旧式と呼ばれた兵器たちは、まだ戦場に立っていた。
これは英雄の無双譚ではない。
火力差、数的不利、そして「殺さない」という縛りの中で、なお勝利をもぎ取るための戦いだ。
名を売るために出てきたと侮った相手が、戦争そのものの質を変えてしまう――
ニューディサイズはこの日、“民間のクラン”の正体を、骨身に刻み込まれることになる。
約1年間続いたジオン独立戦争の初期において猛威を振るったザクマシンガンという武器は、現在ではだいぶパワーダウンした代物になってしまっている。
理屈上は、最新の装甲に対しても、集中して一点に叩き込めば、破壊は可能、という事になってはいる。
だがそれは、戦場では有り得ない。
動かない的に対して、効果的な打撃というのはそうそう続くものではないのだ。
とはいえ、ジェネレーターそのものを含めた改修なしでは、ビーム兵器が使えない以上、ザクは実弾兵器に頼るほかはない。
ニューディサイズの腹づもりとしては、ザクや軽キャノンは、相手のモビルスーツへの牽制。
ソドンへの攻撃は対艦用装備のゼク・アインが担当する予定であり、旧型機はその支援の目的でしかなかったのである。
この部隊を指揮していたのは、トッシュ・クレイ。独立戦争も経験していた士官であり、彼がヤザン隊をゼク・アインに任せて、ソドンへと肉迫することを選んだのにはそれなりに理由がないわけではない。
遭遇したクランバトルのモビルスーツは見たこともない新型であった。
乱戦に巻き込まれ、ソドンへの攻撃を遅らせるよりも、自分たちは先行し、敵モビルスーツにはこちらの新型をもって当たる。
数は倍であるし、すみやかにクランバトルのモビルスーツを撃破し、本隊に合流が可能だろう。
そうすれば、直衛のモビルスーツをこちらが引き付けたところに、ゼク・アイン隊が到着できる。
だが。
ゼク・アイン隊の相手はヤザン・ゲーブルであった。
そして、彼らの相手をするものは。
「撃ってきた。」
レイダーの翼の上で、アムロは呻いた。
命懸けなのは、クランバトルと同じであるが「開始」の合図を待たずに攻撃されるのはどうも慣れない。
「機影14。ザク8、軽キャノン6。」
セイラさん……いやアルテイシア閣下……いやソム・エドワウが冷静に告げた。
「ビーム兵器持ちの軽キャノンから叩きます。
アムロ、加速して敵陣営を切り裂きます。よろしくて?」
アムロは、マチュたちよりだいぶ先行してしまっているため、別の提案をしたかったのだが、返答する間もなく、レイダーはさらに加速する。
「セイラさん、出来るだけ敵の完全破壊は避けてください。」
「なぜ? ただでさえこちらは数が少ないのよ、一機一機確実に……」
「むこうは運用できる戦闘艦がほとんどないはずです。」
アムロはやっと意思疎通がとれたお姫さまに口早に言った。
「つまり損傷したモビルスーツは、なんとか自分たちだけでペズンまで戻るしかない。
そうすれば……ダメージを与えた機体と、それをペズンへ連れ帰る機体。2機分の戦力を削れることになります。」
「アムロ。」
ビームが。弾丸が。
後方に流れていく。
「戦いってそういうものではないのよ?」
「お互いに引くに引けない決戦ならそうなります。けどニューディサイズはそうは思っていません。
ぼくらのことは、名を売るためにしゃしゃり出てきた民間の傭兵、くらいに考えてます。
ある程度ダメージを与えてやれば、損耗を恐れてむこうから引くはずです。」
アムロは足元に微かな振動を感じた。
とっさにレイダーから、離れる。
怪鳥の姿をしたモビルスーツは、人型へと変形した。
“すごいわね。”
ソム・エドワウは心の中でつぶやいた。
“わたしがレイダーを変形させるのに気がついて、とっさにガンダムを離したの?”
アムロは叩きつけられる殺気の真ん中にいた。
本当にソムは、敵のど真ん中にレイダーを突っ込ませたのだ。
360度。敵、敵、敵……。
数で劣るものがする行動ではない。
だが、その行動は少なくとも敵の意表はついたのだ。
一瞬の静寂。
ザクの一機があわてて、マシンガンを構え直したところに、レイダーが肉迫した。
「滅殺!!」
いや。
だから滅殺してはダメなんだって。
アムロは目をおおったが、ソムの振りかざした鉄球は、ザクの頭部から肩口をゴッソリと削ぎとった「だけ」だった。
その衝撃にコクピットが耐えられたかどうかまでは疑問符であるが、戦いである以上そこまで求めてもしかたない。
火線は、レイダーに集中した。
巧みに動くレイダーだが、それでも弾丸の全てが防げるわけもない。
だが、ガンダムタイプのツインアイをもつ奇怪なモビルスーツは構わず、また一機のザクに接近。今度は、両足をハンマーで破砕した。
“レイダーの装甲は、ザクのマシンガンはまったく受け付けないみたいだ。ガンダリウムγか?”
