第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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小惑星ペズン。
誇りと理想と臆病さが絡み合うその場所で、
誰が引き金を引き、誰が最後まで引けずにいるのか。
戦いは、勝敗のために始まるのではない。
――取り返せないものを、失ったと知るためにひとは戦うのだ。





劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~ティータイム

アーガマの其処此処に、灯りが戻った。

 

「……マークⅡ発進確認。」

オペレーター席のコモリ少尉が声をひそめて言った。

 

「別に普通にしゃべっても大丈夫よ。」

国家元首にしてクランバトルのパイロット、アルテイシア・ソム・エドワウ・ダイクンはそう言って笑った。

「心配するよりはうまく言ったわね。

なにか飲み物を用意しましょう。これでひと息つけそうよ。」

 

「でもカーラさんが危険ですよ。」

天パの大人しそうな顔立ちの青年……『白い悪魔』アムロ・レイが抗議するように呟いだ。

 

「ペズン内部を探ること。できれば、もともとぺズンにいた技術者やムーンレイスたちを救出できないか、とこの案を持ち込んできたのは、カーラ自身だ。」

ランバ・ラルが言う。

「わしも聞いた時は驚いたが、少なくともニューディサイズはカーラを受け入れるだろう。もともとリビングデッド師団はペズンに世話になっていたわけだし、ひとりならともかく、ジョッシュ少尉という土産付きなら、なんの疑いももたないはずだ。」

 

つんつん。

アムロの服のはしをマチュが引っ張った。

 

「危険を承知でもカーラはそうしたかったんだよ。だからその考えを尊重してあげないと。ひとはいつだって自分の意志で未来を選択するんだからね。」

それからちょっと俯いて言った。

「……ってガンダムが言っている。」

 

「ココはどう思う?」

言ってることはわかるが、ガンダムに言わせてしまっては台無しだ。

アムロはブリッジのはじに座ったココ・シャロンに問いかけた。

 

「むこうは、わたしたちを下に見ているわ。パイロットくずれ。ショーで戦うふりをして日銭を稼ぐ無法者の集まり、と。

だから、そこから離脱者が出るのは、当然だと彼らは考えます。」

 

「発言を許可願えますか?」

エグザベが手を挙げた。

彼は正規のジオン公国軍人で、今回の作戦行動においては部外者であったが、そこまで丁寧にすることもないのに、とみんなは思った。

 

「かまわない。聞かせてください、エグザベ中尉。」

アルテイシアが言う。

エグザベは、敬礼して続けた。

 

「わたしはエイノー提督についてその人となりを調べた事があります。

たしかに、地球至上主義ではありますが、考え方は保守的で秩序と安寧を第一に行動します。また運用についても堅実であり、相手の実力を必要以上に低く見積もることはありえないかと。

たしかにここまでのニューディサイズの行動は、クラバパイロットの力を過小評価した力押しばかりですが、今後もそれが続くとは思えないのですが……」

 

「たぶん、地球から逃げたジャミトフたちがいいように牛耳ってるんだよ!」

マチュがきっぱりと言った。

「短絡的で考えなし。ティターンズの特徴がよく出てるよね?

行動が読み切れなくて怖いとこもあるけど、こっちの仕掛けには簡単に騙されてくれると思う。」

 

 

「少なくとも、カーラさんを受け入れるとこまではうまくいくってことか。」

アムロは悔しそうに言った。

「でも彼女をひとりで行かせたのは……」

 

「ひとりだからいいんだ。これで誰か連れて行ってみろ。確実にスパイを疑われる。」

 

ブリッジの真ん中に仁王立ちの白衣の女科学者が断言した。

 

「ニューディサイズに探りをいれるのは、カーラがひとりで動くのがベストだ。

それにジョッシュとガンダムマークⅡというお土産までつけてやったんだ。

まあ、個人的な安全を確保する意味なら、わたしが同行してやってもよかったんだが…」

 

「ムラサメ博士??」

 

「バスクのやつが、イズマコロニー襲撃でドゥーに大怪我をさせるまでは、ティターンズとムラサメ研究所はけっこうな蜜月関係にあってだ、な。」

眼鏡がキラリとひかり、唇を舐めた舌が、まるで飢えた肉食獣のようにブリッジの一堂には映った。

「わたしは、あのクソったれどもが手元に連れ去っているアン・ムラサメを取り返したい。

モビルスーツ戦で捕獲も考えたが、あのゼク・ツヴァイとかいう重モビルスーツを、パイロットを傷つけないように戦闘不能にするのはやっかいだ。

内側から働きかけてみたい気はある。」

 

「あなたが一緒に行った方が安全、という点は?」

 

「個人的な戦闘力の点だな。

わたしは自分で言うのもなんだが、ムラサメ研究所の強化人間の最高傑作でな。

破壊工作なんぞ、お手のものだ。」

 

「……」

 

「だが、わたしの立場上、ペズンで自由に行動できるまでにはそれなりに時間がかかるだろう。

だから、カーラを行かせるのがベターだし、ひとりで行かせるのがベストだと考えたわけだ。」

 

