第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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またまた、作者の好きな裏の駆け引きです。
映像とかになるとバッサリカットのパートです。






第26話 ペズン攻略戦~討伐艦隊

「…以上が情報部からの報告です。」

ウラガンの報告に、マ・クベはなにも返答しなかった。

じっとデスクの隅においた青磁の壺を眺めている。

 

古代のチャイナのものだというが、ウラガンには分からない。

そこいらで売っている花瓶と同じに見えるのだ。

 

「クランバトル…か。」

そうぽつりとつぶやいたのは、数分が過ぎころだった。

 

「はい。呼び掛けを行ったのは、サイド6を主戦場とするカネバン有限公司のアンキーです。イオマグヌッソ事変の直前、ジークアクスを自分のクランで使用していた奴らで、シャリア・ブル准将が接触しております。」

 

「正気か?」

とマ・クベが呟いたので、ウラガンも同調した。

 

「いえ、完全に狂っています。払い下げの一部の兵器をオミットした機体がいくら集まっても正規軍にかなうわけがありません。」

 

「そういう意味ではない。」

マ・クベは、自分より理解力のおとる人間をいたずらに貶めることはなかった。

この気難しい男の数少ない美徳の一つであった。

「戦争の代わりにクランバトルを行う。

それはひとつの理として認めよう。

だが立てこもったテロリスト相手にその理屈が通用するのか?」

 

「蹴散らされて終わりです!」

 

「シャアがいる。」

マ・クベは静かに言った。

「あれは奇矯な男だが、無能ではないし、少なくとも自殺願望は全くない。」

 

マ・クベは立ち上がった。

デスクを離れて部屋の中をゆっくりと歩く。

 

陶器の並べられた棚のまえで立ち止まり、白磁の盃を指で弾く。

 

「先日のデラーズ紛争の際の活躍で、少なくともやつらのトップランカーは、正規軍のエース並の実力をもっていることは証明されている。」

 

「し、しかし! 数十機のモビルスーツが飛び交う戦場はクランバトルとは別物です。

プラス要塞や戦艦からの対空砲も…」

 

「ペズンには戦闘艦といえるのは一隻しかない。連邦のソドン型トロイホースだけだ。」

 

「ペズンそのものも要塞化されているはずです。その攻略はクランバトルではありえないものです!!」

 

「極端に言えば、ペズンそのものを攻略する必要はない。」

マ・クベは唇を釣り上げた。ひどく残忍そうに見えた。

「稼働できるモビルスーツを失ってしまえば、いままでペズンに心をよせていた月面都市や一部の連邦軍も目が覚めるだろう。 ようはやつらのもつモビルスーツを引きずりだして叩いてしまえばよい。

アンキーとやらがやろうとしていることは、意外に現実的だ。」

 

「ペズンを占拠しているニューディサイズなるやつらがモビルスーツを出してこなかったから…」

 

「クランバトルの競技者ごときに恐れを成して、ペズンに閉じこもるなら、それはそれでやつらの評判は地に落ちるだろうな。

政治的にはそれで終わる。」

 

黙ってしまったウラガンに、追い打ちをかけるように、マ・クベは続けた。

 

「現実問題として、いまネックになっているのは移動方法だ。

連邦には宇宙での戦力がない。ペスンまで、移動する足がないのだ。」

 

「…それをジオンが出しますか?」

 

「バカなことを! なぜジオン公国が連邦の内戦をおさめるのに兵をさかねばならんのだ!?

やつらが頭を下げて懇願してくれば考えんでもないが。」

 

「しかし、それでは…」

 

「連邦軍に。いや公王府に動いてもらおう。

休戦条約により連邦は宇宙に、戦闘艦を出してはならない。まして、軍事拠点を作るなどもってのほかだ。

この重大な条約違反に対し、ジオン公国は公式に抗議することにする。」

 

「そんな」

宇宙での戦力を持たないことが条約になっている連邦に対し、宇宙にいる叛乱軍を討伐させるのはあまりにも無理が…」

 

「なんとかすることも含めて連邦の責任だ。」

マ・クベはモニターに地球の地図を映した。

「抗議のために、地球上のジオン基地に命じて臨戦態勢に入らせると、同時に周りの土地を接収させる――すべての基地ではなくていい。

そうだな。トリントンあたりが適切だろう。」

 

