の展開が多いジークアクスでしたが、シイコさんやギレンにもましてなんかもったいないのが、ドゥー・ムラサメでしたね!
岡田斗司夫さんがジークアクスを「ポプテピピックのテンポでつくったガンダム」と評していましたが言い得て妙だと思います。
テム・レイはモニターに移るモビルスーツを食い入るように見つめていた。
彼の作った「ガンダム」の性能に実は一番疑問をもっていたのは彼自身だった。
決して欠陥品を世に出した訳ではない。
だが、彼の改良はもともとのガンダム、その制作コストを下げることを主眼においていた。
たとえばセンサー、たとえばバーニヤ、各関節を人間並みにスムーズに動かすためのさまざな工夫。それらを削りに削り、それでも尚且つ、もともとの機動性を確保する。
おそらく彼の「ガンダム」はそのコストパフォーマンスにおいて、ジオンのゲルググをはるかに凌ぐ。
だが、時代がもとめたものがそれではなかった。
兵器の優劣は、実はスペック上の数値にはあまり左右されない。
出来たばかりの新兵器など故障が多くて使い物にならないのだ。
どうしても起こる初期不良を一掃し、消耗部品の供給を確立し、そう、なによりもその機体に習熟したパイロットが必要不可欠だ。
それらがそろえば、テムの新しい「ガンダム」は第一線のモビルスーツとして活躍できたはずだ。
アムロは。
最初からガンダムを乗りこなした。
パイロットとして天賦の才能があるとか、そんな問題ですらなかった。
まるで、少なくとも数ヶ月は乗りこなした、それも濃密な実戦体験とともに、過ごした愛機に乗るように、ガンダムを操ったのだ。
実際に設計段階でも、あそこはどうのここは削ってなど、かなり細かいところまでアイデアを出してきていた。最終的にカラーリングまで彼の案を採用したのだが。
「テム・レイ先生。」
フランクリン・ビダンが酒のはいったグラスを掲げてみせた。
「どうも愚息には少々、お仕置が必要なようだ。ちょうど実戦テストをしたい機体がありましたので、投入しました。」
「それは」
実の子に対するものとしてはあまりにも酷なものだろう。
クラバよりはだいぶ危険度は下がっているとはいえ、宇宙空間での模擬戦である。
外に放り出され、ノーマルスーツが傷付きでもしたら、それだけで容易にひとは死ぬ。
「テム先生のご子息もクラバを引退するにはよい機会でしょう。
これからはクランバトルは、最新モビルスーツの実戦テストの場になります。
パイロットは熟練のテストパイロットや強化人間が主流となります。
食い詰めたパイロット崩れや素人がでるまくはなくなります。」
フランクリン・ビダンの言うことはもっともなのかもしれない。
「テム先生、おかわりはいかが?」
そう呼びかけたのは、フランクリン・ビダンの――おそらくは愛人だ。
それについては勝手しろ、とテムは思うのだが、モビルスーツジュニア大会へ出場する息子の付き添いを兼ねて訪ねたコロニーで逢い引きをするのはどうなのだろう。
カミーユが怒って宿泊先のホテルを飛び出したのも無理はないだろう。
アムロが会った時、深夜の盛り場をうろついていたという。
「いや、けっこうだ。」
「テム先生。心配にはおよばんよ。
実力がこれだけ開いていれば手加減も容易だ。」
フランクリンの口調がややくだけたものになっている。テム・レイは今後、自分の部下になる人間だ、と。
そう、思い始めているのかもしれない。
「ドゥーは不運でカミーユに優勝を譲ったが、もともとはさる組織の強化人間だ。
なみのパイロットでは歯が立たない。モビルスーツはザクの改修機に見えるが、ティターンズに納品予定の新型機“ハイザック”だ。」
空になったグラスに愛人がブランデーを注ぐ。
「M.A.V.は連邦のテストパイロットを務めたこともある人物だ。機体の方はあるところに眠っていたガンダムの改修機だが、性能全般、とくにその運動性はガンダムをはるかにしのぐ。先生の『ガンダムもどき』では勝負にならんよ。」
たしかに。ここでアムロが負ければ、クランバトルから手を引き、彼を工科大学へやるいいきっかけになるかもしれない。
だが。
けっしてそうはならないだろう。
テム・レイはなぜかそう確信していた。
