第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ぺズンでは、元ジオンの技術者たちが反乱を起こそうとしていた。
巻き込まれるカーラ。
一方、ゼロ・ムラサメとエイノーもまた行動を起こす!!




劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~エンドゲーム7

ペズン司令部は、このときある意味浮き足立っていた。

高揚感に包まれていた、と言ってもよい。

 

「クランのモビルスーツと交戦状態に入った、だと?」

 

ジャミトフ・ハイマンは、目を閉じたまま報告をきいた、

その声には驚きも緊張もない。あるのは確認作業の退屈さだけだ、とでも言うように。

 

「はい。本隊は可変機3機と交戦中。

アーガマに向かったコッド大尉の部隊も敵の新型2機と戦闘には入りました。」

 

「ふん……」

ジャミトフは鼻を鳴らした。

「なにもかも予定通りだな。問題はない」

 

その隣で、バスク・オムは腕を組み、モニターを睨んでいる。

彼の口元には、獰猛な笑みが浮かんでいた。

 

「クランの寄せ集めどもめ。

本当の軍隊の本気というものを見せてやる。こちらは五十だ。向こうはせいぜい十数機だろうが。」

 

「戦いは数だ。」

ジャミトフはようやく視線を上げた。

「たしか、ドズル・ザビの言葉だったな。彼は数を確保できずにソロモンを落とされたが、我々は違う。

今回は、質もこちらが上だ。ぺズンが開発したゼク・アイン、ゼク・ツヴァイの機体は、彼らの想定をはるかに超えている」

 

――負ける。

 

その可能性は、二人の思考から完全に抜け落ちていた。

 

そのときだった。

 

警報ではない。

控えめな通信ランプが、司令卓の一角で点灯した。

 

「……何か?」

 

オペレーターが一瞬、言葉に詰まる。

「ぺズン内部からの報告です。 元々ぺズンに所属していた、ジオン系技術者たちが……」

 

「ほう?」

 

バスクが口を歪めた。

 

「反乱、とのことです」

 

一瞬の沈黙。

次いで、バスクが大声で笑った。

 

「はっ! 反乱だと? 技術屋どもが?」

 

「はい、これ以上はニューディサイズに従わない、と。

補修作業をボイコットして旧倉庫に立てこもっております。」

 

「ただのストライキか。放っておけ。」

ジャミトフは冷淡に切り捨てようとしたが、バスクが身を乗り出した。

 

「作業を放棄して、要求を突きつけてくるなど、クセになってはいけませんな。

折檻してやらんと。」

 

ジャミトフが頷くのを見て、バスクは顎で命じた。

 

「小隊を回して持ち場に戻らせろ。 抵抗するようなら、見せしめに二、三人撃て」

 

「了解であります!」

 

通信が切れる。

 

司令部には、再び「安寧」が戻った。

 

------------

 

――10数分後。

通常はあまり使われることのない倉庫の下層区画。

 

簡単に制圧を完了するつもりだった小隊は、手をこまねいている。

リベットを打ち出す「銃」。

金属切断用のトーチ。

作業用のプチモビル。

 

武器ともいえない武器で、抵抗する技術者たちに、倉庫から逃げ出した小隊は、バリケードに囲まれた技術者たちとにらみ合いを続けていた。

 

「いい加減にせんか!」

小隊長が叫んだ。

「これ以上抵抗するようなら、こちらも実弾を使うぞ。

いや……正式に反逆と見なし掃討に入る。」

 

「だから反乱だと言っとるだろう?」

古株の技術者が、叫び返した。

「というかテロリストに反逆者よばわりされるつもりはないわい。おまえらがぺズンから出ていけ。」

 

隊長の顔が赤く染った。

こんな簡単にキレるようでは、軍人として以前に人間としてどうなのだと思われるのだが、もともとパイロットとしてそれなりの腕をもったティターンズはみな出撃してしまっている。

残ったのは、過激思想にカブれて連邦軍にも居づらくなったクズばかりだった。

 

「攻撃開始……何人か殺しても構わんと指示が出ている。撃ち殺せ!」

 

バリケードの隅から、女性が立ち上がった。

 

「お、おお、あんたはカーラ……か。おまえもジャミトフ閣下に楯突くのか?」

 

ガチャリ。

ゆっくりと踏み出すその脚には金属のブーツで覆われている。

その両腕も。

 

ドン!

