こんなんになりました。
「エグザべ・オリベ、コモリ・ハーコート。到着いたしました。イズマご滞在中の護衛も兼任いたします…」
イズマコロニーの宙港近くの倉庫だ。
与圧はされているが、重力はかなり弱い。
「ありがとう。シャリア・ブル准将の直属だったわね?
まえにソドンにお邪魔した時も顔を合わせているわ。」
美しき元首に覚えていただいていたのは光栄ではあるが、シャリア・ブルとセットになっているのはいかがなものか。
エグザべとしては首を傾げざるをえない。
「シャリア閣下は? ソドン?」
「い、いえ」
エグザべは躊躇したが、別に、元首とその護衛隊長に隠すことでもないと判断した。
「シャリア閣下は、単独で『リリーマルレーン』に移られました。
陛下の…M.A.V.であるヴィトー嬢についてポメラニアンズに緊急の調査が必要だと仰っていました…」
「なるほど。確かに、いくらクラバの大物とはいえ、一民間業者にすぎないアンキーのもとにこれだけのニュータイプが集まっているのは異常といえば異常です。」
アルテイシアは眉間に皺を寄せた。
自分がここにいるにも関わらず、艦隊司令官が自ら迎えに来ない――そう言った儀礼的なことはまったく気にならないらしい。
「これが、『レイダー』ですね?」
ジオンの国家元首は、倉庫に格納された機体を見上げた。
ゲルググに改修を施した機体、とのことであるが、ヘッド部分はガンダムを模したツインアイとV字アンテナに変更されている。大きく張り出した肩のバインダー以上に特徴的なのは、背中に装着された翼だ。
鋭角に切り取られたような翼が、「レイダーシルエット」のなのだろう。
力強さもあるが、むしろそれを通り越して禍々しささえ感じさせる。
「まだ試してはおりませんが、変形機能により、大気圏内の単独飛行も可能とのことです。」
コモリはアルテイシアに告げた。
「武装は?」
「モビルスーツ形態時には盾内部に連装52mm超高初速防盾砲機関砲。
バックパック先端部に80mm機関砲を内蔵と両肩に76mm機関砲も装備されているマシンガン。これらは変形時のみに使用可能です。
高速機動により近距離に接近後、質量兵器『トゥールハンマー』で相手を粉砕するのが主戦術となるでしょう。」
「…完璧だ! テム先生のレイダーシルエットは!」
そうもらしたアルテイシアであるが、エグザべとコモリは変な顔をしている。
あまり女の子向けの武装とは思えなかったのだ。
じゃあなにが、女の子向けか問われれば返答に困るのだが。
「シャリア・ブルと話がしたかったな…」
ランバ・ラルが、リックグフカスタムの改修報告に目を通しながら言った。
「閣下…恐れながら、元首自らクランバトルへ出場することをお認めになるとはあまりに」
「クラバに出るのは、謎のテストパイロット上がりのソム・エドワウと元ジオン突撃機動軍のバンボラ大尉だ。
それよりも相手のことだ――。」
「元連邦軍のパイロット上がり…のチームときいておりますが?」
「『青き清浄なる大地のために』」
ゆっくりとランバ・ラルは言った。
「やつらはそう言っていた。」
「頑固な地球至上主義…ということですか?」
エグザべが言ったが、コモリはなにか思い当たる節があるようだった。
「ブルーコスモス…ギレン総帥の人口削減と選民思想にも影響を与えたとかいう…思想団体?」
「そうだな。皮肉なことにスペースノイドに差別と弾圧をもたらした奴らの思想は、ジオン・ズム・ダイクンの理想論をも歪めた。逆にスペースノイドを『選ばれた民』としたギレン総帥は地上へのコロニー落としを決行させた。」
「そんな…連中が。」
「ブルーコスモスは表に現れている姿だ。その構成員や資金源は『ロゴス』なる組織が後ろ盾になっていると言われている。
中世から存在し、大戦の背後には必ずその影があったという…。」
「都市伝説じゃあるまいし!」
コモリが不満そうに言った。
「残念だな、コモリ少尉。
彼らは実在するし、さきほどギレン元総帥の選民思想に影響を与えた…と言ったろう?
つまり彼らは実在するばかりか、ジオンの敵ですらないのだ。」
「相手にするにはたらない、と?」
「逆だ。」
古強者はゆっくりと首を振る。
「ジオン独立には、ロゴスからも資金が流れている。人類が『増えすぎた』と感じたのはギレンばかりではないようだ。」
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モビルスーツは“ゲルググ”でいったん完成を見ている。
そんな風に言うものもいる。
まだ誕生して10年にもみたない兵器に対してその判断は性急すぎるだろう。
だが、それほどにゲルググはよく出来た機体ではあった。
戦後もマグネットコーティングやムーバブルフレームなど、新しい技術、設計思想を取り入れながらも、基本設計はゲルググであり続けた。
「CPC設定完了、ニューラルリンゲージ・イオン濃度正常、メタ運動パラメータ更新、メインジェネレーター出力正常、パワーフロウ正常、全システムオールグリーン…」
愛機の起動チェックを続けるアズラエルの目の前のコンソールパネルの前に、青灰色の髪の男の立体映像が浮かび上がる。
「やはり、ソム・エドワウは、ジオンのアルテイシア姫だ。」
唇を歪めてアズラエルの先達は言った。
「ロード・ジブリール。」
最後の項目をチェックし終わったアズラエルは、胸に手を当てて頭を垂れる。
「あれの父親も奇矯すぎる人物であったが、娘も血は争えんか。
自らクランバトルに出場するとは。」
「ニュータイプってことですね。」
最初の挨拶こそは丁寧だったが、アズラエルの口調はすぐ砕けたものに変わる。
「“ニュータイプ論”はいくつも目を通しましたが、要するにモビルスーツに魅入られた連中…これにつきます。
モビルスーツに乗ることで多幸感、万能感を得られる…宇宙世紀に人間が得るべき“才能”のひとつではありますが、それ以上でもそれ以下でもない。」
「そうだ。まだ我々の組織は彼女と正式にコンタクトはとっていない。」
ロード・ジブリールは感慨深げに言った。
「“ニュータイプ”は人類のもつ特質のひとつを会得した人種だ。それ自体は許容すべきだろう。
真に問題となるべきは、ニュータイプを人工的に作り出そうとする存在。
現在は薬物や記憶操作による強化人間は、近い将来、クローンや遺伝子操作による人間そのもののコーディネートに行き着くだろう。
人類がヒトとしてあり続けるためにそれは断固として阻止せねばならない。
――分かっているとは思うが、アルテイシアは協力者としてこちらに取り込むぞ。場合によってはロゴスの一員として迎える。」
「それは、彼女をぼくの花嫁にするってことですかあ?
ぼくはもう少し大人しくて従順な女性が好ましいのですが。」
「それを躾けるのもおまえの役目だ。」
アズラエルの唇が残忍そうに歪んだ。
もともと整った顔立ちなだけに、酷く下卑たものに写った。
「このクランバトルがその第一歩、ということですね? わかりました。
怪我をさせない程度にめちゃめちゃにしてやりましょう!」
ここまでやっといて別に黒幕でもなんでもない。
ある意味ひどい扱い。
ひどい扱いしても文句のでない方を選抜したつもりですが果たして。
次回こそはバトル描きます。