第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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まだこの物語りの中では、アムロとマチュたちは出会ってもいないわけで、一方で奪われた試作機も追っかけなきゃいかん。
(浜辺でバーベキューなんかしてる場合ではなかった!)
なので、またキャラクターを投入です。 0085時点では1回も登場してない方だったと思いますが、まだまだお元気なようです。


第14話 白い悪魔~宇宙の邂逅

ドレン少佐は、ブリッジで、難しい顔で報告書を一読した。

新造艦、それも最新のソドン級改良型の艦長を仰せつかるというのは、軍人冥利につきるのだが、案の定、さっそくろくでもない案件がついてきた。

 

壺キツネ野郎が!

と、ドレンはマ・クベを心の中で罵った。

 

もちろんそんなことはまったく態度にはみせない。

 

ドレンは一年戦争からの叩き上げだ。

軍縮のさなかでもとうとう予備役に入れられることもなく、今日まで第一線を続けている。

 

艦を指揮しても艦隊を運用させても一流。

そして「有能だが腹に一物ある上官」に仕えさせたら超一流だと、そう軍令部からは評価されている。

 

緊張の面持ち三名を前に、軽く顎を引いてみせる。

「ソドン級最新鋭艦アルビオンへの到着を歓迎する。わたしが艦長のドレンだ。」

 

「トリントン基地所属コウ・ウラキ少尉であります!」

「同じくチャック・キースです。」

「ガンダム試作機開発チームのニナ・パープルトンです。」

 

ジオン軍も懐事情は厳しい。

ザクを民間に払い下げするほどだが、連邦軍に比べればマシだ。

とはいえ、ジオン公国軍に所属しようという連邦出身の兵やまして士官などはけっして多くは無い。

兵は多くの場合、故郷を戦火に巻き込まないためにその命をかけるものであって、故郷を敵にまわすのはいくら職に困っても二の足を踏む。

 

コウとキース。

トリントンでテストパイロットをしていた彼らは数少ない例外だ。

 

「ああ…楽にしてもらっていい。シャトルでの旅はご苦労だった。

アルビオンはもちろん大気圏内突入と再離脱のできる艦ではあるのだが、肝心の目標がすでに軌道上にあがってしまっているのでな。」

 

「申し訳ありません…」

 

「いや、きみたちを責めているわけではない。

報告書によれば、アナベル・ガトー少佐は諸君から試作機1号機ゼフィランサスを受領すべきところを『うっかり誤って』試作2号機サイサリスを持ち出してしまった。

それを取り返そうとしたトリントンの守備隊と受領のために地球におりたリリー・マルレーン所属の海兵隊との間で、『誤解に基づく小競り合い』があったそうだが、双方モビルスーツの軽微な損傷のみで人員に被害はなかった、と。」

 

はあ。

と、コウ・ウラキ少尉がなんとも納得のいってない顔で答えた。

 

「リリー・マルレーンはその後、カリフォルニア基地で大気圏内脱出用のブースターを受領。宇宙に登り、現在、デラーズ閣下と合流すべく、移動中…という訳だ。

当艦の任務は、リリー・マルレーンが暗礁空域に戻る前に接触し、サイサリスを取り戻すことにある。」

 

「ドレン…閣下」

コウが強ばった顔で言った。

「こちらの戦力は? 我々がシャトルで持参したのはゼフィランサスと軽キャノン改の2機のみです。」

 

「コウ・ウラキ少尉。」

ドレンはクソ真面目な顔で言った。

「なにを勘違いしている? 我々はそもそもガトー殿が誤って持ち出したサイサリスを回収し、当初の予定であったゼフィランサスを渡して差し上げるだけだ。

なにかそこに戦闘が発生するかね?

