なんだか、27話……2クールを超えてしまいましたので、続きは劇場版かネトフリにはいってないと見られない特別編がつくられた……という遊びです。
ジョッシュ・オフショーは鬱鬱としている。
彼を捕らえた強襲上陸艦であるソドンには、もともと捕虜を大量に収監する施設はない。
彼が閉じ込められているのは、単なる独房である。
部屋にはシャワーまである。食事もでる。
だが、つれてこられた直後に、クランバトルのパイロットだというアムロに尋問されていらいずっと放置されている。
何日がたったのか。
いやそれほど長い時間であるわけがないのだが、ジョッシュ・オフショーにとっては無限の時間が過ぎたように感じた。
もともと彼は「名家」と言われる家柄の出身である。ジオンの独立戦争の際は士官学校にいたがギリギリで出兵を免れる年齢だった。
繰り上げでの出征は、志願制であったし、彼自身は応募したのだが、選考ではねられたのだ。
出征した同期たちは、半数が帰ってこなかった。
戦争が連邦の敗戦に終わると今度は、軍備縮小の嵐が吹き荒れた。
士官学校にやっと戻ってきた同期たちは次々と成績や素行を槍玉にあげられて、次々に退学に追い込まれた。
物理的な意味でなんとか首がつながったにも関わらず、改めて首を切られるとは。
名門出身のジョッシュはここでも生き残ったのだ。
彼は自分を恥じた。
腐りきった体制。
彼の心をとらえたのは、連邦軍の刷新と再び世界を連邦主導にひきもどそうと主張するティターンズだった。
たが、当時、士官学校の校長をしていたエイノーから止められた。
実際、ティターンズはその主張とは裏腹に、ジャミトフ・ハイマンの私兵としての性格を露わにして行く。
そして、連邦から教導部隊として、精鋭が集められたにも関わらず、その戦績もパッとしない。
テロリストが乗っていると誤解して、民間のシャトルを撃墜しようとして、返り討ちにあったり、ネオ香港に隠れたテロリストを強襲して、アナハイムの保安隊に撃退されたり。
ついには、ティターンズに対抗する組織を連邦軍内部に生み出してしまった。
エゥーゴである。
このままでは、連邦を二つに割った内戦が起こる。
それを止めるためにエイノーは立ち上がったのだ。
だが。
なぜか、いまペズンの戦闘指揮はジャミトフとバスクがとっている。
ジョッシュにはなにがなんだかわからない。
わからないなりに、兄貴分として仰いだブレイブ・ゴットやトッシュ・クレイについて行こうとしていた。
自分たちの技量が劣っていたとは思えない。
だが対戦したクランバトルのパイロットたちはとんでもない技量をもつエースぞろいだった。
この情報をなんとかニューディサイズに持ち帰らなければ。
ジョッシュは戦闘において数の暴力を否定しない。
クランバトルの選手たちの操縦技術がいかに優れていようが、最終的にはニューディサイズが勝つ。だが、そこに至るまでの犠牲は少ない方がよいのだ。
独房のドアフォンが鳴った。ジョッシュが応答ボタンを押すと、いつものジオン兵ではない。
メガネをかけた女性士官だ。パイロットスーツに身を包んでいる。
「いまだったら、ここから逃げられます。」
ジョッシュは寝台から立ち上がった。
「きみは?」
「カーラ・ミッチャム。
ペズンにお世話になっていたリビングデッド師団の技術士官です。
リユースPデバイスのテストを兼ねて、月面を訪れたところを、アーガマの捕虜になって……」
女の言葉にウソはなさそうだった。
いや、パイロットの四肢をそのままモビルスーツに繋ぐリユース・P・デバイスについては彼も興味があったので、その名前はきいている。
だが、ジョッシュがぺズンについたときには、もう彼女とリビングデッド師団のメンバーたちはグラナダに旅立ってしまっていたため、面識はなかった。
「わたしはある程度、自由に動けます。いまも技術的な打ち合わせで、アーガマから、マークⅡでソドンに来ています。一緒に脱出してペズンへ!」
「2人だけで、か。ほかのリビングデッド師団の技術者やパイロットたちはどうする?」
「彼らにはまた別の機会を。」
そう言いながら、カーラの表情が歪んだ。
「ダリルたちは、戦いのとりこになってしまっている。
あのアンキーとかいう女の空手形を信じて……」
「わかった。いつ実行する?」
「いまです。ちょうど、高速機動をもつ可変機のパイロットたちは休息に入っています。
ソドンの位置は、艦隊の先頭。
脱出してしまえば、ペズンまでは一飛びです。」
「わかった。」
ジョッシュが頷くと同時に独房のドアがひらいた。
ソドンの廊下は薄暗く、人気もない。
「あなたが捕らえられてからもなんども攻撃があったのです。」
カーラが言った。
「被害は少ないとはいえ、みんな疲れ果てています。」
だろうな――と、ジョッシュは思った。これが数の暴力だ。
いくら単機ごとの戦闘力が高くても、補給や疲労といった部分で差はじりじりと出てくる。
2人は誰とも会わずにモビルスーツデッキにたどりついた。
発進準備が整っているのは、ガンダムマークⅡ一機のみ。
「ほかの機体はメンテナンスや補給のため、アルビオンとアーガマに収容されています。
いまなら、わたしたちを追える機体はありません。」
格納庫は与圧されていた。
カーラはふわりと身を踊らせる。コクピットは開いていた。
ジョッシュもあとに続く。
コクピットに座ったのはカーラだった。
「単座なので窮屈ですがしばらく後辛抱くださいね!」
「操縦は、きみがするのか。わたしが代わろうか? ガンダムマークⅡなら軽キャノンと大きな差はないはずだ……」
「これは特殊機体です。」
カーラは手をあげた。
指先から肘まで。
篭手が覆っている。
もう片方の手も。
「これなしでは操縦できません。」
「なんだい、それは。」
冷たい金属の輝きに不吉なものを感じながら、ジョッシュはなんとか空いたスペースに身体をねじ込んだ。
「リユース・P・デバイスの改良版とでもいうか……」
カーラは少し微笑んだ。
「もともと切断された手足の『かわり』をモビルスーツにさせるのが、リユース・P・デバイスですが、この篭手とブーツを移植する事で、ほぼ同じ効果をあげることが出来るのです。」
コクピットがとじて、周りが全周囲モニターに変わる。カタパルトがせり出し、ハッチがひらいた。
「すごい発明じゃないか!
ペズンにもどったらさっそくこいつを量産して……」
グン!
マークⅡが加速する。
「残念ながら。」
カーラを航路を定めながら言った。
「『移植』と言ったのは言い間違いではありません。この篭手とブーツは外科的な手術によってしか装着できません。」
「……手術!? い、痛そうだな。」
「痛いなんてもんではありません。
ですが、すべてことが終われば、また外すことも可能です。手足を切り落としてしまうよりはかなりマシでしょう。」
ソドンがみるみる小さくなって行く。
「き、切り落とす……いやリビングデッド師団はもともと四肢の一部を失った傷病兵のための部隊のはずだ。操縦性を高めるためにわざわざ手足を切り落とすなんてことが……」
さあ、どうでしょう。
カーラは呟いてさらにバーニヤをふかした。
白い流星となって。
マークⅡが宙を駆けていく。
ペズン攻略について、なんかアイデアがうかんだんですが、うーん、またふざけすぎと言われるかなあ……
タイトルは少しかえるかもしれません。