称することにおたしました。
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