 

カーラは床を蹴りつけた。

 

重力床が悲鳴を上げた。

床材が、拳で殴られたように陥没する。

 

「――っ!?」

小隊の誰かが息を呑むより早く、

カーラの身体は前にあった。

人間の踏み込みではない。スラスターを兼ねたブーツが、短く、しかし鋭く火を噴いたのだ。

「な――」

言葉は続かなかった。

カーラの拳が。

隊列の先頭にいた兵士の胸部装甲に突き刺さる。

ドゴン!

 

音は、銃声ではない。

 

重機が壁に激突したような鈍い衝撃。

兵士は周りの仲間を巻き込んで、そのまま後方へ吹き飛び、コンテナに叩きつけられて失神した。

 

 

「な、なんだこいつは!?」

「あの篭手は、ブーツはモビルスーツ操縦用のデバイスじゃなかったのか!」

 

カーラは答えない。

ガントレットの外装が展開し、内部の駆動音が低く唸る。

彼女は軽く腕を振った。

それだけで、

銃を構えていた兵士が、横から殴り倒される。

 

「うわっ――!」

床を転がる兵士の上を、カーラは躊躇なく踏み越えた。

 

慌てて銃口を持ち上げる兵士。

 

ブーツの裏が光る。

次の瞬間、

彼女は天井近くまで跳躍していた。

「撃て! 撃てぇ!!」

銃口が火を噴く。

 

――だが。

カーラは空中で身体を捻り、さらに天井を蹴りつけ、銃弾をかわした。

そのまま、着地。

 

ドン!

今度は蹴り。

ブーツの先端が、

兵士のライフルごと腹部を貫いた。

吹き飛ばされた兵士が、

他の二人を巻き込んで倒れる。

倉庫に、静寂が落ちた。

残った兵士たちは、

銃を構えたまま、誰も引き金を引けない。

 

「……言ったはずだ」

カーラが、低く言った。

「これは反乱だと」

彼女は一歩、前に出る。

「ストライキでも、交渉でもない。」

ガントレットが再び唸る。

「排除する側が、排除されるだけだ」

 

誰かが、武器を落とした。

次いで、もう一人。

そして――逃げた。

カーラは追わない。

彼女は振り返り、バリケードの中にいる技術者たちを見た。

「……やりすぎたでしょうか?」

 

古株の技術者が、苦笑する。

「いや、ちょうどいい」

「やっと“戦争”になっただけだ。俺たちの独立戦争ってわけだな。」

 

カーラは、壁に備えられたモニターを操作した。

 

ベットに横たわったエイノー提督とゼロ・ムラサメが、映し出される。

 

「ムラサメ博士。ぺズンの皆さんの協力を得られました。いまジャミトフの一個小隊を蹴散らしたところです。」

 

「それはいいな。よくやってくれた、カーラ。」

意外にもそう言ったのは、エイノー提督の方だった。

「きみたちはそのまま、メンテナンス工場のほうを制圧できるか?

わたしとムラサメ博士は、このまま司令室を制圧する。」

 

「提督!!」

カーラが喘ぐように言った。

「正直その……提督がそのように乗り気になっていただけるとは!!」

 

「戦いは機をみることが重要なんだ。

時には歩く前に走ることが必要なようにな。」

そのとき。

遠くから、低く長い振動が伝わってきた。

倉庫の壁が、わずかに軋む。

 

「来たようだな。これはディープストライカーだ。」

ゼロは楽しそうに言った。

「今度は援護のモビルスーツはないから、武装やハッチは尽く破壊できるな。

では、わたしたちは、司令室に向かうとしよう。」

 

「気をつけてください。

ティターンズは、ぺズン内部にいくつもゲートを設けて、なかを自由に行き来させないようにしています。」

 