アムロは、慎重に狙いをつけてビームライフルを発射。
“ビーム兵器をもつ軽キャノンにだけ注意すればセイラさんの安全は確保出来る。”
アムロの一撃に、軽キャノンの頭部が破壊される。
このときになってやっと、なにかの指示が飛んだようだった。
残ったモビルスーツは、二手に別れる。
撹乱のため、動き回りながらマシンガンを撃つザクと、精密射撃のために自らの機動を制限する軽キャノンと。
“アムロ!!”
アムロはまた呻くことになった。
分かる。これはララァさんの声だ。
だが声の主がわかるのと、いきなり脳内に話しかけられるのは別だ。
“大佐”もしょっちゅうこんな思いをしているのだろうか。
“生命をとらないように戦うのね?”
“まず、自分の身の安全を考えてください!”
“わかったわ……要するにクラバのルールで戦えばよいのね?
わかった、フォウ?”
“はい、お姉様!”
アムロはガンダムを加速。軽キャノンの砲口とレイダーのあいだに機体をねじ込んだ。
ビームの一撃を盾で防ぐ。
盾の対ビームコーティングはその一撃に耐えた。
「ありがとう、アムロ。」
「気をつけてください。もしあなたの身になにかあったら……」
「アムロ……!!」
い、いやその感情はあなたの勘違いです!
叫ぶ間もなく、ビームの直撃。
再び掲げた盾は、半ば溶解した。
アムロのビームライフル!
ソムの機関砲!
軽キャノンは頭部に両手足、つまりコクピット以外をすべて破壊されて、くるくると回って漂っていく。
別のザクのマシンガンが握る腕ごと、切断された。
「なに! あの武器は?」
「おそらく、サイコガンダムRのソードビットです。」
「うおおりゃあぁっっっ!!」
飛び込みざまにマチュのジークアクスの振るったビームサーベルが一機の軽キャノンのキャノン砲を切断した。
敵は、撤退に入る。
損傷したモビルスーツを援護しつつ、牽制のために攻撃を続ける。
殿をつとめた軽キャノンの射撃は見事だった。
肩口のキャノン砲を取り外し、代わりに盾とビームガンを装備した軽キャノン改である。
狙いは正確で素早い。
「深追いはやめてください。」
そう言いながら、アムロはビームライフルの一撃で、一機ザクの脚部を撃ち抜いた。
足止めをしていた軽キャノンは、アムロを主敵と見定めたようだ。
盾にマウントされたミサイルを発射。
さらに腰部に備えたビームサーベルを抜いて、アムロの“ガンダム”に襲いかかる。
“速いな!”
アムロがビームサーベルに手をかける。
ソムが鉄球を振りかざした。
だが、二人に近づくまでもなく、軽キャノンは全身から青白い火花を散らして停止した。
その左足に、リックグフが伸ばしたムチが絡まっている。
「一人くらい“捕虜”も必要ではないかな?」
バンボラ・バルは動きをとめた軽キャノンに近づいて拘束した。
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「ドッキングベイ、破壊されました。
トロイホース発進不可能です。」
「対空砲火、17%損傷!」
「居住ブロックは損害軽微!」
エイノー提督は、司令室に構えて、黙念として報告を聞いている。
信じられない速度で突入してきたモビルアーマーは、単機で、ペズンにそれだけの被害を与えたのだ。
そして、迎撃のモビルスーツを発進させるまもなく、消え去った。
まさか、クランの連中から仕掛けてくるとは考えていなかった。
対モビルスーツ戦と要塞攻略は別の作業だ。
そのために使用される武器もまた、似て異なる。
「強行偵察隊帰還します。未帰還一機のみ。」
やや表情を緩めたエイノーに追い打ちをかけるように
「自力での航行不能機体10機。
残りもすべて中破ダメージを負っています。」
「相手への損害は?……」
「確認できておりません。」
ここで焦ったり怒ったりしては、士気に関わる。
エイノーはひと息ついてから、務めて冷静な口調で言った。
「負傷したものの救護を急がせろ。
……指揮をとったトッシュ・クレイ大尉の話はきけるか?」
版権がいろいろあって難しいみたいですけど、センチネルも映像化してほしいですね。
二次創作やってるモンが言っても詮無きことですが。