第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ランバ・ラルの負傷に動揺が広がる。
ヤザン。
アンキー。
ムラサメ。
そしてアルテイシア。
それぞれが打開策をもとめて動き出す。






劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~M.A.V.

褐色の肌に、猛禽の目をした男は深く静かに怒っていた。

ヤザン・ゲーブル。

もと連邦軍バイロット。“エース殺し”と呼ばれてた。

味方にすると厄介だが、敵に回せば死神。

 

その男が黙りこくっている。

 

「ソドンが、ゼク・アイン隊を発見してから戦闘終了までの時間はわずかなもんでした。」

アポリーが言った。

「アーガマから、同時に飛び出したとしても、戦闘は終わっちまってます。」

 

ロベルトも続けた。

「バンボラ……いや、ランバ・ラル閣下は、かなりまずいようですね。本当は、グラナダあたりのでかい病院の集中治療室に入るんでしょうが、本人がソドンを動こうとしないそうです。

リック・グフは……大破。」

 

「……マッシュのほうはどうなんだ?」

ぽつりとヤザンは言った。

 

「マッシュさんは、軽傷っていえば軽傷ですが、手首を骨折してるんで、戦線復帰は難しいですね。ドムは中破判定です。ちゃんとした工場なら修理できるんでしょうが、ここでは。」

 

「押し込まれる……な。」

ヤザンは、自分を押さえつけながら言った。

「負けちゃあいねえ。だが、押されてる。

戦いが数だってのは、ある面正しいんだ。

特にむこうは、工廠も技術者も内部に抱えている要塞基地だ。補給を絶ったのが効いてくるには、まだ時間がかかる。」

 

 

「いい読みだよねえ。」

開けっ放しになっていた休憩室のドアをノックしたのは、白衣の科学者、ゼロ・ムラサメだ。

「力が欲しければ、手を貸すよ?

いまなら、手術代は安くしておく。」

 

「強化人間か! てめえの評判はこっちも把握してんだげどな。」

 

「世間の噂なんてアテにはならないよ。」

長身でグラマラス。ヤザンの妄想を現し身にしたような女。

だが、まったくそそられるところがない。

まるで、ニンゲンでないものが、ニンゲンのマネをしているようにヤザンには思えるのだ。

「なにしろわたしは『失敗しない』んだからね。」

 

「そういうあんたが失敗作だろう?」

 

あとから続いて休憩室にはいってきたのはアンキーだった。

 

「違いない。」

ムラサメ博士はカラカラと笑った。

「わたしはなんでもできる。万能の天才なんだが、なぜかモビルスーツの操縦がからきしなんだ。だが、わたしは“ゼロ”であってわたしの作品ではないぞ。」

 

「戯れ言に付き合ってるヒマはねえ。」

ヤザンは栄養ドリンクのカップを握りつぶした。

「ハンブラビのメンテが終わり次第、俺たちはソドンに戻るぜ。」

 

「それはもう少し時間がかかる。」

 

「ソドンが襲われてるんだ。負傷者も出てる。手が足りねえはずだ。」

 

「それについちゃあ、いくつか手を打ってる。」

アンキーが言った。

「まず、このムラサメ博士がお招きを受けて、近々、ペズンへ訪問されることになっている。

内部工作要員ってことだな。」

 

「なんでそんな……」

 

「リユース・P・デバイスを生身の手足に埋め込むための手術をするっていうフレコミだ。

このまえ、カーラを亡命させたのに続く小細工ってことだな。」

 

「だがそれも時間がかかるだろう?」

ヤザンの目が獰猛な光を帯びた。

「こっちには負傷者も出てる。数時間後にはまたニューディサイズの攻撃があるかもしれねえ。」

 

「それについてはいささか、ルール違反になるが、ぜひこの戦いに参加したいという者たちを新たにわたしのクランに登録したよ。」

アンキーは手元のデバイスを、ヤザンに差し出した。

 

ヤザンの目が大きく見開かれる。

 

「おい……これは」

 

「まあ、正規の軍人は参加してもらっちゃあこまるっていったんは断ったんだがね。

それなら、軍を辞めると、さ。」

 

そこに並んだ名前は……

 

ハマーン・カーン。

シーマ・ガラハウ。

シャリア・ブル。

 

「まあ、ソム・エドワウが、アルテイシア様であることは、ニューディサイズにも知られているようだしね。」

 

名簿はまだ続いていている。

さすがのヤザンも眉間に皺を寄せていた。

 

「……カミーユ・ビダン。ジュドー・アーシタ。

こいつらは未成年どころかまだガキだろう?」

 

「グランバトルのジュニア部門を設立するつもりなんだ。未来のスターのブロモーションも兼ねている。」

 

「これは見世物でも試合でもねえ。戦いだぞ?」

 

「クランバトルだよ、ヤザンのダンナ。」

アンキーはヤザンが鼻白むほどの邪悪な笑みを浮かべた。

「わたしははっきりそう言ってる。

むこうは、ずいぶんと反則をしかけてくれるけど、まあ今回の興行はこっちが主催でむこうは、ヒールだからそれもいいだろう。」

目がギラギラと輝いている。

 

「そこまで、クランバトルに拘るのか?

おまえの考えは聞いたよ。『戦争』の代わりに代表を持ち寄っての『クランバトル』で政治的な決着をつける筋道を作りたいんだろう?

