第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ニューディサイズに反旗を翻した月面都市エアーズに、モビルスーツ隊が迫る。
少ない戦力をかき集めたエアーズは、絶望的な防衛戦に身を投じるしか無かった。






劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~月の裏側

ジョッシュ・オフショーは、月面に降り立った。

 

 

部下に命じて、増設のプロペラントタンクを切り離す。

 

このあと、戦闘を行ってぺズンまで戻ることは難しいだろう。

6分の1とはいえ、月の重力圏を離脱せねばならないのだ。

 

エアーズは一国に匹敵する大都市だ。

モビルスーツだけでは、制圧することは無理だ。

やれることは殺りくと破壊を振りまくだけ。

 

当初の指示だった毒ガスは、クランの可変機の攻撃で失ってしまったが、それはむしろ有難かった。

 

「エアーズ市へ告ぐ。」

ジョッシュ・オフショーは一般回線を通じて語りかけた。

「こちらはニューデイサイズモビルスーツ大隊ジョッシュ・オフショー少尉である。

速やかなる降伏を要求する。

従わない時は、武力をもって制圧することになる。」

 

エアーズ市はもともと。軍事拠点ではない。

ジオン独立戦争中は他の多くの月面都市と同様に中立を保っている。

だがその心情、政治姿勢は連邦よりだ。

場所は月面の裏側。

つまり、頭上に地球の姿は拝めず、地理的にはジオンに近い位置にある。

 

居住ドーム、工業ブロック、交通軌道――

人が生きている都市だ。

軍は持たないが、保安隊があり、払下げのザクを運用している。

だが、今回のニューデイサイズの蜂起にいち早く賛同する形で支援を表明したエアーズは、保安隊のザクの一部をベズンに差し出している。

もちろんこれだけの大都市だ。

 

クランバトルこそ厳しく取り締まっていたが、民間でもザクや軽キャノンはそれなりに保有していたようなのだが、エアーズはそれらを買い上げて、これもぺズンに寄付してしまっていた。

言わば、ニューデイサイズに、全財産を一点がけしたような状態である。

 

それをジオンの元首が自らひっくり返した。

 

結果、エアーズは、自分たちが供与したザクや軽キャノンによって攻撃されている。

 

「ジョッシュ・オフショー少尉。

こちらはエアーズ保安隊だ。」

若い男の声ですぐ返答があった。

「きみたちの要求を聞き入れることはできない。」

 

「我々は裏切り者には容赦しない。攻撃を始めれば多くの市民の血が流れることになる。」

 

「無理だな、少尉。エアーズはすでに正式にジオンの庇護下にはいった。

グラナダからの増援も到着している。」

 

「隊長。」

部下のひとりが、モビルスーツを寄せてきた。

「前方に展開のエアーズ守備部隊を確認しました。ザク7機。ゲルググが3機います。

たぶんこいつらがグラナダからの援軍です……それと、ハイザックが1機。

先日、アナハイムから納品途中に鹵獲されたものと思われます。」

 

「22対11か……」

 

保安隊の練度がどの程度かはわからぬが、少なくとも正規軍のそれを上回っているとは思えなかった。ならばあとは数の暴力がものを言う。

 

「きみたちの戦力は把握している。

無駄な犠牲を出したくはない。宙港ハッチを開いて、我々をシティに入れるんだ。」

 

「ほう?」

相手が面白そうに笑ったので、ジョッシュは思わず怒鳴り返した。

 

「なにがおかしい!」

 

「いや、ティターンズくずれにもまともな思考の出来るものがいるのだな、と感心しただけだ。

確かに宇宙空港は市の要だ。そこを抑えることで、市を制圧したと言える。

しかも、それだけなら、一般市民に被害は出ない。きみたちもぺズンからの増援をゆっくりと待てるわけだ。」

 

「……」

たしかに。

そのつもりで、ジョッシュはしゃべっていた。

 

バスクが意図したように懲罰的な意味で市街地を破壊するなど愚の骨頂だ。

なんの意味もないばかりか、いつかはモビルスーツの弾も推進剤も切れる。

 

「あ、あなたはなにものだ!?」

 

「臨時に保安隊の指揮を任されたニューヤーク市のエッシェンバッハという。」

 

エッシェンバッハ?

自らも名門の出身であるジョッシュはその名を知っていた。

 

たしか、イセリナという娘がいて、戦後婿をとった。その名は……。

 

「ガ、ガルマ・ザビ!!」

 

「その名は捨てたのだよ。あまりにも悪名が高すぎてね。」

相手は言った。

たぶんジョッシュと歳はそんなに違わないはずだ。

だが、ひとの上に立つものの威厳と落ち着きを備えた声だった。

 

落ち着いた物言い、言葉を選ぶ間、声の張り。

そして、いち早く軍を、ザビ家を見限った決断力。

 

(……噂どおりだな)

 

「そのあなたが、なぜエアーズ市の保安隊の指揮をとっている?」

 

「パイロットが足りなかったのでね。」

ガルマ――いや、エッシェンバッハは淡々と答えた。

「この街には平和に暮らす二千万の市民がいるのだ。その街がテロリストに襲われてたのだ。自分にできることがあれば、やる。」

 

