対するは、クワトロ、ニャアン。駆けつけたアムロにマチュ。
マチュのジークアクスには別時間軸のアムロの記憶と人格の一部を宿したオメガサイコミュが。
実は、ニャアンのリックゾックには、同じく別時間軸のネオ・ジオン総帥の記憶と人格がコピーされています。
時は少し遡る。
クワトロの百式とニャアンのリックゾックは、アーガマを発進し、偵察行動に移っていた。
……すごくヘンな絵面だった。
飛行機型に変形した百式の翼の上に、リックゾックが鎮座している。
バーニヤを増設しているとはいえ、その運用は特殊すぎて、攻めるにも守るにも向かない。
かと言って、発進させた以上、放り出すわけにもいかないので、連れてきたのだが。
クワトロは、モニターに目を落とした。
百式のセンサーとソドンからの情報がそこには表示されている。
「すべて新型のゼク・アインだな。」
「多い! 多すぎです、大佐。」
「わたしは大尉だよ、ニャアン。」
この前の新型はなし……か。
クワトロは、もう一度機影を確認する。
14機。
向こうもこちを認識し、隊形を組みつつある。
ゼク・アインのデータそのものは、ダリルたちが持ち込んでくれている。
対艦用の大型ミサイルなどの機体を鈍重にする武装は積んでいない。
とすれば対モビルスーツ戦闘用の仕様だ。
ソドンを直接ではなく、まずモビルスーツを叩く、か。
だが油断はできない。
ニューディサイズの保有モビルスーツはこれだけではない。
対艦仕様に改装した別部隊が動いている可能性もある。
例えばソドンに攻撃を集中するとみせかけて、後方のアーガマを狙うとか。
先ほどのアンキーの演説をきいたら、それもありそうだった。
あるいは。
ソム・エドワウが、ブライトの命令を待たずに出撃している。
目的地はニューディサイズ支持派の筆頭である月面都市エアーズ。
ヤザン隊を連れて行ってはいるようだが、ソドンに攻撃を集中させてきたことからも、アルテイシアがソドンに乗船していることはバレていると考えた方がいい。
まさか、クラバのパイロットのひとりが元首ご自身だとは思っては居ないだろうが、エアーズ市のトップと会見した時点で、それはバレる。
そちらにも戦力が割かれるかもしれない。
敵が戦力を分散してくれるのはありがたいのだが、個々に当たる味方全てが無事でいることは著しく難しくなる。
「あ、マチュと天パだ。」
ニャアンがつぶやいた。
百式の翼の上で、リックゾックがクローアームをぐりんぐりんと振り回した。
大気の抵抗がないから、急加速でもしない限り、しっかりつかまっていなくても大丈夫ではあるのだが。
絵面はかなり変だ。
クワトロのような男でもちょっと落ち込むくらいには。
「クワトロ大尉!!」
アムロの声だった。
「ここはぼくらに任せて、ソムさんの護衛にエアーズ市へ!」
「そうはいかんよ。
……きみたちが来てくれてありがたいが、ソドンの護りは大丈夫か?」
「バニング隊のゲルググがついてます……あと、ララァさんたちも待機中です。
それより、早くエアーズへ!」
クワトロは、自分とアルテイシアの関連をどう説明しようか、一瞬ためらった。
護衛している相手に、背後から撃たれる危険性については説明しにくい。
彼女の憎悪は、おそらくはシャリア・ブルのそれと似たようなところがある。
彼がいつかとんでもないことをやらかすと。
「いつか」「なにか」は分からぬがギレン並の大量殺戮を行うと、確信しているのだ。
――それを一笑に付すことが出来ないものは確かにクワトロの内にあるのだ。
今の彼にはララァがいる。
アムロや、サイド6のニュータイプたちもいる。
彼女たちの未来は血塗られたものになってはならない。
だがもし、彼女たちを失ってしまったら。
「……エアーズにはきみたちが行ってくれ。」
クワトロはそう言った。
「わたしは、ここで奴らを引きつける。なに、無理はしない。ひとあたりして引くつもりだ。」
