第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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こいつらが味方だったら。
役に立つのかジャマなのか。





第25話 連邦の旗のもとに~清浄なる大地

観客の歓声は、まだ鳴り止まなかった。

勝者の名が何度もリプレイ画面に踊り、チャットログは祝辞と罵声と悪意と人気への渇望で溢れている。

 

しかし、ピットスペースは静かだった。

 

レイダーの胸部ハッチが開き、ソム・エドワウがゆっくりと降り立つ。

周囲のスタッフは言葉をかけるべきか迷っていたが、彼女の目を一度見て、誰も声を発せなかった。

これは気軽に声をかけていい相手ではない。

 

ヘルメットをとって、乱れた髪をさらりと振って、ソムは彼女のM.A.V.をまった。

 

続いて整備員に支えられながらヴィトーが降りてきた。

サイコミュ兵器は操縦者の負担が大きい。色のない唇、濡れた前髪、呼吸は浅い。

 

「お姉さまっ!」

二人の可愛らしい従者が駆け寄る。

ソムを見る目が冷たいのは、彼女達の主をここまで消耗させてしまった原因はソム・エドワウにあるのだと考えているに違いない。

 

「……わたしは大丈夫よ…ソムさん。助かりました。」

 

ソムは表情を少しだけ緩めた。

 

「あなたの使った兵器。ジオンへの納品を希望します。」

 

ヴィトーは、少しだけ視線を落とした。

そしてそっと微笑んだ。

 

「ヘルマコングロマリットは喜ぶでしょう。わたしはただのテストパイロットでしかないけれど。」

 

「条件があります。

ほかには技術を供与しないこと。

そして──テストパイロットとしてあなた自身も一緒に派遣すること。」

 

ヴィトーは驚いたように顔を上げた。

黒い瞳のなかで極彩色の花弁が踊る。

 

「あの武器にはまだまだ使い方が工夫出来そうなの。そのためには機体になれたパイロットが必要だわ。」

 

ソムはヴィトーの手を取った。

 

「それにわたしはこれからも、あなたにM.A.Vになって欲しいの。」

 

ヴィトーの謎めいた微笑みは実は苦笑いである。

 

“うーん。兄妹からそろってモテちゃうわたしって!”

 

そんなことをヴィトーが考えているとは、ソムには分からない。

 

「わかりました…」

ヴィトーは手を引いた。

ソムのなめらかな肌触りと温もりは、同性ではあってもヴィトーのなかにあるものに火をつけるような効果が確かにあったのである。

「ご意向はヘルムコングロマリットの上層部に確かに伝えます。」

 

「ソム! ご無事で!!」

バンボラ・バルが大股で近づいてきた。、エグザべとコモリも一緒だった。

 

「ヘルムコングロマリットから今回ヴィトー・ディオールが使った兵器の独占権を買取りしてください。パイロットも含めて!」

 

バンボラは黙って頭を下げた。

確かに彼もそれしかないと考えていたのだ。

 

「早急に。

それとロード・ジブリールが面会を求めております。」

 

「ええっと…」

ソムは眉をひそめた。

「誰だったかしら、それ。」

 

-------------

 

 

ソムが連れていかれたのは病院だった。

 

「鎮静剤は。」

「効いています。」

「手術が必要よ? 準備はどうなぅてるの?」

「すでに出来ています。」

「ならすぐに運ばないと。骨折以外の臓器損傷は? カルテはある?」

 

「ソム!!」

バンボラの声に彼女は我に返った。

 

そうか。

ここはサイド6イズマコロニーの病院で、彼女は医者でなく、クランバトルの選手であり、その実体はジオン公国の元首である。

 

――世の中は希望通りにはいかないものだが。

それにしても自分の行きたい方向とは別に走りすぎるだろう。

我が人生!

