第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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戦場は、勝者と敗者だけを選ばない。
守るために立ち、守るために傷つき、守るべき者ほど、時に判断を誤る。
迫るソドンの危機がアルテイシアを試す――
目指すべきものは「英雄」か。
「指導者」か。
それとも別のなにかなのだろうか。






劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~ソドン防衛戦(後)

 

ロゼスパークル…正確には、それはココの乗る機体につけられた強化パーツの名称である。

オハ・デ・ミル・ペタロスは、そのパーツから無数の極めて薄い金属片を展開する武装のひとつである。

 

それは鋭利な刃物となって漂い、侵入するものを切断する。

最新の装甲材で武装したモビルスーツに致命傷を与えられるほどではない。

だが、例えば向かってくるミサイル程度ならば。

 

ゼク・アインのミサイルは、ただの一発もソドンに到達出来なかった。

 

金属片に切り裂かれて爆散していく。

その爆発が、ロゼスパークルをも飲み込んだ。

 

ゼク・アインの攻撃は充分に早く、オハ・デ・ミル・ペタロスは、花弁の展開に時間を要する。

フォウの突貫が作り出したゼク・アイン隊の隊列の乱れがそのためのわずかな時間を稼ぎだした。

 

たが充分な距離をもって、展開することまでは叶わなかったのだ。

 

コントロールを失ったロゼスパークルは、ソドンの甲板に叩きつけられた。

ソドンも大きく揺れる。

 

「お姉様っ!!」

「ココ!」

 

フォウのサイコガンダムRが。

ソムのレイダーが、ロゼスパークルを抱き起こした。

 

「ロゼスパークル応答なし!」

コモリ少尉が叫んだ。

「パイロット、意識を失っていると思われます。艦内に収容します。

サイコガンダムRとレイダーは、ソドンの護衛を。」

 

 

“ココは戦いをするひとではないんです。”

 

アムロの言った言葉が、アルテイシアの頭蓋を内側から叩いていた。

なんども、なんとも。

内側から揺さぶられて、彼女は吐き気を感じた。

 

ひととひととが分かり合える未来を。

サイコミュなしでの感応を。

 

合って間もないこの女性がどれだけの可能性をもっていたのか。

そしてそれは「死」というありふれた現象でいかに容易く失われてしまうものなのか。

 

 

“ココ! ココ!!”

アルテイシアは懸命に呼びかけた。

だが、彼女の感応力はそれほど高いものではない。

 

「レイダー!! サイコガンダムR!

ソドンを!」

 

 

ゼク・アイン隊は対艦ミサイル以外の武装をほとんどもっていない。

そして、ミサイル射出後は、ただちに当該空域を離脱するよう命令されていた。

ただ、彼らは兵士であり。

敵の旗艦が、反応薄く、直衛モビルスーツがこちらに背を向けているという状態を見過ごすことは出来なかった。

 

何機かは腕にマウントされた機銃を撃ちながら、ソドンへ殺到した。

 

「対空防御!」

ラシットは叫んだ。

だが、ソドンの対空砲火網は、迫り来るミサイルに照準をむけていた。

それをモビルスーツに切り替えるには、一瞬、対応が遅れた。

 

砲火は、ソドンに。

その甲板に叩きつけられて、動かないモビルスーツとそれを救助しようと、背を向けたモビルスーツに集中する。

 

その前に青いモビルスーツが立ちはだかった。

 

ランバ・ラルのリック・グフである。

掲げた盾が銃弾を遮る。

 

銃弾の雨は、甲板へ降り注いだ。

 

対艦ミサイルを撃ち尽くしたゼク・アインが、なおも機首をソドンへ向けて突っ込んでくる。

腕部機銃が火を噴き、弾丸が艦の装甲を叩く。何機か小型のビームガンを持っているものもいた。

 

「姫様! 後方へ!」

 

 

アルテイシアの行動は、しかし一瞬遅れた。

 

彼女の視界に映ったのは、ゼク・アインのビームガンの銃口――。

 

青い影が、滑り込んだ。

 

リック・グフが、無理な姿勢で割り込む。

盾は弾丸で削られズタズタだ。

そうでなくてももともとビーム兵器を受けられるようなコーティングはされていない。

 

一撃で、盾を貫いたビームはさらに、甲板に溶解孔を穿つ。

それでも、リック・グフはなお前に出た。

 

肩口から体当たりするように、ゼク・アインのバランスを崩し、ヒートサーベルが頭部を叩き割った。

 

「ラルっ!」

アルテイシアは叫んだ。

 

宇宙用にバーニヤを改修しているとはいえ、グフはもともと地上での運用を主体に設計されたモビルスーツだ。

装甲材も最新のものよりは劣る。

その機体を次々と、銃弾が抉っていく。

 

「早く……艦内へ!」

 

レイダーを押しのけるように前に出たリック・グフに、さらにビームガンをもったゼク・アインが迫る。

ビームの銃口が輝くのと、グフのヒートロッドが銃を跳ねあげるのは同時だった。

ビームは。

 

グフのコクピットと、その背後のレイダーを直撃するかわりに、わずかに角度をかえて、グフの肩口から頭部を破砕した。

 

武器を失いながらも、ゼク・アインはなおも接近する。

ビームガンを弾き飛ばされた右腕から、刃物が突き出している。

 

「滅!殺!!」

 

レイダーのハンマーが、腕ごとゼク・アインの半身をたたきつぶした。

大きく吹っ飛んだゼク・アインは、後方から接近する味方機も巻き込んで、宙を舞う

 

 

「ラルさん!!」 

 