「可変機でもない限り、エアーズまで行くのは無理です。ぼくのガンダムもマチュのジークアクスも推進剤が持ちません。」
「そいうこと!」
マチュが元気よく言った。
「だから、こいつらを片付けてから、百式で引っ張ってよ、シャアさん。」
いまのわたしは――。
さすがに、クワトロは続きを言うのを諦めた。
「来る!」
白いモビルスーツが、加速した。
推力も機動性も、スベック上はゲルググと同程度のはずだが、とてもそうは思えない。
改良型のマークⅡ、いや彼の操る百式よりも疾く感じる。
そう言えば、彼自身も少々カスタマイズしてパーソナルカラーに塗っただけのザクを「通常の3倍」と。
いやあれは周りが言っただけで、彼自身がそう言っていた訳では無いのだが。
アムロのガンダムが駆け抜けたその空間をビームが切り裂いていく。
ゼク・アインのパイロットの練度はかなりのものだ。
リックゾックが、バンザイをするように、両手をあげて、百式の背を離れた。
クワトロは百式を人型に変形させた。
リックゾックが、ふわりと宙を泳ぐ。
機動性ははっきり言って低い。
加速性能もよくはない。
ニャアン自身は、パイロットとしての素養は十分ある。
エグザベ中尉によれば、ニャアンにパイロットとしての教育を施したのはフラナガンスクールだ。
当時の事情を加味すれば、それは実質、キシリアの親衛隊用の育成教育にほかならない。
クワトロ自身も、その腕前は見ている。
試作ガンダム、ゼフィランサスでシーマ配下の海兵隊の精鋭と互角以上に渡り合っている。
なにもリックゾックなどというゲテモノに乗らなくでも、アーガマにはマークⅡもある。
なぜ、ニャアンは、アンキーから貸し与えられたリックゾックに固執するのか。
ゼク・アイン二機が迫る。
フォーメーションはオーソドックスなものだった。
どちらか一機を囮にすることで、敵の位置を炙り出すのが、M.A.V.戦術の骨子と言われていたが、ともに有視界に相手をとらえていながら、それに固執するのは如何なものか。
リックゾックの動きは鈍い。
というか、通常のモビルスーツのよつなジグザグの飛行や加速により回避を行うことを諦めてしまっているのだ。
バーニヤをふかしてはいるのだがその動きは、海流に漂うだけのクラゲのように鈍い。
その姿勢制御は、宇宙での体の向きを細かくかえることに、特化している、と言っても良い。
リックゾックの主武器であるメガ粒子砲は胴体に内蔵されている。
手持ちのビームライフルのような自在な射角はとれない。胴体ごと回さないとことには相手に狙いをつけることも出来ないのである。
「アムロ! マチュ! ニャアンを援護してくれ。」
ゼク・アインの編隊に突っ込む百式に、ミサイルが放たれる。
変形。
急加速。
可変機の機動性と加速力は、ミサイルを置き去りにした。
急速接近。
すれ違う直前で、再び人型へ。
ビームサーベルの一閃が、ゼク・アインのビームサーベルを両断した。
“ニャアンは……大丈夫なのか?”
クワトロは、髪の長い、どこか不可思議なところのあるこの少女を気にかけていた。
ゼク・アインは散開した。
14対4の戦いだ。
最新鋭の可変機であるクワトロの百式と、同じくジオンの新鋭機であるジークアクスには4機ずつのゼク・アインがつく。
見るからに旧式のゾックとガンダムには二機ずつだ。
これならよい塩梅かもしれない。
クワトロは胸を撫で下ろした。
ミサイル、機銃、バズーカ。
ゼク・アインの武器は多彩だ。
だが。
――当たらなければどうということはない!
問題はマチュだ。
射撃がそんなにダメなわけでは無いはずなのに、彼女は接近戦を好む。
とりあえず、始めた戦いはこれで一通り、網羅できたかな?
前の戦いで、ゼク・ツヴァイはIフィールドジェネレーターを損傷。ガンダムマークⅤはインコムユニットをアーガマの強化人間たちとダリル、イオの援軍のまえに失ってるので、けっこう修復に時間かかるみたいです。