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カミーユは加速する。
もともとは払い下げのザクだが、「バックパックシステム」により稼働時間の大幅増とエース用カスタム機なみの加速性能を維持していた。
これ以上「ザク」という機体をパフォーマンスを引き出すことはできない。
そう自負していた。
たが、ドゥー・アカツキのザクは楽々とカミーユのザク改に追従してきた。
みたところ後付けのバーニヤやブロペラントタンクの増設はない。
そのマシンガンの吐き出す火線が、たったいままでカミーユのいた場所を駆け抜ける。
ザク…ザクじゃない! ザクに似せた新型機なのか。
カミーユは焦っている。
アムロをエキシビションマッチに誘ったことを、である。
いい所のお坊ちゃんであったカミーユには、クランバトルは払い下げのモビルスーツを使った格闘ショーくらいの認識でしかないのだ。
エキシビションマッチのM.A.V.を探していたため咄嗟に声をかけてしまったが…。
もし怪我でもさせてしまったら。
そう心配しながらも棄権とかはまったく考えない。困ったヤツである。カミーユ・ビダンという少年は。
独立戦争時に確立されたというM.A.V戦術。
実戦に近い形式でモビルスーツを駆るのがほぼはじめてのカミーユにその経験はない。
索敵を著く困難にするミノフスキー粒子下の戦場で、互いに死角をカバーし合いながら戦うのだ、というのだが、カミーユの知識はその程度だ。
とにかく、どちらか一機を落としてしまえば今回のルールでは勝ちだ。
未知のガンダムタイプではなく、ザクの改修ならば性能の限界もわかる。だからドゥーの乗るこの機体を相手に選んだ。
だが、これはザクではない。
ザクそっくりに作った新型機だ。
カミーユのザク改に衝撃がはしる!
撃たれた!
カミーユはさらに加速。
直撃ではない。かすめただけだ。
だがそれだけで彼は怯えている。
撃たれる。
撃たれるってこういうことなのか。
だが、 その動きは少しも止まらない。
止まってしまえば、すぐ直撃される。
大会のときに模擬標的を次々に撃墜していく、ドゥーの腕前をカミーユは目の当たりにしてた。
途中で、ドゥーが体調不良を訴えなければ。
優勝はこの少女のものになっていたはずだ。
止まるな!
止まるな!
それはわかっていても困難なことだった。
コロニー内のように動かない目印があるのとは違い宇宙空間では、動きは全て相手との相対的なものになる。
もし、全力でバーニヤをふかしていても相手が同じ速度で移動していればそれは「止まっている」ことになるのだ。
急制動。
減速したカミーユの目前を、マシンガンの火線が駆け抜けた。
「クソッ!」
ハイザックのコクピットで、少女がうめいた。呼吸を補助するために口と鼻をカバーが覆っている。
全体に線は細い。
「こいつ…またボクの攻撃をかわした。ニュータイプ…ニュータイプなのか?」
かわいらしい顔が歪んだ。
「ニュータイプなんか、死んじゃえええっ!!」
宇宙が弾ける。
ドゥーの目の前の空間が、極彩色に染まった。
“怒りに身を委ねてはダメだ。”
また――共振だ。うるさい。
うるさい、うるさい、うるさい!!!
“それは自分自身を真っ先に滅ぼすぞ。”
それは――カミーユの声ではなかった。
もう一機。カミーユがM.A.V.に連れてきた白いモビルスーツから発せられている。
「なんなんだよ! おまえはぁっ!」
ドゥーは目標を白いモビルスーツに切り替えた。
スコープに相手を捉えるのは一瞬だった。
カラーリングだけは、あのガンダムに似ていた。だが、関節の作りやバーニヤは明らかにスペックダウンしている。
「おまえから落とす!!」
ハイザックのマシンガンが火を吹いた。
弾丸は。
白いモビルスーツの頭部を僅かにかすめた。
そのまま白いモビルスーツは加速してハイザックに接近する。
「落ちろっ!」
今度はわずかに胴体をかすめた。
胴体――コクピット部分への攻撃は反則をとられる可能性があるが、ドゥーは無視した。
「落ちろ!!」
白いモビルスーツの脚の先を弾丸が掠める。
「落ちろ、落ちろ、落ちろ、落ちろ、落ちろっっおおっ!!!」
当たらない!?
