第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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久しぶりに、おっさんたちの悪巧みの場面です。
アムロたちにして見れば、休憩も補給も出来ないまま、波状攻撃を仕掛けられるのがけっこう辛いのですが、ニューディサイズもあんまりうまくいってません。





第27話 決戦~崩壊への序章

 

「第一波、ゼク・アイン隊、帰投します。

大破……6、中破2、小破6!

未帰還機、ありません。」

 

エイノーは、無表情で報告を受けている。

味方が困難なときほど、動揺を見せてはならない、というのが、彼の信条だ。

 

もちろん内心は違っている。

クランバトルのパイロットたちは……バケモノだ。

金色の可変機は、まるで閃光そのもののように戦場を駆け、散弾やビームライフルを駆使して、ゼク・アインを次々に行動不能にしていく。

可変機、というアイデアは、ムーバブルフレームとともに、最新モビルスーツの流行のひとつになってはいるのだが、生産コストや整備性もさることながら、扱える技量のあるバイロットがあまりにも少ない。

だが、この金色の機体のパイロットはそれを楽々と使いこなしている。

 

水陸両用機を宇宙用に改装したモビルスーツは、奇怪は舞いを披露するかのように、ゼク・アインを翻弄しつつ、おそらくはビットによる攻撃で二機のゼク・アインを行動不能にした。

ということは、このモビルスーツのパイロットはニュータイプ、ということになる。

ジオンのガンダムタイプの新型“ジークアクス”は、ビームを弾く円形のバリアを発生させていた。Iフィールドは通常のモビルスーツサイズの機体に搭載は難しい。なんらかの新機構なのだろうが、伸縮するビームサーベルを振り回すその姿はまさに鬼神の強さだった。

 

ほんとうに恐るべきは、トリコロールカラーに塗られたガンダムもどきかもしれなかった。

特別な機体ではない。特殊な装備もない。

機体性能としてはせいぜいゲルググ程度だろう。

だが、最小限の動きでゼク・アインを翻弄し、ただ一発のビームで、二機のゼク・アインを中破させている。

 

バスク・オムが入ってきた。

 

無駄に胸をはっている。

無駄に背がでかい。

無駄に禿げている。

 

とにかく無駄が多く、エイノーは見ているだけで嫌になった。

 

「アーガマ攻撃から帰還したハイザックの報告がまとまりました。」

 

ジャミトフが続きを話せ、と促した。

 

「中破五、小破二です、ジャミトフ閣下。」

「撃墜されたものは……なし、か。」

「はっ! 全機帰還を果たしております。」

 

「相手は、ガンダムタイプが三。遠距離狙撃のため、機影が確認できなかったもの一……の計四機だな。」

エイノーが口を挟む。

さきに彼は、ハイザックとともに出撃したブレイブ・コッド大尉から報告を受けていた。

ガンダムタイプのうち一機は、ニュータイプ。残りの二機も、いや狙撃手も含めて、四機。全員がスーパーユニカム並の実力をもっていたと言う。

 

「ブレイブ・コッド大尉のガンダムマークⅤはほとんど無傷です。」

バスクが言った。

「損失はインコムユニットのみです。」

 

「そろいもそろって、とんでもない技量だな。」

 

味方が負け続けているときに言うセリフではない。

だが言わねば、ジャミトフとバスクは、負けていることにさえ気が付かないようだった。

 

「確かに思ったよりは、マシな連中のようですな。」

ジャミトフが言った。

「しかし、結果として撃墜された機体はゼロです。」

 

「踏み込み、が甘いのですよ、エイノー閣下。」

バスクがしたり顔で言った。

「やつらはクランバトルのルールに無意識に縛られておるのです!