「そのためのコイツだろう?」

エイノーは金属のガントレットを持ち上げてみせた。

 

 

------------

 

 

「この前のモビルアーマーかっ!」

バスクは叫んだ。

戦艦の主砲に勝るメガ粒子砲法を備えたモビルスーツそのものをパーツの一部に組み込んだような機体は、ぺズンの対空砲火を次々と沈黙させていく。

「モビルスーツを出せ! やつは小回りが効かん、モビルスーツで蹴散らすのだ。」

 

「バスク少佐。」

副官のひとりが恐る恐る言った。

「モビルスーツはすべて、クランを攻撃するために出撃しております。」

 

「焦るな、バスク。」

ジャミトフが低い声を出した。

「ぺズンは小惑星だ。

中枢ブロックは厚い岩盤が守ってくれる。外殻の設備をいくら破壊されようが、我々は耐えればいい。

クランの艦隊を平らげたモビルスーツ隊が戻ってくるまでの辛抱だ。」

 

「ジャミトフ閣下……やつは、モビルスーツの発着デッキを破壊しております!

第三、第八……第十六……こ、これは」

 

「単なる嫌がらせに過ぎん。」

ジャミトフはジロリと通信兵を睨んだ。

「モビルスーツは専用ハッチがなければ発着できないというものでもない。

収容に多少の時間はかかろうが、そのときにはもう敵はいないのだ。」

 

「ジャミトフ閣下!」

 

「今度はなんだっ!!」

 

「エイノー提督が面会を希望されております。」

 

「どういうことだ……手術が終わっても、1週間は動けぬはずでは……?」

 

「いま、68番ゲートでお止めしている状態です。」

 

ジャミトフとバスクは顔を見合せた。

一応、「まだ」ニューディサイズのトップはエイノー提督だ。

そして、彼にはまだ利用価値はある。あるかもしれない。

万が一、この蜂起が失敗に終わったときに全責任をとって、処刑台にたつか……あるいは自害してもらうという役目が!

 

「取り抑えろ。」

バスクははっきりと言った。

「取り押さえて、拘束しておけ。殺してはならんが、武器の使用は許可する。」

 

 

68番ゲート前。

 

隔壁などはない。ただ、エイノーが目的を告げたとたんにわらわらと二十名ほどの兵がやって来た。

 

「なぜ、わたしに銃口を向ける?」

静かにエイノーは尋ねた。

 

「ここであなたを拘束せよ、との命令です。」

守備兵のひとりが、残忍そうな笑顔をみせた。

「ちなみに、これは電気ショックを与える矢を射出する特殊銃です。

死にはしませんが……かなり、痛いですよ。」

 

「そうか。大人しく病室に戻れ、ですらなく、いきなりそうくるか。」

エイノーは首を傾げた。

「まったく。ティターンズは尽く予想を裏切ってくれる。まさかここまで人間が愚かになるわけもないと考えている、平然とその斜め下をついてくる。」

 

「いま戦闘中です。あまりお喋りをしている時間はないので」

先頭にたった守備兵は、あっさりと引き金をひいた。

 

カン!

 

乾いた金属音がなった。

放った矢は、エイノーが腕に嵌めた金属の篭手が跳ね返した。

 

続いて向けた手のひらから、衝撃派が、発生し、二人の兵士が吹っ飛んで壁に叩きつけられる。

 

「それでよいよ、提督。」

ゼロが鼻で笑う。

「むこうが殺さないと言っているのに、こちらが殺してしまってはあんたみたいな真面目な軍人は寝覚めが悪いだろう。」

 

「なにかまだ私に利用価値を見出してくれているのだろう。」

エイノーは静かに言った。

「例えば、私を逮捕して見せて、ジオンに投降するとかな。」

 

「やつらは地球至上主義者だったのでは?」

 

「だから予想を、裏切って斜め下の行動をとるといっただろう?」

エイノーが1歩踏み出すと、兵士たちは一歩下がった。

「執拗にソドンを攻撃するのも、ジャミトフがギレン派の残党辺りと繋がっていたからだとしてもいまさら驚かんよ。」

 