それとも元連邦のパイロットとしては、かのソロモンの悪夢と一戦交えてみたいのかな?」

 

「い、いえ。そんなことは。しかし、サイサリスは」

 

「うむ。単機で艦隊に大打撃を与えうる特殊な武器をもつモビルスーツだ。そんなものをデラーズ閣下が手に入れようとしていたのなら実に問題だが。」

 

「しかし、現実に」

 

「現実にサイサリスはそのバズーカと攻撃に不可欠な盾を地上に置いていっている。

あくまで受け取りにトリントンに来訪したガトー少佐のミスであって、デラーズ閣下に不穏な意図はない、とのマ・クベ中将のご判断だ。」

 

三人は顔を見合わせた。

 

「まあ、現場にいたきみたちの判断は少し違うと思うが。」

ドレンは言い訳するように言った。

「ジオン公国としてはここで友軍同士が相討つような状況はさけたいのだ。

デラーズ・フリートを追い詰めればいずれそうなる。

そうなれば連邦の宇宙への再進出を阻むものはいなくなる。

スペースノイドは再び、連邦のくびきにつながれ、圧政にあえぐことになるだろう。」

 

「わかりました。」

ニナが突然そう言い出したので、コウは驚いたようにその顔を覗き込んだ。

 

「わかったって…ニナ。政治だかなんだか知らないけど、ドレン艦長の言ってることはめちゃくちゃだ。ガトーはバズーカと盾ももって」

 

「でもバズーカと盾は地上においていってるわ。」

 

それはクワトロ大尉やマチュたちの追撃の結果であって、ガトーはフル装備のままサイサリスを持ち出し、そのまま宇宙へ上がろうとしていた。

 

「まあそこはいろいろ意見もあるのだろう。」

ドレンは穏やかに言った。艦長の言うことに少尉ごときが文句をつける――それだけで営倉入りは確実だったがドレンは辛抱が必要なときは実に辛抱強い。

「だが、くりかえしになるがジオンはこれ以上戦力を無駄に消耗させることは避けたいのだよ。」

 

------------

 

疾い。

 

クリスチーナ・マッケンジーは舌をまいている。

 

白いガンダムもどきは――それがもし試作機としてつくられ、ジオンの赤い彗星によって奪われたあのガンダムを性能においても模しているのなら。

クリスのアレックスがそれに劣るはずはない。

 

アレックスはニュータイプ用に設計されたモビルスーツだ。

クリスはそのテストパイロットとしてあるコロニーで勤務していた。

 

撃たれずに撃つ。

当てられずに当てる。

設計思想はそういったものであったが、装甲面でもけっして本来のガンダムにひけをとるものではない。

 

これがあくまでエキシビションマッチであるという性格上、ビームライフルは装備していない。主武装は両腕に内蔵された90mmのガトリングとなる。

だが、それはアレックスにとって不利な条件にはならない。

 

敗戦後、彼女は軍を除隊していた。

地球に戻り、アナハイム・エレクトロニクスでテストパイロットとして勤務している。

予算は潤沢ではなく、テストに回される機体は軽キャノンの改修機程度であったが、もともと技術者でもあったクリスにはむいた仕事ではあった。

 

開発基地の撤収に立ち会った若いジオン兵とは、その後地球で再会し(コソ泥と間違えたクリスがいきなりぶん殴るという出会いではあったが)あれやこれやあったあといまは結婚していた。

 

しかし。

 

クリスが宇宙空間での戦闘はほとんどシミュレーターだよりだった事を差し引いても。

 

クランバトルのチャンピオンとはこれほどのものなのか。

 

アレックスはあらゆる面で、最初のガンダムを凌駕しているはずだった。

 

強いて言うならば、その反応速度をあまりにも早めたためにその操作性があまりにもピーキーなものになったことか。

 

実際にテストパイロットをつとめたことがあるクリスでさえ、その性能を100%引き出しているとはいえないのだ。

 

本物をスペックダウンさせたとしか思えない。

その白いガンダムもどきの手が、背嚢のサーベルの柄を掴む。

 

反射的に回避行動にうつったアレックスを。

 

ガッ!

ガッガッガッガッガッガッ!

 

本物と同じく頭部に備えられたバルカン砲の弾丸が、アレックスの装甲に跳ね返る。

頭部のバルカン程度ではアレックスには致命傷にはならない。

 

 

だが、いやまて!

まってくれ!

 

おまえはたしかに、ビームサーベルを掴むまえにそれを撃っていたよな。

なにもない虚空にむかって。

その弾道に、回避行動に移ったアレックスがちょうど来るように、わたしをコントロールしたっていうの!!

