マチュ以外はそれぞれいろいろ打算があるので、モテてるようでもアムロ、被害者です。
アムロの呆然とした表情をみて、アルテイシアも補足の説明が必要だと感じたのだろう。
「ランバ・ラルから、わたしの前線での指揮能力について指摘をされたの。」
確かに指摘されても当然かもしれない。
まだ詳しくレポートを見ている時間はなかったが、相手のゼク・アイン隊は、対艦ミサイル攻撃に特化した部隊だったときいている。
そしてミサイルそのものは、ココの兵器で無効化された。
その時点でソドンは勝利していたはずだ。
失神したココのロゼスパークルを除いても、レイダーとサイコガンダムRが防衛行動に移れば、機数は多くてもゼク・アインはそのまま退いた可能性が高い。
仮に戦闘になっても、時間が長引けば、アムロやマチュたちも戻ってこれる。
だが、現実には、ココの失神という事態にソムとフォウはパニックを起こしてしまい、そのこと自体がゼク・アイン隊の追撃を誘発した。
「……だからわたしと一緒に出撃して、一緒に戦って、わたしの動きをアドバイスしてくれる人を傍に置きたいのです。」
「間違ってますよ、ソムさん。」
アムロは、英明なクセになにもわかってない国家元首に言い返した。
「そもそもあなたがモビルスーツに乗って前線に出る必要はないんです。
もっとほかにやるべき事があるのだから、そちらに集中すべきであって、前線指揮官として有能である必要はない。
ランバ・ラルさんが言ったのはそういう意味だと思います。」
呆然としたのは、今度はアルテイシアの方だった。
「そ……そういえば、そうね。」
「ですから。もしどうしてもモビルスーツで、前線に出たいのなら、護衛小隊を連れてください。そうすれば実際の指揮は小隊長がとるでしょう。
ヤザンさんがハンブラビを三機一組で運用するようにしたのもそのためでしょう?」
アムロとしては間違ったことは言っていないつもりだった。
そしてその意味は、間違いなくアルテイシアの心に届いている。
だがアルテイシアは、アムロの手をしっかりと握りしめた。
ウひぇ
とマチュが変な声を出した。
「アムロ!」
アルテイシアはまっすぐにアムロを見つめた。
「あらためて、お願いします。わたしのM.A.V.はあなたしかいない。」
「ち、ちょっと考えさせてください。」
「……そ、そうね。」
さすがに、感情の昂りに気恥ずかしくなったのか、アルテイシアはすぐに手を離しれくれた。
「考えておいて。」
「はい、そうします……あの、ココの見舞いに行きたいので」
「あ、ああ、わかったわ。」
アルテイシアは微笑んで、一歩退いた。
「ヘルマコングロマリットのモビルスーツのコクピット周りの安全性は、たいしたものね。
ココは大丈夫よ。ショックで一時気を失っただけみたい。診断も問題なしよ。
一応、ベッドにはいるけどね。」
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アルテイシアの視線を背中に感じながら、アムロはエレベーターに乗った。
マチュが、顔を見あげてくる。
頬がすこし赤らんでいた。
「……どうするの、天パ?」
「うーん。
腕前は申し分ないと思うし、アグレッシブな性格もクラバには悪くない思う。
ただ、今後のクランバトルことを考えると、なにしろジオンの代表だからね。そんなにしょっちゅう試合は組めないだろうし。ぼくは学費を稼がなくちゃならないから。
ふだんはマチュにM.A.V.をお願い出来るかな。」
見上げるマチュの視線が迫力あるジト目に変わっている。
「あのね、天パ。
M.A.V.ってそういう意味じゃないの!」
「え?」
アムロによほどいらいらがつのったか、マチュはアムロの脇腹に肘を入れてきた。
けっこう痛い。
「あれはもっと、そのパートナー的な意味よ。
どうですか、モテモテ天パさん。国家元首に愛を告白された気分は!?」
理不尽!!
反射的にアムロが思ったのはそのひとことだった。
自分がそれほど恵まれた青春を送っていたとは思わない。
父の転勤に従ってサイド7で学校に通っていたが、そこではけっこう部屋に閉じこもって、プログラムや機械いじりをしていたような記憶がある。
同じブロックに住む医学生の金髪の美女に憧れていたが、挨拶以上の会話をした覚えはなかった。
終戦後は、モビルスーツの開発を続ける父とともに何ヶ所か研究所を転々とした。
最終的に、トアールコロニーに工廠を構えてからも資金繰りのために、クランバトルに出場するはめになり。
「それで、クランバトルではトップオブトップの“白い悪魔”。でもって憧れの金髪さんから愛の告白をされたんだから充分、報われたでしょう?」
アムロの視界の片隅に“キラキラ”が見える。
マチュと感応しているのだ。
いくら美少女相手でも、自分の記憶にまで踏み込まれるのは愉快ではなかった。
「……たしかに、単純にクラバの試合のパートナーのことだと判断したのはぼくの早とちりだけど、あれは別に愛の告白じゃあないよ。
もっと、その、相談相手、側近、というか。
そういう立場になって欲しいってことだと思う。」
わかってないなあ。
と、マチュはため息をついた。
「それで、どうするの? モテモテ天パ。」
「モテモテじゃないって!
……うん、断るかな。そんな重要な立場に着いたらもう機械いじりもできそうもない。
とりあえずは、戦いが終わったからジオン工科大学に進学だ!」
「ふふん!
そしたら同期だからね。先輩ヅラはさせないから。」
理不尽だな。とアムロは思った。先輩風なんて吹かせたことないのに。
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ココ・シャロン。
いや、ララァ・スンはベッドから身を起こしていた。
顔色はあまり良くはない。
それでもアムロとマチュをみて、微笑んで見せる余裕はあった。
「フォウは?」
彼女を『お姉様』として刷り込みされている強化人間のことをマチュが尋ねた。
「鎮静剤を打って寝かせてるわ。あの子のほうがダメージが大きかったみたい。」
「無茶をしないでください。」
アムロはやっとそれだけを言った。
「あなたは戦いをするひとではない。」
「なにもかも思う通りにはいかないわ。人間はそんなに便利なものじゃない。
たとえ、ニュータイプであってもね。
あなたたちこそ休まなくて大丈夫?」
「わたしは部屋に帰る。ララァさんの無事な顔を見たら、眠くなってきた。」
マチュが目をこすった。
「天パは?」
「ぼくは大丈夫だ。もし……」
「なら、少しわたしの夢の話、しましょうか?」
ララァ・スンがクスリと笑った。
マチュは、先にララァの部屋を出た。
そのまま、少し小走りに通路を走った。
自室に向かうエレベーターに乗ってから、その壁に小柄な体を預けた。
俯いて、手で顔を覆う。
「……わたし、なにやってんだろう……」
低いつぶやきは、嗚咽にも似ていた。
二次創作なんで勝手にカップリングを楽しむのはアリだと思いつつ。
セイラさんとアムロは小説版。
ララァとアムロはファースト本編でかっつりありましたが、マチュとアムロはどんなものなんだろ。