第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ニュータイプを上司に持ちたくない。
か、あるいは
ニュータイプの部下を持ちたくない。
か。





第26話 ペズン攻略戦~集まる凶星2

ブライト・ノアは大忙し、である。

ペズンへの出撃が決まって、そこに送り込まれる艦隊の概要が明らかになったのは、ついさっきである。

時を同じくして、この作戦に参加するクランバトルのトップランカーたちが続々とやってきた。

 

モビルスーツの数は20機近くなるはずだから、実際に出撃すれば指揮をとるのは、別の誰かがやることになるだろう。

(ブライトでは位が低すぎる)

だが、それまでのアレコレは彼が面倒を見るしかなさそうだった。

 

まだソドンとアルビオンは、グラナダに到着していない。

早くについたものから、どの艦に乗り込んでもらうか決めないといけないのだが。

 

「ほら、お兄ちゃんにちゃんとご挨拶するのよ。」

「…」

「お姉様に触ったら燃やすからな!」

 

まるで独立戦争のときにシャア大佐が被っていたような変な仮面をつけた女性パイロットは、まだ本当に子どもといってよい女の子をふたり連れていた。

肌の色が似ているので、姉妹かとも思ったが髪質が違う。

二十歳そこそこに見える女性パイロットは黒い髪をお団子に結んでいたし、同じく黒髪の少女は、『白い悪魔』を思わせるような天パのショートカット。もうひとりは、金髪をオールバックに撫で付け、なかなか迫力のある三白眼である。

(さきほどの「燃やしてやる」発言もこの子だ、)

 

「ココ・シャロンさん。アーガマ到着を歓迎する。だがその…」

ブライトはじっとこちらを睨むふたりの少女を見やった。

「彼女たちも乗船させるのか?」

 

「もちろんです。」

「お姉様と一緒にいます!」

「燃やす!」

 

これから行く場所は戦地だ。

たしかに、艦艇はモビルスーツを「運ぶだけ」ということになってはいたが、戦闘中の補給も行う。

ニューディサイズからは「敵艦」と見なされるだろうし、攻撃をうける可能性は極めて高い。

 

「しかし…危険です。未成年のお子さんを連れて行けるようところでは…」

 

「やっほー! 薔薇姐! 久しぶりだねえ!」

サイド6のニュータイプ。マチュは悪い子ではなかったが、ひとが何をしていようが無頓着ではあった。

 

「あら、マチュさん。アムロはお元気?」

 

「うん。カミーユやジュドーと訓練やってるよ。教える時の天パ、けっこう鬼だよ。」

 

「ココ・シャロンさんと知り合いなのか、マチュ。」

 

あ、ぇぇと。

と、赤毛の少女は言葉を濁した。

 

『ガンバレ、マチュ、ガンハッテゴマカセ!』

 

と足元で丸い玩具ロボットが跳ねた。

 

「…ほらわたしもクランバトルの選手だからね。」

 

「“あのひと”とは行き違いばっかりで。」

と、本人がきいたら『冗談ではない!』と言いそうなセリフをココ・シャロンはさらりと口にした。

「軍艦は、アーガマとアレキサンドリア、ソドン、アルビオンが参加するそうですね。わたしはアーガマへの配属を希望します。」

 

「ご希望は受けますが、実際のところ何機のモビルスーツが参加するか最終的な調整はすんでいない。いまここではっきりお約束は出来ません。」

ブライトはなんとか自分を抑えながら言った。

「それにやはりお子さんの乗船は…」

 

 

「エル! エルピー・プル!

午後からは一緒にお勉強する約束でしょっ!」

「イヤだ! モビルスーツに乗りたい!