 

しかもそれはほんの片手間になされた事だった。

 

白いガンダムもどきがいまやっているのは。

 

「うわあああっ!!!」

 

ドゥーのハイザックがマシンガンをばら撒く。

狙いは正確だ。

だが、カミーユとかいう少年のザク改は、それをかわしていく。

 

もともとハイザックは、ザクの外観を持ちながらビームライフルが使えるモビルスーツとして誕生した。

だが、今回はエキシビションマッチということで、ビームライフルはオミットされている。

 

カミーユ少年のザク改は、バックパックユニットを装備している。

そこには、おそらくビーム兵器やミサイルポッドなどをマウントできるのだろう。

だがこちらもいまの武器はザクマシンガン。

 

つまり、武器は互角である。

 

 

それに対して「ガンダムもどき」のパイロットは。

 

「ドゥー! 攻撃が雑だ。弾をばらまけばいいというものではない!

相手の動く方向を先読みするんだ!」

 

「…」

 

「カミーユ! 踏み込みがたりない!

いいか! 弾幕のなかは一種の安全地帯だ。それ以外の攻撃は飛んでこないんだからな!」

 

「…」

 

一般通信回線を開いてコーチをはじめていた。

 

 

 

--------------

 

 

運営室で見物人をしているアンキーの唇が引き攣る。

コメカミに青筋が浮かんでいた。

テム工廠のガンダムが、エキシビションマッチそっちのけで大会優勝者と準優勝者にモビルスーツ戦闘のレクチャーを始めている。

これではもう試合にならない。

 

それはつまりアンキーが胴元としておこなった賭けが成立しなくなったことを意味していた。

 

勝ち負けがどっちに転ぼうが、儲かるのが胴元という立場だ。

 

だが試合そのものが成り立たなくなれば、それは賭け金を全額返金せざるを得ない。

つまり経費分、カネバン有限公司の持ち出しとならざるをえないのだ。

 

 

----------------

 

 

“弾が……”

アレックスの90mmガトリングは、対モビルスーツに限定するならば、主兵装である。威力も、弾数も、十分に用意されている。腕そのものに取り付けられているため、取り回しもいい。

 

ビームライフルが使えないエキシビジョンマッチでは、最高の武装のはずだった。

 

それが弾薬切れを起こすまで撃ちまくって、当たらない。

 

……めまいがした。

 

カミーユ機を追いかけ回しているドゥーのハイザックも同様みたいだった。

モビルスーツが「疲れる」なんてありうるのだろうか。

人間と兵器は違う。

だが、持てる兵器を使い果たし、帰投のための推進剤も怪しくなってきたとき。

それは「疲れた」と表現するしかないのだろう。

 

ハイザックの機体にはダメージらしいダメージはない。

カミーユの攻撃はクリスからみても「腰が引けた」ものだったし、正確ではあったものの「背中にも目をつける」という白いガンダムもどきのパイロットの助言をかなり正確にドゥーは実行できていた。

先読み射撃だって行っている。

 

だがカミーユの回避行動がそれを上回っているだけだ。

 

もうひとつのアドバイス。

「弾幕の中はけっこう安全」はどちらも実行していない。

そんな馬鹿なとクリスは思うのだ。

 

だが、それに近いことをこのガンダムもどきは実行してみせていた。

 

――これはとんでもない拾い物になるかも。

 

各陣営、そこから資金提供をうけた各社ではいま、単騎で大隊を相手に出来る超高性能のモビルスーツ開発に奔走している。

そしてそれを使いこなせるパイロットも、だ。

 

ニュータイプはほとんどジオンに囲い込まれてしまっている。

強化人間はまだまだ実験段階であったし、人道にもとる。

 

もしこの白いガンダムもどきのパイロットがまだ見出されていないニュータイプならば。

 

ためさせてもらうわね!

 

ドンッ!

 

振動がコクピットを揺るがせた。

アレックスはその追加装甲をパージする。

 

「カミーユくん、ドゥー、下がりなさい。ここからは大人の時間です。」

 




常識人のアムロはこのときキラキラ空間を「変な幻聴が聞こえる」としか認識でしておりません。なので普通に通信回線を開いてカミーユとドゥに指示しております。
次回、エキシビションマッチ決着です!
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