第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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勝つだけなら、ネームドの乗る可変機。対するはハイザックでまあ、勝てるんでしょうけど、「エアーズ市を守りなながら」という条件がつきますので。





第27話 決戦~エアーズの決断

応接室の電話が鳴った。

 

エアーズ市のカイザー・パンフィールド市長は、嫌そうに受話器のボタンを押す。

モニターに売った男は、防空管制室の制服を身につけていた。

 

「市長……緊急事態です。所属不明、モビルスーツ六機。

アナハイム工場区画から、こちらへ直進中です。」

 

管制士の声は震えていた。

 

「モビルスーツ、だと?」

 

カイザー・パインフィールド市長は拳を握りしめた。

 

「識別コードは?」

 

「ありません。機影は……ハイザックのものと思われます。発進した場所はおそらく……アナハイムの工場です。今回、ニューディサイズに納品するはずの機体と思われます。」

 

アルテイシアとガルマ・エッシェンバッハは視線をかわした。

エアーズ市の関係者ではない彼らのいるところでしてよい会話ではない。

それだけ、管制室が慌てている、ということだ。

 

「いや、そんな……工場から直接シャトルでペズンに移送の予定だったはずだが」

 

「モビルスーツ隊から入電。繋ぎます。」

 

モニターに映ったのはおそらくハイザックのコクピットだ。

ヘルメットのためパイロットの顔はわからない。

 

「月面都市エアーズへ告ぐ」

冷たい、押し殺した声。

「こちら、ニューディサイズ臨時指揮権限下部隊だ。

貴市に滞在中の人物――

アルテイシア・ダイクンの身柄を、拘束し、ただちに引き渡せ。」

 

「な……」

 

市長は、思わずアルテイシアの方を見た。

 

「抵抗が確認された場合、目標は“拘束”から“排除”へ移行する。」

 

言い切りだった。

 

「繰り返す。

アルテイシア・ダイクンを引き渡せ」

 

室内が、凍りついた。

 

「そんな……」

市長の声は、かすれていた。

「ここは自治都市だ。

貴官らの指示に――」

 

「たんなる指示ではない。」

通信の声が、遮る。

「連邦への反逆者の処分だ。

アルテイシアを庇えばエアーズも反逆に加担したと見なす。」

 

 

アルテイシアは、静かに目を閉じた。

 

(……ここまで愚か、か)

 

彼女が口を開くより先に、市長が叫ぶ。

 

「待て! 待ってくれ。

いま、協議の最中だ!」

 

「協議の余地はない」

 

無慈悲な返答。

 

「……十分、猶予を与える。その後、我らはエアーズ市に突入。反逆者ジオンの元首の排除にかかる。」

 

一方的に通信が切れた。

 

 

沈黙。

 

誰も、言葉を発せなかった。

 

「……アルテイシア殿」

 

市長が、絞り出すように言う。

 

「わたしは……このような暴挙を許すつもりはない。だが、エアーズは治安維持のためにザクを数機もっているだけで、とても貴女を守り切れるものでは――」

 

「分かっています」

アルテイシアは、はっきりと言った。

「あなたが迷うのはもちろんのこと。エアーズの秩序と安寧を最優先してください。」

 

そして、椅子から立ち上がる。

 

「だからこそ、

ここで戦火を招くわけにはいかない」

 

「ま、まさか――」

市長が立ち上がる。

自ら投稿し、捕虜になってくれると――

 

「わたしが“レイダー”で出ます。」

 

「ば、馬鹿な。相手は新鋭機のハイザックです。数も向こうのほうが多い。」

 

「それは必ずしも問題ではありません。」

穏やかだが、強い声。

 

「わたし個人に向けられた刃は、わたしが払います。」

 

いや。

市長は混乱した。

 

言っている意味はわかるが。

なんで、覇権国家の元首が自分で出撃するのだ?

 

 

 

 

地下格納庫。

 

レイダーの前に、アルテイシアが立つ。

 

「本当に出るのかよ、ソム。」

ヤザン・ゲーブルが、ハンムラビのコクピットから顔を出す。

「相手はハイザック六機だぜ?」

 

「少し物足りないかもね、ヤザン。」

アルテイシアは、ヘルメットを手にした。

 

「市街戦になると、どう戦っても市民に被害が出るわ。

こちらから、出撃します。」

 

ヤザンが、獣のように笑う。

 

「いいねえ……“女王陛下”の護衛か。」

 

「わたしは、女王ではないし、公王制も廃止する予定よ。デラーズやらペズンやら……“俗物”どものせいで、改革は遅遅として進まないけれど。」

 

「勝手に死ぬんじゃねえぞ。」

 

「それは、あなた次第です。」

謎のクラバパイロット、ソム・エドワウはコクピットに座るとヘルメットを被った。

 

ハンムラビの手がレイダーに触れた。

 

「ソム・エドワウ。ひとつ提案なんだが。」

「なによ、あらたまって。」

「戦いが終わったら、結婚しねえか?」

 

「なあにを言ってるの、ヤザン。」

ソム・エドワウは笑った。

「あなたは戦うことを永遠にやめないんでしょう?」

 

出撃。

 

レイダーとハンムラビ三機。

 

月面都市エアーズの宙港からモビルスーツが発進する。

 

 

---------

 

市長は、その光景を見つめていた。

ガルマ・エッシェンバッハは、薄く笑ってチャンネルを切り替えた。

場面は、同じく。

対峙するニューディサイズとアルテイシアたちのモビルスーツ。

だが、画角は違う。

 

エアーズ市の外から。

おそらくはドローンによる中継だ。

画面に幾つもの数字が表示されていく。それが刻刻と変わっていく。

 

「おそらくこのチャンネルで見るのが、一番鑑賞しやすいです。」

 

「な、なんです、この番組は!」

 

「クランバトルのライブ配信ですよ。少し賭けてみますか?」

ガルマの笑みにほんの少し残忍なものが混じった。

「いや、失礼。市長はとっくに賭けていらっしゃいましたね。

エアーズ市の市民の生命と財産を。」

 

 

------------

 

 

「なんだ、きさまらは!」

ハイザックのパイロットが喚く。

「エアーズの保安隊か? それともアルテイシアの護衛か?

