第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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舞台はかわって、小惑星ペズン。
エイノー提督率いる連邦改革派で蜂起したはずのここも、もともとはジオンの研究施設。
エイノーさんの演説でノリノリで参加してくる連邦上がりの義勇兵も多く、こんなことになります。







第26話 ペズン攻略戦~小惑星の嵐

ペズン、ニューディサイズ司令室。

鋼鉄の壁が囲む司令室に、重々しい沈黙が張りついていた。

 

司令官のエイノーの前のパネルには続々と情報が流れ込んでくる。

刻刻と変化する戦力数値、当面の敵となりうるジオン公国軍の動向。

そして、各方面。

月面都市やサイド6、連邦議会や連邦軍からの通信。

 

連邦関連のそれは、申し合わせたように同じ文面、内容だった。

ペズン制圧という暴挙を非難しつつも、エイノーの志へ理解を示し、連邦政府、連邦軍内部の腐敗を嘆いてみせる。

 

「味方する」とは公然とは言わずなんとかニューディサイズの歓心を買おうとするその行動に、エイノーは辟易した。

 

 

部屋には余分な装飾は一切ない。

連邦軍の将軍たちが好むような美形の秘書もおらず、ジオンの将軍が集めているような高価な陶器や絵画で飾り立てられてもいない。

 

エイノーは腐敗するつもりも独裁者になるつもりもなかった。

――すくなくとも今のうちは。

 

扉が開いた。

 

警備兵に先導されて入ってきた初老の人物をエイノー提督は、厳しい眼で睨んだ。

椅子に深く腰掛けたまま、である。

 

立ち上がって礼をとる必要性を、エイノーは感じなかった。

 

その者の来訪は告げられていなかった。

警備兵が先導したところをみると、ニューディサイズのなかにもその男の信奉者は少なからずいるのだ。

 

「……ジャミトフ・ハイマン閣下。あなた方旧ティターンズ残党がニューディサイズになんの御用だろうか。」

 

かつて連邦軍の教導部隊を私的に操り、地球圏を震わせた男は、今はわずかに疲れた陰を帯びながらも、揺らがぬ視線でエイノーを見返す。

 

「意外ではあるまい、提督。ティターンズはもともと連邦の腐敗に対して、糾弾の旗を掲げて立ち上がったものたちだ。

ニューディサイズとはそもそも志をひとつにしている。」

 

「たしかにティターンズの理念は立派だった。ニューディサイズにも共通する部分はある。だが現実に起きていたことはいったんなんだ?」

エイノーの舌鋒は鋭い。

「ティターンズの活動に疑問を呈する議員への闇討ち、民間施設まで巻き込んでのジオン駐留軍へのテロ行為。あなた方は暴走しすぎた。」

 

だがジャミトフは、まるで予想していたように淡々と続けた。

 

「私が命じたのは『秩序の回復』だ。末端の兵士の暴走を止められなかった責任は痛感するが、すでにそれは現場指揮官が自分の責任とのことで申し出があり、近く査問が行われることになっている。」

 

「現場指揮官?」

エイノーの声がいっそう冷たくなった。

「バスク・オムはこちらに滞在していただいているが。」

 

「バスク少佐の副官でジャマイカン少佐だ。

計画ではなく、あくまで現場での偶発的な出来事の連続でそのような結果を招いてしまった。

彼は深く反省し、一切の責任は自分にあると明言しているよ。」

 

「要するにあなたは……ティターンズの負債を、部下にすべて押し付けたと?」

 

エイノーの声音は無機質だった。

その無機質さが、逆に鋭利な刃となってジャミトフの胸を刺した。

 

「誤解なきように。“責任”は感じるが私にもできることとできないことがあるだけだ。

 ――それに、私はティターンズを立て直す気はもうない。

ペズンの大義に力を貸す。それだけだ。」

 

ジャミトフは淡く笑った。

だがその笑みは、氷のように冷たい。

 

エイノーの視線は彼の目から離れず、しかし表情ひとつ動かさない。

……自分が引き起こした惨劇を“部下の暴走”か。

ジャミトフ・ハイマンという男は、最期まで変わらぬだろう。

だが、少なくとも政治力はもっている。

 

エゥーゴのブレックスが、アーガマ建造についての資金の不透明さについて起訴され、拘束されているのに対して、この男は部下に責任を擦り付け、のうのうとペズンまでやって来ている。

そして――。

急速に拡大したペズンの中には、ジャミトフとティターンズの信奉者も少なからずいたのだろう。

ジャミトフの来訪はすんなり受け入れられ、エイノーの許可もえずに、ジャミトフを司令室まで通している。

 

「力を貸す? あなたの自由になる組織はもうないはずだ。」

 

「そうだな。教導隊は解散となったが私たちの考えに賛同してくれるものはたくさんいる。

このペズンにも。」

 

エイノーは思考を巡らせた。

仮にいま彼がジャミトフの逮捕を命じれば、どうなるか。

ジャミトフをここまで案内した兵士は、戸惑いつつとジャミトフを庇うだろう。

司令室づきのものは、武装をしていない。

 

つまりこの場の状況だけを解釈するならば、追い詰められているのはエイノーの方だとも言えるのだ。

 

内心を隠しながら、エイノーは、ジャミトフに手を差し伸べた。

 

「わかった。我々は敵対すべきでは無さそうだ。」

「理解いただけてありがたい。」

 

ジャミトフもどこかホッとしたようだった。彼にとってもこれは賭けだったのだ。

 

「それで、いまのペズンになにをしてくれるのだ? ジャミトフ閣下。」

 

「うむ。きみたちの用意した新型だがな――ゼク・ツヴァイとかいう。」

 

そんな情報も、この男にもれている!

 

エイノーの演説は予想以上の効果があり、連邦軍からの参加者も多かったが、統制という面ではとんでもない爆弾を抱え込んでしまったようだった。

 

「あれは素晴らしい!!

高機動、高火力。モビルスーツはかくあるべきだという正当な進化系だ。」

 

「それはペズンの技術者を褒めてやってくれ。ザクの後継機として開発されながら、『ガンダム』奪取によって日の目を見なくなったゼクシリーズを改修し、磨き上げ、だれにも評価されることなく、この宇宙の片隅で研究を続けてきたのだ。」

 

「パイロットは決まったかね?」

さり気なく、ジャミトフは言った。世間話でもするような口調だった。

 

「まだ…だな。高機動によるGの負荷、多様に搭載した兵器の同時並行操作。

可変機のようなクセはないが、ゼク・ツヴァイの性能を100パーセント引き出せる操縦者となると…」

 

「提供しようではないか。」

ジャミトフはそっくりかえるように言った。

 

「ティターンズにそんなパイロットがいるのか?」

 

「いるのだよ、提督!! ニュータイプをも凌ぐ強化人間のパイロットが!!」

 

そう結んだとき、会議室の扉が軽くノックされた。

 

「失礼します、提督。将軍。

ゼク・ツヴァイ用のパイロット……“例の者”を控え室に」

 

エイノーの顔が強ばる。

ペズン内部の何人がジャミトフの息がかかっているのか。

 

「お見せするときが来たようだ。詳細はまだふせておくよ。彼女のことはアンと呼べばいい。ペズンに献じる、新しい戦力だよ。」

 

その表現に、エイノーのこめかみがわずかに動く。

 

「彼女…女性なのか?」

 

「そうだな。まだ子どもだが…まずはなにも言わずに模擬戦を見てもらおう。」

 

 

 

 

 

 




欠番補足。
これでゼロからフォウまでそろった。
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