第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ついに。
ジークアクス世界にもZの鼓動がやってきます。
資金繰りにも困る町工場「テム・レイ工廠」に新型モビルスーツの開発依頼が。
テム・レイは行員たちを集めて鼓舞します。
「おまえらあ! 東大にいけええっ!」(←間違い)
一方、失恋で意気消沈するアムロを誘惑する謎の美少年カミーユ。危険な香りのするパイロット、ヤザン。
風雲急を告げるトアールコロニー。

現実には朝帰りした息子が親父とテレビみながら朝メシ食うだけの話です。



第14話 白い悪魔~下町Ζ

アムロはカミーユとその連れの少女(同級生のファと名乗っていた)をその父親が泊まるホテルまで送っていった。

道すがら話を聞いたところでは、カミーユはモビルスーツのジュニア大会のためにこのコロニーを訪れていたそうだ。

だが、父親がここで愛人と密会を約束していたことを知り、口論の末にホテルを飛び出して、あそこをウロウロしていたらしい。

成績はどうだったのかきくと「優勝しました」と嬉しそうに答えた。

「そうだ、明後日エキシビションでM.S.V戦があるんです。もちろん当たり判定だけの模擬戦ですけどね。」

別れ際にカミーユは握手をもとめながらそう言った。

「だれをパートナーにしても、いいんですけどアムロさん、よかったら一緒にエキシビションに出てくれませんか?

その…あいつらが言ってたクランバトル?のチャンピオンなんでしょ?」

 

「考えておく」とだけ言って、「テム工廠」に戻ったときには明け方近かった。

 

テムはまだ起きていた。

徹夜をしたのだろうか。

 

ディスプレイには「ガンダム」のものと思しき設計図が無数に表示されている。

 

「これは…」

アムロはそれを覗き込んだ。

 

「気がついたか。これは『ムーバブルフレーム』というそうだ。

フランクリン・ビダンのやつが持ち込んできた。

強度と人間により近いなめらかな動きを両立できる。」

 

「昨日、会うって言ったひと?」

 

「そうだ。わたしにチームごと自分の研究所に来ないかと言われた。正直、この技術を聞かされるまでは、断るつもりでいたのだが」

 

そう言いながら、コーヒーをすする。

実に不味そうだった。

いや事実、親父のいれるコーヒーは実に不味い。

 

「朝ごはんは? なにか食べた?

トーストでも焼くよ。」

 

「ああ、助かる。

ハヤトくんからメールをもらっている。事情はわかっているよ。もうクラバで開発費を稼ぐ自転車操業も限界かもしれんな。」

 

テム・レイは実は常識人である。

仕事人間であるが、彼なりに息子を大事にしてくれていたし、彼がパイロット適正が高くクラバで連勝しているのを父親として手放しで喜んだりはしなかった。

 

「いままで苦労をかけたが、そろそろ上の学校にいってみたらどうだ。」

 

「それは」

 

たしかにどこかの工科大学で学んでみたい気分はあった。だが正直、家計もカツカツだ。クラバに出場してそれなりの額を稼げるようになってもその大半はモビルスーツの研究開発費に消えていく。

 

「フランクリン・ビダンの出してきた条件はかなりいい。学費くらいはなんとでもなる。

おまえは軍人じゃないんだからこのままモビルスーツパイロットとして腕を磨いても将来のことを考えにくいだろう。」

 

ディスプレイのひとつが切り替わり、朝のニュース番組が始まった。

 

アムロは番組に現れたインタビュアーの顔を見て思わずトーストを取り落としそうになった。

 

カイだ。

皮肉屋であまり仲がよいというほどではなかったが、クラスが同じだったこともあり、ときどき話しはしていた。

 

ジャーナリストになるのが夢だと言っていたが。

 

「今回はインタビューに応じていただきありがとうございます。」

背広をきていたが、どことなく着崩した様なだらしのなさを感じる。いや普通なら充分なのだろうが、インタビューの相手が。

 

整った品の良い顔立ち。

凛とした知性の輝きを感じる眼差し。

金髪はゆるくウェーブしていた。

 

名をアルテイシア・ソム・ダイクンという。

 

こちらも身につけているのは豪奢なドレスではない。機能的なスーツだった。清楚ではあるが堅苦しい。

 

「いつも映像でお見かけしているドレスではないのですね。」

 

「…今日は式典ではありませんので。」

 

