数の暴力が、クランたちを追い詰めていく。
ヤザンが。ダリルが。
ココが。フォウが。
絶望の戦いに挑む。
イオ・フレミングは、ここまで温存しておいたミサイルを全弾発射した。
しかし────ゼク・アインは見事な機動でそれをかわし、あるいは迎撃しながら、ソドンへ向かう。
抜かれたか!
ヤザンは心の中で叫んだ。
その落胆が一瞬の油断となったのかもしれない。
ガンガンガンっ!
戦場に残っていた敵のザクの放ったマシンガンを浴びる。
ハンブラビの装甲はなんとか耐えた……だがノーダメージではない。
(スラスター推力低下、補助センサー破損……)
「アポリーっ! てめえはどうだ!」
アポリーの放った「ウミヘビ」に絡め取られたザクが、痙攣し、機能を停止する。
「これで残存武器、ゼロです。」
軽キャノンの放ったビームが、ヤザンのハンブラビを掠めた。
「機動力が落ちてやがる……」
「ヤザンの旦那。どうやらゼク・アインはソドンへ向かっちまったようだ。
残ってるのは軽キャノン改に、ハイザック、ザクばかりだ。」
「ハハッ!?
イオ、そいつはあんま慰めにはならねえなあ。俺たちがここから逃げれば、そいつらもソドンに向かうってことだ。」
ビームサーベルで、軽キャノン改と切り結ぶ。
クソッたれが!
パワーまで落ちてきやがった。
もともとロベルトの脱出ポッドを抱えたままのヤザンの機体は動きが悪い。
軽キャノン改が、間合いを取ろうと後退する。
だがヤザンは距離を取らせない。
ビームライフル、マシンガン、ミサイルポッド。いわゆる飛び道具系は、ハンブラビのオリジナル兵器であるウミヘビも含めて消耗しつくしている。
距離をとられては一方的にボコられるだけだ。
スラスターを無理やり吹かし、押し込む。
警告音がコクピットに響く。
――構うか。
ビームサーベル同士が噛み合う。
軽キャノン改の腕部関節が軋む。
出力差はまだハンブラビが上か。
だが。
横から。
ザクのヒートホーク。
「ちっ!」
ハンブラビが肩で受ける。
赤熱した刃がショルダーバインダーに深々とくい込んだ。
正面の軽キャノン改がビームサーベルを押し込んで来た。
それを蹴飛ばして、跳ね除ける。
振り向きざまに、ザク目掛けてビームサーベルで切り込んだ。
ザクは判断がよかった。
バインダーにくい込んだままのヒートホークを手放して後退。
腕にはすでにザクマシンガンが握られている。
ガッ!
ガッガッガッ!!
まともに食らった。
致命傷ではない。抱き抱えた脱出ポッドも無事だ。
だが、センサーのいくつかがさらに機能不全になった。
リニアシートの全周囲モニターにノイズが走り、一部がブラックアウトした。
だから背後から斬りかかってきた軽キャノンのビームサーベルを避けられたのは、たんにヤザンのカンでしかない。
それでも右腕の肘から先が、握ったビームサーベルごと切り落とされた。
まだ。
動く。
ヤザンは、振り向きざまに、軽キャノンを蹴飛ばした。
脚がイカれた。
だが、おそらくはその衝撃で、パイロットは気を失ったのだろう。
制御を失った軽キャノンがぐるぐると周りながらすっ飛んでいく。
新たな警告音が。鼓膜を刺激する。
姿勢制御不良。
片手片脚を失ったのだ。当然である。
「まだ……来るか。」
まだ、などと言うものではない。
まだまだ、相手は20機近くいる。
ここが、決戦の場所とヤツらも心得ているようだ。
傷ついた仲間を助けて撤退に移る者はいない。
「――っ、上等だ……!」
ヤザンは根性で操縦桿を叩き込む。
その脇をビームが掠める。
軽キャノン改が、二機接近。
挟み込む軌道だ。
「まだ終わらねえぞっ!」
ヤザンは吠えた。咆哮はそのまま、散弾となって、軽キャノン改を巻き込む
……わけはない。
「ヤザン! イオ! 無事か!」
ダリルのゼク・アインだった。
散弾バズーカを投げ捨てたところを見ると、それが最後の1発だったのだろう。
だいぶ、傷ついているが、まだ武装は健在だ。
「これが無事に見えるのか! ああっ!?」
怒られてもしょうがない。
ゼク・アインはビームガンで2機の軽キャノン改の腕と脚を吹き飛ばした。
「てめえ! よくぞ、3対1で……」
口調は物凄く怒っているのだが、ヤザンに褒めらているのにダリルは気づいた。
もともと狙撃仕様で出撃したダリルのゼク・アインだが、早々に居場所を発見され、3機のゼク・アインに接近戦をしかけられたのだ。
ただ、ニューディサイズのゼク・アインにとって不運だったのが、ダリルのゼク・アインが、リユース・P・デバイスを搭載した特別機だったことだ。
接近戦においてもその能力は、あの白い悪魔と互角に戦ったほどである。
「こんなに早く狙撃手が居場所を特定されるなんて……」
ダリルはブツブツと文句を言った。
「だからトリコロールカラーになんて塗ってほしくなかったんだ。」