抵抗するなら排除する。」

 

「わたしはソム・エドワウ。」

アルテイシアは丁寧に自己紹介した。

「ペズン討伐に集められたクランバトルパイロットよ。」

 

「……痴れ者どもがっ!」

 

このハイザック隊のパイロットたちはかなり思想強めである。口調もどことなく、旧ティターンズを思わせるものがあった。

そして、本人たちの思い入れとその実行力は、しばしば反比例する。

 

ハイザックの脚部にマウントされたミサイルポッドから、計18発のミサイルが放たれた。

バカな。

アルテイシアは呻く。

 

この位置関係で撃ったミサイルは、エアーズの港湾施設、さらにその後方にある居住施設を直撃してしまう。

 

レイダーの機銃が。

ハンムラビのビームガンが、飛来するミサイルを撃ち落とす。

それでも一発が、港湾施設の一部を破壊する。

 

「ヤザン!」

ハイザックの射撃から、エアーズを守るため、ジャンプして位置関係を変えようとするハンムラビに、レイダーが接触した。

 

「なんだよ、お姫様。俺が恋しくなったのか?」

「あなた、わざと一発うち漏らしたわね?」

「考えすぎだぜ、ソム!」

 

離れて二人の間を、ハイザックのビームが駆け抜けた。

 

アルテイシアが撃つ。レイダーの機関砲が、

ミサイルポッドを正確に撃ち抜く。

爆散。ハイザックは両脚部を失い、地に倒れた。

 

「一機、戦闘不能」

冷静な報告。

クラバルールに則った、完璧な無力化。

 

「チッ、ここでもクラバかよ!」

ヤザンのハンムラビが、変形しながら突っ込んだ。

「散開しろ! いや接近戦だ!」

ハイザック隊が反応するが、遅い。

ハンムラビの海蛇が伸びる。

「捕まえたぜ!」

絡め取られたハイザックの全身に火花が散った。

動かなくなったその機体を月面へ叩きつける。

 

「二機目、行動不能。」

アルテイシアは淡々と確認する。

 

アボリーとロベルトは、たくみな連携で一機のハイザックを追い込んでいた。

アポリーのビームライフルがハイザックの片腕を吹き飛ばし、直後に踊りこんだロベルトがビームサーベルで頭部を両断する。

 

あっという間に、半数を失ったハイザック隊はろくでもないことを考えた。

ビームライフルの狙いを、ソムたちではなく、エアーズ市の居住区に向けたのである。

 

市にむかったミサイルをソムたちが、迎撃したことから、ヒントを得たということだろうが、ロクでもない発想としか言いようがない。

 

「投稿しろ! クラバのモビルスーツ!」

ハイザックのパイロットが叫んだ。

「投稿しなければ、エアーズを撃つ。」

 

 

ソムは。

その射軸線上にその身を移動した。

 

死なせるかよ。

 

ヤザンはフェンダーライフルを発射。

クラバのルールにはない。

本気の一撃だ。

ハイザックは胴体を撃ち抜かれ、爆散する。

 

だが、残る二機は。

レイダー目掛けて、ビームライフルを発射。

かわせば、後方のエアーズに直撃する。

 

レイダーに施された装甲とビームコーティングは一撃なら、通常のビームライフルに耐えるかもしれない。だが二発は無理だ。

しかし。

 

レイダーのハンマーの鉄球が、ビームを受け止めていた。

ビームはその装甲を溶かし、奥まで抉ったがそれだけだった。

 

 

ソムのレイダーがハイザックに襲いかかる。

接近戦。

ハイザックはビームサーベルを使おうとしたが、ライフルとサーベルの切り替えには一瞬の間が生じる。

 

「滅殺っ!!」

 

ハンマーは容赦なく、ハイザックの

下半身をぶっ潰した。

続く一撃は、もう一機。かろうじてビームサーベルへの切り替えに成功したハイザック。そのビームを握る腕ごと上半身をつぶしていた。

 

戦いは終わった。

 

 

「エアーズの善良なる市民諸君!」

ヤザンは、腕を高々とあげて勝利を宣言した、

「そして、俺たちにベットした賢明なクランバトルファンの諸君!

おめでとう。きみたちの勝利だ。」

 

「クラバのルールに反して故意に、エアーズ市を狙ったテロリストは、エアーズに引渡します。」

ソムは、ヘルメットを脱いた。髪がふわりと流れる。

「……連邦の腐敗を一掃するとのスローガンを掲げたペズンの真意はいまご覧になった通りです。

気に入らなければ、味方でも平気で撃つ。それが彼らの正体です。」

 

 

 

カイザー・パインフィールドは、椅子に崩れ落ちている。エアーズがこれほどの危機にさらされたのは初めてだったのだ。

 

ガルマがその肩を叩いた。

「古来、賢明なる軍師曰く、無能な味方はどんな敵よりも恐ろしいという。

エアーズ市の安全のためには、ニューディサイズとどう付き合えばよいか。

結論はでたようですね。」

 

 

 

 

 

 




ティターンズは味方にいたほうが厄介なのです。
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