第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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久々の活躍。
ドゥーとトロワ。
対するは、インコム装備のガンダムマークⅤとハイザック。


第27話 決戦~強化人間たち

 

戦いの火蓋を切ったのはトロワだった。

 

肩、腰、脚部。 一斉に開いたハッチから、無数のミサイルが放たれる。

 

散弾のような制圧射撃。 回避ではなく、「空間そのものを潰す」撃ち方。

 

ハイザックは散開し、回避運動に移る。

練度はかなりのものである。

レーダーや無線誘導の阻害されるミノフスキー粒子下であっても、ミサイルのようなものは「高熱源体」として補足されやすい。

トロワのミサイル攻撃は早すぎた。

 

だが。

一機だけが、回避運動をとらずに、突っ込んでくる。

トロワのヘビーアームズのミサイルは、その一機に集中した。

 

識別不明のガンダムタイプ。

肩口から背中に、強化ユニットを背負っていたが、ガンダムマークⅡとそれほど大きくは異なっていない。

武装は、ビームライフル、ビームサーベル。

 

ミサイルの飽和攻撃には、有効な武器ではない。

 

 

「全て落とす!」

ガンダムマークⅤ。そのコクピットのブレイブの声は、静かだった。

「インコム!!」

ガンダムマークⅤ。 背部から射出されたインコムが、意志を持つかのように散開する。

 

ミノフスキー粒子下でも、パイロットの意志通りの誘導を可能にする。

 

コンセプトとしてはかつて、“赤い彗星” が猛威を奮った「ビット」に近い。

これを有線誘導にすることで、ニュータイプ以外のパイロットにも使えるようにしたのが「インコム」だった。

 

そのユニット内部から射出されたインコムはワイヤーを繰り出しつつパルス状のロケット推進を行い目標へ飛翔する。

かつて、デラーズ紛争時に試験的にシャリア・ブルが使ったインコムユニットはこの際、ワイヤーが絡まるという失態を起こし、使い物にならなかった。

改良された最新型は、たるまない様に僅かに張力が掛かっている。

さらに途中で方向転換を行う際にはリレー・インコムと呼ばれる一種の重りをワイヤー上に残し、これを軸に軌道を変更することができる。

 

「落ちろ!」

インコムのビームがミサイルを薙ぎ払う。

 

ガンダムマークⅤへ集中していたミサイルは次々と誘爆を起こす。

 

「落ちろ、落ちろ、落ちろ!!」

 

空間を埋め尽くすようにミサイルの爆炎が花開く。

 

「……面白い武器だ。」

ヘビーアームズのトロワは、静かに言った。

「こいつは俺にまかせてほしい。ハイザックの始末を頼んでいいか、ドゥー?」

 

「ボクには雑魚ばっかあてがうんだね。」

ドゥーは文句を言いながら、回避行動にうつる。

ハイザックは次々とビームライフルを。あるいは付属のミサイルポッドからミサイルを放つ。

 

ミサイルの狙いは。

 

アーガマ!!

 

「させないって!!」

 

ドゥーのサイコガンダムRの腕にマウントされたビームガンがそれを撃ち落とす。

 

いや、状況はよくない。

通常の戦闘艦なら、対空兵器がある。

撃ち落とせるミサイルよりも、ビームやバズーカ弾のほうが始末が悪いのだ。

だが、アーガマはそれすらロクに積んでいない。

 

右から。

左から。

 

次々放たれるビームを、ドゥーのサイコガンダムRはかろうじてかわす。

 

Iフィールドがあれば。

ドゥーは顔をしかめたが、これは文句を言っても仕方がない。

 

ハイザックのうち三機が、サイコガンダムRに迫る。

残ル四機は、そのまま、アーガマへ!!

 

そのとき。

先頭を行くはなハイザックの両脚が爆散した。

 

“ばかな!”

“新手か!”

“いや、出撃してきたのはこの二機だけだ!”

“どこだ! どこから撃ってきてやがる!?”

 

「アルファ1、2、ビット攻撃だ!」

プレイブが叫んだ。

「そのガンダムタイプはビットを使うぞ。先にやつを落とせっ!」

 

生き残ったハイザックの行動は見事だった。

視認できない相手であろうが、回避運動はとれる。

 

そして、それを操るのが、ドゥーのサイコガンダムRである以上、ビットが見つからなくても本体を叩けばいい。

 

かくして、6機のハイザックは、サイコガンダムRただ一機に向けて殺到した。

 

 

“ビット兵器を使うとなると、あっちのパイロットはニュータイプか。”

マークⅤのプレイブはコクピットで呻いた。

“しかし、新鋭機のハイザックで6対1ならば。”

 

撃墜したミサイルの爆炎から飛び出してきたガンダムタイプに、ビームライフルを。

かわした先にインコムからのビームを叩き込む。

それすらも相手は軽々とかわしてみせた。

 

やはり。

 

インコムは(ビットもだが)「予想もしない」攻撃がくるところが、ポイントであり。

最初から相手がインコムを(またはビット)を装備していると分かればそれなりに対策はされてしまうものなのだ。

 

しかし、理屈上対策できるのと、実際にインコム攻撃をかわしてみせるのとは、また別問題だ。

 

相手は、振り返りざまに腕にマウントされた機銃を放ち、インコムの一機を撃墜してみせた。

 

「クッソ……が。」

罵りながらも、プレイブの唇に野太い笑みが浮かんでいる。

「アーガマのパイロットは、ニュータイプに……エース揃いかよ!」

 

 

 

トロワのヘビーアームズが、間合いを詰めてくる。

 

正面からではない。 僅かにずらしたその角度が。

ブレイブのインコムが展開した角度からの射撃を困難にしている。

 

