第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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エアーズ目がけて発射した攻撃隊。
阻止しなければ、月面都市エアーズは毒ガス攻撃に晒される!
数で圧倒的に劣るクランに残された道は!!





劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~エンドゲーム2

アーガマは、アルテイシアの指示により、縦列を組んだ艦隊の先頭をまかされている。

 

連邦軍が久々に竣工させた宇宙艦であり、条約に基づいて、艦そのものの武装はほとんどない。

だが探知そのほかの性能は、ソドンよりも上かもしれない。

 

 

低い電子音が、ブリッジのざわめきを切り裂いた。

 

「ドローンからのデータ、来ました!」

 

オペレーターを務めるエマの声に、艦橋の空気が一瞬で引き締まる。

投影された立体映像には、ニューディサイズの部隊が映し出されていた。

 

「移動方向からみて、目標は月面都市エアーズと思われます!」

 

「……新型のゼク・アインはいないが、数が多いな。しかし、ロクな武装がないとはいえ、エアーズは二千万都市だ。

モビルスーツ隊だけ送り込んで、制圧というのも難しいが……」

 

クワトロが腕を組む。

機影の編成そのものは異常ではない。

増設のプロペラントタンクは、長距離の移動を考えれば納得がいく。

だが――

 

「大尉! あの装備は!」

 

カミーユが一歩前に出る。

彼の視線は、機体が曳航している巨大なボンベに釘付けになっていた。

 

「この形状……弾薬でも増槽でもない。散布型です」。

 

沈黙。

 

「……毒ガス、か? まさかな?」

 

クワトロの呟いた言葉が、艦橋に落ちた。

 

クワトロは目を細める。

 

ティターンズ。

ジャミトフ・ハイマン。

バスク・オム。

合理性の名の下で、躊躇なく一線を越える。

 

「エアーズに毒ガスを使う気か……」

「おれが出ますよ! Zガンダムなら、やつらに追いつける!」

 

ジュドーが言った。

 

「相手は数が多いぞ。Zガンダム一機では無理だ。可変機を動員しなければ。

わたしの百式、ヤザン隊のハンブラビ。あとはソドンのレイダー、か。」

 

「それだけの戦力を割いてしまえば、本隊が手数になる。」

アーガマ艦長のヘンケンが口を挟んだ。

モビルスーツの戦闘指揮官であるブライトも頷く。

「実際にはそれでも、数が足りません。加速力だけなら、アレキサンドリアのフルバーニアンとディープストライカーも投入したほうが。」

 

「ディープストライカーはダメだよ。」

アンキーが言った。

「武器が強力すぎる。一撃でモビルスーツを爆散させてしまうから、クラバのルールを逸脱しちまう。」

 

こんなときに、それを言うか!?

 

一同は冷たい視線を送った。

 

「偵察ドローンのことはまだやつらに知られてないはずです。」

ブライトの口調は冷静だった。

「しかし、それを抜きにしても、わざとこちらの探知に掛かるようにして移動を開始している。やつらの目的そのものが、我々の戦力の分断を目標としていることは間違いありません。」

 

「新型機がこぞって出撃した隙をついて、総攻撃を仕掛けてくるか――」

 

言葉は続かなかった。

言わなくても、全員が理解していた。

 

ペズン本体との決戦を控えた今、戦力の分散は致命的だ。

可変機、エースパイロット、補給。

どれひとつ欠けても、勝敗は一気に傾く。

 

クワトロは、静かに息を吐いた。

 

「……まだ確定ではない。だが」

 

視線を上げる。

 

「見過ごすわけにもいかんな」

 

その声に、迷いはあった。

だが、逃げ道はなかった。

 

「月面に連絡を取りたい。

それとZガンダムと百式の発進準備を進めてくれ。」

 

「おい、クワトロの旦那。俺たちはどうすんだい? ハンブラビは確かに可変機でも長距離航行に特化した機体じゃないが……」

 

「そこまで戦力を割いてしまっては、次にくる本隊の攻撃をしのぎ切ることが不可能になる。きみたちは、アーガマに待機だ。」

 

 

-------------

 

一方、ソドン艦内でも混乱が巻き起こっていた。

 

 

「アーガマからの情報です。ペズンから発進のモビルスーツ群。映像きます!」

 

アルテイシアは黙って見つめていた。

軽キャノン改が14機、ザクが8機。

大部隊、と言って良い。

だが、異様なのはそれらが曳航している一つ一つがモビルスーツほどの大きさのあるボンベだった。

 

「毒ガス散布装置の可能性、九割以上……」

 

コモリ少尉の報告が、やけに遠く聞こえる。

 

「エアーズ攻撃を陽動に使うつもりでしょう。

我々が守ろうとすれば、主力が分断される。」

ラシットが言った。

「もっとも成功したらしたで、ニューディサイズがどんな組織か、宇宙中に喧伝できる。

ジオンにとって不利になることはひとつもありません。」

 

理屈は、痛いほどわかっている。

多くの民間人が犠牲になる可能性が高いが、その責任はニューディサイズ、ないしはニューディサイズを生み出した連邦軍のものだ。

それは外交上のアドバンテージとなり、帰属を巡っていまも交渉が続く、要衝地の幾つかをジオンは獲得することが出来るだろう。

 