「お呼びするとき敬称は“陛下”でよろしいのでしょうか?」

 

とらえかたではおそろしく不敬なことを、平然とカイは言った。

 

「現在のジオンでのわたしの公称は、立法府議長および第一発言者、枢密院最高顧問、筆頭護民官です。公王制度は正式に廃止する予定です。」

 

「なるほどなるほど」

カイは皮肉そうな笑みを浮かべた。

「古代ローマのアウグストゥスの故事を思い出しますねえ。あれも山のように敬称や役職を兼任させた。その決定打となった『カエサル』の呼称は単にあの男、アウグストゥスがユリウス・カエサルの養子だったからつけられたものでしたが、のちの世にはそのまま『皇帝』という意味になった。」

 

「『まとまり』を作る意味では別に私は血統による指導者をたてることを一概に否定致しません。『ダイクン』の名をどうとらえるかは後世の歴史家の判断にまかせたいと思います。」

 

カイ・シデンの舌鋒は止まらない。

 

「正直、この時期にジオンのトップに立つことにはリスクしかないと思われるのですが、お気持ちは?」

 

「わたしが必要とされたからでしょう。だからわたしはここにおります。」

 

「具体的にあなたを必要としたのは?」

 

「より良き世界を望むスペースノイドの意思です。」

 

「それはなにかのエビデンスに基づいたものですか? 投票とか、アンケートとか。」

 

少しだけ口角を持ち上げて、ジオンの公王、公女、お姫様?は答えた。

「わたしが生きてここにいることがその証明でしょう。」

 

 

 

「ああ、たしかこいつはカイ…カイ・シデンといっただろう?」

テムがアムロの分もいれたコーヒーを差し出した。科学者気質のテムは、コーヒーを眠気覚ましの薬のように思っているふしがある。味は苦いほどいいと公言していた。

「たしかおまえと一緒に軍施設に忍び込んで捕まった悪ガキだ。立派になったな。」

 

「…よく覚えていたね、父さん。」

 

「来週、彼のインタビューが入っているぞ。」

 

そう言われてアムロはコーヒーを吹き出した。

 

「な、なんで?」

 

「わたしはガンダムの開発者で、おまえはクラバのトップランカーだ。

取材があってもおかしくはない。

ああ、たしかサイド6の人気コンテンツだ。“ザ・ノンフィクション”の企画らしい。」

 

アムロはその番組を知っていた。

人気者や成功者というよりも、挫折して、喘ぎ、模索しながら生きる者たちの人生を深堀する番組だ。

 

なるほど。

完成寸前のガンダムを盗まれ、モビルスーツ開発は大幅に頓挫。結果連邦は敗北し、父は必ずしも恵まれているとは言えない環境でモビルスーツ開発をすすめている。

番組の主旨にはぴったりかもしれない。

 

「おまえにもだいぶ、時間がさかれてるみたいだぞ?」

 

アムロはひどくむせこんだ。

 

「な、なんでぼくが!」

 

「引っ込み思案だった少年が、クランバトルの『白い悪魔』だ。興味も引けるだろう。クランバトルが公式競技として認められる日にあわせてのライブ配信になるそうだ。」

 

「やだよ! 番組出演なんて!!」

 

「ワガママを言うな。」

繰り返すが悪い父親ではない。だが細やかな感情にはひどく疎い一面もたしかにあった。

 

「クランバトルのパイロットだってわかったら外を歩けなくなるよっ!」

 

「いままでは、な。クランバトルが公式競技競技になれば全て変わる。さしずめおまえなんかはヒーローとしてもてはやされるかもしれないぞ。」

 

「そ、それでもね…」

 

そうだ!

と言ってテム・レイはサイドキャビネットをなにやらゴソゴソとし始めた。

 

「素顔を出すのがいやならこれをつけてみたらどうだ?」

 

その手には5年前、サイド7を急襲したジオンのエース“赤い彗星”の仮面のレプリカが握られていた。

 

 

結局、アムロはインタビューの件については承知した。

かなりの謝礼金が支払われることまで無視できるほど子どもではない。

 

仮面については断った。

 

シャア・アズナブルという人間は直接的には知らない。行方不明なのだからこれからも絶対に会うことはないだろう。

サイド7が攻撃されたとき、アムロはフラウ・ボウたちと一緒にシェルターに避難したが、結局、家も無事だった。

それでもアムロはなんとなく、シャアを好まないのだ。

民間に被害はほとんどなかったとはいえ、当時父が軍属だったからなのだろうか。

 