「閣下…」

ウラガンは訳が分からず立ち尽くした。

「トリントンの周りは、ほぼ荒野で――接収の価値はありませんが。」

 

「当たり前だ。街などがあったら返って面倒だ。

我々がするのは当面そこまでだな。

あとはそうだな――ゴップ当たりが意図を組んで適切な対応をとるだろう。」

 

 

--------------

 

 

 

ゴップの秘書は口のなかが酸っぱくなるのを感じていた。

彼女は。

露出の多めに軍服を着こなし、規則違反のアクセサリーをいくつか身につけていた。

いかにも、男性が好みそうな頭の軽い若い女を演じていたが――。

 

本質はそうではない。

 

視線を落とすゴップ。彼が読む書類は、ジオン側からの最終通告だ。

 

ペズンに立て篭もった連邦軍は、条約違反である。即時これを排除せよ。さもなくばジオンは再び人類の未来をかけて正義の鉄槌を振るうであろう。

 

いや「通告」ではない。

いくつかの地上のジオン基地が臨戦態勢に入り、トリントンでは基地の周りの土地の接収がはじまったという。

 

また。

あの、戦争が始まるのか。

 

「連邦議会は? なんといっている?」

 

「連邦軍に一任すると。手段は問わず、ペズンをなんとかしろ、と。」

 

「これは困ったな。」

 

そのセリフに、秘書は戸惑った。

ゴップが口ぐせのように言う。当たり前の言葉だった。

 

「しかし…うむ。これはもう、仕方がない。

ここまでジオンが強く出るならばなりふりも構っていられない…と、そういう事だ。」

顔は情けない仏頂面。だが、手はやり手の商人が商談がうまくいっているときにするような揉み手だ。

「クランバトルのオーナーどもが自分たちの宣伝のためにペズンを攻撃したがっていたな。

あれを使おう。

まったく!

民間の業者などに頼るのは政府の恥だがしかたない。条約で我々は宇宙に戦艦を上げることも軍事拠点をもつことも出来ないのだから!

武器の供給はさせてもらおう。せめてな。

あとは、移動手段だ。

なにしろ戦闘に使える艦は皆無だし、輸送船を雇うには危険すぎる。

そうだ!

輸送船のための戦闘艦は、ジオンから出してもらうようにお願いしてみようか。

ここまで無理をさせるなら、ジオンも多少は協力してくれるだろう。」

 

「か、閣下!!」

秘書は慌てて、叫んだ。

ゴップの長広舌の独り言は、彼が機嫌のよいときにするものだ。

「なにを、こんなときに――そんなに楽しそうに!!」

 

「バカを言うものではない。楽しいわけがなかろうが。

あとひと月もあれば、連邦議会から汚職議員の十人も追放してやれたのだが…その分、ペスンも強化されてしまうし、まあ、潮どきだろう。

ティターンズを解体できただけでもエイノーには感謝せねば、な。」

 

「なにが起きているです!!」

 

「分からんかな。

『政治』というやつだよ。

出来ればペズンにもあまり死者は出したくないが。」

 

今度ははっきりと渋面を作った。

 

「…ジャミトフが合流しているのが気になる。どう動くか。これはわしにも読めん。」

 

 

 

 

 

ジオンは、連邦軍からの輸送船の提供要請をしぶしぶ受け入れた。

モビルスーツの輸送、という目的のみで戦闘には直接参加しない、との条件で。

 

ただ正規軍からは艦艇をさきたくなかったのか、寄越した艦艇は

重巡アレキサンドリア。

強襲上陸艦アルビオン。

強襲上陸艦ソドン。

すべて連邦から接収、またはもともとの設計図面を引いたのが連邦の艦艇だったのはジオン側がいかにこの作戦に関わりたくなかったのかが如実に現れていた。

これに、たまたまモビルスーツテストのために宇宙にあがっていたアーガマが加わる。

 

ニューディサイズ討伐艦隊――とはならない。

あくまでしゃしゃりでたクランバトルの阿呆どもをペズンまで運ぶための輸送艦隊である。

 

 

 

 

 




バトルまでもうちょっと!!
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