「俺たちはほとんど、武器が残ってねえ。」
「訂正します。まったく残ってない。」
アポリーが口を挟んだ。
「敵はまだ20機近くいますよ?」
ダリルが、諦めたように言った。
「後退しますか? 援護します。」
「すでにゼク・アインにはここを抜かれている。」
ヤザンは答えた。
「アレキサンドリアにはジェリドくらいしかパイロットが残ってねえ。
あそこにこれ以上モビルスーツをやるわけにはいかねえんでな!」
軽キャノンとザクを中心としたニューディサイズモビルスーツ隊は、隊形を組み直しつつある。
スキと言えばそうなのだが、ヤザンにはもう使える武器がなかった。
「よし、決めた! アポリー、イオ。ここから退避してソドンに向かえ。ついでにロべルトの脱出ポッドも頼む。」
「ヤザンの旦那!?」
「隊長はどうすんです?」
「ここで、ダリルと一緒にヤツらを食い止める。」
ヤザンは歯をむきだして笑った。
「残念だろうが、こっからの時間は俺たちに味方する。粘れば、クワトロやジュドーも戻ってくる。ソドンにはアムロやマチュやお姫さんがいる。
一分、いや一秒でも粘るだけ俺たちが有利になるんだ。」
「そういう事なら」
ダリルが前に出る。
「ここが踏ん張りどころってことですね。」
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「遅い! 遅いんだよ、トロワ!
もう始まってる……いや終わっちゃってるかもしれないよ!」
「無理を言うな、ドゥー。出来たのは最小限のバーニヤ換装だけで、ヘビーアームズは地上での基地制圧用のモビルスーツだ。」
「ぼくの心臓の音」
サイコガンダムRのドゥーはパイロットのスーツのうえから自分の胸を抑える。
「やつらに聞かせてやるんだ。」
ヤザン達にとどめを刺すべく、隊形を整えつつあるニューディサイズのモビルスーツ隊。
そこに基地をまるごと更地に変えるガンダムヘビーアームズの火力と、サイコガンダムRのビームキャノンが叩き込まれた。
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「こいつは……強い。」
ココ・シャロンは呟いた。
相手はガンダムマークⅤ。
その名はつけられてはいるものの、その基本構造はガンダムマークⅡと大差はない。
ないはずだ。
ニューディサイズアーガマ攻撃隊。
マークⅤと5機のゼク・アイン。
それを迎撃すべき出撃したココ・シャロンとフォウ・ムラサメ。
だが、マークⅤ1機を落とせずに苦戦している。
ココのロゼスバークルのサイコミュ兵器オハ・デ・ミル・ペタロスは極薄の金属片を撒き散らし、その圏内に侵入したものを切り裂く特殊兵器だ。
それをうまく使うことで、マークⅤのインコムのワイヤーを切断することに成功したのだ。
だが、マークⅤは抵抗を辞めない。
基本的な武装は、ビームライフル、ビームサーベル、盾。
現代となってはモビルスーツが持つべき最小限の武装だ。
フォウのショルダーバインダーのソードビットは、撃ち落とされてしまった……
となれば、モビルスーツでの戦闘経験が。
その不退転の決意こそが、最強の武器となる。
押されている。
強化人間フォウ・ムラサメが。
サイコガンダムRが。
ビットを。
インコムを。
ともに失った両機の性能はほぼ互角。ならばその差は、パイロットの差なのか。
「フォウ。」
ココは静かに呼びかけた。
「わたしが出るわ。下がりなさい。」
「で、でも……」
「あなたは傷つくべきひとではありません。」
「でも、お姉様は……」
言いたいことはわかる。
ココは、己のパイロットとしての才能の無さに辟易していたのだ。
「オハ・デ・ミル・ペタロス……弐之型。」
撒き散らされた金属片が、淡いピンクの光を帯び始めた。
鋭い刃物のような効果のあるそれは、ある程度、ココの意思に従う。だが、急速に移動するモビルスーツを追いきれるものではない。
そして、レーダーにも。目視も難しい極薄の金属片がピンクのヒカリを帯びたことは、かえってその存在を顕にしてしまった。
コッドのマークⅤは楽々とその位置を避ける。
ココのロゼスパークルが両手を上げた。
「この状態からならわたしは花弁を三倍の威力で操ることが出来る。」
金属片は。
本当に花びらのように舞った。
いやここは宇宙だ。
風は吹くはずもなく。
金属片にはいかなるジェネレーターも推進剤も搭載されていない。
「なん……だ、と?」
コッドは叫んだ。
渦をまく花びらは、ロゼスパークルとサイコガンダムRを包み隠していく。
打ち込んだビームは、花弁にかき散らされた。
「なんなのだ、おまえは!!」
あと、月面のケリイの活躍と、アーガマに向かったゼク・アインとニャアンの戦い、司令室を目指すゼロとエイノーのバトル、えーと、アムロとアンの対決は最後にもってくるから、えーと