ティターンズの影、ペズンの亡霊、そして“白い悪魔”の記憶。
旧きジオンの亡霊たちが、名を変え、姿を変え、再び宇宙に舞い戻る。
ヤザンが笑い、アムロが跳ね、ソムが吠える。
混線する正義と忠誠、交錯する過去と現在。
「いいんですか?」
ロべルトが尋ねた。
ヤザンは、心の中でニヤリと笑った。
このロベルトとアポリーはいい拾い物だった。
腕もいいが、それ以上に、倍のモビルスーツに追いかけ回されながらも軽口を叩ける、その性根がいい。
「なにを、だ!?」
「だって、大尉とそのソムはけっこう好い仲だったんじゃありませんか?」
ロベルトはずけずけと言った。
もちろん、相手のゼク・アインとかいうモビルスーツに狙いをつけさせないようにジグザグ軌道をとりながら、である。
「おい!ロベルト!
ソムはアルテイシア・ソム・ダイクン様だぞ! いくら本能が人の皮だけ被ったような大尉でもだな。」
「アポリー! てめえはあとでシメる。」
ヤザンは機体を変形させた。
張り出した三角翼が目立つが両手両足を備えた人型だ。
アポリーとロベルトも同じくタイミングで変形をおこなっていた。
“こっちもいろいろ考えてんだよ!
このゼク・アインどもは対艦装備だ。こいつらを引き付けちまえば、残りの旧式じゃあ、少なくともソドンを沈められることはねえ!
ソムが大人しく艦のなかにいてくれりゃあ、これでひとまずは安全は確保できるってことになる。”
ヤザンは遠い目をした。
“……まあ…無理か。”
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「敵モビルスーツ接近します!」
コモリが淡々と言った。
「アルビオンは直衛モビルスーツ隊を発進させました。ヒトハチマルマルで到着します。」
「総員配置、対空防御。」
ラシット艦長はすみやかに命令した。
「モビルスーツ隊発進。」
「ジークアクス、マチュ、出るよ!」
「ロゼ・スパークル、ココ・シャロン発進します。」
「フォウ・ムラサメ。サイコガンダムR発進する。」
「アムロ、ガンダム行きまーす!」
「バンボラ、リックグフ、発艦するぞ。」
「ソム・エドワウ。レイダー発進します。」
しまった…。
ラシットは頭を抱えた。
そうだった。
安易にモビルスーツ隊を発進させるとソドンはこうなるのだった。
「アルテイシア様、ランバ・ラル閣下…その……直衛もきますので出撃はお控えください。」
「なんの話しかな? わしはバンボラ・バルという元ジオンの大尉でとっくに退役しておる。」
「わたしは駆け出しクランバトラーのソム・エドワウ!」
こ、こいつらは!!
まったく話も聞かない、法でも縛れない、これだから独裁国家というものは……。
アムロは宇宙の奥に目を凝らす。
悪意が。
殺意が渦巻いている。
だが、前回おそってきた妙な気配の持ち主はいない。
「みんな! 聞こえるか。直衛のアルビオン隊が到着するまではソドンから離れるな……」
その傍らを怪鳥に似た機体が追い抜いていった。
「アムロ! ソドンへの射程距離外で敵を叩くわ。よろしくて?」
よろしくは、ない!!
止めるつもりで、アムロはレイダーの翼のうえに飛び乗った。
「あら、それいいわね。」
ソム・エドワウは明るく行った。
「ジオンでいうドダイみたいに使えるわ。振り落とされないように捕まって。最大加速で突っ込むわよ。」
あまり話をしたことはなかったが。
アムロはぼんやり思った。
セイラさんは夢中になるとひとの話をきいてくれないところがあったなあ。
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「“大佐”殿!」
民間のたかがクランバトルのオーナーに、モニターの中のドレンは敬礼した。
「どうもティターンズの意思が働いているな。そう思わんか、ドレン?」
「はっ……確かに。明白にジオンの船を攻撃してしまえばそれは、ジオンからの反撃をも許容した、ということになりかねません。
ですが、前回のゼク・ツヴァイの奇襲といい、今回の攻撃も明白にソドンを狙っております。」
「つまりはアルテイシアの生命を、か。
それをエイノー提督が容認しているかどうか、だが。」
「……すでにアルビオンからバニング中尉以下『連邦軍』がソドンの護衛に発進しております。ですが……」
ドレンは顔をしかめた。
「当の本人、アルテイシア様、いえソム・エドワズはモビルスーツで出撃済みとのことです。」
「今回の敵の規模は?」
「モビルスーツが18機。新型のゼク・アイン、6機は偵察中のヤザン小隊が足止めしました。残りは旧式です。ソドンに向かいつつあるのはマシンガン仕様のザク8機。軽キャノン4機。」
「気に入らんな。」
クワトロは顎に手を当てた。
「ペズンはもともとモビルスーツの開発工廠だぞ。どこからそんなモビルスーツが湧いてでた。」
「月面都市のいくつかが、流したものでしょう。パイロットはおそらく連邦軍からニューディサイズに合流した跳ね返りども。」
「この攻撃そのものが陽動の可能性はある。」
クワトロの傍らにたつ少女が、そう言った。
「アルテイシア様をお守りするのが最優先だが、ソドンにのみこちらの戦力を集中させてしまっては裏をかかれる可能性がある。
我が君。
提案だが。」
「聞こうか、ハマーン。」
クワトロは楽しそうに言った。
「ガトーの新装備を使ってみよう。
ここからなら、ひと暴れして戻ってこれるくらいの継戦能力はある。
仕掛けられっぱなしでは、むこうに主導権を握られてしまう。
こちらからの攻めを見せることも必要だ。」
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「いいか! ただでさえ、ヤツらは数が多いんだ。間違っても味方をこれ以上減らすなよっ!」
ヤザンは叫んだ。
分かりやすく言うと「相手は数が多いから気をつけろ」という意味なのだが、ヤザン流に言うとこうなる。
「ついでにいうと、“落とすな”」
「どうしたんです? ヤザン大尉が博愛主義に目覚めたんですか?」
「う、宇宙が、世界が改変されていく……博愛主義のヤザンという新しい概念が誕生したのか?」
「違うわっ!」
ゼク・アインのメイン武器はビームライフルだ。ヤザンのみたところそれはガンダムマークⅡに採用されて改良型のビームライフルで、つまりはペズンもまた最新の技術を積極的に取り入れている……ということに他ならない。
「いいか! アムロのやり口をマネるんだ! 徹底的に戦闘力を奪って、そのまま放置するんだ。」
「なんでです?」
会話しながらもロペルトたちは、ゼク・アインの攻撃をかわし続けている。
ゼク・アイン。
たしかに優秀な機体ではあったが、パイロットは機体に習熟していない。
「救助するために人手が必要になるからだ!」
たしかに、単に相手に恐怖と屈辱あたえるよりもはるかに悪魔的である。
そうか。
だから“白い悪魔”なのか!
掛け違いざまに、ロベルトのハンブラビがワイヤーを発射する。
流れた電流に、ゼク・アインは動きを止める。
アポリーのハンブラビが、その両脚を切断した。
ヤザンのハンブラビのビームガンが、別の一機のメインカメラを吹き飛ばす。
背負った対艦用の大型ミサイルが、新鋭機たるゼク・アインの機動力を絶望的なまでに阻害していた。
“対モビルスーツ戦になって時点で、とっととパージしろや、素人が!”
これはニューディサイズにとってはあくまで陽動。
すでにゼク・ツヴァイの修復は終わっていて、アン・ムラサメは遊びに行く気満々です。