「英雄気取りで、市民を危険に晒すつもりですか?」

ジョッシュは、あえて冷たく言った。

「あなたが一歩引けば、この戦いは起きずに済む。黙って宙港とその周りの施設を明け渡していただきたい。それで、被害はおこらない。」

 

一瞬、沈黙。

 

だが、ガルマはすぐに答えた。

 

「それは違うな、少尉」

声は静かだったが、芯があった。

「ここでなにもせずに引けばこの街は“抵抗しなかった街”として、いずれ、別の誰かに蹂躙される。」

 

ジョッシュは、反論できなかった。

テロリスト。確かにいかに理想を掲げようが、いや己の理想のために暴力をよくするものはたしかにそう呼ばれても仕方ないだろう。

実際、つい先日、ニューデイサイズは、エアーズ市を訪れたジオンのアルテイシア元を逮捕するよう求め、これを拒否しようとしたエアーズをハイザックで襲おうとした。

 

「……だがあなたは、勝てない」

それでも言わずにはいられなかった。

「戦力差は明らかだ。

あなたが守ろうとしているものは、

あなた自身と部下の死で終わる可能性が高い」

 

「それでもだ。」

ガルマは、迷いなく言った。

「守る意思を示さねば、守られる価値すら残らない」

 

ジョッシュは、視線を落とした。

 

(……くそ)

 

正論だった。

そして、士官学校時代にの自分が、エイノーから教わった言葉でもあった。

 

「少尉。」

ガルマが、少しだけ声色を変える。

「きみは、降伏を呼びかけた。

それだけで、あなたがバスクとは違う人間だと分かる。

きみたちこそ、降伏しないか?

そのまま、撤退を……と言いたいところだが、ぺズンに帰る燃料もないのだろう?」

 

ジョッシュは、苦く笑った。

「高い評価を、、光栄に思います。

ですが……我々にも戦うものとしてこの意地がある。」

 

「ならば――」

ガルマは、はっきりと言った。

「行動でそれを証明したまえ。」

 

通信が切れる。

 

ジョッシュは、しばらく動けなかった。

 

月面の静寂の中で、

エアーズ市の外壁が、ゆっくりと視界に広がる。

 

「……全隊、前進。」

やがて、彼は命じた。

「目標、エアーズ保安部モビルスーツ部隊。エアーズ市そのものへの直撃は避けろ。」

 

部下たちが、ざわいたがそれは賛同の響きが多かった。

部下たちは、もともとエイノーとともに、ぺズンに渡ってきたものが多かった。

ジョッシュとガルマ・エッシェンバッハの会話に感じるところがあったのだろう。

 

「隊長?」

 

「命令だ。」

ジョッシュは、苦い決意とともに続ける。

「我々は、命令通りエアーズを制圧する。

だが、市街地への損傷は最小限に抑える。」

 

そのときだった。

ザクマシンガンと思われる火線が頭上を走る。

続いて、ビームの光条が。

 

「出来ればエッシェンバッハ氏は生け捕りにしたい。」

 

その上擦った射撃を見て、ジョッシュは苦笑する。

なるほど。

志は立派でも兵の質が噛み合っていないのは、むこうも同じか。

 

 

同じくガルマ・エッシェンバッハも苦笑を浮かべた。

彼の部下たち、つまりエアーズの保安隊である程度、モビルスーツの操縦ができ、自分たちの市を戦火から守ろうとした若者たちの練度はその程度のものでしかなかったのだ。

 

かつて。

独立戦争時。

コロニー落としによる早期終戦に失敗したジオン公国は、学徒動員を計画したことがある。

だが、「万全の訓練を行った」と主張する副官に、彼の姉はこう言い放った。

 

「動きが鈍い。」

 

副官(たしかトワニングといった)は取りなすように反論した。

 

「しかし、彼らの救国の志は……」

 

「気持ちはわかるが戦果だけが全てなのでな。これでは脆すぎる。」

 

いろいろと問題点は多い姉だったが、少なくとも、ギレン兄や「戦いは数」と主張してやまないドズル兄よりは現実が見えていた……

 

「各員、回避行動に移れ。」

エッシェンバッハは命じた。

「動いていれば、そうそう直撃は受けるものではない。

モビルスーツを狙おうとはせず、前進を妨げるように射撃を行え。

粘れば、新たな援軍も来る。」

 

それは本当だった。

グラナダは休暇中の兵を出頭させ、新たな部隊の発信準備をすすめている。

だがそれが到着するのは、数時間後になるだろう。

 

それまで、ここを持たせられるとは彼も思っていなかった。

 

だが。

 

「高熱源体、急速接近!」

ゲルググのパイロットが叫んだ。彼らはエアーズ保安隊ではなく、グラナダ所属の正規のジオン軍だ。さすがにその行動は手馴れたものだった。

「モビルスーツ……いえ、モビルアーマーです! 型式は……MA-06。

ヴァル・ヴァロです!!」

 

 

 

 




もちろん、パイロットはあの人です。リユース・P・デバイスつきなので、隻腕のハンデもほとんどないです。
しかもヴァルヴァロは月面特化型のモビルアーマーです。
クワトロ大尉がクラバオーナールートから、とガトーさんも応援を依頼してたみたいですね。
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