 

「状態は安定しています。」

医師は、自分が殺しかけた対戦相手の症状を気遣うソムに感銘を受けたようだった。

「患者が手術前にどうしてもソムさんと話がしたいと…。」

 

「ロード・ジブリール。」

ソムはすでにストレッチャーに載せられている男に話しかけた。

顔色はよくはない。(当たり前であるが)

だが、意識はしっかりしているようで、まっすぐにソムの視線を受け止めている。

「臓器の損傷は開けてみないと分からないことも多いです。

外交ごっこがしたいのなら、後で付き合いますから。」

 

「我々はそのような組織ではない。」

ロード・ジブリールは笑った。

「盟主が肝心な時に動けなければそれは盟主ではない。すぐに代わりのものが送られる。」

 

「わたしが誰かわかっていてそのセリフを言う?」

 

「わかっているからだ!

次に来たものも同じ失敗を仕出かして犠牲が増えるのは本意ではないからな。」

 

「手短に。」

ソムは、ストレッチャーの傍らのバイタルグラフをチラリと見た。

この男は――助かるだろう。

このまま無駄話を続けなければ、だが。

 

「我々はあなたに味方をしたい。」

 

「必要ないわ。」

 

重体のけが人には酷なセリフだったと見えて、ジブリールの顔色がいっそう悪くなる。

 

「公王府は軍事権を掌握してはいない。

自由になる戦力はほしくないか?」

 

「いまの戦力で充分。ギレンの親衛隊の二の舞になるのは御免こうむるわ。」

 

「姫はご存知ないだろうが…」

 

「ブルーコスモス。それともロゴスと呼んだらいいのかしら。」

 

ジブリールは一瞬、目を見開いた。

だが、その弁舌は滑らかだ。

「我々をカビの生えた秘密結社、または地球至上主義の狂信者だと考えてもらっては困る。」

 

ソムは気が気ではない。

この男を今、ここで殺す気は毛頭ないのだが、こいつは勝手に死へのカウントダウンを続けている。

 

「ではなんなの?」

 

「清浄なる青き大地に誓って。我々の望むものは、人類の調和の取れた進歩と発展だ。」

 

「博覧会のスローガンにはいいかもしれないけど。現実にあなた方の思想は、ギレンの選民思想に大きな影響を与えた。そして人類の総人口の半数が死んだ。」

 

「…たしかに我々は、ジオン公国の勃興にも手を貸した。」

そろそろまずい。

目の光が失われつつある。

「だがそれは増えすぎた人口の宇宙移民を円滑に進めるため。連邦がスペースノイドを差別し続けるなかでは、宇宙移民は進まない。スペースノイドの自主独立が必要だった。」

 

「なるほど? 反スペースノイド主義ではない、ということね?

ではニュータイプについては?」

 

「宇宙環境に適応した…人類の進化の一形態…だ。それは容認される…問題は今後現れるであろう遺伝子レベルの人体改造だ。それはもう…ヒトではない。」

ジブリールの言葉が次第に不明瞭になっていく。

「おまえたちは強い。しかし強いだけで意志を持たない個体は、我々によって管理されねばならない。そうしなければ危険だから、だ。

だがおまえは強く…美しく…自らの意志をもって大地にたつ知能もある。

我々の…同士だ。」

 

「危険です! これ以上は…」

 

「彼が勝手に語ってたのよ!」

 

ソムは、ジブリールの耳元に口を近づけた。

「わかりました。当面、あなた方を『敵』と断定するのは保留します。そして、ブルーコスモスならびにロゴスの交渉相手としては、あなたを指名するわ。」

 

もう一度。

 

ジブリールは僅かに目を開いた。

 

「あ…ありがたき…」

 

「血圧低下!」

「早く手術室へ!」

「輸血の用意だ…いや間に合わん。人工臓器を一式用意するんだ。」

 

 

実際、ギリギリのタイミングだったのかもしれない。

医者看護師たちがジブリールを運び去ったあとでソムは大きくため息をついた。

 

「いろいろ疲れました…部屋にもどって休みます…まだなにか?」

 

バンボラは頷いた。

 

 

 

 

 




25話終了です。

さて。
トップランカーを集めまくっているアンキーの企みとか。
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