フォウの叫びと同時に、サイコガンダムRのビームが走った。

ゼク・アインの一機が頭部が爆散し、残る機影が散開する。

 

 

「対空砲火、続けろ!」

 

ラシット艦長の命令で、ソドンの砲列が向きを変える。

今度は迷いがなかった。

 

砲火と、フォウの執拗な追撃。

もはや目的を果たせないと悟ったゼク・アイン隊は、次々に推進剤を噴かし、戦域を離脱していく。

 

破壊されたゼク・アインも、僚機が回収していったから、ここでもニューディサイズは「未帰還機ゼロ」を更新した。

 

 

戦場に、ようやく静寂が戻った。

 

 

リック・グフは、大破。

コクピットから担ぎ出されたランバ・ラルは、意識を失っていた。

 

 

 

-----------

 

 

消毒薬の匂いが、室内に満ちていた。

 

医務室のベッドに横たわるランバ・ラルは、その半身を医療カプセルの中においている。

 

それはつまり。

内蔵のいくつかが、機能できなくなり、機械がその代替を務めている――それだけの重傷であることを意味していた。

だがそれでも、目だけはしっかりと開いていた。

 

「……まだ生きております。」

 

ランバ・ラルは野太い笑みを浮かべた。

 

「もし、名誉の戦死をとげたのならその顔もよいですが、まだ生きている部下には如何なものかと。」

 

アルテイシアは、息を詰めたまま立っていた。言葉は、喉まで上がってきているのに、形にならない。

 

「……昔話をいたしましょうか。」

ランバ・ラルは優しく言った。

「姫のお父上、ジオン・ズム・ダイクンは実に素晴らしいお方でした。

あらゆる才に恵まれ……まあ、敵が多いのはしかたない。政治家とはそのようなものですからな。

だが、心酔するものもたくさんいた。

わたしの父であるジンバ・ラルやおそらくはザビ家のものたちもそうだったでしょう。」

 

「ザビ家が?」

 

「そうですな。デギンとは一時期は親友といってよい間柄だったときいておりますぞ。

ですが、ジオン・ズム・ダイクンは頭がよかった。よすぎた。才能に恵まれすぎていた。ひとが見えるものの二歩も三歩も先が見え、それに基づいて、誰にも相談せずに行動してしまう……」

 

「……」

 

「当時のサイド3には、自治権を拡大し、それに伴い経済力、軍事力を拡張。他のコロニーと連携し、最終的には戦争によって連邦を宇宙から排除する……そういった計画があったはずです。ですが父上はそれを飛び越えた。ニュータイプ論……あれが、一種の選民思想として連邦政府に受け止められたと聞いて驚かれますか?」

 

「いえ……」

アルテイシアは少し考えて答えた。

「ジオン・ズム・ダイクンにそのような意図がなかったとしてもそう受け止められかねない思想ではあったかと思います。」

 

「そう。そして彼は自分の思想にあまりにも素直に行動しはじめた。議会は政策を論じる場所ではなく、ニュータイプの定義と人類の進化を見直す宗教論争の場となってしまった。」

 

ランバ・ラルはかるく咳払いをした。

 

「ザビ家は……あれで実務には長けた家柄なのですよ。一刻もはやく次年度の軍備拡張ための予算案を通したいのに、首席の演説はニュータイプ論ばかりだ。」

 

「だから……父を殺した、と?」

 

 

「ほかにも要因はあったかと思われます。

ですが、あのときのジオン・ズム・ダイクン閣下は、勝手に動き回るやっかいな御輿になってしまっていたのは間違いありません。

そして、盟友の謀殺という過激な手段を行ってしまったからこそ、その後のザビ家の歴史が血にまみれたものになった。」

 

「……わたしに同じ轍を踏むな、と。

大人しく担がれている御輿になれと?」

 

「そうは申しません。ですが、どうもお父上、それからお兄上を見ていると、あまりに自分の才を過信して、周りを置いてけぼりにする癖がお有りのようですな。」

 

「……」

 

「姫様。

あなたは元首としてはいささか果断にすぎますな。ですが、元首の行動は結果責任です。まずは及第点でしょう。

そして、ひとりのモビルスーツパイロットとしての腕前。これはおそらく現時点でトップクラスのひとりではあるかと。」

 

「そ、それは、ありがとう。」

 

「ですが現場の戦闘指揮官としては、最低ですな。僚機の負傷に狼狽えて、母艦の防衛はおろか、自身の身を守ることまで放棄してしまうとは」

 

アルテイシアは仮面を被ったような無表情になったが、これは彼女が内心激しく動揺していることを意味していた。

 

「ひとは全てにおいて万能ではありません。たとえ、ニュータイプであってもです。」

ランバ・ラルは目を閉じた。

「信頼できる者を作りなさい。それを“部下”と呼ぶか“友”と呼ぶかそれとも別の形をとるのかは好きにされるといい。

ですが、ひとはひとりではいられないのです。

あなたの不得意なことを任せられる者。

あなたの得意なことをあけすけに自慢できる者をぜひおそばに。」

 

なぜかそのときアルテイシアの脳裏には、あの気弱そうな天パの青年の面影が浮かんだのだ。

 

 

 

 

 






「アムロ、わたしだ。」
「と、とうさん?」
「ガンダムの強化パーツを送ったぞ。円盤状のユニットに棒状のビットを装填した。ドラグーンシルエットと名付けた。」
「……な、なんかラスボスっぽい気が……」
「それとクワトロ大尉の百式だがな、ビームを100%反射する特殊コーティングをためそうとおもうのだが」
「なんかやめといたほうがいい気がする……」
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