いま一歩の詰めが甘い。ゆえに、こちらを落としきれない。」

 

ジャミトフ・ハイマンは椅子に深く腰掛け、細い指で画面を叩く。

 

「確かに、個々のパイロットの技量はなかなかだ。しかし、個人の武勇で戦局がくつがえることはない。」

 

バスク・オムは腕を組み、獣のような笑みを浮かべた。

「腰が引けているんですよ、連中は。

しょせん、クランバトルは見世物。そんな戦いに慣れきった連中だ。

殺し切れない。」

 

「技量がいくら優れていても、人間は疲労する。モビルスーツの武器も推進剤も無限ではない。

安心してください、提督。我々の戦力はまだまだ増強されます。

新型のハイザックが数日中に六機、納入されます。今回の損耗を十分に埋められる数だ。

そして、物資も月面都市から続々と届く。我々は言わば、無限のチップをもって賭けに興じているようなものです。

やつらは戦えば損耗していく。

我らにはそれさえ、ない。」

 

バスクはうなずいた。

「時間がかかればかかるほど、我々は有利です。連邦からの義勇兵もまだまだ集まるでしょう。

弾薬も、予備機も、ここペズンには山ほどある。」

 

「……楽観すぎるな。」

エイノーの言葉に場の空気がわずかに凍る。

 

「何だね、提督」

ジャミトフが視線だけを向ける。

 

「敵は……本当に“落とせない”のかね?」

 

「現実に、パイロットの損失はない。

ああ、提督、きみのところ若い尉官がひとり未帰還だったな。」

 

「そうだな。ジョッシュ・オフショー少尉は残念だった。

……わかるかね。彼らは“落とせない”のではない。“落とさない”ことを選択しているだけだ。」

 

エイノーはモニターを指し示した。

 

「ゼク・アインの損傷パターンを見たまえ。

関節部、センサー、武装だけを狙っている。

これは偶然ではない。

精密な射撃で、意図的に無力化に徹している。」

 

「ばかばかしい! なんのために?」

バスクが吐き捨てる。

 

「あのクランバトルのアンキーとかいう首魁の言葉をきいただろうだろう?

いま、行われているのが、クランバトルだからだ。」

 

「馬鹿なことを! これは本物の戦いだ。」

 

「クランバトルも本物の闘いだった、ということだな。相手を無力化すれば勝ち、だという。」

 

「勝手にルールに縛られているならそれも結構だ。殺さないなら、いずれ疲弊するのは向こうだ。」

ジャミトフが嘲笑う。

 

「少し違うな。」

エイノーの声がわずかに固くなった。。

「これは、彼らが“好きなように殺せる”という意味だ。

その気になれば、今頃こちらのパイロットは全滅している。そのことにこちらのパイロットたちが気がついた時、ニューディサイズは崩壊する。」

 

司令室が静まり返った。

 

ジャミトフは、しばらく黙ってから、微笑した。

 

「……なるほど」

 

その笑みは、どこか疲れた教師のようでもあった。

 

「提督。あなたは……損害が出ることに怯えている。」

 

「現実を見ろ、ジャミトフ!」

 

「いや、あなたは“可能性”に怯えているだけだ。

実戦では損害は、避けては通れない。

士官学校の校長という立場で、現場を離れてしまったことがそうさせたのか……あなたほどの方が!」

 

ジャミトフは立ち上がり、背を向けたまま言う。

 

「ペズン防衛と、クランバトル退治は、わたしとバスクにお任せ下さい。」

 

今までも勝手にやっておいていまさら――

 

「これまでモビルスーツの損傷など、被害にも入らないものです。

なんども申し上げるが、エアーズを始めとする月面の有力都市は、ニューディサイズ支持を打ち出しています。

今後も補給は万全だ。」

 

通信兵が、上官同士の緊迫した会話に、おそるおそる割って入った。

「エアーズ市のパンフィールド市長からです。エイノー提督に直接連絡したいと。」

 

「ここにつなげ!」

バスクが横柄に言った。

 

モニターに映し出された市長の顔はどこか疲れていた。

 