まあ、面白い考えだとは思う。

結局は腕尽くで相手に言うことをきかせるにせよ、戦いの巻き添えはすくねえ方が寝覚めはいい。

だが――そこまで拘って戦いそのものを不利にするなのは正常じゃねえぞ?」

 

「あんたには理解できるはずもないかな、ヤザン・ゲーブル。」

アンキーは呟いた。

「これが人間の価値判断の極み――どんな大義よりも深く、理想よりも熱いもの。

――金だよ。」

 

悪魔かおまえは!!

 

ヤザンは罵った。

リストにはまだ名前の続きがあった。

 

「こいつらも未成年……しかも女か!」

ヤザンは呆れたように言った。

「ファ・ユイリイ? ルー・ルカ?

なにものだ?」

 

「わたしも、よく分からない。二人とも、グリーンノアのテム先生のところで働いてる。」

アンキーは肩をすくめた。

「テム先生の新型が間に合えば、輸送パイロットとしてこっちにやってくる予定だ。

せっかくなんでクランバトルのジュニア部門にエントリーさせてもらったんだ。」

 

 

 

------------

 

 

ランバ・ラルの意識はしっかりしてたが、これはよいことではない。

重傷を負ったラルの身体は休息を必要としているはずで、休息とはイコール睡眠だ。

 

マチュと一緒に早々に病室をでたところで、セイラさんに呼び止められた――いや、セイラ・マスではない。

アルテイシア・ソム・エドワウ・ダイクンだ。

 

流石に疲れた表情だった。

 

「だいぶ、疲れてるみたいね。」

と、アルテイシアは自分からそう言った。

 

「セイラさ……アルテイシア様こそ。」

「話しにくいわ、ソム・エドワウでいい。」

「はい、ソム・エドワウ……さん。」

 

アルテイシアはため息をついた。

 

「それでいいわ。

……いまのいままで、ドレンとやり合ってたの。」

 

一介のクラバパイロットのフリをするなら、艦隊総司令官とやりあってはダメだろう、とアムロは思った。

 

「今回のことはドレンにもショックだったみたい。グワジン級を含む正規艦隊を要請すると言い張るのをとめるのは大変だった……!」

 

「それはダメだよ!」

マチュが、口を挟んだ。

「ダメ……ですよ。」

と言い直したのは育ちがよいからだろう。

 

「なぜダメだと思う?」

アルテイシアの声は驚くほど優しい。

 

「そりゃあ。

ジオン公国軍が動けば、ニューディサイズはひとたまりもないでしょう。

でもそうしたら、ニューディサイズがまるで大義のために散った英雄みたいになるじゃないですか。あいつらを絶対に悲劇のヒーローにしてはダメなんです。」

 

「ぼくもマチュの意見に賛成です。」

アムロも言った。

「アンキーさんのクランバトル演説のおかげで、奴らがいくら大袈裟に、自分たちの正義を訴えても、それは試合のための煽り文句くらいにしか受け止められない。

奴らは道化のまま、破滅させるべきです。

同じようなことを繰り返そうとする者がもうでないように。」

 

なるほど。

アルテイシアは、心の中で感嘆のため息をついた。

 

「……しかし、今回の戦闘でわたしたちの弱点もはっきりしたわ。

少数精鋭のわたしたちは、あいつらの『波状攻撃』に弱い。

タイムラグをつけられて、次々と攻撃を繰り出されると手が回らなくなる。」

 

「隊列を変えましょう。」

アムロはきっぱりと言った。

「アーガマを先頭に。

アルビオン、ソドン、アレキサンドリアの順に隊列を組みます。」

 

「無茶を言わないで、アムロ。

アーガマは、武装してないのよ?」

やはり軍事的なことは、素人か、とアルテイシアは思ったがそうではなかった。

 

「アーガマは確かに武装はありませんが、『大佐』とニャアン、それにドゥーとトロワがいます。

無視も出来ないけど、戦力も割きづらい。極めて嫌な立ち位置にあります。」

 

アムロは手元からタブレットを取り出すと、陣形を表示させた。

 

「奴らは引き続き、ソドンを目標に攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。

そのとき、ソドンの前方にいるアルビオンが攻撃隊を先に捕捉して、直衛のバーニング隊をすみやかに展開させられます。

今回のように補助ブースターや追加プロペラントタンクを装備して、迂回攻撃しようとしても、後方のアレキサンドリアには狙撃手として優秀なダリルがいます。」

 

「あ、ああ……」

 

「そうだ。それに、アンキーに言ってドローンを早期警戒用に出させようよ!」

マチュが言った。

 

「ドローン?」

 

「“試合”の中継用のドローンです。」

アムロが説明した。

「いままでの戦闘もぜんぶ、『クランバトル』というていで、賭けの対象になってたんですよ。

戦闘そのものも有料のコンテンツとして配信されててます。」

 

さすがにアルテイシアも憮然とした。

「そんなものなの?」

 

「そんなものなんです。当然、ぼくらはクランバトルの選手ですからしっかり配当も振り込まれてるはずですよ。

……あのドローンを早期警戒用にバラまくのはいいな。

それだけ広範囲にばら撒くと回収不能になるからアンキーさんはいい顔はしないと思うけど」

 

「あのね、アムロ。」

何かを決意したように、アルテイシアが言った。

 

「なんですか、ソムさん?」

 

「わたしとM.A.V.になって!!」

 

 

 

 

 




小説版のアムロとセイラ再び!?
アムロにとっては災難でしかないか。
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