第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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誰が敵で誰が味方か。
宇宙世紀の激流の中、一つの輸送艦隊が暗黒の宇宙を航行していた。
表向きは平和維持のためのテロリスト討伐——しかし、その真の目的を知る者は少ない。
ジオンの重要人物を護送するソドンを中心とした艦隊は、連邦とジオンの狭間で微妙なバランスを保ちながら進む。
だが、その行く手にはペズン要塞の影が立ちはだかる。
若き指揮官ブライト・ノアの肩に重くのしかかる責任。精鋭たちが集クワトロ・バジーナ、アナベル・ガトー、そしてアムロ・レイ。

異なる出自、異なる信念を持つ者たちが、今ひとつの目標のために結束する。
しかし、この脆弱な同盟は、迫り来る脅威の前でどこまで持ちこたえることができるのか。

マチュの胸に秘められた想い、消えゆく記憶の中の少年への想い。
戦場という現実の中で、彼女は何を選択するのか。

宇宙を舞台に繰り広げられる、新たなる戦いの幕が今、上がる——





第27話 決戦~出撃

 

「各艦、ソドンを先頭に縦列をとれ!」

輸送艦隊司令官ドレン中佐は、命じた。

「バニング大尉、ソドンの直衛をよろしくお願いいたします。」

 

「了解した、ドレン中佐……大尉?」

 

「連邦軍からはあらためて、正式な連絡があるだろう。せっかく上がった給金と年金を無駄にするなよ、大尉。」

 

“不死身の第四小隊”のゲルググ隊が、アルビオンを離れていく。

 

「ブライト中尉。モビルスーツ隊の指揮はまかせる。各艦、自己防衛に集中せよ!

ペズンへの攻撃は禁止する。」

 

アーガマのブライトは、緊張の面持ちだ。

この数のモビルスーツは、実際は一艦隊のモビルスーツに匹敵する。

彼の階級では、とうてい指揮することはかなわない規模だ。

 

「アーガマより、百式、リックゾック発進。

クワトロ大尉。単機になるが、ペズンへの偵察をお願いする。

ニャアンはアーガマ近辺に待機。」

 

「ブライト中尉。」

モニターにクワトロの端正な顔が映し出された。

「ニャアンのリックゾックは、アーガマの護衛には向かない。わたしの百式で曳航する形で一緒に出撃を願いたい。」

 

ブライトは少し迷ってから、了解した、と答えた。

この艦隊でなにがなんでも守らねばならないのは、ソドンだ。

なにしろジオンの重要人物が乗り込んでいる。

もしまかり間違って撃沈でもされようなら、ジオンの報復は、地球連邦そのものへ、そして手段を選ばない物になるだろう。

 

「ムラサメ博士。そちらは発進できるか?」

 

指揮系統はどうにもうまくない。

艦隊総司令のドレンはモビルスーツ隊の総指揮官としてブライトを認めてくれてようだが、ジオン出身者も多いクラバのパイロットが彼の命令に従ってくれるかは心もとなかった。

そして、ムラサメ研究所の強化人間たちも……。

 

「ドゥー、トロワ、フォウにはあんたの命令に従うように指示してある。」

冷徹な「マッド」のつく女科学者は言った。

「ただし、先日の大型モビルスーツが出てきたら、わたしらに任せてもらうよ?

あれのパイロットわたしのものだ。だからこっちで回収する。」

 

「わかった……サイコガンダムRとヘビーアームズはカタパルト上で待機してくれ。

アレキサンドリア、ガトー少佐?」

 

「こちらは退役した身の上だ。呼び捨てでかまわんよ、ブライト中尉。」

 

モニターの武人はすでにコクピットの中のようだった。

 

「ディープストライカーの補給にはまだ時間がかる。わたしはすでにステイメンで待機している。ディープストライカーは補給終了次第射出、合体は宇宙で行う。」

 

「わかった。ダリル君とイオ少尉は?」

 

「ゼク・アイン、発信準備完了。」

「フルバーニアン、いつでもいけるぜ!」

 

「ではそのまま待機してくれ。

ソドン隊!」

 

「ブライト中尉!!」

キリリとした顔立ちだが、まだ僅かに幼さの残る顔立ちだった。

たしかコモリ少尉……とかいった……

「ヤザン大尉ハンムラビ隊、レイダー発進済みです。」

 

「まだ……出撃命令は出てないんだが。」

 

「だれか彼女に命令できるひとがいます?」

 

ブライトは真剣に悩んだ。

敵の攻撃は、先頭艦であるソドンに集中するだろう……隊列的にももっとも狙われやすい。いやこれまでの攻撃も明白にソドンを狙っていた。ジオン公国の重要人物が乗っているという情報はペズンにも漏れている。

ならば。

その目標である人物がソドンに乗っていないというのはかえって安全……。

 

――なわけがあるかっ!!

 

「アムロのガンダムとマチュのジークアクスを発進させてくれ。レイダーを護衛させるんだ。

敵は今度は全力を出してくる。小出しに戦力を出しては各個撃破されてしまう。」

 

「了解しました。

ラシット艦長?」

 

熟練のラシットは、静かに言った。

 

「ソドン、総員戦闘配置。

モビルスーツの戦闘はブライト中尉の指揮に従う。」

 

 

-----------

 

 

ふむ。

マチュはジークアクスのコクピットで珍しく落ち着かないものを感じている。

相変わらず、ヘルメットなし。

胸の辺りに手を当てて、自分の鼓動を確かめる。

シュウジ……

 

心の中で呼んでみると。

 

トクン。

 

と、心臓がなった。

 

ふむ。

 

天パの顔を脳裏に浮かべる。

鼓動はふつうだったが、頬に熱さを感じる。

 

何なのだろう、これは。

 

ずいぶん、前のことのように感じるが、人工の空、人工の大地。作られたもののなかに閉じ込められていたマチュは、そこから脱出するための道をひとりの少年に求めた。

好きだったのだろう……と思う。

それは今も。

 

だが、シュウジ・イトウもまた自由ではなかった。

 

薔薇の少女が生み出した無限の世界。

そこを渡り歩きながら、少女の悲しみを終わらせながら、また歩き続ける。

彼は、もとの世界に帰ったのだろうか。

 

マチュは彼を探しに行くつもりでいた。

 

だが。

もとの世界とはどこなのだろう。

 

マチュは思うのだ。

ここが、ララァが望んだ世界なら。

いつかシュウジのほうでふらりとこの世界に帰ってくるのではないか。

 

そのために自分のするべきことは。

 

「マチュ、ジークアクス発進準備。カタパルトに移動……続いてアムロ、ガンダムを発進させてください。

ソム・エドワウを、頼みます。」

 

「コモリ少尉。ソムさんたちはどこへ向かったんです。」

 

アムロの冷静な声に、マチュの頬がまた熱くなる。

マチュはシュウジが好きなのに、この天パのことも気になるのは。

 

「おそらくは、月面都市エアーズ。

ニューディサイズに支援を決めている月面都市群のリーダーです。」

 

 

 

 

 

 

 

 




ペズンの戦力は、新鋭機のゼク・アインが50機。ほかに月面都市から供給された旧式が、やまほどあります。
まあ、クランバトルの精鋭(というか実質、この時代のトップパイロット)に太刀打ちできそうなのは、アン・ムラサメのゼク・ツヴァイと、インコム装備のガンダムマークⅤくらいですが。
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