「おお……これはエイノー提督……ジャミトフ閣下、バスク・オム少佐もおいででしたか。ならばちょうどよい。」

軽く咳払いをして、市長は続けた。

「エアーズおよび月面連合は、当面、ニューディサイズへの支援を見送る決定をいたしました。」

 

バスクがデスクを拳で叩いて立ち上がる。

 

「き、きさま! ジオンの女狐の口ぐるま二乗ったのか! それともたらしこまれたのか! 恥を知れ!」

 

「どちらでもありませんな。

たしかにアルテイシア陛下からそのような申し出がありましたが、わたしたちはそれを拒否いたしました。」

 

「な、ならばなぜ……」

 

画面が切り替わり、破損したハイザック。それに手錠をかけられたパイロットが映った。

 

「エアーズは、ニューディサイズを名乗るテロリストからの奇襲を受けました。アルテイシア・ソム・ダイクンを殺害するのだと称しておりましたが、市の施設にも多大な損害が出ております。」

 

画面は再び、パンフィールド市長を映し出した。

 

「ハイザックは、アナハイムの月面工場で作られ、そちらに納品されるはずの機体でした。操縦して、エアーズを襲ったのは、受領のために工場を訪れていたニューディサイズのパイロットです。」

パンフィールドはゆっくりと微笑んだ。

「彼らは、アルテイシア姫謀殺は、バスク・オム少佐からの命令であったと証言しています。」

 

「なにか、誤解があるようだな。」

ジャミトフも笑みを浮かべてみせた。

「こちらの指示はアルテイシアの拘束であって、エアーズへの攻撃などは指示していない。」

 

「彼らの攻撃は無差別、いや、明らかにエアーズの民間施設を故意に狙ったものも含まれておりました。」

 

「そんなことはない!」

バスクがわめいた。

「ひよったのか!! 見損なったぞ、パインフィールド。

連邦刷新の大義をもって立ち上がった我々をここにきて敵に回すというか?」

 

「そうですな。

確かに性急に判断するのはあまりにも大きな問題です。

わたしたちもエイノー閣下のお志しは充分理解しております。そもそも、ハイザックのパイロットたちの証言をそのまま信用してよいのかも分かりませんしな。」

 

「おお! ならば……」

 

「なので、アナハイムへの問い合わせも含め、このテロリストが本当にニューディサイズから派遣された者たちなのか。命令がバスク少佐から本当に出たものなのか。その内容は、

充分に精査する必要があります。

その期間については、月面都市からのそちらへの補給、援助は中断させていただきます。」

 

ジャミトフが、パンフィールドを睨みつけた。

「……裏切るか、パンフィールド。」

 

「なにをおっしゃいます。月面都市の志はニューディサイズとともにあります。ただ、味方にも銃口を向けるような兵がいてもらっては怖くてご協力もしかねるのですよ。

その調査の期間をいただきたい。」

 

「兵を……即刻、引き渡してもらいたい。」

バスク・オムが歯を食いしばるようにして言った。

「もし、こちらの命令を曲解して、エアーズに危害を与えたのであれば、公正な裁判の後、しかるべき罰を与える。」

 

「ほう。ならば、彼らがニューディサイズの兵であることは、お認めになるのですな?」

 

バスクは歯ぎしりをして押し黙った。

 

「調査は慎重に行いますが、それほど時間がかかるものでもありますまい。

次回の物資搬入とモビルスーツの納品は中止になりますが、その程度は問題にはならんでしょう。

彼らがニューディサイズと関係がないのであれば!」

 

 

画面が消えたあと、しばらくは沈黙が続いた。

 

やがて、エイノーがぼつりと言った。

 

「さて、君たちの言っていた“無限の補給”はこれで崩れてしまった訳だが、なにか方針の変更はあるかね?」

 

 

 

 





はっきり、「もうおまえらとは付き合えない。離反する」と言わないのが、パンフィールド市長の狡猾なところです。
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