サイコミュのついた新型のヤツが搬入されたってきいたよ!」

 

言ってるそばから、二人の侍女よりさらに、年下にしかみえない少女がかけていく。追いかける少女も十代前半だろう。

 

「あ、すいません、お邪魔しちゃって。ブライトさん。」

追っかけている方…リイナ・アーシタは足を止めて、頭を下げた。

なんだか分からずにエルピー・プルと呼ばれた少女もマネをする。

 

「かなりお若いクルーも乗り込んでらっしゃるようですわね。」

ココ・シャロンが艶然と微笑んだ。

 

さっきマチュが彼女を薔薇姐と呼んだが、たしかに大輪の薔薇を思わせる笑顔だった。

 

「彼女はシャングリラコロニーのジャンク屋のひとりです。

兄のジュドー・アーシタはニュータイプの素養かありそうなので、パイロット見習い。ほかの者たちはメカニックの研修生としてアーガマに乗り込んでいます。」

 

「あっちの子も?」

 

「彼女はエルピー・プル。保護者であるムラサメ博士がアーガマから降りてくれないので一緒にいます。」

 

「あなたはニュータイプなのね?」

ココ・シャロンが言った。

「わたしのロゼスバークルに乗りたいの?」

 

「乗りたい!!」

 

「なら、一緒に乗りましょう。ブライトさん、わたしはこの子を乗せてロゼスパークルの足ならしをしてきます。

ヴァーニとカンチャナは部屋に案内してあげてください。」

 

ブライトはなにか言い返そうとしたが、突如現れた頓狂な少女の声に、遮られた!

 

「さあ! ボクのサイコガンダムR!!

きみの心臓が到着したぞおっ!」

「ドゥー。はしゃぐな。中尉殿が困ってる。」

「あんたはヘビーアームズとずっと一緒だからいいよね、トロワ!」

 

ドゥーと呼ばれたのは少女とも少年ともつかない可愛らしい生き物で、体の線がわからないだぶだぶの服。伸びた髪を適当にピン留めしている。

トロワと呼ぼれた少年も十代半ばだろう。だが、少年の中にある戦場の臭いにブライトは顔をしかめた。

この年頃の少年が実戦を経験するとしたらそれはいったいどこなのだろうか。

 

 

「アーガマへの入管はここか?」

人相の悪い男がぬっと顔を出した。

だが、ブライトはこの男は見覚えがある。

たしかどこかの市長で、大戦時は『黒い三連星』として名を馳せた…

「マッシュ様が来たからには、大船にのったつもりでいな!

連邦の過激派なんぞ俺ひとりで捻り潰してやる!」

 

その肩口にそっと手が置かれた。

 

「はしゃぎすぎだ。」

背後から硬質な声がそう言った。

「入管では静かに、な。」

 

「誰だ、ナマイキなことを! 俺を誰だと思って…」

振り返ったマッシュの顔がみるみる青ざめていく。

「アナベル・ガトー少佐…ソロモンの悪夢…」

 

「昔の話だ。いまは俺もおまえもただのクラバの選手としてここにいる。

中尉殿?」

 

一度は敵として戦った相手だが、ブライトはガトーの風格に飲まれた。

 

「は、はい…」

 

「わたしのオーキス改は、グラナダ宙港に預けてきた。アーガマへの搬入を頼む。それと強化パーツのほうが到着が遅れるようだ。こちらは格納庫には入らないので曳航してもらうことになる。」

 

本当はバリバリのジオン軍人あがりのクランバトル選手は、ブライトには苦手な相手だ。

誰か助けてくれないかな。

と、彼は真剣にそう思ったが、彼が頑張るしかない。

 

それに何故か、彼はクセの強いパイロットの扱いには強いようなのだ。

 

ココ・シャロン御一行に。ドゥーとトロワに。マッシュとガトーに。それぞれにキャビンを用意していると、ブリッジから連絡が入った。

 

「ブライト中尉。エマ・シーンです。

グリーンノアから新型が三機到着したとの事です。」

「きいてないぞ!?