そのエイノーを庇うようにゼロ・ムラサメが前に出る。

白衣のポケットに手を入れたまま。

浮かべる笑みは、蠱惑的でもあり、残忍そうでもあった。

 

「博士! きみはガントレットとブーツもない。後ろに下がっていたまえ。」

合図もなく、兵が動いた。

 

エイノーのガントレットは分厚く、大きく、矢が跳ね返されてしまう可能性が高い。

だがこの女は生身だ。

美しく若い女に一方的に苦痛を与えることに、彼らは躊躇しなかった。

複数の矢が、ゼロのしなやかな流線を描く身体に発射された。

次の瞬間。

 

矢を身体に突き立てて、のたうち回っていたのは兵士たちの方だった。

 

「な、なんなんだ!」

 

兵士は顔を狙った。必殺の矢は人間には視認できない速度で、ゼロの整った顔に。

その矢がピタリと止まる。

 

眼球から5ミリのところで、矢はゼロの人差し指と中指に挟み止められていた。

 

手首のスナップだけで、投げ返した矢の速度はあるいは銃の初速を上回っていたか。

肩に矢を突き立てた兵士は、電気ショックで痙攣し、地面に倒れた。

 

「わたしにとってボウガンの矢など止まっている棒に等しい。」

 

またゼロが前に出る。

兵士たちが下がる。

 

「そっちは提督を殺さない。こっちもそっちに殺意がないうちは殺さない。」

嬉しそうにゼロ・ムラサメは手を打った。

「なるほど、これはクラバルールってことだ。」

 

エイノーは僅かに腰を落とした。

ブーツの推進器をオンにする。

 

その身体が打ち出されるように兵士たちに突っ込んだ。

ガントレットが兵士をなぎ倒す。

 

ゼロ・ムラサメはゆっくりとステップを踏むように、隊列の乱れた兵士たちの群れに紛れ込む。

 

手刀が。拳が。膝が。脚が。

 

一撃で兵士たちを昏倒させる。

 

「ば、バケモノが」

銃が効かないとわかった兵士は、ナイフを取り出した。

 

「あれ? あんたは少しはやるのかい?」

 

「俺は銃よりこっちが得意でな。かつて所属していた陸戦隊ピンクベレーでは500人をこのナイフで始末した。」

 

「どうせ、抵抗できない捕虜とか民間人だろう?」

 

男の顔が朱に染まる。

「全身の血を噴きだして死ねえっ!」

 

男のナイフはあまりの高速に数十本にぶれて見えた。

そしてその一撃は、ゼロの腹部に突き刺さる。

 

「ハラワタを掻き回してやる……」

 

舌なめずりをした男は呆然とした。

ナイフは。

確かに、ゼロの腹に浅く刺さっている。

だが、動かない。いくら力を込めても、推すことも引くことも切ることも叶わなかった。

 

「わたしを倒すつもりならこんな玩具ではダメだな。」

 

ゆっくりと。

手が伸びる。

男の頭をマニキュアで鮮やかに染められた指が鷲掴みにした。

 

「あ、が、かがががっ!」

 

万力で締めあげられる苦痛に、男はナイフを捨てて、両手でゼロの細腕を掴んだ。

 

なんの効果もない!!

爪は皮膚を食い破り、頭蓋にくいこんだ。

 

「ムラサメ博士。」

一通り、兵士を失神させたエイノーが、ガントレットを打ち鳴らして尋ねた。

「一応、この戦いはクランバトルのルールに従って行われているのではなかったかね。」

 

「それはそうなんだが、提督。」

痙攣をはじめた男の体を、片手でぶら下げながら、ゼロ・ムラサメは言った。

「たしか、クラバのルールでは頭部破壊は反則にならなかったはずなのだが。」

 

じょろろろろ。

 

男の股間にシミが広がる。

 

うわ、ばっちい

と言いながら、ゼロは男の頭を地面に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 




次回は、月面都市かな。
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