整備不良!!
照準がブレているのか?
だって白いモビルスーツはまったく回避行動をとっていない。
ハイザックの弾幕の中をまっすぐにすすんでくる。
え、まさか。
ときおり。
白いモビルスーツはわずかにふわりと角度をかえる。
あれで。あの動きだけで避けてるのか。
「お、おまえもニュータイプなのかっ!
違う!違う!違う! ボクがホンモノだ。自分で強くなることを選んだボクが!!」
ドゥーはビームサーベルを抜いた。
近接戦闘ならいくらかわすのがうまくたって!
ドゥーはハイザックを加速させた。
渾身のビームサーベルの一撃を白いモビルスーツは上方に回避した。そのまま加速して距離をとる。
「逃げるなっ!」
逃げた――のではなかった。
カミーユ。ドゥーから優勝を盗んでいったあのニュータイプ。
その背後にドゥーのM.A.V。あのクリスとかいう女のモビルスーツが迫っていたのだ。
カミーユはその動きをとらえていない。
ドゥーの新鋭機、ハイザックと比較してもそれをしのぐ運動性だった。
背後から接近。ビームサーベルは正確に頭部を切断する軌道にはいっていた。
驚くべきことにカミーユは反応した。
まるで殺気に反応したように。
振り向きながらマシンガンをむけようとするが。
遅い。
ザッ!!
だが白いモビルスーツが、その間に身体をすべりませていた。
クリスはとっさに目標を白いモビルスーツにかえた。
ビームサーベルは実はこのエキシビションマッチでは一番危険度の高い武器である。
その攻撃は、モビルスーツの装甲を楽々と溶解、切断する。
白いモビルスーツは身を沈めた。
まるで中世の剣戟ドラマの剣豪のように。
手はすでに背面にマウントされたビームサーベルの柄を握ってはいたがまだぬいてはいなかった。
そのまま切りかかれば、クリスのアレックスが圧倒的に有利のはず。
だがクリスはとっさに、アレックスを回避させた。
あのまま飛び込んでも勝てる気がしなかったのだ。
腕にマウントされた機銃を掃射しながら、後退。距離をとる。
ちなみにこれは構造上、はっきりと「銃」とは認識されない。
いわば隠し武器のように初見の相手にはうつるのだが、白いモビルスーツは予見したように盾をあげてふせいだ。
その背後から。
ドゥーを差し置いて優勝した少年のザク改がマシンガンを撃ってくる。
クリスはアレックスを加速させた。
火線はむなしく空をきったが、その正確さはクリスからみても舌を巻くほどだった。
「あ、ありがとうございます、アムロさん。」
「カミーユ! 背中にも目をつけるんだ!」
カミーユ・ビダンは性格的にいろいろと問題がないわけではない。
とくに年長者の説教はなにより嫌いだったのだが。
このときは素直に
「はい」
と頷いていた。
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「な、なんなのだ、この動きは!
この機動は!!」
フランクリン・ビダンは絶句していた。
高価なブランデーは大半を床の絨毯が吸ってしまっていた。
「わたしのつけた新パーツの効果だよ。あれでガンダムの性能は30パーセントましになる。」
テム・レイは酒をひと口飲んだ。
高価なのはわかるが――辛いだけだ。美味くはなかった。
「……とでも言えば技術者冥利に尽きるのだが。
残念ながらそんなものはない。すべてはアムロの実力だよ。」
酸素欠乏症でないテムはクセはあるけど、いい親父です。
ここらではアムロはまだ「キラキラ」は見えてなくて、なんとなく声が聞こてえしまうくらいです。
彼が「ニュータイプ」として自分を認識するのは、ララァとあってからになりますが、そうすると
「あなたが来るのが遅すぎたのよ!」
「ララァ!やつとの戯れ言はやめろっ!」
ということになるので.。
「だぃさあぁぁぁアっ!!!!」
とかララァが変顔しないよう。
せっかくうまくまとまったジークアスク世界を壊さないようになんとかやりたいと考えてます。
でもモビルスーツバトルがないとただの不倫モノのドラマにしかならない。