「しかし、ペズンのジオン技術者を戦いの巻き添えにならないよう、心配してやるような良識が、ムラサメ博士にもあったのですね?」

アルテイシアが皮肉そうに唇をつりあげた。

 

「いや、もし今後戦局がヤツらにとって悪化するようなら、ヤツらはペズンの技術者たちを人質にとるだろう。

ジオン公国の元首としては、それはあまり面白くないんじゃないか?」

 

エグザベが口を挟んだ。

「エイノー提督はそんなことをする人物とは思えませんが……」

 

カラカラとゼロ・ムラサメは笑った。

「場合によってはエイノーも人質にとるだろう。

わたしはね。ティターンズとの付き合いはけっこうながいんだよ!」

 

 

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ペズンはもともと資源採掘用に運ばれた小惑星である。

モビルスーツ開発のための研究所が置かれたのは、独立戦争時だったから、それなりに年月は経っているのだが、居住性はあまり考慮されていない。

 

ペズンの提案したモビルスーツの改良案は、結局のところ『赤い彗星』が奪取したガンダムの解析により、ゲルググ開発に取って代わられた。

以降、予算は削りに削られ、その中でも、研究員たちはなんとかモビルスーツ開発を続けたのだ。

 

居住性などは後回しである。

 

そうして開発されたゼク・アインを採用したいと、打診があったときには、彼らは歓喜の涙を流した。

相手が連邦軍だろうが知ったことか。

 

なにがなんでも我々の開発したモビルスーツに日の目を見せてやらねば、死んでも死にきれない。

だが、事態は彼らの予想を越え始めている。

 

エイノー提督からの打診では、ペズンはあくまで示威行為を行うのみ。

連邦からもジオンからも手を出しにくいそのポジションをもって、連邦の刷新を要求する。

ゆくゆくは月面都市群を第三勢力として立ち上げることで、地球→月面→ジオン、という三すくみの構造をつくり、人類の安寧をはかる。

 

だが、うまくいかない。

クランバトルなどという軍人ですらないバケモノの集団が介入したためである。

 

最新型のゼク・アインが次々と損傷し、こちら側からはロクな戦果が上げられない。

さらに、新たにペズンに加わったジャミトフやバスクは、月面から旧型機やハイザックを納入しはじめている。

 

ペズンの技術者たちにはあまり弁護するべき所はない。

己の技術に対し頑迷になるあまり、その磨き上げた戦力をテロリストに委ねることになったのだ。

だが、ほかで開発された武器が導入されることで、彼らのプライドもまた大きく傷ついていた。

 

 

--------------

 

 

 

データを受け取った白衣の初老の男は、そこに書かれた文字を食いいくるようにみつめた。

小惑星ペズンの居住区である。

基本は最小限のカプセル住居を組み合わせたような殺風景なつくりで正直なところ、居心地はあまりよくはない。

 

「なにをしけた顔をしてるんだね!?」

髪をひっつめた同じ年代の女科学者が背中をドヤしつけた。

学生のころからなので、いったい何年の付き合いになるのだろう。

モビルスーツの原型となった宇宙用の作業機。

人間を宇宙に適応させる人体強化。

それぞれの担当分野は違えども、ムラサメ研究所はふたりの知能と実績を欲した。

 

この分野では先駆けである彼も、彼女もまた歳をとった。

 

「ドゥー、トロワ、フォウが来ている。」

 

「ああ、」

女科学者は、ため息をついた。

白衣の上からエプロンをしている。

「まさかと思うが、ゼロも……?」

 

「トロワは命令さえ与えてやれば安定しているが、ドゥーとフォウは体調管理も含めて、調整役が必要だ。わたしらがムラサメを出てしまってる以上、それをはたせるのは、ゼロだけだろう。」

 

「機体は? サイコガンダムかね?」

 

「サイコガンダムを通常のモビルスーツにサイズダウンさせたサイコガンダムRとヘビーアームズだ。」

 

「ヘビーアームズは地上での基地制圧用に作られたモビルスーツのはずだよ?」

女科学者は指摘した。

「宇宙での対モビルスーツ戦闘には向かないはず。」

 

「トロワはサイコミュの遠隔操作は苦手だが、単純な戦闘力なら、あの子たちの中でもトップだろう。

基地を制圧するだけの火力を向けられて無事なモビルスーツが、いると思うかね?」

 

「……つまりはアンを取り返しにきたってことか。」

女化学者は、2階に上がる階段をみつめた。

そこに、彼女たちが本当の娘のように感じている強化人間アン・ムラサメがいる。

「ゼロの手元に置くておくのが不安で、ムラサメ研究所を出てみたが、こんな宇宙の果まで追ってくるとは、ね。」

 

「なんか難しい話をしてるのね、マリラ。」

赤い髪をおさげに編んだ少女が、ひょこりと階段から顔を覗かせた。

「わあ、いい匂い!」

 

「チェリーパイが焼けたとこさね。」

女科学者……マリラが微笑みを浮かべた。

「いっしょにお茶にしようじゃないか!」

 

 

 

 

 

 




アンは実はあんまり、ゼク・ツヴァイは好んでません。
サイコミュ搭載でファネルありが大好きです。
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