どんな機体だ?」

「オーガスタ研究所が開発した可変機をテム・レイ先生のところで改修した機体、とのことですが…格納庫がそろそろいっぱいです。」

 

「わかった。アレキサンドリアに収容可能か打診してみる!」

 

「なんだあ? ブライト。俺たちを追い出しにかかるのか?」

モニターがショートボブの女性士官から、猛禽の目を持つ男に変わった。

 

「ヤザン大尉…あれはあなたの機体か?」

 

「そうだよ! カッコ良い可変機をって事でクワトロの旦那に頼んでたのが間に合ったみたいだな?

でもってアレキサンドリア行きってのはどういうわけよ?」

 

「誤解しないでいただきたい、ヤザン大尉。これは単に収納スペースの問題で…」

 

「だったら俺は、ソドンを希望するぜ。構わねえだろ?」

 

ブライトは困った。

「いやそのヤザン大尉。どういう訳か、今回の任務に参加してもらうことになってはいるが、ソドンはもともとジオン公王府所属で、しかも元首アルテイシア閣下の御座艦となっている。」

 

 

「なんだよ、ブライトさん。俺がアルテイシア姫を口説きにかかるとでも思っているのか?」

 

「い、いやそんなことは…分かりました。ソドンへ打診します。それまでは新型機はグラナダ宙港の倉庫に待機させます。」

 

あれこれと。

 

ひとりとしてまともなヤツがいないじゃないか、クランバトルのトップランカーどもは!!

 

ブライトが身の不運を嘆いているところへ。

 

「ただいま! ブライト中尉。」

 

この混乱を招いたそもそもの元凶。

クランバトルの大立者。カネバン有限公司のアンキーである。

部下らしき男が三人。

それにどういう訳か、クワトロ大尉とハマーンも一緒だった。

 

「わたしんとこのクランの出席率はどうだい?」

 

「ココ・シャロンという仮面の女パイロットはついさっき到着している。二人の子連れだ。アレはなんとかならないのか?

行き先は戦場だぞ?」

 

アンキーは答えずにクワトロを見て、ニヤニヤと笑った。

 

「そんなに気にしないでも、ここにはジュドーたちやカミーユ、未成年は大勢いるじゃないか。」

 

「それも感心はしていていない。

――クワトロ大尉。アーガマへのご帰還ありがとうございます!」

 

「…うむ。」

クワトロは軽く顎をひいた。

隣のハマーンを軽く見やってから

「このハマーンが作戦中、エゥーゴの指揮をとることになった。よろしく頼む。」

 

「は!? そ、それはいったい?」

 

もし、拘束中のブリックスにかわって指揮を執るのならあなただろう。

と、叫びたくなるのをブライトは飲み込んだ。

 

「ペズンまでの運搬は?」

 

「ジオンから新たに、強襲上陸艦ソドンとアルビオンが来ます。」

 

「ソドン?」

クワトロの眉間にシワがよった。

 

「はい。5年前のフネですが、よい艦です――」

 

言いかけて、ブライトは口をつぐんだ。

噂が本当なら目の前にいるのはそのとき、ソドンを搭載予定のモビルスーツと一緒に強奪した男で、ブライト自身は体調不良で下船させられていなければ、ブリッジごと焼かれていたはずであった。

 

その男と同じ側にたって戦おうとしている!

 

数奇な運命に思いを馳せるまもなく、またもアーガマのブリッジから連絡がはいった。

 

「ブライト中尉!

ジオンの――」

 

「ソドンとアルビオンが着いたのか?」

 

「いえ、公王府直属艦隊のリリーマルレーンです。司令官シャリア・ブル准将の名前で、カネバン有限公司のアンキー社長を拘束し、引き渡すよう命令です。」

 

ブライトの視界が。

ゆっくりぼやけて行く。

 

クワトロ大尉が体を支えてくれた。

 

「医務室に運ぼう。ポメラニアンズ、手を貸してくれ。」

 

ブライトが聞き取れたのはそこまでだった。

 

 

 

 




戦いが始まる前から、こんなに消耗してしまうブライト。
かわいそう。
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