それでもあの仮面に赤を基調にした軍服姿はなにかのコスプレにしか見えない。

 

仮面をつけて出演する件は丁重にお断りした。

 

 

父はモビルスーツ開発以外のすべては瑣末事だったらしく、番組出演の件はそれきりになって、朝食の席の話題は、もっぱら「ムーバブルフレーム」のことになった。

 

テム・レイもスポンサーになっていた企業の対応などから、いまの時代が求めているのが数を揃えて運用する量産機ではなく、一騎当千、単騎で小隊あるいはそれ以上をも撃破できるワンオフ機であることに気がついたらしい。

 

そうなると。

まずはどんなモビルスーツを作るべきか。

根本のコンセプトにたち戻らざるを得ない。

 

その解答のひとつが、イズマコロニーに大きな被害をもたらした「サイコガンダム」

だというのだが。

 

「だがパイロットを選びすぎる。」

テム・レイは難しい顔で言った。

「ニュータイプなどそこらに転がっているものではないし、(たしかにそれはその通りだと、アムロはうなずいた)噂にきく強化人間などは人道にもとる。

わたしが考えたのは、大気圏内、有重力下で単独飛行ができるモビルスーツだ。

今まではとても実用に耐えられるものではなかったが、このムーバブルフレームを応用して、モビルスーツを変形させれば」

 

「なんだよ、それ。翼でも生やすのかな?」

 

「そんなもので揚力が得られれば苦労はない。」

 

テム・レイはテーブルに備え付けのモニターを操作した。

 

「新しく設計したモビルスーツだ。」

 

「…普通の人型だよね。」

 

テムは満足そうにモニターをタップした。

 

変形は一瞬だった。

 

モビルスーツは航空機に姿を変えている。

 

 

「なんだよ、この変形は! アニメか!」

「アニメじゃない、アニメじゃない。ホントの事だよ。」

 

テムは驚いた(実際には呆れた)息子の顔を満足げに見やった。

 

「この形態ならば、大気圏内での飛行は可能だ。宇宙空間においても…変形がバーニヤの方向を一列に集中させるから、これまでにない高機動が得られる。」

 

アムロは実戦の経験はない。クラバはあくまで「試合」であると、彼の中では割り切っていた。

 

「現実問題として、変形にはどのくらい時間がかかるのさ。現地でドック入りして換装を行うようならいくらはやく戦場に着いても、意味がない。」

 

「いまのがリアルタイムでの変形だぞ?」

テムは胸をはった。

「工場での換装作業? とんでもない。

敵の目の前で変形しても、隙を作らないくらいの高速可変だ。

ムーバブルフレームとマグネットコーティングを併用すればこれが可能になる。」

 

 

メンテをする技術者が大量死するぞ。

と、アムロは心の中で呟いた。

 

これだけの変形を行うのだ。わずかな損傷が命取りになる。

クラバに出場するようになってよかったと思うのは、栄光でも賞金でもなく、実際にモビルスーツをメンテナンスする現場の声がきけたことだった。

 

この可変モビルスーツはおそろしくメンテナンスコストがかかる。

 

これだけの超高級機体をまかせられるものはそれこそ、ネームドのエースかニュータイプになってしまうのではないだろうか。

 

そしてエースは極めて稀なものであり、ニュータイプに至ってはその実在を疑うものまでいるのだ。

 

 

 

 

 




いきてーいるいきている。

真っ暗な工場にひとり、図面ひく中年男。
かつて連邦軍モビルスーツ開発の中心だった男がいる。
その名はテム・レイ。だが、彼はいまもまだ現役の開発技術者だ。彼はまだ諦めてはいない。

「ここはいつから?」
「終戦後すぐだからもう5年になるかな」
「新型ガンダムは完成したんですか?」
「もちろんだ。いま性能テストを行ってるんだ。」

場面がかわり顔を隠したスーツの男が映る。
「性能テスト……ねえ。
まあテム先生がそう思いたいんならそうしておいていいじゃないですか。とにかくあのモビルスーツじゃこちらは採用できません。せいぜいクランバトルで稼いで投下した資金一部でも回収させていだかないと。」

取材班はクラバの会場へと急いだ。
パイロットをつとめていたのは、なんとテム・レイ博士の実の息子だった!
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