「……ちっ」

 

ブレイブは舌打ちした。

 

(こいつ……“撃たせない”位置取りをしてくる)

 

あれだけのミサイルに実弾兵器中心の兵器構成。こついはおそらくは基地制圧。それも地上での制圧を得意とする機体のはずだ。

それにこうも追い詰められる。

 

だがトロワは、武装ではなく、間合いで戦っている。

 

「邪魔だ……!」

 

インコムを無理に前へ出す。 ワイヤーが張る。

 

その瞬間、

ヘビーアームズの肩部ガトリングが火を噴いた。

 

狙いはガンダムマークⅤではない。

インコムのほうだ。

所詮、有線による制御。ワイヤーの張り切った状態では動きが止まる。

そこを。

 

「狙い撃てるのか、こいつは!」

 

ブレイブの額に汗が滲んだ。

 

だがこのときトロワもまた、その冷たい顔に、わずかに眉をひそめていた。

 

(しぶといな……)

 

それは、苛立ちだった。

 

 

---

 

一方。

 

「くそっ……数が多いって!」

 

ドゥーのサイコガンダムRが、回転しながら後退する。

 

ハイザック六機。 一斉射。

 

ビームが交錯し、装甲を掠める。

 

「痛いなあ……!」

 

肩のバインダーが分離する。

 

サイコガンダムRのショルダーガードはそのままビット兵器となっている。跳ねるように前へ出た。

 

ビーム。 一閃。

 

狙われたハイザックはかろうじて回避したが、ビットはそのまま、ハイザックの肩口に体当りした。

ビットの先端は鋭い刃物になっていた。

 

両肩から腕を切断されたハイザックを庇うように、次のハイザックが躍り出る。

ビームサーベルを一閃。

ビットが切り裂かれた。

 

その頭部を、サイコガンダムRのビームガンが撃ち抜いた。

 

だが、まだ無傷の敵は四機いる。

包囲が狭まる。

 

「……こいつら!」

 

ドゥーが歯を噛んだ、そのとき。

 

音が聞こえた。

古い古い。

中世の音楽だ。

 

「ジャズが聴こえたら俺の来た合図だ。。」

 

空間が、裂けた。

 

あり得ない速度で、青白い影が突っ込んでくる。

 

「な――」

 

ハイザックの一機が、反応する暇もなく肩口から切断された。

 

ビームサーベル。 すれ違いざま。

 

別のハイザックのコクピットが、ビームライフルで撃ち抜かれる。

 

「援軍……!?」

 

ドゥーが目を見開く。

 

「イオ・フレミングだ!」

 

通信が割り込む。

 

フルバーニアン。 高機動型試作ガンダム。

もともとは地上用の高機動機体ゼフィランサスを宇宙用に改装した機体だ。

 

「遅れて悪いな! 退屈してたんだよ!」

 

イオの笑い声とともに、もう一機の機体が、ビームライフルごと腕を切断された。

 

「こ、」

ガンダムマークⅤを駆るブレイブの額に汗が滲む。

「こいつもエースクラスか。」

 

遠方に。

 

一瞬、光。

 

「……っ」

 

一機のハイザックの肩が吹き飛ぶ。

 

続けざまに、もう一機。

 

 

“またビット攻撃……いや、違う。こいつは狙撃だ。悪魔みたいに腕のいい狙撃手がいやがる。”

 

戦場が、完全に変わった。

互角の戦いからニューディサイズの敗勢へと。

 

(……ここまでか)

 

プレイブの判断は、早かった。

「全機、退却!」

 

即断。

 

インコムを発射し、ビームを乱射する。

ほとんどのハイザックが損傷している。それでも動けない機体の腕をとり、あるいは脱出ポットを抱えて、彼らは撤退へと移った。

 

追撃しようとしたトロワのヘビーアームズと、イオのフルバーニアンの前方を遮るように、インコムからビームの嵐。

 

ブレイブは完璧な後退軌道を選んでいた。

 

「……無理をするな。」

アーガマのブライトの声が入る。

「こちらは十分な損害を与えた。

イオ、ダリル。応援感謝する。補給はアーガマにて行うので着艦してほしい。」

 

 

 

戦闘後。

 

アーガマのブリッジにパイロットたちは集まった。

 

「おい、ダリル!」

イオが詰め寄る。

「てめえ、なんで、突っ込んで来なかった。いや、狙撃の腕がいいのはわかるが……

うまくいけば、あの新型を捕虜にするか、撃破もできたかもしれないんだぞ!?」

 

ダリルは困ったように、ブライトを見た。

ブライトもこれについては疑問だった。

必ずしも狙撃が有効な場面ではなかった。

 

複数の敵味方が入り乱れている戦場だ。誤射の危険もある。

 

「きみの遠距離射撃の腕がいいことはわかるが……反面、リユースサイコデバイスを搭載しているきみのゼク・アインならば、接近戦にこそ分があるはずだ。なぜ、」

 

ダリルは、少し黙ってから言った。

 

「……モビルスーツの色。」

 

ゼク・アイン。

もともとは濃紺だった機体は、ダリルたちがニューディサイズ討伐に参加することに決まってから、白を基調にしたトリコロールカラーに塗り替えられていた。

 

「あの色のモビルスーツに乗るのは恥ずかしすぎます。」

 

一瞬の沈黙。

 

「ふざけんな! ガンダムといえばあの色に決まってんだよ!」

「いやゼク・アインはガンダムじゃないし、そもそもガンダムだったら赤だろう?」

 

 

 

 




アーガマへの急襲は退けられましたけど、ソドンへの襲撃はこれからです。
エアーズのアルテイシアさんたちには、アナハイムのハイザック部隊が迫ります。
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