一方、ここで動けば――

ペズンで待つ本命に、致命的な隙を晒す。

 

アルテイシアは、思わず拳を握りしめた。

 

(また、選ばされるのか)

 

誰を守るのか。

何を捨てるのか。

 

ランバ・ラルの言葉が、胸の奥で蘇る。

 

――「指揮官とは、選び続ける者だ。」

 

「……少数部隊を出せば?」

 

エグザベ中尉が控えめに提案する。

 

アルテイシアは、首を横に振った。

 

「可変機でなければ追いついて、戦闘して、帰ってくることは出来ない。」

 

「アーガマのクワトロ大尉に出動要請をいたしましょうか?

しかし、いかにクワトロ大尉といえども百式一機では……」

 

なるほど。

 

ふとその光景を思い浮かべたアルテイシアである。

旧型機によってたかってなぶり殺しにされるか。 そういう最期も。あのオトコには。

いや。違うな。

あいつは、この手で脳天をぶち割られるべきなのだ。

 

彼女は立ち上がり、艦外の星々を見つめる。

 

わたしはやはり指揮官には向いていないのか。

 

答えは、きっと同じだ。

だからこそ、苦しい。

 

相談役であるランバ・ラルはまだ病床にある。

彼の言葉がふと過ぎった。

 

――ひとはひとりではいられないのです。

あなたの不得意なことを任せられる者をお傍に作ってください。

 

「……アムロをブリッジへ。」

 

 

わたしが指揮官として無能であるならば、戦闘指揮はほかのものに任せればいい。

アルテイシアはそう判断し、軍人でもなければ、そもそも戦うことが苦手な青年をブリッジに招いた。

 

アムロ・レイはほどなく現れた。

いつもの少女、マチュを連れている。

 

「状況はデバイスに送った通りよ。」

アルテイシアは、きびきびと言った。

「ニューディサイズのやろうとしていることを挫き、しかもこちらの戦力も減らさない道はあると思う、アムロ?」

 

「……っていうか、なんでわたしたちばっかり戦わないといけないんですか?」

マチュがジト目で言った。

それを聞いて、怒り出すような偏屈さは、アルテイシアにはない。

とは言え、わずかに苛立ったのも事実だ。

 

「ニューディサイズは地球連邦の反乱軍よ。」

丁寧に説明するつもりで、アルテイシアは言った。

「本来、地球連邦が鎮圧すべき案件だわ。でも休戦協定によって、連邦軍は宇宙での戦力ををほとんど保有できなくなっている。

ジオン軍もイオマグヌッソ事変で大打撃を受けているから、連邦の内紛に戦力を割きたくない。

だからこうしてクランがニューディサイズ鎮圧に乗り出してるということなの。」

 

「それはつまり、ペズン討伐の話ですよね?」

アムロが言う。

 

「正確には“討伐”ですらない。行われているのは、クラン選抜チームとニューディサイズによるクランバトルであって」

口を挟みかけたアンキーに、ああ、もう分かりましたからいいです、とアムロは切り捨てて、続けた。

 

「今回はペズンをどうこうする話じゃありません。月面都市が襲われようとしてるんです。

あそこは、自治権はあっても名目上は、ジオン管理下ですよね。」

 

は?

 

アルテイシアの目が点になった。

 

「グラナダのジオン駐留軍に防衛させればいいだけの話では?」

 

「い、いや。名目はそうであっても、エアーズをはじめ今回、ニューディサイズ支援を行った月面都市は地球連邦よりの考えをもっている。

それが、ニューディサイズに攻撃されたからといって、ジオンが防衛部隊を派遣するのは、まるで恩を押し売りしているかのようであって……」

アルテイシアは唇を噛み締めた。

「今後、各月面都市とジオンの関係が大幅に改善されてしまう!

わかるか、アムロ。それがどういうことか!」

 

「どういうことです?」

 

「ジオン公国の月面への影響力が一段と増すということだ。覇権国家としてジオンはいっそう安定してしまう!!」

 

アルテイシアはコンソールに手をついた。

息が荒い。頬が紅潮していた。

 

「……アルビオンのドレン司令に連絡。

マ・クベ中将へ、エアーズ防衛のために戦力を出すよう要請を行なう。」

 

 

--------------

 

 

アーガマのカタパルトが開いた。

金色の機体がその姿を現す。

 

「月面のどこの誰と連絡してたんです?」

反対側のカタパルトですでに発進準備を完了させていたジュドーが尋ねた。

 

「内緒だ。だがいい返事をもらった、とだけ言っておこう。」

 

「秘密主義なんだな! 赤い彗星!」

 

「いまのわたしはクワトロ・バジーナだ。それ以上でもそれ以下でも」

 

「行くぞ! Zガンダム!!」

 

若いものはひとの言うことを聞かない。

すぐに手が出るし。

ボヤきながら、クワトロは叫んだ。

 

「クワトロ・バジーナ! 百式、出る!」

 

 

 

 

 




ニューディサイズ22機

百式、Zガンダム 2機

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